K 2025年09月08日 カード797 いいね0

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  • "Q用益物権は不動産にのみ成立する。

    A〇  用益物権には,地上権(265条以下),永小作権(270 条以下),地役権(280条以下)があるところ,265条は,「地上権者は,他人の土地において工作物又は竹木を所有するため,その土地を使用する権利を有する」と,270条は,「永小作人は,小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する」と,280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定する。そして,86条1項は,「土地及びその定着物は,不動産とする」と規定するしたがって,用益物権は,土地,すなわち不動産にのみ成立する。

  • Q法定の担保物権は存在するが,法定の用益物権は存在しない。

    A×  法定の担保物権には,留置権(295条以下)と先取特権(303条以下)が存在する。一方,法定の用益物権には,法定地上権(388条)が存在する。→ 2022 総合講義·164頁

  • Q対抗要件を備える必要がない物権の場合には,時間的に先に成立した物権が優先する。

    A×  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定するところ,一般の先取特権については,動産·不動産·債権など各種の財産が含まれるので,対抗要件を備える必要がないものと解されている。そして,329条1項は,「ー般の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,第306条各号に掲げる順序に従う」と規定し,同条2項は,「一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には,特別の先取特権は,一般の先取特権に優先する、ただし,共益の費用の先取特権は,その利益を受けたすベての債権者に対して優先する効力を有する」と規定する。また,311 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の動産について先取特権を有する」と規定するところ,動産先取特権についても,対抗要件は不要と解されている。そして,330条1項柱書前段は,「同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,次に掲げる順序に従う」と規定する。したがって,時間的に先に成立した物権が優先するとは限らない

  • Q 物権法定主義の要請により,法律に規定された登記や引渡し以外には,物権変動の対抗要件は認められない。

    A×  175条は,「物権は,この法律その他の法律に定めるもののほか,創設することができない」と規定する。また,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定し,178条は,「動産に関する物権の譲渡は,その動産の引渡しがなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。もっとも,判例(最判昭 36.5.4【百選I65】)は,「明認方法は,立木に関する法律の適用を受けない立木の物権変動の公示方法として是認されてるものであるから,それは,登記に代るもの」としている。したがって,明認方法という法律に規定された以外の物権変動の対抗要件が認められている。

  • Q法律や判例には,物の集合体に1個の物権を認めるものがある。

    A〇  立木=関スル法律1条1項は,「本法ニ於テ立木ト称スルハ一筆ノ土地又ハ一筆ノ土地ノ一部分=生立スル樹木ノ集団テ其ノ所有者カ本法ニ依リ所有権保存ノ登記ヲ受ケタルモノヲ謂フ」と規定し,同法2条1項は,「立木ハ之ヲ不動産卜看做ス」と規定した上で,同条2項は,「立木ノ所有者八土地上分離シテ立木ヲ譲渡シ又ハ之ヲ以テ抵当権ノ目的上為スコトヲ得」と規定する。したがって,法律には,物の集合体に1個の物権を認めるものがある。また,判例(最判昭62.11.10)は,「構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができるものと解すべきである」としている。したがって,判例にも,物の集合体に1個の物権を認めるものがある。

  • Q物権は,一筆の土地の一部について成立することはない。

    A×  判例(最判昭 30.6.24)は,「一筆の土地といえども,これを区分して,その『土地の一部』を売買の目的とすることはできる.そして右『七地の一部』が,売買の当事者間において,具体的に特定しているかぎりは,分筆手続未了前においても,買主は,右売買に因りその『土地の一部』につき所有権を取得することができるのである」としている。また,282条2項は,「土地の分割又はその一部の譲渡の場合には,地役権は,その各部のために又はその各部について存する。ただし,地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは,この限りでない」 と規定しており,1筆の土地のみに地役権が成立することもあることを前提としている。したがって,物権は,一筆の土地の一部について成立することもある。

  • Q不特定物を売買契約の目的とした場合,その目的物が特定しない限り,所有権は買主に移転しない。

    A〇  判例(最判昭 35.6.24)は,「不特定物の売買においては原則として目的物が特定した時(民法 401条2項参照)に所有権は当然に買主に移転するものと解すべきであるから,····不特定物の売買においては,特に売主にその所有権を留保するという特約が存しない以上特定の時をもって所有権が買主に移転するものと見るべきである」としている。したがって,不特定物を売買契約の目的とした場合,その目的物が特定しない限り,所有権は買主に移転しない

  • Q複数の物の上にーつの物権の効力が及ぶことはない。

    A×  立木ニ関スル法律1条1項は,「本法二於テ立木ト称スルハ一筆ノ土地又ハ一筆ノ土地ノ一部分二生立スル樹木ノ集団テ其ノ所有者力本法ニ依リ所有権保存ノ登記ヲ受ケタルモノヲ謂フ」と規定し,同法2条1項は,「立木ハ之ヲ不動産卜看做ス」と規定した上で,同条2項は,「立木ノ所有者ハ土地上分離シテ立木ヲ譲渡シ又ハ之ヲ以テ抵当権ノ目的上為スコトラ得」と規定する。また,判例(最判昭62.11.10)は,「構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができるものと解すベきである」としている。したがって,複数の物の上に一つの物権の効力が及ぶこともある。

  • Q金銭の所有権者は,その占有者と一致しないことがある。

    A〇  判例(最判昭 39.1.24【百選177】)は,「金銭は,特別の場合を除いては、物としての個性を有せず,単なる価値そのものと考えるべきであり,価値は金銭の所在に随伴するものであるから,金銭の所有権者は,特段の事情のないかぎり,その占有者と一致すると解すべきであり,また金銭を現実に支配して占有する者は,それをいかなる理由によって取得したか,またその占有を正当うける権利を有するか否かに拘わりなく,価値の帰属者即ち金銭の所有者とみるべきものである」としている。したがって,金銭の所有権者は,その占有者と一致しないことがある

  • Q物権は,権利を目的として成立することがある。

    A〇  362条1項は,「質権は,財産権をその目的とすることができる」と規定し,369条2項前段は,「地上権及び永小作権も,抵当権の目的とすることができる」と規定する。したがって,物権は,権利を目的として成立することがある。

  • Q未成年者との間で売買契約を締結して同人所有の動産を購入した者は,その後に当該売買契約が行為能力の制限を理由に取り消された場合に、売主が未成年であることについて善意無過失であったとしても、,即時取得を理由としてその動産の所有権の取得を主張することはできない。

    A〇  5条1項は,「未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならない。ただし,単に権利を得,又は義務を免れる法律行為については,この限りでない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に反する法律行為は,取り消すことができる」と規定する。そして,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。一方,192条は,「取引行為によって、平穩に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定するところ,判例(最判昭26.11.27)は,「民法第192 条にいわゆる『善意ニシテ且過失ナキトキ』と仕,動産の占有を始めた者において,取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し,且つかく信ずるにつき過失のなかったことを意味する」としており,取消し·無効原因の不存在に対する信頼は即時取得制度によっては保護されない。したがって,売主が未成年であることについて善意無過失であったとしても,即時取得を理由としてその動産の所有権の取得を主張することはできない。

  • Q相続人がなく特別縁故者に対する分与もされなかった相続財産のうち,不動産の所有権は,国庫に帰属するが,動産の所有権は,相続開始後に所有の意思をもって占有を始めた者に直ちに帰属する。

    A×  959 条前段は,「前条の規定〔注:特別縁故者に対する相続財産の分与]により処分されなかった担続財産は,国庫に帰属する」と規定する。したがって,相続人がなく特別縁故者に対する分与もされなかった相続財産の所有権は,不動産·動産を問わず,国庫に帰属するなお,239条1項は,「所有者のない動産は,所有の意思をもって占有することによって,その所有権を取得する」と規定し,同条2項は,「所有者のない不動産は,国庫に帰属する」と規定する。

  • Q他人の動産に工作を加えた者があるときの加工物の所有権は,民法の規定に従って帰属する者が定められ,加工前に所有者と加工者との間で民法の加工に関する規定と異なる合意をしても,その合意の効力は生じない。

    A×  246条1項は,「他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは,その加工物の所有権は,材料の所有者に帰属する。ただし,工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは,加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定し,同条2項は,「前項に規定する場合において,加工者が材料の一部を供したときは,その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り,加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定するが,同条は任意規定であると解されている。したがって,加工前に所有者と加工者との間で民法の加工に関する規定と異なる合意をした場合,その合意の効力は生じる

  • Q土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは,他の共有者もこれを取得する。

    A〇  284条1項は,「土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは,他の共有者も,これを取得する」と規定する。

  • Q所有者を異にし,主従の区別のある2個の動産が付合した場合,従たる動産の所有者は,その付合の時における価額の割合に応じてその合成物の共有持分を取得する。

    A×  243 条前段は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する」と規定する。なお,244 条は,「付合した動産について主従の区別をすることができないときは,各動産の所有者は,その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する」と規定する。

  • Q  AとBが甲土地を共有している場合において,Aがその共有持分を放棄したときは, Aの共有持分はBに帰属する。

    A〇  255条は,「共有者の一人が,その持分を放棄したとき,又は死亡して相続人がないときは,その持分は,他の共有者に帰属する」と規定する。したがって, Aがその共有持分を放棄したときは,Aの共有持分はBに帰属する。

  • Q  A所有の甲土地には,第一順位の抵当権を有しているBと第二順位の抵当権を有しているCがおり,他には抵当権者がいない場合,CがAから甲土地を譲り受けたときでもCの抵当権は消滅しない。

    A×  179条1項は,「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は,消滅する。ただし,その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」と規定するところ,判例(大決昭 4.1.30)は,要旨,同一物に付所有権と2番抵当権とが同一人に帰したる場合に,3番抵当権の存せざる限り右2番抵当権は消滅するものとす,としている。したがって,CがAから甲土地を譲り受けたときは,Cの抵当権は消滅する。

  • Q  A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ,甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,甲土地にCのための抵当権が設定され,その旨の登記がされた場合には,その後にAが単独でBを相続したときでも,その地上権は消滅しない。

    A〇  179条1項は,「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は,消滅する。ただし,その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでな」と規定するところ,Bの地上権はCの抵当権に優先するので,抵当権の実行に対して地上権を存続させる必要があるから,179条1項ただし書により,Aが単独でBを相続したときでも,その地上権は消滅しない。

  • Q  AとBは,建物所有目的で,CからC所有の甲土地を賃借した。その後,Cが死亡してAが単独で甲土地を相続した場合,Aの賃借権は消滅しない。

    A〇  520 条は,「債権及び債務が同一人に帰属したときは,その債権は,消滅する。ただし,その債権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」と規定するところ,Aの賃借権は,第三者であるBの権利の目的となっているから,Cが死亡してAが単独で甲土地を相続した場合でも,消減しない。

  • Q  A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ,甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,乙建物にCのための抵当権が設定され,その旨の登記がされた。その後,Bは, Aに対し,その地上権を放棄する旨の意思表示をした。この抵当権が実行され,Dが乙建物を取得した場合,Dは,Aに対し,地上権を主張することができない。

    A×  398条は,「地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は,その権利を放棄しても,これをもって抵当権者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大判大 11.11.24)は,要旨,借地権者が其の地上に存在する自己所有の建物に対し抵当権を設置したる場合に於て,借地権の放乘は何人も之を以て右の抵当権者に対抗するを得ざるものとす,としている。したがって,Bが,Aに対し,その地上権を放棄する旨の意思表示をしたとしても,Dは,Aに対し,地上権を主張することができる。

  • Qある動産に留置権を取得した者は,その占有を第三者に奪われた場合でも,その第三者に対して留置権に基づく返還請求を行うことができない。

    A〇  302条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する」と規定する。したがって,その占有を第三者に奪われた場合,その第三者に対して留置権に基づく返還請求を行うことはできない。なお,200条1項は,「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより,その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」と規定しており,占有回収の訴えを提起することはできる。

  • Q抵当権の目的となっている土地に第三者が時折所有者に無断で材木を置いている場合,抵当権者は,抵当権に基づく妨害排除請求ができる。

    A×  判例(最大判平11.11.24)は,「第三者が抵当不動産を不法占有することにより抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権に基づく妨害排除請求として,抵当権者が右状態の排除を求めることも許されるものといラベきである」としているが,抵当権の目的となっている土地に第三者が時折所有者に無断で材木を置いているというだけでは,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとは認められない。したがって,抵当権者は,抵当権に基づく妨害排除請求ができない。

  • Q所有動産を無料で貸し与えたところ,借りた者が期限が到来したのに返さない場合,請求権競合に関するどのような見解に立っても,所有権者は,所有権に基づく返還請求権を持つ。

    A×  請求権競合の問題に関しては,①物権的請求権と債権的請求権のいずれを行使してもよいとする請求権競合説,②物権法は特殊な関係がない者の間で一般的に適用されるものであるのに対し,契約という特殊な関係にある者の間では契約法が優先して適用されるべきであるとする請求権非競合説(法条競合説),③物権的請求権と債権的請求権の双方の性質を併せ持つ1個の請求権を有するという規範競合(統合)説などが主張されているところ,請求権非競合説(法条競合説)に立てば,所有権者は,使用貸借契約終了に基づく返還請求権のみを持ち,所有権に基づく返還請求権を持たないことになる。

  • Q所有者から預かった動産が盗まれた場合において,受寄者は,盗まれた時から2年以内であっても,盗品であることを過失なく知らずに同種商品の販売商人から取得した占有者には返還を請求できない。

    A×  192条は,「取引行為によって,平穩に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定する。一方,193条は,「前条の場合において,占有物が盗品又は遺失物であるときは,被害者又は遣失者は,盗難又は遺失の時から2年間,占有者に対してその物の回復を請求することができる」と規定するところ,判例(最判昭 59.4.20)は,「民法193条によれば,動産に関する盗品の被害者は,同法 192 条所定の善意取得の要件を具えた占有者に対してその物の回復を請求することができるとしているから,同法193条は,盗品の被害者が右の要件を具えない占有者に対してその物の返還請求権を有することを当然の前提とした規定であるといわなければならない。したがって,株券の受寄者がその株券を窃取された場合において,右株券の所持人がその取得につき悪意又は重大な過失があるために·····これを善意取得しえないときは,当該株券の受寄者は,所持人に対し,民法 193条の規定の趣旨に基づき,盗品の被害者として右株券の返還を求めることができるものと解すべきである」としており,受寄者も「被害者」に含まれる。したがって,受寄者は,盗まれた時から2年以内に,盗品であることを過失なく知らずに同種商品の販売商人から取得した占有者に返還を請求できる。

  • Q賃借建物に機械を借りて備え付けた建物賃借人が,賃貸借終了時にこの機械を撤去しない場合には,建物賃貸人は,建物の所有権に基づき,その機械の所有者に建物所有権を侵害することについて故意·過失がなくても,この者にその機械の撤去を請求できる。

    A〇  判例(大判昭12.11.19【百選I50】)は,「凡そ所有権の円満なる状態が他より侵害せられたるときは,所有権の効力として其の侵害の排除を請求し得べきと共に,所有権の円満なる状態が他より侵害せらるる虞あるに至りたるときは又,所有権の効力として所有権の円満なる状態を保全する為現に此の危険を生ぜしめつつある者に対し,其の危険の防止を請求し得る···一。然り而して土地の所有者は法令の範囲内に於て完全に土地を支配する権能を有する者なれと,其の土地を占有保管するに付ては特別の法令に基く事由なき限り隣地所有者に侵害又は侵害の危険を与えざる様相当の注意を為すを必要とするものにして,其の所有にかかる土地の現状に基き隣地所有者の権利を侵害し若くは侵害の危険を発生せしめたる場合に在りては,該侵害又は危険が不可抗力に基因する場合若くは被害者自ら右侵害を認容すべき義務を負う場合の外,該侵害又は危険が自己の行為に基きたると否とを問わず,又自己に故意過失の有無を問はず,此の侵害を除去し又は侵害の危険を防止すべき義務を負担するものと解するを相当とす」としている。したがって,建物賃貸人は,建物の所有権に基づき,その機械の所有者に建物所有権を侵害することについて故意·過失がなくても,この者にその機械の撤去を請求できる。なお,709 条は,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定する。

  • Q 所有者が占有者に対して占有物の返還を求める場合,原告は,被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく,被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。

    A〇  188条は,「占有者が占有物について行使する権利は,適法に有するものと推定する」と規定するが,判例(最判昭35.3.1)は,「被上告人が本件土地を所有しかっその登記を経由していること,右土地上に訴外甲の所有する建物が存在し,上告人がこれに居住してその敷地を占有していることは,いずれも原判決の確定するところであり,上告人は,右甲が被上告人から本件土地を使用貸借により借り受けてその地上に前記建物を建築し,上告人がこれを賃借したと主張し,被上告人はこれを争っているのである。この場合,上告人の前記正権原の主張については,上告人に立証責任の存することは明らかであり,上告人は占有者の権利推定を定めた民法188条の規定を援用して自己の正権原を被上告人に対抗することはできないと解するのが相当である」としているしたがって,所有者が占有者に対して占有物の返還を求める場合,原告は,被告の占有が権原に基づかないことを立証する必要はなく,被告が自己に正当な占有権原のあることを立証しなければならない。

  • Q 物権的請求権は,確定日付のある証書による通知又は承諾を対抗要件として譲渡することができる。

    A×  判例(大判大6.3.23)は,「所有権に基く物の返還請求権は,所有権の一作用として其内容を成す権利にして、所有権と離れて存在する独立の権利にあらず」としている。したがって,物権的請求権だけを譲渡することはできない。なお,判例(大判昭3.11.8)は,「物権的請求権は事実上の状態が所有権其の他の物権の本来の内容に適せざる為,之を其の内容に適せしむることを目的とするものにして,物権の効力として発生し,物権の移転あるときは之に随伴して移転するものなれば,物権を有する者に非ざれば物権的請求権を有せさると同時に,其の者が物権を他人に譲渡するときは之と共に其の請求権を失ふものとす」としている。

  • Q第一順位の抵当権の被担保債権が弁済されて消滅した場合,付従性に基づいて抵当権は当然に消滅するから,第二順位の抵当権者が第一順位の抵当権の登記の抹消を求める必要はなく,その登記の抹消を内容とする物権的請求権は生じない。

    A×  判例(大判大8.10.8)は,「既に弁済に因りて消滅に帰したる本件抵当権の設定登記が尚依然として登記簿上に存在するに於ては,被上告人の如く登記簿上次順位に在る抵当権者は,形式に於て上告人の次位に在るが為めに,抵当権の行使其他諸般の取引上種々なる障害を受くることを免がれざるは当然なるを以て,被上告人は上告人に対して其消滅せる抵当権の設定登記の抹消を請求するの利益を有し,又上告人は其請求に応じて抹消手続を為すの義務を有する」としている。したがって,第一順位の抵当権の被担保債権が弁済されて消滅した場合には,第二順位の抵当権者に,その登記の抹消を内容とする物権的請求権が生じる。

  • Q 建物を所有することによって土地を不法占有している者がいる場.合,土地の所有者は建物の所有者を相手に訴えを起こさなければならず,建物の登記名義人がだれかは被告を選ぶ基準とはならない。

    A×  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平6.2.8【百選151】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,右譲渡人は,土地所有者による建物収去·土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというべきであり······,また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがな<,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物収去·土地明渡しの義務を負わないものというべきである」としている。したがって,土地の所有者は建物の所有者を相手に訴えを起こさなければならないのが原則である。もっとも,判例(最判平6.2.8【百選I51】)は,上記に続けて,「他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し, その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって,建物の登記名義人がだれかが被告を選ぶ基準となることもある

  • Q 抵当権の設定された土地が不法に占有されている場合,抵当権者は,その占有者に対し,抵当権に基づいて妨害の排除を求めることができるばかりでなく,自己に明渡しを求めることもできる。

    A×  判例(最判平17.3.10【百選I89】)は,「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ。抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができ」,「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を滴切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としている。したがって,抵当権の設定された土地が不法に占有されているだけで,抵当権に基づいて妨害の排除を求めることや,自己に明渡しを求めることができるわけではない。

  • Q所有権に基づく返還請求権を行使する相手方の占有は,直接占有でなければならず,間接占有であってはならない。

    A×  181条は,「占有権は,代理人によって取得することができる」と規定するところ,判例(大判昭 13.1.28)は,「賃貸人は,賃借人をして賃貸借の目的物の使用収益を為さしむる為,之を賃借人に引渡したる後に於ても,之に対する占有を失うものにあらず。蓋,目的物の引渡を受けたる賃借人は賃貸借の目的たる使用収益を為す為に之を所持するもの,即『自己の為にする意思を以て物を所持する」者なると同時に,賃貸借関係に基き賃貸人の為に善良なる管理者の注意を用ひて目的物を保管し,賃貸借終了の場合に於ては之を賃貸人に返還すべき義務を負える者なれば,賃借人の占有にかかる賃貸借の目的物は常に賃借人を介して賃貸人の事実上の支配の中にあり,即賃貸人の間接占有の下に有りと云うべきを以てなり。従て,他人の物を占有すべき権限なきに拘らず,之を第三者に賃貸して引渡を了し同人をして使用収益せしめつつある賃貸人は,他人の物を不法に占有する者,即他人の所有権を侵害する者に外ならず,物の所有者は右の賃貸人に対し所有権に基き所有権侵害を止むべきことを要求する権能あること明白なりとす」としている。したがって,所有権に基づく返還請求権を行使する相手方の占有は,直接占有·間接占有のいずれであってもよい。

  • Q所有権に基づく妨害排除請求権は,所有権の行使を妨害する他人が自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある場合,その他人を相手方として行使することができない。

    A×  所有権に基づく妨害排除請求権は,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されている場合に,その妨害状態の解消を求める権利であり,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されていれば足りる。したがって,所有権の行使を妨害する他人が自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある場合でも,その他人を相手方として行使することができる。なお,712 条は,「未成年者は,他人に損害を加えた場合において,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは,その行為について賠償の責任を負わない」と規定する。

  • Q土地の所有権を有するが,その所有権の取得を第三者に対抗することができない者は,その土地を権原なく占有する者に対して,所有権に基づく物権的請求権を行使することができない。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭25.12.19【百選162])は,「丕法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としている。したがって,土地の所有権を有する者は,その所有権の取得を第三者に対抗することができるか否かにかかわらず,その土地を権原なく占有する者に対して,所有権に基づく物権的請求権を行使することができる。

  • Q Aが所有する土地上にその土地を利用する権原なくBが建物を所有し,Cがその建物をBC間の賃貸借契約に基づいて占有する場合,Aは所有権に基づく物権的請求権として, Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができ,Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。

    A〇  判例(最判昭 35.6.17)は,「土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては,現実に家屋を所有することによって現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである」としている。したがって,Aは所有権に基づく物権的請求権として,Bに対して建物収去土地明渡しを求めることができる。また,判例(最判昭34.4.15)は,「建物は,その敷地を離れて存在し得ないのであるから,建物を占有使用する者は,おのづからこれを通じてその敷地をも占有するものと解すべきである。本件において,原判示郵政用地は,訴外甲が,その上に原判示建築資材展示場を建築してこれを占有し,右建物の中,上告人等が占有使用する部分に該る敷地は,上告人等も亦これを占有して居るものとなささるを得ない。したがって,原判決が訴外甲において右郵政用地の使用権を喪失した旨判示している以上,原判示建物の中所論部分に該る敷地も亦,上告人等の不法に占有するものとなすベきは当然である。されば,被上告人の上告人等に対する,原判示建物中それぞれの占有部分よりの退去及び原判示郵政用地中右占有部分に該る数地の明渡請求を認容すべきものとした原判決は正当であ」るとしている。したがって, Aは所有権に基づく物権的請求権として,Cに対して建物退去土地明渡しを求めることができる。

  • Q  Aが所有する物について,Bが物の占有ではない方法によって所有権の行使を妨げる場合,AがBに対して所有権に基づき妨害の除去又は停止を請求することができるのは, Bの妨害によりAが重大にして若しく回復困難な損害を被るときに限られる。

    A×  所有権に基づく妨害排除請求権は,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されている場合に,その妨害状態の解消を求め石権利であり,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されていれば足りる。したがって,AがBに対して所有権に基づき妨害の除去又は停止を請求することができるのは, Bの妨害によりAが重大にして著しく回復困難な損害を被るときに限られない。なお,判例(最大判昭61.6.11)は,「出版物の頌布等の事前差止めは,·その表現内容が真実でなく,又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であって,かつ,被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは,当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ,有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから,かかる実体的要件を具備するときに限って,例外的に事前差止めが許されるものというベきであ」るとしている。

  • Q所有権に基づく物権的請求権は,所有権から派生する権利であるから,所有権と独立に物権的請求権のみを譲渡することはできないが,所有権とは別に消滅時効にかかる場合がある

    A×  判例(大判大6.3.23)は,「所有権に基く物の返還請求権は,所有権の一作用として其内容を成寸権利にして,所有権と離れて存在する独立の権利にあらず」としている。したがって,所有権と独立に物権的請求権のみを譲渡することはできない。一方,166条2項は,「債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から20年間行使しないときは,時効によって消減する」と規定するところ,判例(大判大5.6.23)は,「所有権に基く所有物の返還詰求権は,其所有権の一作用にして之より発生する独立の権利に非ざるを以二,所有権自体と同じく消滅時効に因りて消滅することなしと云わざるを得ず」としている。したがって,所有権とは別に消滅時効にかかる場合はない。

  • Q建物の賃貸借契約が終了したとき,建物の所有者である賃貸人は,賃借人に対し,賃貸借契約の終了に基づいて建物の返還を求めることはできるが,所有権に基づいて建物の返還を請求することはできない。

    A×  判例(大判大11.8.21)は,「寄託物の返還請求は契約上の債権に基きて之を為すことを得るの外,自己の所有物を寄託したるときは所有権を主張して其の物の引渡を請求することを得べく,契約上の請求権と物上請求権とが相競合することあるを妨げざる」 としている。したがって,賃貸人は,賃借人に対し,賃貸借契約の終了に基づいて建物の返還を求めることもできるし,所有権に基づいて建物の返還を請求することもできる。

  • Q  Aは, B所有の土地に何らの権原なく建物を建て,この建物をCに賃貸した。この場合,建物を占有しているのはCであるから,Bは,Aに対して,建物を収去して土地を明け渡すことを請求することはできない。

    A×  181 条は,「占有権は,代理人によって取得することができる」と規定するところ,判例(大判昭 13.1.28)は,「賃貸人は,賃借人をして賃貸借の目的物の使用収益を為さしむる為,之を賃借人に引渡したる後に於ても,之に対する占有を失うものにあらず。蓋,目的物の引渡を受けたる賃借人は賃貸借の目的たる使用収益を為す為に之を所持するもの,即『自己の為にする意思を以て物を所持する』者なると同時に,賃貸借関係に基き賃貸人の為に善良なる管理者の注意を用ひて目的物を保管し,賃貸借終了の場合に於ては之を賃貸人に返還すべき義務を負える者なれば,賃借人の占有にかかる賃貸借の目的物は常に賃借人を介して賃貸人の事実上の支配の中にあり,即賃貸人の間接占有の下に有りと云うベきを以てなり。従て,他人の物を占有すベき権限なきに拘らず,之を第三者に賃貸して引渡を了し同人をして使用収益せしめつつある賃貸人は,他人の物を不法に占有する者,即他人の所有権を侵害する者に外ならず,物の所有者は右の賃貸人に対し所有権に基き所有権侵害を止セべきことを要求する権能あること明白なりとす」としている。したがって, Bは,Aに対して,建物を収去して土地を明け渡すことを請求することができる。

  • Q畑として使用されてきた土地をA,B及びCが持分3分の1ずつで共有していたところ,第三者が,Aの承諾を得て,その土地を造成して宅地にしようとした。この場合,Cは,単独で,その第三者に対し,共有持分権に基づく物権的請求権の行使として,土地全体について造成行為の禁止を求めることができる。

    A〇  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について, その持分に応じた使用をすることができる」と規定し,251条1項は,「各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない」と規定する。そして,判例(最判平 10.3.24)は,「共有者の一部が他の共有者の同意を得ることなく共有物を物理的に損傷しあるいはこれを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には,他の共有者は,各自の共有持分権に基づいて,右行為の全部の禁止を求めることができるだけでなく,共有物を原状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き,右行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできると解するのが相当である。けだし,共有者は,自己の共有持分権に基づいて,共有物全部につきその持分に応じた使用収益をすることができるのであって(民法249条[注:249条1項]),自己の共有持分権に対する侵害がある場合には,それが他の共有者によると第三者によるとを問わず,単独で共有物全部についての妨害排除請求をすることができ,既存の侵害状態を排除するために必要かつ相当な作為又は不作為を相手方に求めることができると解されるところ,共有物に変更を加える行為は,共有物の性状を物理的に変更することにより,他の共有者の共有持分権を侵害するものにほかならず,他の共有者の同意を得ない限りこれをすることが許されない(民法 251条〔注:251条1項])からである」としている。したがって,Cは,単独で,その第三者に対し,共有持分権に基づく物権的請求権の行使として,土地全体について造成行為の禁止を求めることができる。

  • Q AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権を行使するには,Bに事理を弁識する能力があることは必要でないが,妨害状態が発生したことについてBに故意又は過失があることが必要である。

    A×  判例(大判昭 12.11.19 【百選I50】)は,「凡そ所有権の円満なる状態が他より侵害せられたるときは,所有権の効力として其の侵害の排除を請求し得べきと共に,所有権の円満なる状態が他より侵害せらるる虞あるに至りたるときは又,所有権の効力として所有権の円満なる状態を保全する為現に此の危険を生ぜしめつつある者に対し,其の危険の防止を請求し得る·····。然り而して土地の所有者は法令の範囲内に於て完全に土地を支配する権能を有する者なれとも,其の土地を占有保管するに付て仕特別の法令に基く事由なき限り隣地所有者に侵害又は侵害の危険を与えざる様相当の注意を為すを必要とするものにして,其の所有にかかる土地の現状に基き隣地所有者の権利を侵害し若くは侵害の危険を発生せしめたる場合に在りては,該侵害又は危険が不可抗力に基因する場合若くは被害者自ら右侵害を認容すべき義務を負う場合の外,該侵害又は危険が自己の行為に基きたると否とを問わず,又自己に故意過失の有無を間はず,此の侵害を除去し又は侵害の危険を防止すべき義務を負担するものと解するを相当とす」としている。したがって,AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権を行使するには,妨害状態が発生したことについてBに故意又は過失があることは必要ない。なお,所有権に基づく妨害排除請求権は,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されている場合に,その妨害状態の解消を求める権利であり,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されていれば足りる。したがって,Bに事理を弁識する能力があることも必要でない。

  • Q A所有の甲土地上に権原なく乙建物を所有しているBがCに乙建物を売却した場合において,CがBからの乙建物の所有権移転登記を経由しいないときは,Aは,Cに対し,乙建物の収去及び甲土地の明渡しを求めることができない。

    A×  判例(最判平6.2.8【百選I51】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである」としている。したがって,CがBからの乙建物の所有権移転登記を経由していなくても,Aは, Cに対し,乙建物の収去及び甲土地の明渡しを求めることができる。

  • Q A所有の甲土地上に権原なく乙建物を所有しているBがCに乙建物を売却し,CがBからの乙建物の所有権移転登記を経由した後,CがDに乙建物を売却した場合には,DがCからの乙建物の所有権移転登記を経由していないときであっても,Aは,Cに対し,乙建物の収去及び甲土地の明渡しを求めることができない。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平6.2.8【百選151】)は,「他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権奕動における対抗関係にも似た関係というペく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し、これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって, DがCからの乙建物の所有権移転登記を経由していないときは, Aは,Cに対し,乙建物の収去及び甲土地の明渡しを求めることができる。

  • Q  Aがその所有する甲土地をBに賃貸し,Bが甲土地を自動車の駐車場として利用していたところ,甲土地の賃借権の登記がされない間に, AがCに対し甲土地を売却した場合において,CがAからの甲士地の所有権移転登記を経由していないときは,Bは,Cからの甲土地の明渡請求を拒むことができる。

    A〇  605条は,「不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる」と規定するところ,甲土地の賃借権の登記はされていないため,Bは,甲土地の賃借権をCに対抗することはできない。しかし,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及ぴ変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明 41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称寸······。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,CがAからの甲土地の所有権移転登記を経由していないときは, Cも,甲土地の所有権をBに対抗することができない。したがって, Bは,Cからの甲土地の明渡請求を拒むことができる。

  • Q  A所有の甲土地に隣接する乙土地の所有者であるBが乙土地を掘り下げたために,両土地の間に高低差が生じ,甲土地が崩落する危険が生じている場合において,その危険が生じた時から20年を経過した後にAがBに対し甲土地の崩落防止措置を請求したときは,Bはその請求権の消滅時効を援用することができる。

    A×  166条2項は,「債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から20年間行使しないときは,時効によって消減する」と規定するところ,判例(大判大5.6.23)は,「所有権に基く所有物の返還請求権は,其所有権の一作用にして之より発生する独立の権利に非ざるを以て,所有権自体と同じく消滅時効に因りて消滅することなしと云わざるを得ず」としている。したがって,Bは妨害予防請求権の消滅時効を援用することができない。

  • Q  Aが地上権を有する甲土地に無断でBがその所有する自動車を放置した場合,Aは, Bに対し,地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めることはできない。

    A×  地上権(265条)は物権であるため(第2編第4章),物権的請求権の行使は認められる。また,妨害排除請求権とは,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されている場合に,その妨害状態の解消を求める権利をいうところ, Aが地上権を有する甲土地に無断でBがその所有する自動車を放置した場合,「他人の土地において工作物又は竹木を所有するため,その土地を使用する権利」(265条)の実現が占有の喪失以外の態様で妨害されているため,Aは, Bに対し,地上権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めることができる。

  • Q  Aが所有する鉄塔が自然災害により傾き,鉄塔に隣接するBの所有する甲建物を損傷させるおそれが生じた場合において,Bが所有権に基づく妨害予防請求権の行使として甲建物を損傷させないための措置を講ずるよう求めたときは,Aは,過去に実際に一度でも甲建物を損傷させたことがないことを理由としてBの請求を拒むことができる。

    A×  所有権(206条)は物権であるため(第2編第3章),物権的請求権の行使は認められる。また,妨害予防請求権とは,物権の実現妨害のおそれがある場合にその予防を請求する権利をいうところ,Aが所有する鉄塔が自然災害により傾き,鉄塔に隣接するBの所有する甲建物を損傷させるおそれが生じた場合,「自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利」(206条)の実現妨害のおそれがあるため,Bは所有権に基づく妨害予防請求権の行使として甲建物を損傷させないための措置を講ずるよう求めることができ,Aは,過去に実際に一度でも甲建物を損傷させたことがないことを理由としてBの請求を拒むことができない。

  • Q  Aの所有する自動車がBの所有する山林に無断で放置され,20年が経過した場合において, BがAに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車の撤去を求めたときは,Aは,妨害排除請求権の消滅時効を援用してBの請求を拒むことができる。

    A×  166条2項は,「債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から20年間行使しないときは,時効によって消滅する」と規定するところ,判例(大判大 5.6.23)は,「所有権に基く所有物の返還請求権仕,其所有権の一作用にして之より発生する独立の権利に非さるを以て,所有権自体と同じく消滅時効に因りて消滅することなしと云わざるを得ず」としている。したがって, Aの所有する自動車がBの所有する山林に無断で放置され,20 年が経過した場合において, BがAに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車の撤去を求めたときは,Aは妨害排除請求権の消滅時効を援用してBの請求を拒むことができない。

  • Q  Aが,A所有の甲土地に洪水のため流されてきた自動車の所有者で日あるBに対し,所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めた場合,Bは,所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても,Aの請求を拒むことはできない。

    A〇  判例(大判昭12.11.19【百選I50】)は,「凡そ所有権の円満なる状態が他より侵害せられたるときは,所有権の効力として其の侵害の排除を請求し得べきと共に,所有権の円満なる状態が他より侵害せらるる虞あるに至りたるときは又,所有権の効力として所有権の円満なる状態を保全する為現に此の危険を生ぜしめつつある者に対し,其の危険の防止を請求し得る······。然り而して土地の所有者は法令の範囲内に於て完全に土地を支配寸る権能を有する者なれとも,其の土地を占有保管するに付ては特別の法令に基く事由なき限り隣地所有者に侵害又は侵害の危険を与えざる様相当の注意を為すを必要とするものにして,其の所有にかかる土地の現状に基き隣地所有者の権利を侵害し若くは侵害の危険を発生せしめたる場合に在りては,該侵害又は危険が不可抗力に基因する場合若くは被害者自ら右侵害を認容すべき義務を負う場合の外,該侵害又は危険が自己の行為に基きたると否とを問わず,又自己に故意過失の有無を間は士,此の侵害を除去し又は侵害の危険を防止すべき義務を負担するものと解するを相当とす」としいる。したがって,Aが,A所有の甲土地に洪水のため流されてきた自動車の所有者であるBに対し,所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自動車を撤去するよう求めた場合,Bは,所有権侵害について故意過失がないことを主張立証しても,Aの請求を拒むことはできない。

  • Q  Aの所有する甲土地に無断でBがその所有する自転車を放置した場合において,AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自転車を撤去するよう求めたときは, Bは,自己が未成年者であることを理由としてAの請求を拒むことはできない。

    A〇  所有権は物権であるため(第2編第3章),物権的請求権の行使は認められる。また,妨害排除請求権とは,占有の喪失以外の態様で物権の実現が妨害されていろ場合に,その妨害状態の解消を求める権利をいうところ,Aの所有する甲土地に無断でBがその所有する自転車を放置した場合,「自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利」の実現が占有の喪失以外の態様で妨害されているため,AはBに対して所有権に基づく妨害排除請求権の行使として自転車を撤去するよう求めることができ,Bは,自己が未成年者であることを理由としてAの請求を拒むことはできない。

  • Q 甲土地の所有者Aは,Bが所有する乙土地上に甲土地のための通行地役権の設定を受けた。その後,Bが乙土地上に大型トラック丙を駐車してAによる乙土地の通行を妨げた場合,Aは,Bに対して通行地役権に基づき丙の撤去を請求することができる。

    A〇  280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定するところ,判例(最判平 17.3.29)は,「本件車両を本件通路土地に恒常的に駐車させることによって同土地の一部を独占的に使用することは,この部分を上告人が通行することを妨げ,本件地役権を侵害するものというべきであって,上告人は,地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権に基づき,被上告人に対し,このような行為の禁止を求めることができると解すべきである」としいる。したがって,Bが乙土地上に大型トラック丙を駐車してAによる乙土地の通行を妨げた場合,Aは, Bに対して通行地役権に基づき丙の撤去を請求することができるなお,判例(最判平17.3.29)は,上記に続けて,「通行地役権は,承役地を通行の目的の範囲内において使用することのできる権利に過ぎないから,通行地役権に基づき,通行妨害行為の禁止を超えて,承役地の目的外使用一般の禁止を求めることはできない」としいる。

  • Q  A,B及びCが甲土地を持分3分の1ずつで共有している場合,Cは単独で,甲土地を何の権原もなく占有するDに対して甲土地の明渡しを請求することができない。

    A×  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(大判大 10.6.13)は,「被上告人は,本訴の不動産······に付き,共有者の一人として,共有者全員の為め,上告人に対し,其引渡を請求するものにして,斯かる請求は,民法第252条但書[注:252条5項)に所謂保存行為として、各共有者単独に之を為し得る」としている。したがって, Cは単独で,甲土地を何の権原もなく占有するDに対して甲土地の明渡しを請求することができる。

  • Q  Aは,Bが所有する甲土地上に何の権原もなく乙建物を建築し,その所有権保存登記がされた。その後,Aが乙建物をCに売却して所有権を移転した場合,Cヘの所有権移転登記がされていなくても,Bは,Cに対して所有権に基づき乙建物の収去を請求することができる。

    A〇  判例(最判平6.2.8【百選151】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである」としている。したがって, Aが乙建物をCに売却して所有権を移転した場合,Cヘの所有権移転登記がされていなくても, Bは,Cに対して所有権に基づき乙建物の収去を請求することができる。なお,177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平6.2.8【百選I51】)は,上記に続けて,「もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならないとしている。したがって、Cへの所有権移転登記がされていない場合,Bは,Aに対して所有権に基づき乙建物の収去を請求することもできる。

  • Q Aが所有する甲土地にBのために抵当権が設定され,その登記がされた後,Cは,甲土地上にAが所有する樹木を何の権原もなく伐採し始めた。この場合,Bは,被担保債権の弁済期前であっても,Cに対して伐採の禁止を請求することができる。

    A〇  判例(大判昭 6.10.21)は,「債務者が滅失毀損等事実上の行為を以て抵当物に対する侵害を敢行する場合に於ては,其の侵害行為〔注:抵当物に対する侵害〕が抵当権者の有する債権の弁済期後なると或いは抵当権の実行に着手したる後なると否とを問わず,抵当権者は物権たる抵当権の効力としてさが妨害の排除を請求し得べきは当然なりと云わざるを得ず」としている。したがって,Cが,甲土地上にAが所有する樹木を何の権原もなく伐採し始めた場合,Bは,被担保債権の弁済期前であっても, Cに対して伐採の禁止を請求することができる。

  • Q 甲土地に設定された第一順位の抵当権の被担保債務が消滅したにもかかわらずその登記が抹消されていない場合,甲土地の第二順位の抵当権者は,第一順位の抵当権者に対してその登記の抹消を請求することができない。

    A×  判例(大判大8.10.8)は,「既に弁済に因りて消減に帰したる本件抵当権の設定登記が尚依然として登記簿上に存在するに於ては,被上告人の如く登記簿上次順位に在る抵当権者は,形式に於て上告人の次位に在るが為め二、抵当権の行使其他諸般の取引上種々なる障害を受くることを免がれざるは当然なるを以て,被上告人は上告人に対して其消滅せる抵当権の設定登記の抹消を請求するの利益を有し、又上告人は其請求に応じて抹消手続を為すの義務を有する」としている。したがって,甲土地に設定された第一順位の抵当権の被担保債務が消滅したにもかかわらずその登記が抹消されていない場合,甲土地の第二順位の抵当権者は,第一順位の抵当権者に対してその登記の抹消を請求することができる。

  • Q 裁判所は,他人のプライバシーを侵害した者に対し,被害者の請求により,損害賠償に代え,プライバシーを保護するのに適当な処分を命ずることができる

    A〇  723条は,「他人の名誉を毀損した者に対しては,裁判所は,被害者の請求により,損害賠償に代えて,又は損害賠償とともに,名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と規定するところ,裁判例(東京地判平2.5.22)は,プライバシー侵害について,「本件においては,民法723条を類推適用して被告らに謝罪広告を命ずるのが,損害の原状回復の方法として,有効,適切,かつ,合理的であり,また公平の理念にも合致するというべきである」 としている。したがって,裁判所は,他人のプライバシーを侵害した者に対し,被害者の請求により,損害賠償に代え,プライバシーを保護するのに適当な処分を命ずることができる。

  • Q隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,自らその枝を切除することはできるが,その竹木の所有者に,その枝を切除させることはできない。

    A×  233条1項は,「土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる」と規定寸る。したがって,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができるが,自らその枝を切除することはできない。

  • Q一般財団法人の理事が専ら法人の業務として管理している物を他人が侵奪した場合において,その他人に対し占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は,その一般財団法人であり,理事個人ではない。

    A〇  197 条は,「占有者は,次条から第202 条までの規定に従い,占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も,同様とする」と規定するところ,判例(最判昭 32.2.22)は,「法人の代表者は法人の機関であり、したがって法人の代表者が法人の業務上な寸物の所持は法人そのものの占有,すなわち法人の直接占有と解すべく,またこの場合代表者は所論民法 197 条後段の代理占有者でもないと解するを相当とする」としている。したがって,占有回収の訴えを提起して返還を請求することができる者は,その一般財団法人であり,理事個人ではない。

  • Q親権者の下で監護されている幼児で意思能力のないものを連れ去り, その子を不当に拘束している者に対しては,人身保護法に基づく救済を請求することができる。

    A〇  判例(最大判昭33.5.28)は,要旨,人身保護制度は,同楼関係のあった婦女の連れ子として幼児を養育していた者から,その幼児を連れ去って監護養育している幼児の祖父母につき,養育監護者としての適否を争って幼児の釈放と引渡を求める場合にも適用がある,としている。したがって,親権者の下で監護されている幼児で意思能力のないものを連れ去り,その子を不当に拘束している者に対しては,人身保護法に基づく救済を請求することができる。

  • Q通行のために設定された地役権を有する者は,承役地のうち通路として開設された部分に物件を置いて通行を困難にする者に対し,通路である土地の部分の明渡しを請求することができる。

    A×  280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定するところ,判例(最判平17.3.29)は,「本件車両を本件通路土地に恒常的に駐車させることによって同土地の一部を独占的に使用することは,この部分を上告人が通行することを妨げ,本件地役権を侵害するものというべきであって,上告人は,地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権に基づき,被上告人に対し,このような行為の禁止を求めることができると解すべきである」が,「通行地役権は,承役地を通行の目的の範困内において使用することのできる権利に過ぎないから,通行地役権に基づき,通行妨害行為の禁止を超えて,承役地の目的外使用一般の禁止を求めることはできない」としている。したがって,通行のために設定された地役権を有する者は,承役地のうち通路として開設された部分に物件を置いて通行を困難にする者に対し,通路である土地の部分の明渡しを請求することはできない。

  • Q一般先取特権は,物を占有する権利を含まない物権であるから, それに基づく本権の訴えとして返還請求権を行使することはできない。

    A〇  返還請求権とは,占有を喪失した場合に,その占有の回復を求める権利をいうところ,一般先取特権は、物を占有する権利を含まない物権であるから,それに基づく本権の訴えとして返還請求権を行使することはできない。

  • Q留置権は,物を占有する権利を含む物権であるから,それに基づく本権の訴えとして返還請求権を行使することができる。

    A×  返還請求権とは,占有を喪失した場合に,その占有の回復を求める権利をいうところ,302 条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する」と規定する。すなわち留置権は,物を占有する権利を含む物権ではあるが,その占有を喪失した場合には,留置権は消滅するから,それに基づく本権の訴えとして返還請求権を行使することはできない。なお,200条1項は,「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより,その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」と規定しており,占有回収の訴えを提起することはできる。

  • Q「本権」とは物権であるから,本権の訴えとして賃借権に基づく返還請求権を行使することはできない。

    A×「本権」とは,占有を正当なものとして基礎づける権利をいい,所有権,各種用益物権,留置権,質権の他,賃借権や使用借権も含起。したがって,「本権」とは物権に限らず,また,本権の訴えとして賃借権に基づく返還請求権を行使することもできる。

  • Q 地上権者は,本権の訴えとして地上権に基づく返還請求権を行使することができることが原則であるが,土地の所有者に対し返還請求権を行使することはできない。

    A×  返還請求権とは,占有を喪失した場合に,その占有の回復を求める権利をいうところ,265条は,「地上権者は,他人の土地において工作物又は竹木を所有するため,その土地を使用する権利を有する」と規定しており,物を占有する権利を含む物権である。したがって,地上権者は,その占有を喪失した場合は本権の訴えとして地上権に基づく返還請求権を行使することができるまた,地上権者は,土地の所有者に対しても返還請水権を行使することもできる

  • Q 土地を賃貸して賃借人に引き渡した所有者は,第三者が土地の占有を侵奪した場合において,占有の訴えにより土地の返還を請求することができるほか,本権の訴えとして所有権に基づいても返還を請求することができる。

    A〇  200条1項は,「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより,その物の返還及び損害の賠償を請水することができる」と規定するところ,181 条は,「占有権は,代理人によって取得することができる」と規定する。よって,土地を賃貸して賃借人に引き渡した所有者は,第三者が土地の占有を侵奪した場合において,占有の訴えにより土地の返還を請求することができる。また,肢アの解説のとおり,返還請求権とは,占有を喪失した場合に,その占有の回復を求める権利をいうから,土地を賃貸して賃借人に引き渡した所有者は,第三者が土地の占有を侵奪した場合において,本権の訴えとして所有権に基づいても返還を請求することもできる。

  • Q  Aは, Bから甲土地を買って所有しているとして,甲土地を占有しているCに対し,所有権に基づき甲土地の返還請求訴訟を提起した。同訴訟において, Cは,「確かに,自分は甲土地を占有している。しかし, AはDに甲土地を売り,自分はDから甲土地を買った。」と主張して争っている。ただし,すベての売買契約について,代金支払と甲土地の引渡しはされているもの(売買契約の事実が証明されたときはこれらの事実も証明されたもの)とする。CがAD間の売買の当時におけるAの甲土地の所有を認めていても, Aは,甲土地を所有していたBから甲土地を買ったことを証明できなければ,所有権を証明したとはいえず,敗訴する。

    A×  判例(最判昭 40.2.23)は,「訴外甲が本件山林の所有権者であることが当事者間に争いがないと解される以上,原判決が訴外甲を本件山林の所有権者であることを前提として判断することは許されるべきである」としている。したがって,CがAD間の売買の当時におけるAの甲土地の所有を認めているときは,Aは,甲土地を所有していたBから甲土地を買ったことを証明する必要はない。

  • Q  Aは, Bから甲土地を買って所有しているとして,甲土地を占有しているCに対し,所有権48に基づき甲土地の返還請求訴訟を提起した。同訴訟において, Cは,「確かに,自分は甲土地を占有している。しかし, AはDに甲土地を売り,自分はDから甲土地を買った。」と主張して争っている。ただし,すベての売買契約について,代金支払と甲土地の引渡しはされているもの(売買契約の事実が証明されたときはこれらの事実も証明されたもの)とする。Aは,Cに所有権以外の占有権原がないことを主張立証しなければ,敗訴する。

    A×  188条は,「占有者が占有物について行使する権利は,適法に有するものと推定する」と規定するが,判例(最判昭35.3.1)は,「被上告人が本件土地を所有しかつその登記を経由していること,右土地上に訴外甲の所有する建物が存在し,上告人がこれに居住してその敷地を占有していることは,いずれも原判決の確定するところであり,上告人は,右甲が被上告人から本件土地を使用貸借により借り受けてその地上に前記建物を建築し,上告人がこれを賃借したと主張し,被上告人はこれを争っているのである。この場合,上告人の前記正権原の主張については,上告人に立証責任の存することは明らかであり、上告人は占有者の権利推定を定めた民法188条の規定を援用して自己の正権原を被上告人に対抗することはできないと解するのが相当である」としている。したがって, Aは,Cに所有権以外の占有権原がないことを主張立証する必要はない。

  • Q  Aは, Bから甲土地を買って所有しているとして,甲土地を占有しているCに対し,所有権に基づき甲土地の返還請求訴訟を提起した。同訴訟において, Cは,「確かに,自分は甲土地を占有している。しかし, AはDに甲土地を売り,自分はDから甲土地を買った。」と主張して争っている。ただし,すベての売買契約について,代金支払と甲土地の引渡しはされているもの(売買契約の事実が証明されたときはこれらの事実も証明されたもの)とする。 A主張の甲土地の所有権取得が認められた場合,Cは,AがDに甲土地を売った事実だけでなく,CがDから甲土地を買った事実も証明できなければ,敗訴する

    A×  176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生ずる」と規定するところ,判例(最判昭 33.6.20)は,「売主の所有に属する特定物を目的とする売質においては,特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり,買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする」としているしたがって,Cは,AがDに甲土地を売った事実を証明すれば足り,CがDから甲土地を買った事実を証明する必要はない。

  • Q  Aは, Bから甲土地を買って所有しているとして,甲土地を占有しているCに対し,所有権に基づき甲土地の返還請求訴訟を提起した。同訴訟において, Cは,「確かに,自分は甲土地を占有している。しかし, AはDに甲土地を売り,自分はDから甲土地を買った。」と主張して争っている。ただし,すベての売買契約について,代金支払と甲土地の引渡しはされているもの(売買契約の事実が証明されたときはこれらの事実も証明されたもの)とする。A主張の甲土地の所有権取得が認められた場合,Cは,AがDに甲土地を売った事実を主張立証するだけでなく,Dが対抗要件である所有権移転登記を備えた事実も主張立証しなければ,敗訴する。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び奕更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.2.13)は,「民法177 条に所謂第三者たるには,係争土地に対しなんらか正当の権利を有することを要し,なんら正当の権利を有せず単に該土地を譲渡した前所有者にすぎない如きものは登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものといえない」としている。したがって, Cは,AがDに甲土地を売った事実を主張立証すれば足り,Dが対抗要件である所有権移転登記を備えた事実を主張立証する必要はない。

  • Q  Aは, Bから甲土地を買って所有しているとして,甲土地を占有しているCに対し,所有権に基づき甲土地の返還請求訴訟を提起した。同訴訟において, Cは,「確かに,自分は甲土地を占有している。しかし, AはDに甲土地を売り,自分はDから甲土地を買った。」と主張して争っている。ただし,すベての売買契約について,代金支払と甲土地の引渡しはされているもの(売買契約の事実が証明されたときはこれらの事実も証明されたもの)とする。AD間の売買,DC間の売買が認められるが,AがAD間の売買が虚偽表示であると主張し,これが認められた場合,Cは, DC間の売貿契約当時,虚偽表示の事実を知らなかったことを主張立証すれば,勝訴できる。

    A〇  94条1項は,「相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする」と規定するが,同条2項は,「前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(最判昭35.2.2)は,「被上告人····が民法 94条2項の保護をうけるためには,同人において,自分が善意であったことを主張,立証しなければならないのである」としているしたがって,Cは,DC間の売買契約当時,虚偽表示の事実を知らなかったことを主張立証すれば,勝訴できる。

  • Q 甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟においてBが主張する抗弁の要件事実について。Bは,甲土地を無償で借りる旨をAと合意した事実を主張立証すれば,請求棄却の判決を得ることができる。

    A×  593条は,「使用貸借は,当事者の一方がある物を引き渡すことを約し,相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって,その効力を生ずる」と規定するところ,使用貸借契約を占有権原として主張するには,当該占有と占有権原とが関連性を有することを示すため,「基づく引渡し」が必要であると解されている。したがって, Bは,甲土地を無償で借りる旨をAと合意し,それに基づきAから甲土地の引渡しを受けた事実を主張立証しなければ,請求棄却の判決を得ることはできない。

  • Q  甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟においてBが主張する抗弁の要件事実について。Bは,甲土地を賃借する旨をAと合意し,それに基づきAから甲土地の引渡しを受けた事実を主張立証すれば,請求棄却の判決を得ることができる。

    A〇  601条は,「賃貸借は,当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し,相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって,その効力を生ずる」と規定するところ,肢アの解説と同様,賃貸借契約を占有権原として主張するには,当該占有と占有権原とが関連性を有することを示すため,「基づく引渡し」が必要であると解されている。したがって, Bは,甲土地を賃借する旨をAと合意し,それに基づきAから甲土地の引渡しを受けた事実を主張立証すれば,請求棄却の判決を得ることができる。

  • Q 甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟においてBが主張する抗弁の要件事実について。Bは,甲土地に地上権の設定を受ける旨をAと合意し,それに基づき地上権設定登記をした事実を主張立証すれば,請求棄却の判決を得ることができる。

    A×  265条は,「地上権者は,他人の土地において工作物又は竹木を所有するため,その土地を使用する権利を有する」と規定するところ,地上権を占有権原として主張するには,当該占有と占有権原とが関連性を有することを示すため、「基づく引渡し」が必要であると解されている。したがって、Bは、甲土地に地上権の設定を受ける旨をAと合意し,それに基づきAから甲土地の引渡しを受けた事実を主張立証しなければ,請求棄却の判決を得ることができない。なお,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ザして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す」としているところ,ABは「当事者」にあたる。したがって, Bは,地上権設定登記をした事実を主張立証する必要はない。

  • Q 甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟においてBが主張する抗弁の要件事実について。Bは,甲土地について地上権設定登記を受けた事実を主張立証した場合においても,それにより適法に地上権の設定があったことは推定されず,請求棄却の判決を得ることができない。

    A〇  判例(最判昭38.10.15)は,「一般の場合には,登記簿上の不動産所有名義人は反証のない限りその不動産を所有するものと推定すべきである····.·けれども,登記海上の不動産の直接の前所有名義人が現所有名義人に対し当該所有権の移転を争う場合においては右の推定をなすべき限りでなく,現所有名義人が前所有名義人から所有権を取得したことを立証すべき責任を有するものと解するのが相当である」としているしたがって,Bは,甲土地について地上権設定登記を受けた事実を主張立証した場合においても,それにより適法に地上権の設定があったことは推定されず,請求棄却の判決を得ることができない。

  • Q 甲土地を所有するAが甲土地を占有するBに対し所有権に基づき甲土地の明渡しを請求する訴訟においてBが主張する抗弁の要件事実について。甲土地の造成工事をしたBは,この工事に基づく請負代金債権の弁済がない事実を主張立証すれば,請求棄却の判決を得ることができる。

    A×  633 条本文は,「報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,支払わなければならない」と規定するところ,判例(大判明 44.12.11)は,要旨,双務契約当事者の一方が訴を以て単純に相手方の債務の履行を請求したる場合に於て,相手方が同時履行の抗弁を提出したるときは,裁判所は其請求を全部排斥することなく,双方債務の履行を引換にて相手方に其履行を命ずべきものとす,としている。したがって,甲土地の造成工事をしたBが,この工事に基づく請負代金債権の弁済がない事実を主張立証した場合,引換給付の判決を得ることができるにとどまる。

  • Q  Aが所有して占有していた動産甲が,AからBへ売られてBに引き渡され,その後にBからCへ売られてCに引き渡された場合において,AがCに対して所有権に基づき動産甲の返還を請求する訴訟を提起し,請求原因としてAが動産甲を所有していたこと及びCが動産甲を占有していることを主張し,これらについてCの自白が成立した。判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。Cは,Aが所有権を失ったことを主張する抗弁として,動産甲がBからCへ売られたことを主張·立証しなければならず,Cがこれを主張·立証した場合において,Aが,再抗弁として,動産甲がAからBヘ売られたこと及びAB間の売買契約に無効原因があることを主張·立証したときは,Aの請求が認容される。

    A×  176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって, その効力を生ずる」と規定するところ,判例(最判昭33.6.20)は,「売主の所有に届する特定物を目的とする売買においては,特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものマないかぎり,買主に対し直ちに所在権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする」としている。したがって,Cは,動産甲がAからBへ売られたことを主張·立証しなければならない。

  • Q  Aが所有して占有していた動産甲が,AからBへ売られてBに引き渡され,その後にBからCへ売られてCに引き渡された場合において,AがCに対して所有権に基づき動産甲の返還を請求する訴訟を提起し,請求原因としてAが動産甲を所有していたこと及びCが動産甲を占有していることを主張し,これらについてCの自白が成立した。判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。Cは, Aが所有権を失ったことを主張する抗弁として,動産甲がAからBへ売られたこと及び動産甲がBからCへ売られたことを主張·立証しなければならず,Cがこれらを主張·立証した場合において,Aが,再抗弁として,BC間の売買契約に無効原因があることを主張·立証したときは,Aの請求が認容される。

    A×  Cは,動産甲がAからBに売られたことを主張·立証しなければならないが、動産甲がBからCへ売られたことを主張·立証する必要はない

  • Q  Aが所有して占有していた動産甲が,AからBへ売られてBに引き渡され,その後にBからCへ売られてCに引き渡された場合において,AがCに対して所有権に基づき動産甲の返還を請求する訴訟を提起し,請求原因としてAが動産甲を所有していたこと及びCが動産甲を占有していることを主張し,これらについてCの自白が成立した。判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。Cは,Aが所有権を失ったことを主張する抗弁として,動産甲がAからBへ売られたことを主張·立証しなければならず,Cがこれを主張·立証した場合において, Aが再抗弁として適切な主張·立証をしないときは, Aの請求が棄却される。

    A〇  Cは,動産甲がAからBに売られたことを主張·立証しなければならず,Cがこれを主張·立証した場合において、Aが再抗弁として滴切な主張·立証をしないときは,Aの請求が棄却される。

  • Q  Aが所有して占有していた動産甲が,AからBへ売られてBに引き渡され,その後にBからCへ売られてCに引き渡された場合において,AがCに対して所有権に基づき動産甲の返還を請求する訴訟を提起し,請求原因としてAが動産甲を所有していたこと及びCが動産甲を占有していることを主張し,これらについてCの自白が成立した。判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。Cは,Aが所有権を失ったことを主張する抗弁として,動産甲がAからBヘ売られたこと及びAB間の売買に基づく引渡しがされたことを主張·立証しなければならず,Cがこれらを主張·立証した場合において,Aが,再抗弁として, AB間の売買契約に取消原因があること及びBC間の売買契約が締結された後にBに対してAB間の売買契約を取り消す旨の意思表示をしたことを主張·立証したときは, Aの請求が認容される。

    A×  Cは,動産甲がAからBに売られたことを主張·立証しなければならないが,AB間の売買に基づく引渡しがされたことを主張·立証する必要はない。

  • Q  Aが,A所有の甲動産を占有するBに対し,所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ, Bは, Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。占有者が占有物について行使する権利は,適法に有するものと推定されるから, Bは,質権の即時取得の成立を基礎付ける事実を主張·立証する必要はない。

    A×  192 条は,「取引行益によって,平穩に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定するもっとも,186条1項は,「占有者は,所有の意思をもって,善意で,平租に,かつ,公然と占有をするものと推定する」と規定する。また,188条は,「占有者が占有物について行使する権利は,適法に有するものと推定する」と規定するところ,判例(最判昭41.6.9)は,「右法条にいう『過失なきとき』とは,物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため,その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し,かっこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであるが,およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを滴法に有するものと推定される以上(民法188条),譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され,占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである」としている。したがって,Bは,「平穩」,「公然」,「善意」及び「過失がない」ことは主張·立証する必要はないが,「取引行為によって,·····占有を始めた」ことは主張·立証する必要があるから,質権の即時取得の成立を基礎付ける事実を主張·立証する必要がないわけではない。

  • Q  Aが,A所有の甲動産を占有するBに対し,所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ, Bは, Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。Bは,Cとの間で質権設定の合意をし,その合意に基づいてCから甲動産の引渡しを受けたことを主張·立証する必要がある。

    A〇  Bは,「取引行為によって,······占有を始めた」ことを主張·立証する必要がある。また,344 条は,「質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって,その効力を生ずる」と規定する。したがって, Bは,Cとの間で質権設定の合意をし,その合意に基づいてCから甲動産の引渡しを受けたことを主張·立証する必要がある。

  • Q  Aが,A所有の甲動産を占有するBに対し,所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ, Bは, Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。Bは,質権の被担保債権の発生原因事実を主張·立証する必要はな<, Aが,質権の被担保債権の消滅原因事実を主張·立証する必要がある。

    A×  Bは,Cとの間で質権設定の合意をし,その合意に基づいてCから甲動産の引渡しを受けたことを主張·立証する必要がある。ここで, 342 条は,「質権者は,その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と規定しており,この質権設定の合意の主張·立証にあたっては,Bが質権の被担保債権の発生原因事実を主張·立証する必要がある(担保物権の付従性)。

  • Q  Aが,A所有の甲動産を占有するBに対し,所有権に基づく甲動産の引渡請求訴訟を提起したところ, Bは, Aの夫Cから質権の設定を受けその質権を即時取得した旨の反論をした。Bは, Cに甲動産の所有権がないことについてBが善意であることを主張·立証する必要はないが,Bに過失がないことを主張·立証する必要がある。

    A×  Bは,Cに甲動産の所有権がないことについてBが善意であること及びBに過失がないことを主張·立証する必要はない。

  • Q  Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例において、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものは,どれか。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。AB間の契約締結前に,Aが甲建物をCに賃貸し,引渡しを終えていた場合,AB間において,BはCに対する賃料をいつから取得することができるか。

    A結論が決まるものではない  575条1項は,「まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは,その果実は,売主に帰属する」と規定するところ,判例(大連判大13.9.24)は,「民法第 575 条第1項には未だ引渡さざる売買の目的物が果実を生じたるときは其の果実は売主に属すとありて,引渡を為さざる事由に付何等の区別を設けざるのみならず,元来同条は売買の目的物に付其の引渡前に果実を生じ若は売主が目的物を使用したる場合に買主より売主に対して其の果実若は使用の対価を請求することを得せしるときは,売主より買主に対して目的物の管理及保存に要したる費用の償還並代金の利息を請求し得ることとなり相互間に錯雑なる関係を生ずるにより,之を避けんとするの趣旨に外ならざるを以て,此の趣旨より推考するも,同条は売買の目的物の引渡に付期限の定ありて売主が其の引渡を遅滞したるときと雖,其の引渡を為す迄は之を使用し,且果実を収得することを得べき」とし,また,判例(大判昭 7.3.3)は,「民法第575条第1項は,本来売買の目的物の引渡前に於て売主と買主との間に生ずる諸種の錯雑なる関係を相消せしむる為設けられたる規定に相違なきも,而も尚衡平の観念を度外視したるものには非らざるが故に,売主をして代金の利用と果実の取得との二重の利益を獲得せしむるが如きは其の法意に適合せざるものと云うべく,従て既に代金の支払を受けながら尚且引渡すべき目的物を引渡さずしこ占有する売主は,其の目的物より生ずる果実を取得し得ざるものと為す打としている。したがって,Aが甲建物をBに引き渡したか否か,又はBが残代金を支払ったか否かによって結論が決まる。

  • Q  Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例において、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものは,どれか。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前にDが不注意で甲建物の一部を壊した場合,BはDに対して修理費相当額の損害賠償を請求することができるか。

    A結論が決まる  709 条は,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任負う」と規定するところ,Bに所有権が移転している場合,Dの「過失」によって,Bの所有権という「権利」が「侵害」されており,「これによって」,修理費相当額の「損害」が「生じた」といえる。したがって, Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる。なお,176条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生ずる」と規定しており,Bに所有権が移転するために,甲建物について引渡しを受けることは不要である。また,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す...··。同一の不動産に関し正当の権原に因らザして権利を主張し,或は不法行為に因りて損害を加えたる者の類は皆第三者と称することを得ず」としており,移転登記を受けることも不要である。

  • Q  Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例において、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものは,どれか。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。AB間の契約締結後,Eが甲建物をAから買う契約を結んだ場合,Eのいずれが最終的に甲建物の所有者となるか。

    A結論が決まるものではない  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す·····。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,BとEのいずれが先に登記をしたかによって結論が決まる。

  • Q  Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例において、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものは,どれか。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前に地震で甲建物が全壊した場合,Bは残代金をAに支払う必要があるか。

    A結論が決まるものではない  536条1項は,「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは,債権者は,反対給付の履行を拒むことができる」と規定するところ,地震という不可抗力は,「当事者双方の責めに帰することができない事由」にあたる。そのため,Bは残代金をAに支払う必要はないのが原則であるもっとも,567条1項は,「売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。·····) を引き渡した場合において, その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し,又は損傷したときは,買主は,その滅失又は損傷を理由として,履行の追完の請求,代金の減額の請求,損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において,買主は,代金の支払を拒むことができない」と規定し,同条2項は,「売主が契約の内容に適合する目的物をもって, その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず,買主がその履行を受けることを拒み,又は受けることができない場合において,その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が减失し,又は損傷したときも,前項と园様とする」と規定する。したがって,AがBに甲建物を引き渡したか否か,又はAが契約の内容に適合する甲建物をもって,その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず, Bがその履行を受けることを拒み,若しくは受けることができないか否かによって結論が決まる。

  • Q  Aは,その所有する甲建物をBに売る契約を結び,代金の一部を受領した。この事例において、Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まるものは,どれか。なお,所有権の移転時期を1点に決めることはできず,所有権の移転時期を論ずることに意味はないとする見解は採らないことを前提とする。AB間の契約締結後,Bが甲建物について引渡しや移転登記を受ける前に,ABのいずれにも無断で甲建物に住み込んだFがいる場合,A自身がFに明渡しを求めていても,BはFに対して甲建物を自己に明け渡すように請求することができるか。

    A結論が決まる  BのFに対する甲建物の明渡し請求の法的根拠は,所有権に基づく返還請求権に求められ,その発生要件は,①Bが甲建物を所有していることと,②Fが甲建物を占有していることである。したがって,Bに所有権が移転しているか否かによって結論が決まる。なお,肢イの解説のとおり,176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生ずる」と規定しており,Bに所有権が移転するために,甲建物について引渡しを受けることは不要である。また,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭25.12.19【百選I62】)は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としており,移転登記を受けることも不要である。

  • Q  AからB, BからCへ土地が順次売却された後,AB間の売買契約が合意解除された場合,Cは,所有権移転登記を経由していなくても,その所有権の取得をAに対し主張することができる。

    A×  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭 33.6.14)は,「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に迎って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって、もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである」としている。したがって,AからB, BからCへ土地が順次売却された後,AB間の売買契約が合意解除された場合,Cは,所有権移転登記を経由していないと,その所有権の取得をAに対し主張することができない。

  • Q  Aは,B詐欺により,その所有する土地をBに売り渡し,所有権)移転登記をした場合,Aが売買契約を取り消す意思表示をした後,BがこれをCに転売し登記を経由したとしても, Cは,Aに対し,所有権の取得を対抗することができない。

    A×  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大判昭17.9.30【百選I55】)は,「民法第 96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者に対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の潮及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の湖及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すベく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害閔係発生当時詐欺及取消の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる······と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為すを得ず。今之を本件に付て観るに,本件売買が····詐欺に因り取消し得べきものなりとせぼ,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復量し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ざる」 としている。したがって, Aは,Bの詐欺により,その所有する土地をBに売り渡し,所有権移転登記をした場合において,Aが売貿契約を取り消寸意思表示をした後,BがこれをCに転売し登記を経由した場合,Cは, Aに対し,所有権の取得を対抗することができる。

  • Q  AがBの所有する未登記建物を買い受け,その後その建物についてB名義の所有権保存登記がなされた後,BがCにこれを売却しその旨の登記をした場合,Aは,Cに対しその所有権を取得したことを対抗することができない。

    A〇  上記のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法···その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称寸······。即ち,回一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,AがBの所有する未登記建物を買い受け,その後その建物についてB名義の所有権保存登記がなされた後,BがCにこれを売却しその旨の登記をした場合,Aは,Cに対しその所有権を取得したことを対抗することができない。

  • Q  Aがその所有する建物をBに賃貸し,Bに引き渡した後,AがCに建物を売り渡した場合,Cがその所有権移転登記を経由しなくとも,Bは,Cからの賃料の支払請求を拒むことができない。

    A×  605条の2第1項は,「前条,借地借家法:···第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法31条は,「建物の賃貸借は,その登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その後その建物について物権を取得した者に対し,その効力を生ずる」と規定する。しかし,605条の2第3項は,「第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって, Aがその所有する建物をBに賃貸し,Bに引き渡した後,AがCに建物を売り渡した場合,Cがその所有権移転登記を経由しないときは,Bは,Cからの賃料の支払請求を拒むことができる。

  • Q  A, B及びCが土地を共有している場合,Aからその持分を譲り受けたDは,その持分の取得につき登記を経由しないでB及びCに対抗することができる。

    A×  判例(最判昭 46.6.18)は,「不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法177条にいう第三者」に該当するから,右譲渡につき登記が存しないときには,譲受人は,右持分の取得をもって他の共有者に対抗することができない」としているしたがって,A,B及びCが土地を共有している場合,Aからその持分を譲り受けたDは,その持分の取得につき登記を経由しないと,B及びCに対抗することができない。

  • Q AとBを共同相続人とする相続において,Aは相続財産に属する甲不動産を遺産分割協議により取得したが,当該遺産分割後その旨の登記をする前に,Bの債権者Cの代位によって法定相続分に従った相続の登記がされ,CがBの法定相続分に係る持分に対し仮差押えをし,その旨の登記がされた。この場合,Aは,Cに対し法定相続分を超之る権利の取得を対抗することができない。

    A〇  909 条本文は,「遺産の分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる」と規定するが,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定に上り算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって, Aは相続財産に属する甲不動産を遺産分割協議により取得したが,当該遺産分割後その旨の登記をする前に,Bの債権者Cの代位によって法定相続分に従った相続の登記がされ,CがBの法定相続分に係る持分に対し仮差押えをし,その旨の登記がされた場合,Aは, Cに対し法定相続分を超える権利の取得を対抗することができない。

  • Q  AがBの詐欺によりBに対し甲不動産を売り渡し,甲不動産の所有権移転登記がされた。その後,AはBの詐欺を理由に当該売買契約を取り消したが,Bはその取消し後に甲不動産をCに売り渡し,その所有権移転登記がされた。この場合,Aは,登記をしなくてもCに対し,所有権の復帰を対抗することができる。

    A×  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30【百選I55】)は,「民法第 96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者に対抗することを得さる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の潮及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の潮及効に因り影響を受くき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すべく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取消の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる······と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為すを得ず。今之を本件に付て観るに,本件売買が······詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」としている。したがって, AがBの詐欺によりBに対し甲不動産を売り渡し,甲不動産の所有権移転登記がされた後,AはBの詐欺を理由に当該売買契約を取り消したが,Bはその取消し後に甲不動産をCに売り渡し,その所有権移転登記がされた場合,Aは,登記をしなければ,Cに対し,所有権の復帰を対抗することができない。

  • Q AがBに甲不動産を売り渡した後,Bの債務不履行を理由に当該売買契約を解除して甲不動産の所有権がAに復帰した場合,Aは,その旨の登記をしなければ,当該解除後にBから甲不動産を取得したCに対し,所有権の復帰を対抗することができない。

    A〇  判例(最判昭 35.11.29【百選I56】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ不動産の所有権が買主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と····に拘らない」としている。したがって, AがBに甲不動産を売り渡した後,Bの債務不履行を理由に当該売買契約を解除して甲不動産の所有権がAに復帰した場合,Aは,その旨の登記をしなければ,当該解除後にBから甲不動産を取得したCに対し,所有権の復帰を対抗することができない。

  • Q Aは時効により甲不動産の所有権を取得したが,時効完成前に,旧所有者BがCに対し甲不動産を売り渡し,その所有権移転登記がされた。この場合,Cに対し所有権の取得を対抗することができる。

    A〇  判例(最判昭41.11.22)は,「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては,単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって,この関係においては,結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである。そして,時効が完成しても,その登記がなければ,その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し,第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては,その第三者に対しては,登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができるものと解すべき」としている。したがって, Aは時効により甲不動産の所有権を取得したが,時効完成前に,旧所有者BがCに対し甲不動産を売り渡し,その所有権移転登記がされた場合,Aは,Cに対し所有権の取得を対抗することができる。

  • Q Aは被相続人Bの相続について相続放棄をしたが,相続財産である未登記の甲不動産について, Aの債権者Cが代位によって法定相続分に従って所有権保存登記をした上,Aの持分に対する仮差押えをし,その旨の登記がされた。この場合,Aによる相続放棄は,Cに対して効力を生じない。

    A×  939条は,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選Ш73】)は,「民法が承認,放棄をなすべき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法938条),担続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としているAは被相続人Bの相続について相続放棄をしたが,相統財産である未登記の甲不動産について,Aの債権者Cが代位によって法定相続分に従って所有権保存登記をした上,Aの持分に対する仮差押えをし,その旨の登記がされた場合でも,Aによる相続放棄は,Cに対して効力を生じる。

  • Q Aは,Bから袋地(他人の土地に囲まれて公道に通じない土地)を購入したが,当該袋地についての所有権移転登記を経ないうちは,囲統地(袋地を囲んでいる土地)を所有しているCに対し,公道に至るため,その囲続地の通行権を主張することができない。

    A×  213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては,償金を支払うことを要しない」と規定し,同条2項は,「前項の規定は,土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する」と規定する。そして,判例(最判昭47.4.14)は,「袋地の所有権を取得した者は,所有権取得登記を経由していなくても,困続地の所有者ないしこれにつき利用権を有する者に対して,囲統地通行権を主張することができると解するのが相当である。なんとなれば,民法 209条ないし 238条は,いずれも,相隣接する不動産相互間の利用の調整を目的とする規定であって,同法210条において袋地の所有者が囲続地を通行することができるとされているのも,相隣関係にある所有権共存の一態様として,囲続地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務を課し,袋地の効用を完からしめようとしているためである。このような趣旨に照らすと,袋地の所有者が囲続地の所有者らに対して囲続地通行権を主張する場合は,不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がないと解するのが相当であり,したがって,実体上袋地の所有権を取得した者は,対抗要件を具備することなく、用緯地所有者らに対し囲統地通行権を主張しうるものというべきである」としている。したがって, Bから袋地を購入したAは,当該袋地についての所有権移転登記を経なくても,囲統地を所有しているCに対し,公道に至るため,その囲続地の通行権を主張することができる。

  • Q Aは,占有権原なく土地上に建物を建築して自己名義で所有権保存登記をした後,これをBに売り渡したが,所有権移転登記がされる前に,土地所有者であるCから建物収去土地明渡の請求を受けた。その場合において,Aは,Bに所有権移転登記をしていない以上は,その請求を拒むことができない。

    A〇  判例(最判平6.2.8【百選I51】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによって、その土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすベきである。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,右譲渡人は,土地所有者による建物収去·土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというベきであり······,また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物収去·土地明渡しの義務を負わないものというべきである」とした上で,「もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって,Aが,占有権原なく土地上に建物を建築して自己名義で所有権保存登記をした後,これをBに売り渡したが,所有権移転登記がされる前に,土地所有者であるCから建物収去土地明渡の請求を受けた場合、Aは, Bに所有権移転登記をしていない以上は,その請求を拒むことができない。

  • Q  Aが平穩かつ公然と所有の意思をもってB所有の不動産の占有を開始してから5年が経過した時点で,Bがその不動産をCに譲渡してその旨の所有権移転登記がされた場合,Aは,その後もその不動産について占有を続けて当初の占有の開始時から22年が経過したときでも,所有権移転登記を有しているCに対して,当該不動産について時効取得をしたことを主張することができない。

    A×  判例(最判昭41.11.22)は,「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては,単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって,この関係においては,結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである。そして,時効が完成しても,その登記がなければ,その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し,第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては,その第三者に対しては,登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができるものと解すべき」としいる。したがって,Aが平穏かつ公然と所有の意思をもってB所有の不動産の占有を開始してから5年が経過した時点で,Bがその不動産をCに譲渡してその旨の所有権移転登記がされた後,Aがその後もその不動産について占有を続けて当初の占有の開始時から22年が経過したときは,所有権移転登記を有しているCに対して,当該不動産について時効取得をしたことを主張することができる。

  • Q AがBに不動産を譲渡したが,所有権移転登記をしないままに死亡して唯一の相続人であるCが相続した場合において, Bは,Cに対し,所有権移転登記をしていない以上は,所有権を主張することができない。

    A×  判例(大判大15.4.30)は,「相続人は,被相続人の法律上の地位の承継者として其の権利義務を包括的に承継する者なれば,被相続人が不動産を他人に譲渡し未だ其の登記義務を履行せざる間に相統開始したる場合に於ては,相続人は被相続人の右登記義務をも承継し,譲受人に対し所有権移転の登記手続を為すべき義務を負担する」としいるしたがって, AがBに不動産を譲渡したが,所有権移転登記をしないままに死亡して唯一の相続人であるCが相続した場合において,Bは,Cに対し,所有権移転登記をしていなくても,所有権を主張することができる

  • Q A所有の土地について,その妻B及び子Cが相続を原因として所有権移転登記をしていたが,遣産分割によりBが単独で所有するとの遺産分割協議が成立した後,子Cが不動産登記簿上,自己名義の所有権移転登記があることを奇貨として,遺産分割前の法定相続分をDに売却した場合において,遺産分割が相続時に週って効力を生じるから,Bは,遺産分割によって取得した持分について登記なくしてDに主張することができる。

    A×  909 条本文は,「遺産の分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる」と規定するが,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備之なければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって, A所有の土地について,その妻B及び子Cが相続を原因として所有権移転登記をしていたが,遺産分割によりBが単独で所有するとの遺産分割協議が成立した後,子Cが不動産登記簿上,自己名義の所有権移転登記があることを奇貨として,遺産分割前の法定相続分をDに売却した場合において,Bは,登記がなければ,遺産分割によって取得した持分について, Dに主張することができない。

  • Q Aがその不動産についてBのために抵当権を設定し,その後AがCに同一不動産を譲渡した場合,Bは,その抵当権設定の登記がなければその抵当権の取得をCに対抗することができない。

    A〇  判例(大連判明 41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称寸·····。即ち,同一の不動産に関する所有権柢当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,Aがその不動産についてBのために抵当権を設定し,その後AがCに同一不動産を譲渡した場合,Cは「第三者」にあたるから,Bは,その抵当権設定の登記がなければその抵当権の取得をCに対抗することができない。

  • Q  Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産について地上権を設定した上でそれに基づいて引渡しをした場合において,Bヘの所有権移転の登記もCの地上権設定の登記もないときは,Bは,Cに対して所有権に基づいて当該不動産の引渡しを請求することができない。

    A〇  判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及ぴ変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す·····。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって, Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産について地上権を設定した上でそれに基づいて引渡しをした場合,Bから見たCも,Cから見たBも,いずれも「第三者」にあたるから,Bへの所有権移転の登記もCの地上権設定の登記もないときは,Bは,Cに対して所有権に基づいて当該不動産の引渡しを請求することができない。

  • Q Aがその土地をBに賃貸し,Bがその土地上に建物を建築して所有権保存登記をした後,AがCに当該土地を譲渡した場合において,当該土地に関する所有権移転登記を受けたCは, Bに対して当該土地の賃料の請求をすることができる

    A〇  605条の2第1項は,「前条,借地借家法····第10条又仕第31条その他の法令の規定に上る賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法 10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定する。また,605条の2第3項は,「第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって, Aがその土地をBに賃貸し,Bがその土地上に建物を建築して所有権保存登記をした後,AがCに当該土地を譲渡した場合において,当該土地に関する所有権移転登記を受けたCは,賃貸人たる地位の移転をBに対抗することができるから,Bに対して当該土地の賃料の請求をすることができる。

  • Q Aは,Bと通じて,Aの不動産について有効な売買契約が存在しないにもかかわらず売買を原因とする所有権移転登記をBに対して行い,その後,この事情について善意無過失であるCに対してBが同一不動産を譲渡したが,BC間の所有権移転登記はされていない。この場合において,さらにその後,AがDに同一不動産を譲渡したときは,Cは,所有権の取得をDに対抗することができる。

    A×  94条1項は,「相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする」と規定し,同条2項は,「前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭 42.10.31)は,要旨,甲が乙に不動産を仮装譲渡し,丙が善意で乙からこれを譲りうけた場合であっても,丙が所有権取得登記をする前に,甲からの譲受人丁が乙を債務者とし該不動産について処分禁止の仮処分登記を経ていたときは,丙はその所有権取得を丁に対抗することができない,としている。したがって,Aが,Bと通じて,Aの不動産について有効な売買契約が存在しないにもかかわらず売買を原因とする所有権移転登記をBに対して行い,その後,この事情について善意無過失であるCに対してBが同一不動産を譲渡したが,BC間の所有権移転登記はされていない場合において,さらにその後,AがDに同一不動産を譲渡したときは, Cは,所有権の取得をDに対抗することができない。

  • Q Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産を譲渡し, さらにCが同一不動産を転得者Dに譲渡し,AC間及びCD間の所有権移転登記が行われた場合において,CがBとの関係で背信的悪意者に当たるが,D自身がBとの関係で背信的悪意者と評価されないときは,Dは,所有権の取得をBに対抗することができる。

    A〇  判例(最判平8.10.29【百選I61】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもっててに対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産を譲渡し,さらにCが同一不動産を転得者Dに譲渡し,AC間及びCD間の所有権移転登記が行われた場合において,CがBとの関係で背信的悪意者にあたるが,D自身がBとの関係で背信的悪意者と評価されないときは,Dは,所有権の取得をBに対抗することができる。

  • Q 未成年者AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bが,Aの未成年の事実を過失なく知らないCに甲士地を売却し, その旨の所有権移転登記がされた場合において, AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは,Cは, Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

    A〇  5条1項は,「未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならない。ただし,単に権利を得,又は義務を免れる法律行為については,この限りでない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に反する法律行為は,取り消すことができる」と規定する。また,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。そして,判例(大判明39.12.13)は,「法律行為の取消は初めより其行為を無効ならしむるの効果を生ずることは民法第121条に規定する所なれば,法律行為取消の効果は法律に特別規定あれば格別,然らざれば何人と雖も之を主張することを得べ<」としているところ,未成年者の法律行為に関して「法律に特別規定」はない。したがって,未成年者AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bが,Aの未成年の事実を過失なく知らないCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合であっても,AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは,Cは, Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに売却し,その代金が未払である間に,AからBへ所有権移転登記がされた後,Bが,Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合において,AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときは,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない

    A×  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭 33.6.14)は,「いわゆる迦及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に週って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって,もし右登記を経由しさいないときは第三者として保護するを得ないものと解すベきである。けだし右第三者を民法177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである」としている。また,条文上善意であることは要求されていないし,解除原因が存在しても必ずしも解除されるとは限らない以上,解除原因について悪意の者も十分保護に値するから,「第三者」の主観的保護要件は問わないと解されている。したがって,AがA所有の甲土地をBに売却し,その代金が未払である間に,AからBへ所有権移転登記がされた後,Bが,Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合,AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときであっても,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q AがA所有の甲土地をBに売却したが,代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ,その後,Bが甲土地の所有権を有することを確認寸る旨の示談が成立した場合において,当該示談に立会人として関与し,示談書に立会人として署名捺印していたCが,AからBに所有権移転登記がされる前に,Aに対する債権に基づいて,A名義の甲土地を差し押さえ,その旨の差押えの登記がされたときは,Bは,Cに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

    A×  判例(最判昭43.11.15)は,要旨,「実体上物権変動があった事実を知る者において,右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,かかる背信的悪意者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,民法 177条にいう第三者に当たらないものと解すべきところ」,甲が乙に贈与した山林に関し,甲乙間に,右山林が乙の所有に属することを確認し,甲はすみやかに乙に対しその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において,丙が立会人として右示談交涉に関与し,かつ,右和解条項を記載した書面に立会人として署名捺印した等判示の事情があるときには,丙は,いわゆる背信的悪意者として,乙の右所有権取得登記の欠缺を主張寸る正当な利益を有する第三者にあたらないものというべきである,としている。したがって, AがA所有の甲土地をBに売却したが,代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ,その後,Bが甲土地の所有権を有することを確認する旨の示談が成立した場合において,当該示談に立会人として関与し,示談書に立会人として署名捺印していたCが,AからBに所有権移転登記がされる前に,Aに対する債権に基づいて,A名義の甲土地を差し押さえ,その旨の差押えの登記がされたときは,Bは,Cに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q AがA所有の甲土地をBに売却した後,CがBを害する目的で甲士地をAから買い受け,その旨の所有権移転登記がされた場合においてCが事情を知らないDに対して甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされたときは,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる

    A×  判例(最判平8.10.29【百選I61】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法 177 条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,AがA所有の甲土地をBに売却した後,CがBを害する目的で甲土地をAから買い受け,その旨の所有権移転登記がされた場合において,Cが事情を知らないDに対して甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされたときは,Cは「第三者」にはあたらないが,Dは「第三者」にあたるから,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q  BがA所有のA名義の甲土地を占有し,取得時効が完成した後,CがAから甲土地について抵当権の設定を受けて抵当権設定登記がされた場合において,Bがその抵当権の設定の事実を知らずにその後引き続き時効取得に必要な期問甲土地を占有し,その期間経過後に取得時効を援用したときは,Bは,Cに対し,抵当権の消滅を主張することができる。

    A〇  判例(最判平24.3.16【百選I58】)は,次のように判示している。「不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者がその後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者は,上記不動産を時効取得し,その結果上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。その理由は,以下のとおりである。」「取得時効の完成後,所有権移転登記がされないうちに,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了したならば,占有者がその後にいかに長期間占有を継続しても抵当権の負担のない所有権を取得することができないと解することは,長期間にわたる継続的な占有を占有の態様に応じて保護すべきものとする時効制度の趣旨に鑑みれば,是認し難いというべきである。」「そして,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者に上記不動産が譲渡され,その旨の登記がされた場合において,占有者が,上記登記後に,なお引き続き時効取得に要する期間占有を継続したときは,占有者は,上記第三者に対し,登記なくして時効取得を対抗し得るものと解されるところ·····,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者が上記不動産につき抵当権の設定を受け,その登記がされた場合には,占有者は,自らが時効取得した不動産につき抵当権による制限を受け,これが実行されると自らの所有権の取得自体を買受人に対抗することができない地位に立たされるのであって,上記登記がされた時から占有者と抵当権者との間に上記のような権利の対立関係が生ずるものと解され,かかる事態は,上記不動産が第三者に譲渡され,その旨の登記がされた場合に比肩するということができる。また,上記判例によれば,取得時効の完成後に所有権を得た第三者は,占有者が引き続き占有を継続した場合に,所有権を失うことがあり,それと比ベて,取得時効の完成後に抵当権の設定を受けた第三者が上記の場合に保護されることとなるのは,不均衡である。」したがって,BがA所有のA名義の甲土地を占有し,取得時効が完成した後,CがAから甲土地について抵当権の設定を受けて抵当権設定登記がされた場合において,Bがその抵当権の設定の事実を知らずにその後引き続き時効取得に必要な期間甲土地を占有し,その期間経過後に取得時効を援用したときは, Bは,Cに対し,抵当権の消滅を主張することができる。

  • Q AがA所有の甲建物をBに売却し,さらにBがこれをCに売却した場合,Cは, Aに対し,登記をしなくても売買による甲建物の所有権の取得を対抗することができる。

    A〇  判例(最判昭39.2.13)は,「民法177 条に所謂第三者たるには,係争土地に対しなんらか正当の権利を有することを要し,なんら正当の権利を有せず単に該土地を譲渡した前所有者にすぎない如きものは登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものといえない」としている。したがって,AがA所有の甲建物をBに売却し,さらにBがこれをCに売却した場合,Aは「第三者」にあたらないから,Cは,Aに対し,登記をしなくても売買による甲建物の所有権の取得を対抗することができる。

  • Q A所有の甲土地についてBがAから遺贈を受けた場合において,Aの共同相続人のー人であるCの債権者Dが甲土地についてCが共同相続したものとしてCのその持分を差し押さえ,その旨の登記がされたときは, Bは, Dに対し,登記をしなくても遣贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。

    A×  判例(最判昭39.3.6【百選Ш74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ····,遺贈は遺言によって受遣者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして,民法177 条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としている。したがって,A所有の甲土地についてBがAから遺贈を受けた場合において, Aの共同相続人のー人であるCの債権者Dが甲土地についてCが共同相続したものとしてCのその持分を差し押さえたときは,Dは「第三者」にあたるから,その旨の登記がされたときは, Bは,Dに対し,遺贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q 甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡し,二人の子BCのうちBが相続放棄をしてCが唯一の相続人となった場合において, Bの債権者Dが甲土地についてBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえ, その旨の登記がされたときは,Cは, Dに対し,登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる.

    A〇  939条は,「相続の放乘をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすべき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しょうとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法 938条),相続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としている。したがって,甲土地を所有するAが遣言をしないで死し,二人の子BCのうちBが相続放棄をしてCが唯一の相続人となった場合において,Bの債権者Dが甲土地についてBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,Cは,Dに対し,登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

  • Q A所有の甲土地をAからBが買い受けた後,Bの代金未払を理由にAB間の売買契約が解除された場合において,その後にBがCに甲士地を売却しその旨の登記がされたときは, Aは,Cに対し,解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。

    A〇  判例(最判昭 35.11.29【百選I56】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ。不動産の所有権が買主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と······に拘らない」としている。したがって, A所有の甲土地をAからBが買い受けた後,Bの代金未払を理由にAB間の売買契約が解除された場合において,その後にBがCに甲土地を売却しその旨の登記がされたときは,Aは,Cに対し,解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。

  • Q Aが新築して所有する未登記の甲建物をBが不法に占有している場合,Aは,Bに対し,登記をしなければ甲建物の所有権の取得を対抗することができない。

    A×  判例(最判昭 25.12.19【百選162])は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としている。したがって,Aが新築して所有する未登記の甲建物をBが不法に占有している場合,Bは「第三者」にあたらないから,Aは,Bに対し,登記をしなくても甲建物の所有権の取得を対抗することができる。

  • Q  A所有の甲土地をAがBに売却し,その後Aが甲土地をCに対し売却してその旨の登記がされ,更にCが甲土地をDに対し売却してその旨の登記がされた場合において,CがBに対する関係で背信的悪意者に当たるときは,Bは,Dに対し,甲土地の所有権を登記がなくても主張することができる。

    A×  判例(最判平8.10.29【百選161】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177 条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,その後Aが甲土地をCに対し売却してその旨の登記がされ,更にCが甲土地をDに対し売却してその旨の登記がされた場合において,CがBに対する関係で背信的悪意者にあたるときでも,DがBに対する関係で背信的悪意者にあたるのでなければ,Bは,Dに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

  • Q A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされたが,AがBの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後,この取消しについて善意無過失のCに対しBが甲土地を売却し,その旨の登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を登記がなくても主張することができる。

    A×  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30【百選I55】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得さる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の週及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の湖及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すベく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取消の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる······と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為寸を得ず。今之を本件に付て観るに,本件売買が·····詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」としている。したがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされたが,AがBの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後,この取消しについて善意無過失のCに対しBが甲土地を売却し,その旨の登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない

  • Q  A所有の甲土地をAがBに売却し,更にBがCに売却し,それぞれその旨の登記がされた場合において,その後,AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは,Aは,Bの代金不払の事実を知らないCに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

    A〇  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭33.6.14)は,「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に邂って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって,もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法 177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである」としている。したがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,更にBがCに売却しそれぞれその旨の登記がされた場合において,その後,AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは, Aは,Bの代金不払の事実を知らないCに対し,甲土地の所有権を主張することができない

  • Q A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされた場合において,その後,これより前から所有の意思をもって甲土地を占有していたCについて取得時効が完成したときは, Cは,Bに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

    A×  判例(最判昭41.11.22)は,「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては,単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって,この関係においては,結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである。そして,時効が完成しても,その登記がなければ,その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し,第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては,その第三者に対しては,登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができるものと解すべき」としているしたがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされた場合において,その後,これより前から所有の意思をもって甲土地を占有していたCについて取得時効が完成したときは,Cは,Bに対し,甲土地の所有権を主張することができる。

  • Q 甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し,BとCがAを共同相続し, Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において,その後,BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは, Bは,Dに対し,抵当権設定登記の抹消を請求することができない。

    A〇  909 条は,「遺産の分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭46.1.26)は,「民法 909 条但書にいう第三者は,担続開始後遺産分制前に生じた第三者を指」すとしている。また,545条1項ただし書の「第三者」と同じく,主観的保護要件は問わないが,対抗要件を備えることが必要と解されている。したがって,甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し,BとCがAを共同相続し,Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において,その後,BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは,Bは,Dに対し,抵当権設定登記の抹消を請求することができない

  • Q  Aは,その所有する甲土地上に,Bのために第一順位の抵当権を,Cのために第二順位の抵当権をそれぞれ設定し,その登記がされた。その後,Cが甲土地をAから相続によって取得した場合であっても,第二順位の抵当権は混同により消滅しない。

    A×  179条1項は,「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は,消滅する。ただし,その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」と規定するところ,判例(大判昭 4.1.30)は,要旨,同一物に付所有権と二番抵当権とが同一人に帰したる場合に三番抵当権の存せざる限り右二番抵当権は消滅するものとす,としている。したがって,Aが,その所有する甲土地上に,Bのために第一順位の抵当権を,Cのために第二順位の抵当権をそれぞれ設定し,その登記がされた後,Cが甲土地をAから相続によって取得した場合,第二順位の抵当権は混同により消滅する。

  • Q  Aがその所有する甲土地をBに売却した後,Bが甲土地をCに転売し,それぞれその旨の登記がされた。その後,Aは詐欺を理由としてBとの売買契約を取り消した。Cは,Aの売買の意思表示が詐欺によることを過失なく知らなかった場合,甲土地の所有権の取得を妨げられない。

    A〇  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭 17.9.30【百選I55】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の遡及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の湖及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すべき,としている。したがって, Aが詐欺を理由としてBとの売買契約を取り消した場合,Cは,「第三者」にあたり,Aの売買の意思表示が詐欺によることを過失なく知らなかった場合,甲土地の所有権の取得を妨げられない。

  • Q  Bが甲建物及びその敷地である乙土地をそれぞれ共有していたところ,乙土地のAの共有持分に抵当権が設定された。その後,その抵当権が実行され,Cがそれを買い受けた場合,甲建物のために乙土地上に地上権が成立する

    A×  388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合におい-その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす」と規定するところ,判例(最判平 6.4.7)は,「土地及びその上にある建物がいずれも甲,乙両名の共有に属する場合において,土地の甲の持分の差押えがあり, その売却によって第三者が右持分を取得寸るに至ったとしても,民事執行法81条[注:民法388条〕の規定に基づく地上権が成立することはないと解するのが相当である。けだし,この場合に,甲のために同条の規定に基づく地上権が成立するとすれば,乙は,その意思に基づかず,甲のみの事情によって土地に対する持分に基づく使用収益権を害されることになるし,他方,右の地上権が成立することを認めなくても,直ちに建物の収去を余儀なくされるという関係にはないので,建物所有者が建物の収去を余儀なくされることによる社会経済上の損失を防止しようとする同条の趣旨に反することもないからである」としている。したがって,乙土地のAの共有持分に抵当権が設定された後,その抵当権が実行され,Cがそれを買い受けた場合でも,甲建物のために乙土地上に地上権は成立しない。

  • Q Aがその所有する甲土地をBに売却した後,Bが甲土地をCに転売L,それぞれその旨の登記がされた。その後,AとBとの間の売買契約は,Aが成年被後見人であることを理由として取り消された。Cが,Aが成年被後見人であったことを過失なく知らなかった場合,AはCに対し,甲土地の所有権が自己にあることを主張することができない。

    A×  9条は,「成年被後見人の法律行為は,取り消すことができる。ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為については,この限りでない」と規定し,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。そして,判例(大判明39.12.13)は,「法律行為の取逍は初めより其行為を無効ならしセるの効果を生ずることは民法第 121条に規定する所なれば,法律行為取消の効果は法律に特別規定あれば格別,然らざれば何人と雖も之を主張することを得べく」としているところ,成年被後見人の法律行為に関して「法律に特別規定」はない。したがって, AとBとの間の売買契約が,Aが成年被後見人であることを理由として取り消された場合,Cが,Aが成年被後見人であったことを過失なく知らなかった場合でも, Aは,Cに対し,甲土地の所有権が自己にあることを主張することができる。

  • Q 地役権の要役地の所有権を単独で相続した者は,地役権設定行為に別段の定めがないときは,その土地の地役権も相続する。

    A〇  281条1項は,「地役権は,要役地(地役権者の土地であって,他人の士地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして, その所有権とともに移転し,又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし,設定行為に別段の定めがあるときは,この限りでない」と規定する。したがって,地役権の要役地の所有権を単独で相続した者は,地役権設定行為に別段の定めがないときは,その土地の地役権も相続する。

  • Q  Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。土地を所有し占有するYが税金対策のために登記名義をAとしていたところ,Xは,Aが真実の所有者であると過失なく信じ,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた。

    A拒絶することはできない   94条1項は,「相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする」と規定し,同条2項は,「前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭 45.7.24)は「不動産の所有者が,他人にその所有権を帰せしめる意思がないのに, その承諾を得て,自己の意思に基づき,当該不動産につき右他人の所有名義の登記を経由したときは,所有者は,民法94条2項の類推適用により,登記名義人に右不動産の所有権が移転していないことをもって,善意の第三者に対抗することができない·····が,右登記について登記名義人の承諾のない場合においても,不実の登記の存在が真実の所有者の意思に基づくものである以上,右94条2項の法意に照らし,同条項を類推滴用すべきものと解するのが相当である。けだし,登記名義人の承諾の有無により,真実の所有者の意思に基づいて表示された所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護の程度に差等を設けるベき理由はないからである」としている。したがって,土地を所有し占有するYが税金対策のために登記名義をAとしていたところ,Xは,Aが真実の所有者であると過失なく信じ,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた場合,Xは94条2項の類推適用により保護されるから,Yは引渡しを拒絶することができない。

  • Q Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。土地を所有し占有するYからAへ、AからXへと同土地が順次売買され,それぞれ代金の支払も了した。

    A拒絶することはできない  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.2.13)は,「民法 177 条に所謂第三者たるには,係争土地に対しなんらか正当の権利を有することを要し,なんら正当の権利を有せず単に該土地を譲渡した前所有者にすぎない如きものは登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものといえない」としている。したがって,土地を所有し占有するYからAへ,AからXへと同土地が順次売買された場合,Yは「第三者」にあたらないから,Xが所有権の取得をYに対抗するのに登記は不要である。また,295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定し,判例(最判昭47.11.16【百選179】)は,要旨,甲所有の物を買受けた乙が,売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には,甲は,丙からの物の引渡請求に対して,未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる,としているが,それぞれの代金の支払を了した場合,留置権の抗弁権を主張することもできない。したがって,Yは引渡しを拒絶することができない

  • Q Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。土地を所有し占有するYは, Aに対し,同土地を売却して移転登記を行ったが,この売買にはAによる詐欺があったので, YはAに対して取消しの意思表示をした。その直後,Aは,同土地をXに売却して移転登記を行った。

    A拒絶することはできない  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。一方,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30 【百選I55】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の週及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の溯及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前上り既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すべく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取消の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる····と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為すを得ず。今之を本件に付て観るに,本件売買が···詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」としている。したがって,Yが,売買について許欺取消しの意思表示をした直後,Aが,同土地をXに売却して移転登記を行った場合,Yは,所有権の復帰をXに対抗することができないから, Yは引渡しを拒絶することができない。

  • Q  Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。XがYの代理人としてAから土地を買い受け,Yが同土地を所有し占有するようになったが,登記名義はAのままであった。その直後,Xは,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた。

    A拒絶することができる  不動産登記法5条2項本文は,「他人のために登記を申請する義務を負う第三者は,その登記がないことを主張することができない」と規定すると二ろ,裁判例(東京高判昭 53.6.28)は,「亡甲は,本件土地の前所有者乙の代理人として,本件土地を被控訴人に売却し,同人よりその所有権移転登記手続を委任されながらこれを怠り,一方で右売買契約成立後に本件土地を自らあるいは実子である控訴人の代理人として乙から買受けているものであるから,丕動産登記法5条の法意に鑑み,控訴人は,被控訴人に社し本件土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないものというべきである」としている。したがって,XがYの代理人としてAから土地を買い受け,Yが同土地を所有し占有するようになった直後,Xが,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた場合,Xは,Yに対し土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないから,Yは引渡しを拒絶することができる。

  • Q  Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。Aの父はYに土地を売却し引き渡したが,移転登記をする前に急死してしまった。その後,この土地を単独で相続したAが,Xに対して同土地を売却して移転登記を行った。

    A拒絶することはできない  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·…その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判大15.2.1)は,「民法第177条に所謂第三者とは,当事者若は其の包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有するものなることは当院の夙に判例とする所なり。仍て,被相続人が不動産を甲に譲渡し未だ譲渡の登記を為さざる間に相続開始し,其の相続人が同一不動産を更に乙に譲渡し其の登記を為したる場合に於ては,乙は同条に所謂第三者に該当するや否を案ずるに,不動産を甲に譲渡したる被相続人は甲との関係に於ては該不動産の所有者と謂うことを得ずと雖,譲渡の登記なきを以て甲は其の所有権取得を之と反対若は相容れざる権利を取得し其の登記を為したる第三者に対抗することを得ざるが故に,若此の被相続人が相続開始前同一不動産を更に乙に譲渡し登記を為したりとせば,乙は完全なる所有権を取得すベく,従て,乙は甲の登記欠缺を主張する正当の利益を有する第三者なること疑なき所なれば,右の被相続人は譲渡の登記あらざる結果甲に対する譲渡に因りて全く不動産の所有権を失いたる者に非ずして,乙に対する関係に於ては依然所有者にして,所謂関係的所有権を有するものなりと謂うを得ベし。然るに,右被相続人が該不動産を乙に譲渡する以前に於て相続開始したるときは其の相続人は此の関係的所有権を承継するものと謂うベく,従て乙が此の相続人より同一不動産の譲渡を受け其の登記を経由したるときは,甲は披相続人上り取得したる該不動産の所有権を以て之に対抗することを得士して,乙は完全なる所有権を取得するものと謂わざるを得ず。故に,乙は同一所有者が同一不動産を二重に売買したる場合に於て,先ず所有権取得の登記を為したる買主と同一の地位に在るものにして,甲の登記欠缺を主張すべき正当の利益を有する第三者に該当すベく, 乙が甲に売渡したる所有者より買受けたると,其の相続人より買受けたるとに由りて差異を生ずべきものに非ず」としている。したがって, Yに土地を売却し引き渡したAの父が,移転登記をする前に急死した後,この土地を単独で相続したAが,Xに対して同土地を売却して移転登記を行った場合,YはAの父より取得した土地の所有権をXに対抗することができず,Xは完全なる所有権を取得するから,Yは引渡しを拒絶することができない。

  • Q  Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBに対し, Aから甲土地を譲り受けたCは,AからCヘの所有権移転登記をしなければ,甲土地の所有権を主張して乙建物の収去を請求することができない。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭25.12.19【百選I62】) は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としている。したがって,Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBに対し,Aから甲土地を譲り受けたCは, AからCヘの所有権移転登記をしなくても,甲土地の所有権を主張して乙建物の収去を請求することができる。

  • Q  Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBから乙建物を譲り受けたDに対し, Aは,DがBからの乙建物の所有権移転登記を経由していない場合,Dが乙建物の所有者であることを主張して乙建物の収去を請求することができない。

    A×  判例(最判昭 35.6.17)は,「土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては,現実に家屋を所有することによって現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである」としている。したがって,Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBから乙建物を譲り受けたDに対し,Aは,DがBからの乙建物をの所有権移転登記を経由していない場合でも、Dが乙建物の主張して乙建物の収去を請求することができる。なお,判例(最判平6.2.8【百選151】)は,「他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由所有権移転登記を経由していない倍した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自已所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというベきであるからである。もL,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって、Aは、DがBからの乙建物の所有権移転登記を経由していない場合,Bに乙建物の収去を請求することもできる。

  • Q  Aが所有する甲土地の上に建物所有目的の賃借権の設定を受けたEに対し,Aから甲土地を譲り受けたCは,AからCヘの所有権移転登記をしなければ,Eに対し賃料の支払を請求することができない。

    A〇  605条の2第1項は,「前条,借地借家法·····第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定する。また,605条の2第3項は,「賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって,Aが所有する甲土地の上に建物所有目的の賃借権の設定を受けたEに対し,Aから甲土地を譲り受けたCは,AからCヘの所有権移転登記をしなければ,賃貸人たる地位の移転を対抗することができないから, Eに対し賃料の支払を請求することはできない。

  • Q  Aが,その所有する甲土地をFに遺贈する旨の遺言をして死亡した場合において, Aの唯一の相続人である配偶者から甲土地を贈与されたGに対し,Fは,所有権移転登記をしなくても,甲土地の所有権取得を対抗することができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.3.6【百選I74】) は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ··.···,遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして,民法177 条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としいる。したがって, Aが,その所有する甲土地をFに遺贈する旨の遺言をして死亡した場合において, Aの唯一の相続人である配偶者から甲土地を贈与されたGに対し,Fは,所有権移転登記をしなければ,甲土地の所有権取得を対抗することができない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている

  • Q 甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡したことによりAの配偶者と子HがAの相続人となった場合において, Aの配偶者から甲土地を買った1に対し,Hは,相続登記をしなくても,甲土地について有する法定相続分に応じた持分の帰属を主張することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭38.2.22【百選159】)は,「相続財産に届する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって,甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡したことによりAの配偶者と子HがAの相続人となった場合において, Aの配偶者から甲土地を買った1に対し,Hは,相続登記をしなくても,甲土地について有する法定相続分に応じた持分の帰属を主張することができる。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに譲渡し,Bが甲土地上に立木を植栽して明認方法を施した場合において,その後,AがCに甲土地を譲渡して,Cに対する所有権移転登記をしたときは,明認方法が存続していたとしても,BはCに対して,立木の所有権を対抗することができない。

    A×  判例(最判昭35.3.1)は,「立木所有権の地盤所有権からの分離は,立木が地盤に附合したまま移転する本来の物権奕動の効果を立木について制限することになるのであるから,その物権的効果を第三者に対抗するためには少なくとも立木所有権を公示する対抗要件を必要とすると解せられると二ろ,原審確定の事実によれば,被上告人らの本件山林所有権の取得は地盤の上の立木をその売買の目的から除外してなされたものとは認められず,かつ,被上告人らの山林取得当時には上告人の施した立木の明認方法仕既に消滅してしまっていたというのであるから,上告人の本件立木所有権は結局被上告人らに対抗しえないものと言わなければならない」としている。したがって,AがA所有の甲土地をBに譲渡し,Bが甲土地上に立木を植栽して明認方法を施した場合において,明認方法が存続していたときは,その後,AがCに甲土地を譲渡して,Cに対する所有権移転登記をしたとしても, BはCに対して,立木の所有権を対抗することができる。

  • Q  AがBに対して,完成した建物の所有権の帰属について特約をせずに,A所有の土地上に建物を建築することを注文したところ,Bが自ら材料を提供して建前を建築した段階で工事を中止した場合(その時点における時価400万円相当)において、Aから残工事を請け負ったCが自ら材料を提供して当該建前を独立の不動産である建物に仕上げ(その時点における時価900万円相当),かつ,AがCに代金を支払っていないときは,当該建物の所有権は,Cに帰属する。

    A〇  243 条は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも,同様とする」と規定する。一方,246条2項は,「前項に規定する場合【注:「他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるとき」〕において,加工者が材料の一部を供したときは,その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り,加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定する。そして,判例(最判昭54.1.25【百選I72】)は,「建物の建築工事請負人が建築途上において未だ独立の不動産に至らない建前を築造したままの状態で放置していたのに,第三者がこれに材料を供して工事を施し,独立の不動産である建物に仕上げた場合においての右建物の所有権が何びとに帰属するかは,243条の規定によるのではなく,セしろ,246条2項の規定に基づいて決定すべきものと解する。けだし,このような場合には,動産に動産を単純に附合させるだけでそこに施される工作の価値を無視してもよい場合とは異なり,右建物の建築のように,材料に対して施される工作が特段の価値を有し,仕上げられた建物の価格が原材料のそれよりも相当程度增加するような場合には,むしろ民法の加工の規定に基づいて所有権の帰属を決定するのが相当であるからである」としている。したがって,AがBに対して,完成した建物の所有権の帰属について特約をせずに,A所有の土地上に建物を建築することを注文したところ,Bが自ら材料を提供して建前を建築した段階で工事を中止した場合(その時点における時価400万円相当)において,Aから殘工事を請け負ったCが自ら材料を提供して当該建前を独立の不動産である建物に仕上げ(その時J点における時価900万円相当),AがCに代金を支払っていないときは,当該建物の所有権は,Cに帰属する。

  • Q  Aの所有する船舶(時価600万円相当)に,Bの所有する発動機(時価400万円相当)が取り付けられた場合において,損傷しなければこれらを分離することができず,主従の区別がつかないときは,当該発動機付船舶は,3対2の割合でAとBが共有する。

    A〇 243条は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも,同様とする」と規定するが,244 条は,「付合した動産について主従の区別をすることができないときは,各動産の所有者は,その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する」と規定寸る。したがって, Aの所有する船舶(時価 600 万円相当)に,Bの所有する発動機(時価400 万円相当)が取り付けられた場合において,損傷しなければこれらを分離することができず,主従の区別がっかないときは,当該発動機付船舶は,3対2の割合でAとBが共有する。

  • Q  Aが所有する建物を賃借したBがAの同意を得て增築をした場合には,その増築部分について取引上の独立性がなくても,増築部分の所有権は,Bに帰属する。

    A×  242 条は,「不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし,権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」と規定するところ,判例(最判昭44.7.25【百選173】)は,「第三建物は,既存の第二建物の上に増築された2階部分であり,その構造の一部を成すものでそれ自体では取引上の独立性を有せず,建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらないといわなければならず,たとえBが第三建物を構築するについて右第二建物の一部の賃貸人Aの承諾を受けたとしても 242 条但書の適用はないものと解するのが相当であり,その所有権は構築当初から第二建物の所有者Aに属したものといわなければならない」としているしたがって,Aが所有する建物を賃借したBがAの同意を得て増築をした場合において,その增築部分について取引上の独立性がないときは,増築部分の所有権は,Aに帰属する。

  • Q  Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において, Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。

    A〇  248条は,「第242 条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は,第703条及び第704条の規定に従い,その償金を請求することができ」と規定する。また,245条は,「前2条の規定は,所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する」と規定L,243 条前段は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する」と規定する。したがって, Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10 立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において,Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。

  • Q   A所有の不動産を占有するBが自己の占有に前の占有者Cの占有を併せて主張することによってその不動産の所有権を時効により取得したときは, Aは,Cの占有の開始日にさかのぽってその所有権を喪失する。

    A〇  162条1項は,「20年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する」と規定し,同条2項は,「10 年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」と規定するところ,187条1項は,「占有者の承継人は,その選択に従い,自己の占有のみを主張し,又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる」と規定する。そして,144条は,「時効の効力は,その起算日にさかのぼる」と規定する。したがって,A所有の不動産を占有するBが自己の占有に前の占有者Cの占有を併せて主張することによってその不動産の所有権を時効により取得したときは,Aは, Cの占有の開始日にさかのぼってその所有権を喪失する。

  • Q売主が他人の不動産を売り渡した後にその所有権を取得したときは,買主は,売主がその不動産の所有権を取得した後これを買主に移転する意思を表示した時に,その不動産の所有権を取得する。

    A×  176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生ずる」と規定するところ,判例(最判昭 40.11.19)は,要旨,売主が第三者所有の特定物を売り渡した後右物件の所有権を取得した場合には,買主への所有権移転の時期·方法について特段の約定がないかぎり,右物件の所有権は,なんらの意思表示がなくても,売主の所有権取得と同時に買主に移転する,としているしたがって,売主が他人の不動産を売り渡した後にその所有権を取得したときは,買主への所有権移転の時期·方法について特段の約定がないかぎり,買主は,それと同時にその不動産の所有権を取得する。

  • Q  詐害行為取消権に基づき不動産の贈与契約を取り消す旨の判決が確定したときは,贈与契約による所有権移転の効果は,贈与契約締結時にさかのぼって消滅する。

    A〇  424条1項本文は,「債権者は,債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる」と規定し,425条は「詐害行為取消請求を認容する確定判決は,債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」と規定する。そして,判例(最判平30.12.14)は,「詐害行為取消しの効果は詐害行為取消判決の確定により生ずるものであるが······,その効果が将来に向かってのみ生ずるのか,それとも過去に週って生ずるのかは,詐害行為取消制度の趣旨や,いずれに解するかにより生ずる影響等を考慮して判断されるべきものである。詐害行為取消権は,詐害行為を取消した上,逸出した財産を回復して債務者の一般財産を保全することを目的とするものであり,受益者又は転得者が詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として,その財産の回復義務を生じさせるものである····。そうすると,詐害行為取消しの効果は過去に測って生ずるものと解するのが上記の趣旨に沿うものといえる」したがって,詐害行為取消権に基づき不動産の贈与契約を取り消寸旨の</判決が確定したときは,贈与契約による所有権移転の効果は,贈与契約締結時にさかのぼって消滅する。

  • Q 不動産の譲渡をもって代物弁済契約がされた場合,所有権移転登記をするまでは,その不動産の所有権が債権者に移転することはない。

    A×  482条は,「弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が,債権者との間で,債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において,その弁済者が当該他の給付をしたときは,その給付は,弁済と同一の効力を有する」と規定する。一方,176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって, その効力を生ずる」と規定する。そして,判例(最判昭57.6.4)は,「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は,単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず,登記その他引渡行為を完了し,第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが·····,そのことは,代物弁済による所有権移転の効果が,原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である」としている。したがって,不動産の譲渡をもって代物弁済契約がされた場合,所有権移転登記をしなくても,その不動産の所有権は債権者に移転する。

  • Q  相続財産のうち,特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言があった場合,その遺言で相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして, その不動産の所有権は,被相続人の死亡の時に直ちに相続により当該相続人に承継される。

    A〇  判例(最判平3.4.19【百選I87】)は,「被相続人の遣産の承継関係に関する遺言については,遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ,遺言者は,各相続人との関係にあっては,その者と各相続人との身分関係及び生活関係,各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係,特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから,遺言書において特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言者の意思が表明されている場合,当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば,遺言者の意思は,右の各般の事情を配慮して,当該遺産を当該相続人をして,他の共同相続人と共にではなくして,単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり,遺言書の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り,遺贈と解十べきではない。そして,右の『相続させる』趣旨の遺言,すなわち,特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は,前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって,民法 908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも,遺産の分割の方法として,このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって,右の『相続させる』趣旨の遺言は,正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり,他の共同相続人も右の遺言に拘束され,二れと異なる遺産分割の協議,さらには審判もなし得ないのであるから,このような遺言にあっては,遺言者の意思に合致するものとして,遺産の一部である当該遣産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり,当遺言において相続に上る承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである」としている。

  • Q  AがBに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた後,Aは,Bの代金不払を理由に売買契約を解除した。その後BがCに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた場合,Aは, Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

    A〇  判例(最判昭 35.11.29 【百選156】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ,不動産の所有権が買主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と·····に拘らない」としている。したがって, AがBに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた後,Aが,Bの代金不払を理由に売買契約を解除したが,その後BがCに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

  • Q AがB所有の甲土地を占有し,取得時効が完成した後BからAへの所有権移転登記が未了の間に,CがBから甲土地を譲り受けて登記をした場合であっても,Aがその後さらに占有を継続し,Cが登記をした時から再度取得時効の期間が経過したときは,Aは,Cに対し,所有権移転登記をしなくても時効による所有権取得を主張することができる。

    A〇  判例(最判昭36.7.20) は,要旨,不動産の取得時効が完成しても,その登記がなければ, その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが,第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には,その第三者に対し,登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗しうるものと解すべきである,としている。したがって,AがB所有の甲土地を占有し,取得時効が完成した後BからAヘの所有権移転登記が未了の間に,CがBから甲土地を譲り受けて登記をした場合であっても, Aがその後さらに占有を継続し,Cが登記をした時から再度取得時効の期間が経過したときは, Aは,Cに対し,所有権移転登記をしなくても時効による所有権取得を主張することができる。

  • Q  甲土地を含む財産をABCが共同で相続し,その後Aのみが相続を放乘した場合,BCがBCのみの共有持分登記をする前に,Aの債権者DがAも共同相続したものとして代位によりAの共有持分登記をした上,Aの持分を差し押さえたときは,BCは,Dに対し,甲土地がB Cのみの共有であることを主張することができない。

    A×  939条は,「相続の放乘をした者は,その相統に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすべき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法 938条),相続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的可人,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」(-したがって,甲土地を含む財産をABCが共同で相続し,その後Aのみが相続を放棄した場合,BCがBCのみの共有持分登記をする前に,Aの債権者DがAも共同相続したものとして代位によりAの共有持分登記をした上,Aの持分を差し押さえたときであっても, BCは,Dに対し,甲土地がBCのみの共有であることを主張することができる。

  • Q  甲土地がAからB, BからCに順次売却された後,AB間の売買契約が合意により解除された場合,Cは, Aに対し,所有権移転登記をしなくても甲土地の所有権取得を主張することができる。

    A×  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭 33.6.14)は,「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に測って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって,もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法 177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すベき何らの理由もないからである」としいるしたがって,甲土地がAからB, BからCに順次売却された後,AB間の売買契約が合意により解除された場合,Cは,Aに対し,所有権移転登記をしなければ,甲土地の所有権取得を主張することができない。

  • Q  Aは,A所有の甲土地をBに売却し, AからBヘの所有権移転登記をした後,Bから強迫されたことを理由として, AB間の甲土地の売買契約を取り消した。その後,Cが,Bによる強迫の事実も,Aによる取消しの事実も知らずに,Bから甲土地を買い受け,BからC~の所有権移転登記をした場合,Cは, Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

    A〇  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するところ,判例(大判昭17.9.30【百選155】)は,「本件売買が··.···取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ざる」としている。したがって,Aが,Bから強迫されたことを理由として, AB間の甲士地の売買契約を取り消した後,Cが,Bによろ強迫の事実も,Aによる取消しの事実も知らずに,Bから甲土地を買い受け,BからCへの所有権移転登記をした場合,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q  Aが,A所有の甲建物をBとCに二重に売却し,AからBヘの所有権移転登記も,AからCヘの所有権移転登記もされていない時に,Dが甲建物を勝手に占拠した場合,Bは,AからBへの所有権移転登記をするまでは,Dに対し,所有権に基づき甲建物の明渡しを請求することはできない。

    A×  判例(最判昭 25.12.19【百選162】)は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としているしたがって,Aが,A所有の甲建物をBとCに二重に売却し,AからBヘの所有権移転登記も,AからCヘの所有権移転登記もされていない時に, Dが甲建物を勝手に占拠した場合,Bは,AからBヘの所有権移転登記をしなくても,Dに対し,所有権に基づき甲建物の明渡しを請求することができる。

  • Q  Aは,B所有の甲土地上に,勝手に乙建物を建築して所有権保存登記をした上,乙建物をCに売却した。その後,Bが,Aに対し,甲土地の所有権に基づき乙建物の収去を請求した場合,Aは,乙建物についてAからCへの所有権移転登記をする前であっても,乙建物の所有権を失ったことを理由としてBの請求を拒むことができる。

    A×  判例(最判平6.2.8【百選I51】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすベきである。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,右譲渡人は,土地所有者による建物収去·土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというベきであり·····,また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物收去·土地明渡しの義務を負わないものというべきである」とした上で,「もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど因難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって,Aが,B所有の甲土地上に,勝手に乙建物を建築して所有権保存登記をした上,乙建物をCに売却した後,Bが,Aに対し,甲土地の所有権に基づき乙建物の収去を請求した場合,Aは,乙建物についてAからCヘの所有権移転登記をするまで,乙建物の所有権を失ったことを理由としてBの請求を拒むことができない。

  • Q  Aは,Bの代理人として,C所有の甲土地をCから買い受けたが,CからBヘの所有権移転登記がされる前に,自ら甲土地をCから買い受け,CからAヘの所有権移転登記をし,さらに,Dに対して甲土地を売却し, AからDヘの所有権移転登記をした場合,Bは,Dに対し,登記をしなくても甲土地の所有権の取得を主張することができる。

    A×  不動産登記法5条2項本文は,「他人のために登記を申請する義務を負う第三者は,その登記がないことを主張することができない」と規定するところ,裁判例(東京高判昭 53.6.28)は,「亡甲は,本件土地の前所有者乙の代理人として,本件土地を被控訴人に売却し,同人よりその所有権移転登記手続を委任されながらこれを怠り,一方で右売買契約成立後に本件土地を自らあるいは実子である控訴人の代理人として乙から買受けているものであるから,丕動産登記法5条の法意に鑑み,控訴人は,被控訴人に対し本件土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないものというべきである」としている。方,判例(最判平8.10.29 【百選I61】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177 条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としていOしたがって, Aが,Bの代理人として,C所有の甲土地をCから買い受けたが,CからBへの所有権移転登記がされる前に,自ら甲土地をCから買い受け,CからAへの所有権移転登記をし,さらに, Dに対して甲土地を売却し,AからDへの所有権移転登記をした場合,Aは,背信的悪意者にあたるが,Dは,Bに対する関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,甲土地の所有権取得をもってBに対抗することができるから,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することはできない。

  • Q  Aは,A所有の甲土地をBに売却したが,AからBヘの所有権移転登記をする前に死亡した。Aの法定相統人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCヘの所有権移転登記をした上,甲土地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができる。

    A〇  判例(最判昭38.2.22【百選159】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自已の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって, Aの法定相続人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCヘの所有権移転登記をした上,甲士地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができる。

  • Q  AがBから売買によってB所有の甲土地を取得し,BからAへの所有権移転登記がされた後に,AB間の売買契約が解除され,その後AからCへ甲土地が譲渡され,AからCヘの所有権移転登記がされた場合,Bは, Cに対し,AからCヘの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

    A×  判例(最判昭 35.11.29【百選I56】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き賀主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ。不動産の所有権が売主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と······に拘らない」としているしたがって,AがBから売買によってB所有の甲土地を取得し,BからAヘの所有権移転登記がされた後に,AB間の売買契約が解除され,その後,AからCへ甲土地が譲渡され,AからCヘの所有権移転登記がされた場合,Bは,Cに対し,AからCヘの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができない。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに譲渡した後,これをCにも譲渡した場合,Cが背信的悪意者とされる場合であっても,Bは,Cからの譲受人Dが背信的悪意者でない限り,Dに対して自己の所有権を主張するためには登記が必要である。

    A〇  判例(最判平8.10.29【百選161】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもっててに対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,AがA所有の甲土地をBに譲渡した後,これをCにも譲渡した場合,Cが背信的悪意者とされる場合であっても, Bは,Cからの譲受人Dが背信的悪意者でない限り,Dに対して自己の所有権を主張するためには登記が必要である。

  • Q  AがBに賃貸している甲土地をCに譲渡した場合において,Cが所有権移転登記をしていない場合は, BはCに対して賃料の支払を拒むことができる。

    A〇  605条の2第1項は,「前条,借地借家法····第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定する。また,605条の2第3項は,「賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって, AがBに賃貸している甲土地をCに譲渡した場合において,Cが所有権移転登記をしていない場合は,Cは賃貸人たる地位の移転を対抗することができないため,BはCに対して賃料の支払を拒むことができる。

  • Q  AとBは,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続したが,Bは,甲土地についてAに無断で相続を原因としてCからBヘの所有権移転登記をし,さらに,Dへ甲土地を譲渡した場合,Aの持分につい一, AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。

    A×  判例(最判昭38.2.22【百選159】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって,AとBが,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続したが,Bが,甲土地についてAに無断で相続を原因としてCからBヘの所有権移転登記をし,さらに,D^甲土地を讓渡した場合,Aの持分について, AがDに対して自己の権利を主張するために登記は必要ない。

  • Q  AとBは,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続し,Aが甲土地を単独で相続する旨の遣産分割を成立させた。その後,Bが,甲土地について相続を原因としてABの共有とする登記をし,さらにBの持分をDへ譲渡した場合,Bの持分について,AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。

    A〇  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超之る部分については,登記,登録その他の対抗要件を備之なければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがっ,AとBが,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続CL, Aが甲土地を単独で相続する旨の遺産分割を成立させた後,Bが,甲土地について相続を原因としてABの共有とする登記をし,さらにBの持分をDへ譲渡した場合,Bの持分について, AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。

  • Q  AからB,BからCに甲土地が順次売却され,それぞれその売買代金が支払われたが,所有権の登記名義がAのままである場合,Cは,Bに代位して,Aに対し,AからBへの所有権移転登記手続を請求することはできない。

    A×  423条の7前段は,「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は,その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは,その権利を行使することができる」と規定する。したがって, AからB, BからCに甲土地が順次売却され,それぞれその売買代金が支払われたが,所有権の登記名義がAのままである場合,Cは,Bに代位して, Aに対し,AからBヘの所有権移転登記手続を請求することができる。

  • Q  A所有の甲土地及び乙土地に抵当権を有するBは,甲土地の抵当権設定の登記の抹消をするつもりで,誤って乙土地の抵当権設定の登記の抹消を申請し,その旨の登記がされた。この場合でも,Bは,乙土地の抵当権設定の登記の抹消後に上記事情を知らずに乙土地に抵当権の設定を受けたCに対し,Bの抵当権が優先することを主張することができる。

    A×  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法···-·その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭42.9.1)は,「登記が初めから全然ない場合と,一旦正当にされた登記がのちに抹消された場合とでは,第三者対抗力の点において区別して考うべきである·····。しかし,本件においては,登記権利者である被上告人が委任した司法書士の錯誤による申請によって登記が抹消されたのであって,登記官吏の過誤によって抹消された場合や,登記権利者以外の者が擅にした申請によって抹消された場合と同一に論じるのは相当ではない。けだし,後者のニつの場合には登記権利者に関係なく不法に抹消されたのであるが,本件においては,登記権利者がみずから委任した司法書士の申請によって抹消されたのであるから,他の二つの場合と同視することはできないからである。そして,本件のごとく登記権利者の代理人の申請によって登記が抹消された場合には,たとえ代理人に錯誤があったとしても,取引の安全保護のために,第三者対抗力を喪失すると解すべきである」としている.したがって, A所有の甲土地及び乙土地に抵当権を有するBが,甲土地の抵当権設定の登記の抹消をするつもりで,誤って乙土地の抵当権設定の登記の抹消を申請し,その旨の登記がされた場合,Bは,乙土地の抵当権設定の登記の抹消後に上記事情を知らずに乙土地に抵当権の設定を受けたCに対し,Bの抵当権が優先することを主張することができない。

  • Q  Aは,Bから代理権を与えられていないのに, Bの代理人として,Cとの間で, B所有の甲土地にCの債権を担保するための抵当権設定契約を締結し,その旨の登記がされた。この場合において,Bがその抵当権設定契約を追認したときは, Bは, Cに対し,その抵当権設定の登記の無効を主張することはできない。

    A〇  判例(最判昭42.10.27)は,「本人名義の偽造文書によって無権代理人が抵当権設定登記手続をし,その旨の登記がされたとしても,本人たる登記義務者において,その抵当権設定行為を追認したことにより,右抵当権の設定登記の記載が実体上の権利関係と符合するようになったときには,その結果,右登記義務者は,その登記をすることを拒みうるような事情がなくなったものというベきであって,その抵当権の設定登記の無効を主張することができないと解するのが相当である」としているしたがって, Aが,Bから代理権を与えられていないのに,Bの代理人として, Cとの間で,B所有の甲土地にCの債権を担保するための抵当権設定契約を締結し,その旨の登記がされた場合において,Bがその抵当権設定契約を追認したときは,Bは,Cに対し,その抵当権設定の登記の無効を主張することはできない。

  • Q  Aは,B所有の土地上に権原なく建物を建築して居住しているが,Cと通謀してその建物についてAからCヘの所有権移転登記をした。Cが実際にはその建物を所有したことがない場合でも,Cは, Bに対し,建物収去土地明渡の義務を負う。

    A×  判例(最判昭 47.12.7)は,「建物の所有権を有しない者は,たとえ,所有者との合意により,建物につき自已のための所有権保存登記をしていたとしても,建物を収去する権能を有しないから,建物の敷地所有者の所有権に基づく請求に対し,建物収去義務を負うものではないと解すべきであ」としている。したがって,B所有の土地上に権原なく建物を建築して居住しているAが,Cと通謀してその建物についてAからCヘの所有権移転登記をした場合において,Cが実際にはその建物を所有したことがないときは,CはBに対し,建物収去土地明渡の義務を負わない。

  • Q  Aは,その所有する甲建物の减失後に新築した乙建物について,新たな保存登記をせずに甲建物の登記を流用して,Bとの間で,停止条件付代物弁済契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記をし,その後,代物弁済を原因として仮登記に基づく本登記をした。この場合,その本登記は無効である

    A〇  判例(最判昭40.5.4)は,「建物が滅失した後,その跡地に同様の建物が新築された場合には,旧建物の登記簿は滅失登記により閉鎖され,新建物についてはその所有者から新たな所有権保存登記がなさるべきものであっ二,旧建物の既存の登記を新建物の右保存登記に流用することは許されず,かかる流用された登記は,新建物の登記としては無効と解するを相当とする。けだし,旧建物が滅失した以上,その後の登記は真実に符合しないだけでなく,新建物についてその後新たな保存登記がなされて,一個の不動産に二重の登記が存在するに至るとか,その他登記簿上の権利関係の錯雑·不明確をきたす等不動産登記の公示性をみだすおそれがあり,制度の本質に反するからである」としている。たがって, その所有する甲建物の滅失後に新築した乙建物について,新たな保存登記をせずに甲建物の登記を流用して,Bとの間で,停止条件付代物弁済契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記をし,その後,代物弁済を原因として仮登記に基づく本登記をした場合,その本登記は無効である。

  • Q  Aが所有する甲土地上に,Bが無権原で乙建物を所有している。Bは,自ら乙建物の所有権保存登記をした後,乙建物をCに売却してその所有権を移転した。この場合において, BからCヘの乙建物の所有権移転登記がされていないときは, Aは,Bに対し,所有権に基づき乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平 6.2.8【百遥151】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,右譲渡人は,土地所有者による建物収去·土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというべきであり·····,また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物収去·土地明渡しの義務を負わないものというべきである」とした上で,「もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れることはできないと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく、建物保有者は、自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し、これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならないyとしている。したがって, Aが所有する甲土地上に,無権原で乙建物を所有しているBが,自ら乙建物の所有権保存登記をした後,乙建物をCに売却してその所有権を移転した場合において, BからCヘの乙建物の所有権移転登記がされていないときは,Aは, Bに対し,所有権に基づき乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

  • Q  Aが所有する甲土地をAから賃借したBは,甲土地上に建築した自已所有建物につき,Bの妻C名義で所有権保存登記をした。この場合において,Aが甲土地をDに売却してAからDへの所有権移転登記がされたときは,Bは,甲土地の賃借権をDに対抗することができる。

    A×  借地借家法10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定するところ,判例(最大判昭41.4.27 【百選II58】)は,「賃借人が地上に登記した建物を所有することを以って土地賃借権の登記に代わる対抗事由としている所以のものは,当該土地の取引をなす者は,地上建物の登記名義により,その名義者が地上に建物を所有し得る土地賃借権を有することを推知し得るが故である。従って,地上建物を所有する賃借権者は,自己の名義で登記した建物を有することにより,始めて右賃借権を第三者に対抗し得るものと解すベく,地上建物を所有する賃借権者が,自らの意思に基づき,他人名義で建物の保存登記をした上うな場合には,当該賃借権者はその賃借権を第三者に対抗することはできないものといわなければならない。けだし,他人名義の建物の登記によっては,自己の建物の所有権さえ第三者に対抗できないものであり,自己の建物の所有権を対抗し得る登記あることを前提として,これを以って賃借権の登記に代えんとする建物保護法1条[注:借地借家法10条〕の法意に照し,かかる場合は,同法の保護を受けるに値しないからである」としている。したがって, Aが所有する甲土地をAから賃借したBが,甲土地上に建築した自己所有建物につき,Bの妻C名義で所有権保存登記をした場合において, Aが甲土地をDに売却してAからDヘの所有権移転登記がされたときは,Bは,甲土地の賃借権をDに対抗することができない。

  • Q  Aは,所有する甲土地のために,Bが所有する乙土地上に地役権の設定を受け,その旨の登記がされた。この場合において,Aが甲土地をCに売却してAからCヘの所有権移転登記がされたときは,Cは,甲土地のための地役権をBに対抗することができる。

    A〇  280 条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定する。一方,肢アの解説のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判大13.3.17)は,要旨,要役地の所有権と共に地役権を譲受けたる者が,所有権の移転を承役地の所有者に対抗し得るときは,地役権の移転は,之を承役地の所有者に対抗することができる,としている。したがって,Aが,所有する甲土地のために,Bが所有する乙土地上に地役権の設定を受け,その旨の登記がされた場合において,Aが甲土地をCに売却してAからCヘの所有権移転登記がされたときは,Cは,甲土地のための地役権をBに対抗することができる。

  • Q   Aは,Bが所有する甲建物を賃借してその引渡しを受けた。この場合,Aは,Bに対し,当然に賃借権の設定登記を請求することができる。

    A×  605条は,「不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる」と規定するが,判例(大判大10.7.11)は,要旨,丕動産の賃借人は,賃貸借の登記を為すことの特約存せざる場合においては,特別の規定なき限り,賃貸人に対して賃貸借の本登記請求権は勿論,其仮登記を為す権利をも有せざるものと解するを相当とす,としている。したがって, Aが,Bが所有する甲建物を賃借してその引渡しを受けた場合でも,Aは,Bに対し,当然に賃借権の設定登記を請求することはできない。

  • Q  Aは,所有する甲土地につき,Bを第一順位とする抵当権及び,Cを第二順位とする抵当権をそれぞれ設定し,その旨の登記がされた。この場合において,甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは,Cは,Bに対し,自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。

    A〇  判例(大判大8.10.8)は,「既に弁済に因りて消滅に帰したる本件抵当権の設定登記が尚依然として登記海上に存在するに於ては,被上告人の如く登記簿上次順位に在る抵当権者は,形式に於て上告人の次位に在るが為めに,抵当権の行使其他諸般の取引上種々なる障害を受くることを免がれさるは当然なるを以て,被上告人は上告人に対して其消滅せる抵当権の設定登記の抹消を請求するの利益を有し,又上告人は其請求に応じて抹消手続を為すの義務を有する」 としている。したがって,Aが,所有する甲土地につき,Bを第一順位とする抵当権及び,Cを第二順位とする抵当権をそれぞれ設定し,その旨の登記がされたの場合において,甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは,Cは, Bに対し,自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。Bが既に甲土地と乙建物の引渡しを受けている場合には,少なくとも乙建物の所有権は完全にBに移転しているので,Cが善意であっても乙建物の所有権を取得することはできない。

    A×  判例(最判昭 39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべき」としている。また,判例(最判昭57.2.18)は,「私権の目的となりうる不動産の取得については,右不動産が未登記であっても,民法 177 条の適用があり,取得者は,その旨の登記を経なければ,取得後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し,自己の権利の取得を対抗することができないものと解される」としている。したがって,Bが既に甲土地と乙建物の引渡しを受けているだけでは,乙建物の所有権が完全にBに移転しているとはいえず,Cも乙建物の所有権を取得することができる。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。Bが既に甲土地について移松登記を得ている場合には,Cは善意であっても甲土地はもとより,甲土地上の乙建物の所有権も取得することができない。

    A×  上記のとおり,177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,Bが既に甲土地について移転登記を得ている場合には,Cは善意であっても甲土地の所有権を取得することはできないが,Bが甲士地上の乙建物について移転登記を得ていない限り,Cはその所有権を取得することができる

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。Bが乙建物について所有権保存登記を行ったが,それを知らないCが甲土地について所有権移転登記を行った場合,CはBに対して建物収去土地明渡の請求ができるのが原則である。

    AO 上記のとおり,177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定しており,Bが乙建物について所有権保存登記を行った場合には,Cは乙建物の所有権を取得することはできない。もっとも,それを知らないCが甲土地について所有権移転登記を行った場合,Cは,甲土地の所有権を取得することができる.したがって, CはBに対して建物収去土地明渡しの請求ができるのが原則である。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。甲土地·乙建物の双方についてBCともに未登記である場合,Bが,Cに対し,自己の所有権の確認を求める本訴を提起し,Cが,Bに対し,甲土地や乙建物へ立ち入ってはならない旨の反訴を提起し,お互いに相手方の所有権を争っているときは,両方の訴えとも棄却される。

    A〇  上記のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す······。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押について配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としているしたがって, Aが,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ場合,Bから見たCも,Cから見たBも,いずれも「第三者」にあたるから,甲土地·乙建物の双方についてBCともに未登記である場合において,Bが,Cに対し,自己の所有権の確認を求める本訴を提起し,Cが,Bに対し,甲土地や乙建物へ立ち入ってはならない旨の反訴を提起し,お互いに相手方の所有権を争っているときは,両方の訴えとも棄却される。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。.AB間の契約の定めに従えば,甲土地についても乙建物についてもBに所有権がいまだ移転していない場合であっても,所有権を取得したCは登記をしなければ,Bに対して所有権の取得を主張することができない。

    A〇  上記のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明 41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す····。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,AB間の契約の定めに従えば,甲土地についても乙建物についてもBに所有権がいまだ移転していない場合であっても,Bは「第三者」にあたるから,所有権を取得したCは登記をしなければ,Bに対して所有権の取得を主張することができない。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bは,甲土地をCに売却し,その旨の所有権移転登記がされた。その後,AがBの強迫を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がAからBに移転していないことを主張することができる。

    A〇  96条1項は,「詐欺又仕強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定し,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。一方,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判明 39.12.13)は,「法律行為の取消は初めより其行為を無効ならしむるの効果を生ずることは民法第 121条に規定する所なれば,法律行為取消の効果は法律に特別規定あれば格別,然らざれば何人と雖も之を主張することを得べく,又何人に対しても之を主張し得ベく·。而して,詐欺に依る意思表示の取消に付きては之を以て善意の第三者〔注:「善意で過失がない第三者」〕に対抗することを得ざる仕民法第96条第3項に規定する所なるも,強迫に因る意思表示の取消に付きては斯る特別規定を存せざるを以て其効果は一般の原則に従ひ第三者に対抗し得べきものとなさざるを得ず」としている。したがって, Bが,甲土地をCに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,AがBの強迫を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がAからBに移転していないことを主張することができる

  • Q  AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Aは,Bの詐欺を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した。その後,BがCに甲土地を売却し,Cへの所有権移転登記をした場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がBからAに復帰したことを主張することができない。

    A〇  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30 【百選155】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の週及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者と仕,取消の溯及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すベく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取逍の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる······と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為すを得ず。今之を本件に付て観るに,本件壳買が····詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」 としている。したがって, Aが,Bの詐欺を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した後,BがCに甲土地を売却し,Cヘの所有権移転登記をした場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がBからAに復帰したことを主張することができない。

  • Q  Aは亡BからヒBの所有していた乙土地の遺贈を受けたが,その旨の所有権移転登記をしていなかった。その後,亡Bの共同相続人の一人であるCの債権者Dが乙土地についてCの相続分に相当する持分を差し押さえ,その旨の登記がされた。この場合,Aは,Dに対し,乙土地の所有権を亡Bから取得したことを主張することができる。

    A×  判例(最判昭 39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ、遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すベきである。そして民法177 条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遣贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すベきである」としている。したがって,Aが亡Bから亡Bの所有していた乙土地の遺贈を受けた後,亡Bの共同相続人の一人であるCの債権者Dが乙土地についてCの相続分に相当する持分を差し押さえ,その旨の登記がされた場合,Aは,Dに対し,乙土地の所有権を亡Bから取得したことを主張することができない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q  AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受けると同時に乙土地の所有権移転登記をしたときは, Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができる。

    A〇  判例(最判昭41.11.22)は,「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては,単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって,この関係においては,結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである。そして時効が完成しても,その登記がなければ, その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し,第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては,その第三者に対しては,登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができるものと解すべき」としているしたがって,AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受けると同時に乙土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができる。

  • Q  AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが乙土地の所有権移転登記をしたときは, Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができない。

    A  x判例(最判昭42.7.21【百選145】)は,「被上告人は本件土地の占有により昭和33年3月21日に20年の取得時効完成したところ,上告人は,本件土地の前主から昭和33年2月本件土地を買受けてその所有者となり,同年12月8日所有権取得登記を経由したというのである。されば,被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり,したがって,上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから,被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり,二のことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによって消長を来さないものというべきである」としている。したがって,AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが乙土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができる

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。AがBに対して自己所有の甲土地を売却して引き渡した後に死亡し, Aの唯一の相続人Dが相続による登記をした上で,甲土地をCに譲ㇼ渡し,Cが登記を備えた場合。

    A対抗できない  判例(大連判大15.2.1)は,「民法第177条に所謂第三者とは,当事者若は其の包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有するものなることは当院の夙に判例とする所なり。仍て,被相続人が不動産を甲に譲渡し未だ譲渡の登記を為さざる間に相続開始し,其の相続人が同一不動産を更に乙に譲渡し其の登記を為したる場合に於ては,乙は同条に所謂第三者に該当するや否を案ずるに,不動産を甲に譲渡したる被相続人は甲との関係に於ては該不動産の所有者と謂うことを得ずと雖,譲渡の登記なきを以て甲は其の所有権取得を之と反対若は相容れざる権利を取得し其の登記を為したる第三者に対抗することを得ざるが故に,若此の被相続人が相続開始前同一不動産を更に乙に譲渡し登記を為したりとせば,乙は完全なる所有権を取得すベく,従て,乙は甲の登記欠缺を主張する正当の利益を有する第三者なること疑なき所なれば,右の被相続人は譲渡の登記あらざる結果甲に対する譲渡に因りて全く不動産の所有権を失いたる者に非ずして,乙に対する関係に於ては依然所有者にして,所謂関係的所有権を有するものなりと謂うを得ベし。然るに,右被相続人が該不動産を乙に譲渡する以前に於て相続開始したるときは其の相続人は此の関係的所有権を承継するものと謂うベく,従て乙が此の相続人より同一不動産の譲渡を受け其の登記を経由したるときは,甲は被相続人より取得したる該不動産の所有権を以て之に対抗することを得ずして,乙は完全なる所有権を取得するものと謂わざるを得ず。故に,乙は同一所有者が同一不動産を二重に売買したる場合に於て,先ず所有権取得の登記を為したる買主と同一の地位に在るものにして,甲の登記欠缺を主張すベき正当の利益を有する第三者に該当すべく,乙が甲に売渡したる所有者より買受けたると,其の相続人より買受けたるとに由りて差異を生ずベきものに非ず」としている。したがって,AがBに対して自己所有の甲土地を売却して引き渡した後に死亡し,Aの唯一の相続人Dが相続による登記をした上で,甲土地をCに譲り渡し,Cが登記を備えた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できない。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。AがBに対して自已所有の甲土地を遺贈する遺言を残して死亡した後,Aの唯一の相続人Dの債権者CがDを代位してD名義の所有権取得登記を行い,甲土地を差し押さえた場合。

    A対抗できない  判例(最判昭 39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ·····,遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして民法177条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としている。したがって,AがBに対して自己所有の甲土地を遣贈する遺言を残して死亡した後,Aの唯一の相続人Dの債権者CがDを代位してD名義の所有権取得登記を行い,甲土地を差し押さえた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。Aには相続人BDがいた。Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは相続を放棄し, Bは単純承認した。ところがDの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合。

    A対抗できる  939条は,「相続の放棄をした者は,その相統に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすベき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法938条),担続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としている。したがって,Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは相続を放棄し, Bは単純承認したが,Dの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。Aには相続人BDがいた。Aが自已所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは遺産分割協議書を偽造して,自らが単独で相続したとして甲土地の相続登記を行った上,甲土地をCに売却し,Cが登記を備えた場合。

    A対抗できる  判例(最判昭38.2.22【百選I59】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびにてから単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自已の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって, Aには相続人BDがいた。Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは遣産分割協議書を偽造して,自らが単独で相続したとして甲土地の相続登記を行った上,甲土地をCに売却し,Cが登記を備えた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。Aには相続人BDがいた。Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,遺産分割協議の結果,甲土地はBが取得することになった。ところが,Dの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合。

    A対抗できない  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定に上り算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,遺産分割協議の結果,甲土地はBが取得することになったが,Dの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できない。

  • Q被相続人Aから相続開始前に甲不動産を買い受けたXは,Aの唯一の相続人Bの債権者YがBに代位して甲につきBの相続登記をした上で甲を差し押さえた場合,登記がなくても,甲の所有権取得をYに対抗することができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭 39.3.6【百選I74】)は,要旨,甲からその所有不動産の遺贈を受けた乙がその旨の所有権移転登記をしない間に,甲の相続人の1人である丙に対する債権者丁が、丙に代位して同人のために前記不動産にっき相続による持分取得の登記をなし,ついでこれに対し強制麓売の申立をなし,該申立が登記簿に記入された場合においては,丁は,民法第 177 条にいう第三者に該当するとしている。したがって,被相続人Aから相続開始前に甲不動産を買い受けたXは,Aの唯一の相続人Bの債権者YがBに代位して甲につきBの相続登記をした上で甲を差し押さえた場合,登記がなければ,甲の所有権取得をYに対抗することができない。

  • Q被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXが,遺産分割によって甲の所有権全部を取得したとしても, Bの債権者YがBに代位して甲につきB及びXの共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,自己の権利の取得をYに対抗することができない。

    A〇  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXが,遺産分割によって甲の所有権全部を取得したとしても,Bの債権者YがBに代位して甲につきB及びXの共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,自己の権利の取得をYに対抗することができない。

  • Q被相続人Aから遺贈によって甲不動産の所有権を取得したXは,Aの唯一の相続人Bが甲をYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,遺贈があった事実を知らず所有権取得登記を備える機会がなかったとしても,Yに対し,甲の所有権取得を対抗することができない。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すベきところ····,遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして,民法177条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としいる。したがって,被相続人Aから遺贈によって甲不動産の所有権を取得したXは,Aの唯一の相続人Bが甲をYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,遺贈があった事実を知らず所有権取得登記を備える機会がなかったとしても,Yに対し,甲の所有権取得を対抗することができない。なお,肢イの解説のとおり,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXは,Bが甲を単独相続した旨の登記をした上でYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,Yに対し,この所有権移転登記の全部抹消を求めることができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭38.2.22【百選I59】)は,「相統財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自已の持分を登記なくして対抗しうるものと解十べきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限ㇼ無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである。····そして,この場合に甲がその共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため乙,丙に対し請求できるのは,各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして,甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない·····。けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており,また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである」としている。したがって,被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXは,Bが甲を単独相続した旨の登記をした上でYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,Yに対し,この所有権移転登記の全部抹消を求めることはできず,Xの持分についてのみの一部抹消(更生)を求めるができるにとどまる。

  • Q「甲不動産はXに相続させる」旨の被相続人Aの遺言により,Aの死亡時にXが所有権を取得した甲につき,共同相続人Bの債権者YがBに代位してB及びXの法定相続分により共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,甲の所有権取得をYに対抗することができる。

    A×  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定に上り算定した相続分を超之る部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,「甲不動産はXに相続させる」旨の被相続人Aの遺言により,Aの死亡時にXが所有権を取得した甲につき,共同相続人Bの債権者YがBに代位してB及びXの法定相続分により共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,甲の所有権取得をYに対抗することができない。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。Cが相続放棄をした後に,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,CからEへの持分移転登記を経由した場合,Eは,B及びDに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定し,939条は,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすベき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法938条),相続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としている。したがって,Cが相続放棄をした後に,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,CからEへの持分移転登記を経由した場合でも,Eは,B及びDに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができない。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。AがEに甲土地を遺贈し,遺言により指定された遺言執行者Fがある場合において, Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分を悪意のGに売却し,BからGへの持分移転登記を経由したときは,Eは,Gに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

    A〇  1013条1項は,「遺言執行者がある場合には,相続人は,相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に違反してした行為は,無効とする。ただし,これをもって善意の第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,AがEに甲土地を遣贈し,遺言により指定された遺言執行者Fがある場合において,Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相統登記をした上で,甲土地の2分の1の持分を悪意のGに売却し,BからGヘの持分移転登記を経由したときは,Eは,Gに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。B,C及びDの遺産分割協議により,甲土地はBが取得することとされた場合であっても,その後,Dが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,DからEへの持分移転登記を経由したときには,Eは, Bに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

    A〇  899条の2第1項は,「相続に上る権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分につては,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,B,C及びDの遺産分割協議により,甲土地はBが取得寸ることとされた場合であっても,その後,Dが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,DからEへの持分移転登記を経由したときには,Eは,Bに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。Aが[甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において,Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相統登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をEに売却し, BからEへの持分移転登記を経由したときには,Cは,Eに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

    A〇  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,Aが[甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において, Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をEに売却し, BからEへの持分移転登記を経由したときには,Cは,Eに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。Dが甲土地を単独で相続した旨の不実の登記をした上で,甲土地をEに売却し,DからEヘの所有権移転登記を経由した場合,Bは,Eに対し,甲土地について2分の1の持分の取得を主張することができない。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭38.2.22 【百選159】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中のDならびにDから単独所有権移転の登記をうけた第三取得者Eに対し,他の共同相続人Bは自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって,Dが甲土地を単独で相続した旨の不実の登記をした上で,甲土地をEに売却し,DからEへの所有権移転登記を経由した場合,Bは,Eに対し,甲土地について2分の1の持分の取得を主張することができる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,10年経過後にCが移転登記を得た場合,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。

    A×  判例(最判昭42.7.21【百選I45】)は,「被上告人は本件土地の占有により昭和33年3月21日に20年の取得時効完成したところ,上告人は,本件土地の前主から昭和33年2月本件土地を買受けてその所有者となり,同年12月8日所有権取得登記を経由したというのである。されば,被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり,したがって,上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから,被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり,二のことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによって消長を来さないものというべきである」としているしたがって,Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,10年経過後にCが移転登記を得た場合,Bは登記がなくてもCに甲土地の時効取得を対抗できる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,Cが移転登記を得た場合,登記による取引安全確保の機能を重視する学説によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。

    A〇  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,Cが移転登記を得た場合でも,登記による取引安全確保の機能を重視する学説によると,Bは2不登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できないことになる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。ただし,Cが背信的悪意者に当たる場合はBは登記がなくても時効取得を対抗できる余地がある。

    A〇  判例(最判平18.1.17【百選I60】)は,「時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,特段の事情のない限り、これを対抗することができないと解すべきである」とした上で,「民法177条にいう第三者については,一般的にはその善意·悪意を問わないものであるが,実体上物権変動があった事実を知る者において,同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,このような背信的悪意者は,民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきである」としている。したがって,Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから 10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できないのが原則であるが,Cが背信的悪意者に当たる場合はBは登記がなくても時効取得を対抗できる余地がある。なお,判例(最判平18.1.17【百選I60】)は,上記に続けて,「そして甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというベきである。取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識·判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすベて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである」としている。

  • Q Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合において、BがCの登記時からさらに20年,Cから権利主張をされることなく甲土地の占有を続け,その後に取得時効を援用したときは,判例によると,Bは登記がなくてもCに対し,甲土地の時効取得を対抗できる。

    A〇  判例(最判昭36.7.20)は,要旨,不動産の取得時効が完成しても,その登記がなければ, その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが,第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には,その第三者に対し.登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗しうるものと解すベきである,としている。そして,162条1項は,「20 年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得寸る」と規定する。したがって,ウの事例において, BがCの登記時からさらに20年,Cから権利主張をされることなく甲土地の占有を続け,その後に取得時効を援用したときは, Bは登記がなくてもCに対し,甲土地の時効取得を対抗できる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合において、,BがCから権利主張をされることなく占有開始時から20年間甲土地の占有を続けたとしても,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。

    A×  162条1項は,「20年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する」と規定する。また判例(最判平18.1.17【百選160】)は,「時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者対し特の事情のない限り,これを対抗することができないと解すべきである」としている。そして,判例(大判昭15.11.20)は,「時効制度は時効に因り利益を受くべき者の保護を目的とするものなれば,其者が既に完成したる時効の利益を放棄するや否又は援用するや否は,執れも其任意に属するものとなす法律の精神に鑑みれば,短期時効を援用し得る者が之を援用せずして長期時効を援用することは之を許容すべきものと解するを相当とす。是れ蓋し,当事者が任意に法定の時効期間を延長し又は時効の起算日を変更するものにあらざればなり」としている。そうすると,Bが162条2項の短期時効を援用したときは,Cは時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者にあたるから,特段の事情のない限り,時効取得した所有権を対抗することができないが,162条1項の長期時効を援用したときは,Cは時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者にあたるから,時効取得した所有権を対抗することができる。したがって,ウの事例において,BがCから権利主張をされることなく占有開始時から20年間甲土地の占有を続けた場合において,Bが162 条1項の長期時効を援用したときは,Bは登記がなくてもCに甲土地の時効取得を対抗できる。

  • Q未登記建物の買主であっても,売主に対して移転登記の請求ができる。

    A×  560条は,「売主は,買主に対し,登記,登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う」と規定するところ,判例(最判昭31.6.5)は,「未登記の建物所有権が売買によって他人に移転した場合においては,所有権取得者は判決をえて自己の所有権を証明して単独に保存登記をなすことを得るが(不動産登記法106条2号),また従来の所有者に対して移転登記の請求をなすこともできるのであって,この場合には従来の所有者は先ず保存登記をした上で所有権取得者に対して移転登記手続をなすべき義務を負担するのである」としている。したがって,未登記建物の買主であっても,売主に対して移転登記の請求ができる

  • Q通行地役権の承役地を譲り受けた者は,未登記の通行地役権者に対して背信的悪意者に当たらない場合でも,通行地役権の存在を否定できない場合があり,この場合には,通行地役権者は,地役権設定当事者ではないこの所有権者に対しても,地役権設定登記を求めることができる。

    A〇  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平10.2.13【百選163】)は,次のように判示している。「通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において,譲渡の時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識寸ることが可能であったときは,譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。」「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者は,民法177条にいう『第三者』(登記をしなければ物権の得喪又は変更を対抗することのできない第三者)に当たるものではなく,当該第三者に,不動産登記法4条又は5条に規定する事由のある場合のほか,登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には,当該第三者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。」「通行地役権の承役地が譲渡された時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,譲受人は,要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ,また,要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無,内容を容易に調査することができる。したがって,右の譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても,何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって,右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは,通常は信義に反するものといラベきである。ただし,例えば,承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており,かつ,そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合には,地役権設定登記の欠缺を主張することが信義に反するものということはできない。」「したがって,右の譲受人は,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないものというべきである。なお,このように解するのは,右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから,右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要するものではない。」また,判例(最判平10.12.18)は,「通行地役権の承役地の譲受人が地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらず,通行地役権者が譲受人に対し登記なくして通行地役権を対抗できる場合には,通行地役権者は,譲受人に対し,同権利に基づいて地役権設定登記手続を請求することができ,譲受人はこれに応ずる義務を負うものと解すべきである。譲受人は通行地役権者との関係において通行地役権の負担の存在を否定し得ないのであるから,このように解しても譲受人に不当な不利益を課するものであるとまではいえず,また,このように解さない限り,通行地役権者の権利を十分に保護することができず,承役地の転得者等との関係における取引の安全を確保することもできない」としている。したがって,通行地役権の承役地を譲り受けた者は,未登記の通行地役権者に対して背信的悪意者に当たらない場合でも,通行地役権の存在を否定できない場合があり,この場合には,通行地役権者は,地役権設定当事者ではないこの所有権者に対しても,地役権設定登記を求めることができる。

  • Q売買契約に基づき土地の所有権の移転登記を受けた買主は,この売買契約を解除した場合,売主に移転登記の抹消登記を請求することができる。

    A〇  判例(最判昭36.11.24)は,「真実の権利関係に合致しない登記があるときは,その登記の当事者の一方は他の当事者に対しいずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するとともに,他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである」としている。したがって,売買契約に基づき土地の所有権の移転登記を受けた買主は,この売買契約を解除した場合,登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権に基づき,売主に移転登記の抹消登記を請求することができる。

  • Q不動産を買い受けた者は,第三者の名義を勝手に使って,売主からその第三者への移転登記を行った場合,その後,この登記名義人に対して,真正な名義の回復を理由とする移転登記を請求することができない。

    A×  判例(最判昭30.7.5)は,「不動産の登記簿上の所有名義人は真正の所有者に対しその所有権の公示に協力すベき義務を有するものであるから,喜正の所有者は所有権に基き所有名義人に対し所有権移転登記の請求を為し得るものと解するのが相当である」としている。したがって,不動産を買い受けた者は,第三者の名義を勝手に使って,売主からその第三者への移転登記を行った場合,その後,この登記名義人に対して,真正な名義の回復を理由とする移転登記を請求することができる。

  • Q Aがその不動産についてBのために抵当権を設定し,その後AがCに同一不動産を譲渡した場合,Bは,その抵当権設定の登記がなければその抵当権の取得をCに対抗することができない。

    A〇  判例(大連判明 41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称寸·····。即ち,同一の不動産に関する所有権柢当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,Aがその不動産についてBのために抵当権を設定し,その後AがCに同一不動産を譲渡した場合,Cは「第三者」にあたるから,Bは,その抵当権設定の登記がなければその抵当権の取得をCに対抗することができない。

  • Q  Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産について地上権を設定した上でそれに基づいて引渡しをした場合において,Bヘの所有権移転の登記もCの地上権設定の登記もないときは,Bは,Cに対して所有権に基づいて当該不動産の引渡しを請求することができない。

    A〇  判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及ぴ変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す·····。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって, Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産について地上権を設定した上でそれに基づいて引渡しをした場合,Bから見たCも,Cから見たBも,いずれも「第三者」にあたるから,Bへの所有権移転の登記もCの地上権設定の登記もないときは,Bは,Cに対して所有権に基づいて当該不動産の引渡しを請求することができない。

  • Q Aがその土地をBに賃貸し,Bがその土地上に建物を建築して所有権保存登記をした後,AがCに当該土地を譲渡した場合において,当該土地に関する所有権移転登記を受けたCは, Bに対して当該土地の賃料の請求をすることができる

    A〇  605条の2第1項は,「前条,借地借家法····第10条又仕第31条その他の法令の規定に上る賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法 10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定する。また,605条の2第3項は,「第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって, Aがその土地をBに賃貸し,Bがその土地上に建物を建築して所有権保存登記をした後,AがCに当該土地を譲渡した場合において,当該土地に関する所有権移転登記を受けたCは,賃貸人たる地位の移転をBに対抗することができるから,Bに対して当該土地の賃料の請求をすることができる。

  • Q Aは,Bと通じて,Aの不動産について有効な売買契約が存在しないにもかかわらず売買を原因とする所有権移転登記をBに対して行い,その後,この事情について善意無過失であるCに対してBが同一不動産を譲渡したが,BC間の所有権移転登記はされていない。この場合において,さらにその後,AがDに同一不動産を譲渡したときは,Cは,所有権の取得をDに対抗することができる。

    A×  94条1項は,「相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする」と規定し,同条2項は,「前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭 42.10.31)は,要旨,甲が乙に不動産を仮装譲渡し,丙が善意で乙からこれを譲りうけた場合であっても,丙が所有権取得登記をする前に,甲からの譲受人丁が乙を債務者とし該不動産について処分禁止の仮処分登記を経ていたときは,丙はその所有権取得を丁に対抗することができない,としている。したがって,Aが,Bと通じて,Aの不動産について有効な売買契約が存在しないにもかかわらず売買を原因とする所有権移転登記をBに対して行い,その後,この事情について善意無過失であるCに対してBが同一不動産を譲渡したが,BC間の所有権移転登記はされていない場合において,さらにその後,AがDに同一不動産を譲渡したときは, Cは,所有権の取得をDに対抗することができない。

  • Q Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産を譲渡し, さらにCが同一不動産を転得者Dに譲渡し,AC間及びCD間の所有権移転登記が行われた場合において,CがBとの関係で背信的悪意者に当たるが,D自身がBとの関係で背信的悪意者と評価されないときは,Dは,所有権の取得をBに対抗することができる。

    A〇  判例(最判平8.10.29【百選I61】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもっててに対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,Aがその不動産をBに譲渡し,その後AがCに同一不動産を譲渡し,さらにCが同一不動産を転得者Dに譲渡し,AC間及びCD間の所有権移転登記が行われた場合において,CがBとの関係で背信的悪意者にあたるが,D自身がBとの関係で背信的悪意者と評価されないときは,Dは,所有権の取得をBに対抗することができる。

  • Q 未成年者AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bが,Aの未成年の事実を過失なく知らないCに甲士地を売却し, その旨の所有権移転登記がされた場合において, AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは,Cは, Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

    A〇  5条1項は,「未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならない。ただし,単に権利を得,又は義務を免れる法律行為については,この限りでない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に反する法律行為は,取り消すことができる」と規定する。また,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。そして,判例(大判明39.12.13)は,「法律行為の取消は初めより其行為を無効ならしむるの効果を生ずることは民法第121条に規定する所なれば,法律行為取消の効果は法律に特別規定あれば格別,然らざれば何人と雖も之を主張することを得べ<」としているところ,未成年者の法律行為に関して「法律に特別規定」はない。したがって,未成年者AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bが,Aの未成年の事実を過失なく知らないCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合であっても,AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは,Cは, Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに売却し,その代金が未払である間に,AからBへ所有権移転登記がされた後,Bが,Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合において,AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときは,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない

    A×  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭 33.6.14)は,「いわゆる迦及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に週って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって,もし右登記を経由しさいないときは第三者として保護するを得ないものと解すベきである。けだし右第三者を民法177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである」としている。また,条文上善意であることは要求されていないし,解除原因が存在しても必ずしも解除されるとは限らない以上,解除原因について悪意の者も十分保護に値するから,「第三者」の主観的保護要件は問わないと解されている。したがって,AがA所有の甲土地をBに売却し,その代金が未払である間に,AからBへ所有権移転登記がされた後,Bが,Bの代金未払の事実を知っているCに甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされた場合,AがBの履行遅滞によりAB間の売買契約を解除したときであっても,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q AがA所有の甲土地をBに売却したが,代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ,その後,Bが甲土地の所有権を有することを確認寸る旨の示談が成立した場合において,当該示談に立会人として関与し,示談書に立会人として署名捺印していたCが,AからBに所有権移転登記がされる前に,Aに対する債権に基づいて,A名義の甲土地を差し押さえ,その旨の差押えの登記がされたときは,Bは,Cに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

    A×  判例(最判昭43.11.15)は,要旨,「実体上物権変動があった事実を知る者において,右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,かかる背信的悪意者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,民法 177条にいう第三者に当たらないものと解すべきところ」,甲が乙に贈与した山林に関し,甲乙間に,右山林が乙の所有に属することを確認し,甲はすみやかに乙に対しその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において,丙が立会人として右示談交涉に関与し,かつ,右和解条項を記載した書面に立会人として署名捺印した等判示の事情があるときには,丙は,いわゆる背信的悪意者として,乙の右所有権取得登記の欠缺を主張寸る正当な利益を有する第三者にあたらないものというべきである,としている。したがって, AがA所有の甲土地をBに売却したが,代金の支払をめぐってAB間で争いを生じ,その後,Bが甲土地の所有権を有することを確認する旨の示談が成立した場合において,当該示談に立会人として関与し,示談書に立会人として署名捺印していたCが,AからBに所有権移転登記がされる前に,Aに対する債権に基づいて,A名義の甲土地を差し押さえ,その旨の差押えの登記がされたときは,Bは,Cに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q AがA所有の甲土地をBに売却した後,CがBを害する目的で甲士地をAから買い受け,その旨の所有権移転登記がされた場合においてCが事情を知らないDに対して甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされたときは,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる

    A×  判例(最判平8.10.29【百選I61】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法 177 条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,AがA所有の甲土地をBに売却した後,CがBを害する目的で甲土地をAから買い受け,その旨の所有権移転登記がされた場合において,Cが事情を知らないDに対して甲土地を売却し,その旨の所有権移転登記がされたときは,Cは「第三者」にはあたらないが,Dは「第三者」にあたるから,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q  BがA所有のA名義の甲土地を占有し,取得時効が完成した後,CがAから甲土地について抵当権の設定を受けて抵当権設定登記がされた場合において,Bがその抵当権の設定の事実を知らずにその後引き続き時効取得に必要な期問甲土地を占有し,その期間経過後に取得時効を援用したときは,Bは,Cに対し,抵当権の消滅を主張することができる。

    A〇  判例(最判平24.3.16【百選I58】)は,次のように判示している。「不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者がその後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者は,上記不動産を時効取得し,その結果上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。その理由は,以下のとおりである。」「取得時効の完成後,所有権移転登記がされないうちに,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了したならば,占有者がその後にいかに長期間占有を継続しても抵当権の負担のない所有権を取得することができないと解することは,長期間にわたる継続的な占有を占有の態様に応じて保護すべきものとする時効制度の趣旨に鑑みれば,是認し難いというべきである。」「そして,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者に上記不動産が譲渡され,その旨の登記がされた場合において,占有者が,上記登記後に,なお引き続き時効取得に要する期間占有を継続したときは,占有者は,上記第三者に対し,登記なくして時効取得を対抗し得るものと解されるところ·····,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者が上記不動産につき抵当権の設定を受け,その登記がされた場合には,占有者は,自らが時効取得した不動産につき抵当権による制限を受け,これが実行されると自らの所有権の取得自体を買受人に対抗することができない地位に立たされるのであって,上記登記がされた時から占有者と抵当権者との間に上記のような権利の対立関係が生ずるものと解され,かかる事態は,上記不動産が第三者に譲渡され,その旨の登記がされた場合に比肩するということができる。また,上記判例によれば,取得時効の完成後に所有権を得た第三者は,占有者が引き続き占有を継続した場合に,所有権を失うことがあり,それと比ベて,取得時効の完成後に抵当権の設定を受けた第三者が上記の場合に保護されることとなるのは,不均衡である。」したがって,BがA所有のA名義の甲土地を占有し,取得時効が完成した後,CがAから甲土地について抵当権の設定を受けて抵当権設定登記がされた場合において,Bがその抵当権の設定の事実を知らずにその後引き続き時効取得に必要な期間甲土地を占有し,その期間経過後に取得時効を援用したときは, Bは,Cに対し,抵当権の消滅を主張することができる。

  • Q AがA所有の甲建物をBに売却し,さらにBがこれをCに売却した場合,Cは, Aに対し,登記をしなくても売買による甲建物の所有権の取得を対抗することができる。

    A〇  判例(最判昭39.2.13)は,「民法177 条に所謂第三者たるには,係争土地に対しなんらか正当の権利を有することを要し,なんら正当の権利を有せず単に該土地を譲渡した前所有者にすぎない如きものは登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものといえない」としている。したがって,AがA所有の甲建物をBに売却し,さらにBがこれをCに売却した場合,Aは「第三者」にあたらないから,Cは,Aに対し,登記をしなくても売買による甲建物の所有権の取得を対抗することができる。

  • Q A所有の甲土地についてBがAから遺贈を受けた場合において,Aの共同相続人のー人であるCの債権者Dが甲土地についてCが共同相続したものとしてCのその持分を差し押さえ,その旨の登記がされたときは, Bは, Dに対し,登記をしなくても遣贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができる。

    A×  判例(最判昭39.3.6【百選Ш74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ····,遺贈は遺言によって受遣者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして,民法177 条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としている。したがって,A所有の甲土地についてBがAから遺贈を受けた場合において, Aの共同相続人のー人であるCの債権者Dが甲土地についてCが共同相続したものとしてCのその持分を差し押さえたときは,Dは「第三者」にあたるから,その旨の登記がされたときは, Bは,Dに対し,遺贈による甲土地の単独所有権の取得を対抗することができない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q 甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡し,二人の子BCのうちBが相続放棄をしてCが唯一の相続人となった場合において, Bの債権者Dが甲土地についてBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえ, その旨の登記がされたときは,Cは, Dに対し,登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる.

    A〇  939条は,「相続の放乘をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすべき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しょうとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法 938条),相続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としている。したがって,甲土地を所有するAが遣言をしないで死し,二人の子BCのうちBが相続放棄をしてCが唯一の相続人となった場合において,Bの債権者Dが甲土地についてBも共同相続したものとしてBのその持分を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,Cは,Dに対し,登記をしなくても単独相続による甲土地の所有権の取得を対抗することができる。

  • Q A所有の甲土地をAからBが買い受けた後,Bの代金未払を理由にAB間の売買契約が解除された場合において,その後にBがCに甲士地を売却しその旨の登記がされたときは, Aは,Cに対し,解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。

    A〇  判例(最判昭 35.11.29【百選I56】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ。不動産の所有権が買主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と······に拘らない」としている。したがって, A所有の甲土地をAからBが買い受けた後,Bの代金未払を理由にAB間の売買契約が解除された場合において,その後にBがCに甲土地を売却しその旨の登記がされたときは,Aは,Cに対し,解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。

  • Q Aが新築して所有する未登記の甲建物をBが不法に占有している場合,Aは,Bに対し,登記をしなければ甲建物の所有権の取得を対抗することができない。

    A×  判例(最判昭 25.12.19【百選162])は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としている。したがって,Aが新築して所有する未登記の甲建物をBが不法に占有している場合,Bは「第三者」にあたらないから,Aは,Bに対し,登記をしなくても甲建物の所有権の取得を対抗することができる。

  • Q  A所有の甲土地をAがBに売却し,その後Aが甲土地をCに対し売却してその旨の登記がされ,更にCが甲土地をDに対し売却してその旨の登記がされた場合において,CがBに対する関係で背信的悪意者に当たるときは,Bは,Dに対し,甲土地の所有権を登記がなくても主張することができる。

    A×  判例(最判平8.10.29【百選161】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177 条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,その後Aが甲土地をCに対し売却してその旨の登記がされ,更にCが甲土地をDに対し売却してその旨の登記がされた場合において,CがBに対する関係で背信的悪意者にあたるときでも,DがBに対する関係で背信的悪意者にあたるのでなければ,Bは,Dに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

  • Q A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされたが,AがBの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後,この取消しについて善意無過失のCに対しBが甲土地を売却し,その旨の登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を登記がなくても主張することができる。

    A×  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30【百選I55】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得さる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の週及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の湖及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すベく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取消の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる······と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為寸を得ず。今之を本件に付て観るに,本件売買が·····詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」としている。したがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされたが,AがBの詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消した後,この取消しについて善意無過失のCに対しBが甲土地を売却し,その旨の登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない

  • Q  A所有の甲土地をAがBに売却し,更にBがCに売却し,それぞれその旨の登記がされた場合において,その後,AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは,Aは,Bの代金不払の事実を知らないCに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

    A〇  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭33.6.14)は,「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に邂って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって,もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法 177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すべき何らの理由もないからである」としている。したがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,更にBがCに売却しそれぞれその旨の登記がされた場合において,その後,AがAB間の売買契約をBの甲土地の代金不払を理由に解除したときは, Aは,Bの代金不払の事実を知らないCに対し,甲土地の所有権を主張することができない

  • Q A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされた場合において,その後,これより前から所有の意思をもって甲土地を占有していたCについて取得時効が完成したときは, Cは,Bに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

    A×  判例(最判昭41.11.22)は,「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては,単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって,この関係においては,結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである。そして,時効が完成しても,その登記がなければ,その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し,第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては,その第三者に対しては,登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができるものと解すべき」としているしたがって,A所有の甲土地をAがBに売却し,その旨の登記がされた場合において,その後,これより前から所有の意思をもって甲土地を占有していたCについて取得時効が完成したときは,Cは,Bに対し,甲土地の所有権を主張することができる。

  • Q 甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し,BとCがAを共同相続し, Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において,その後,BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは, Bは,Dに対し,抵当権設定登記の抹消を請求することができない。

    A〇  909 条は,「遺産の分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭46.1.26)は,「民法 909 条但書にいう第三者は,担続開始後遺産分制前に生じた第三者を指」すとしている。また,545条1項ただし書の「第三者」と同じく,主観的保護要件は問わないが,対抗要件を備えることが必要と解されている。したがって,甲土地を所有していたAが遺言を残さずに死亡し,BとCがAを共同相続し,Cが甲土地をBCの共有とする共同相続登記をしてCの持分にDのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において,その後,BCの遺産分割協議により甲土地がBの単独所有とされたときは,Bは,Dに対し,抵当権設定登記の抹消を請求することができない

  • Q  Aは,その所有する甲土地上に,Bのために第一順位の抵当権を,Cのために第二順位の抵当権をそれぞれ設定し,その登記がされた。その後,Cが甲土地をAから相続によって取得した場合であっても,第二順位の抵当権は混同により消滅しない。

    A×  179条1項は,「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は,消滅する。ただし,その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」と規定するところ,判例(大判昭 4.1.30)は,要旨,同一物に付所有権と二番抵当権とが同一人に帰したる場合に三番抵当権の存せざる限り右二番抵当権は消滅するものとす,としている。したがって,Aが,その所有する甲土地上に,Bのために第一順位の抵当権を,Cのために第二順位の抵当権をそれぞれ設定し,その登記がされた後,Cが甲土地をAから相続によって取得した場合,第二順位の抵当権は混同により消滅する。

  • Q  Aがその所有する甲土地をBに売却した後,Bが甲土地をCに転売し,それぞれその旨の登記がされた。その後,Aは詐欺を理由としてBとの売買契約を取り消した。Cは,Aの売買の意思表示が詐欺によることを過失なく知らなかった場合,甲土地の所有権の取得を妨げられない。

    A〇  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭 17.9.30【百選I55】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の遡及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の湖及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すべき,としている。したがって, Aが詐欺を理由としてBとの売買契約を取り消した場合,Cは,「第三者」にあたり,Aの売買の意思表示が詐欺によることを過失なく知らなかった場合,甲土地の所有権の取得を妨げられない。

  • Q  Bが甲建物及びその敷地である乙土地をそれぞれ共有していたところ,乙土地のAの共有持分に抵当権が設定された。その後,その抵当権が実行され,Cがそれを買い受けた場合,甲建物のために乙土地上に地上権が成立する

    A×  388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合におい-その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす」と規定するところ,判例(最判平 6.4.7)は,「土地及びその上にある建物がいずれも甲,乙両名の共有に属する場合において,土地の甲の持分の差押えがあり, その売却によって第三者が右持分を取得寸るに至ったとしても,民事執行法81条[注:民法388条〕の規定に基づく地上権が成立することはないと解するのが相当である。けだし,この場合に,甲のために同条の規定に基づく地上権が成立するとすれば,乙は,その意思に基づかず,甲のみの事情によって土地に対する持分に基づく使用収益権を害されることになるし,他方,右の地上権が成立することを認めなくても,直ちに建物の収去を余儀なくされるという関係にはないので,建物所有者が建物の収去を余儀なくされることによる社会経済上の損失を防止しようとする同条の趣旨に反することもないからである」としている。したがって,乙土地のAの共有持分に抵当権が設定された後,その抵当権が実行され,Cがそれを買い受けた場合でも,甲建物のために乙土地上に地上権は成立しない。

  • Q Aがその所有する甲土地をBに売却した後,Bが甲土地をCに転売L,それぞれその旨の登記がされた。その後,AとBとの間の売買契約は,Aが成年被後見人であることを理由として取り消された。Cが,Aが成年被後見人であったことを過失なく知らなかった場合,AはCに対し,甲土地の所有権が自己にあることを主張することができない。

    A×  9条は,「成年被後見人の法律行為は,取り消すことができる。ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為については,この限りでない」と規定し,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。そして,判例(大判明39.12.13)は,「法律行為の取逍は初めより其行為を無効ならしセるの効果を生ずることは民法第 121条に規定する所なれば,法律行為取消の効果は法律に特別規定あれば格別,然らざれば何人と雖も之を主張することを得べく」としているところ,成年被後見人の法律行為に関して「法律に特別規定」はない。したがって, AとBとの間の売買契約が,Aが成年被後見人であることを理由として取り消された場合,Cが,Aが成年被後見人であったことを過失なく知らなかった場合でも, Aは,Cに対し,甲土地の所有権が自己にあることを主張することができる。

  • Q 地役権の要役地の所有権を単独で相続した者は,地役権設定行為に別段の定めがないときは,その土地の地役権も相続する。

    A〇  281条1項は,「地役権は,要役地(地役権者の土地であって,他人の士地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして, その所有権とともに移転し,又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし,設定行為に別段の定めがあるときは,この限りでない」と規定する。したがって,地役権の要役地の所有権を単独で相続した者は,地役権設定行為に別段の定めがないときは,その土地の地役権も相続する。

  • Q  Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。土地を所有し占有するYが税金対策のために登記名義をAとしていたところ,Xは,Aが真実の所有者であると過失なく信じ,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた。

    A拒絶することはできない   94条1項は,「相手方と通じてした虚偽の意思表示は,無効とする」と規定し,同条2項は,「前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭 45.7.24)は「不動産の所有者が,他人にその所有権を帰せしめる意思がないのに, その承諾を得て,自己の意思に基づき,当該不動産につき右他人の所有名義の登記を経由したときは,所有者は,民法94条2項の類推適用により,登記名義人に右不動産の所有権が移転していないことをもって,善意の第三者に対抗することができない·····が,右登記について登記名義人の承諾のない場合においても,不実の登記の存在が真実の所有者の意思に基づくものである以上,右94条2項の法意に照らし,同条項を類推滴用すべきものと解するのが相当である。けだし,登記名義人の承諾の有無により,真実の所有者の意思に基づいて表示された所有権帰属の外形に信頼した第三者の保護の程度に差等を設けるベき理由はないからである」としている。したがって,土地を所有し占有するYが税金対策のために登記名義をAとしていたところ,Xは,Aが真実の所有者であると過失なく信じ,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた場合,Xは94条2項の類推適用により保護されるから,Yは引渡しを拒絶することができない。

  • Q Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。土地を所有し占有するYからAへ、AからXへと同土地が順次売買され,それぞれ代金の支払も了した。

    A拒絶することはできない  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.2.13)は,「民法 177 条に所謂第三者たるには,係争土地に対しなんらか正当の権利を有することを要し,なんら正当の権利を有せず単に該土地を譲渡した前所有者にすぎない如きものは登記の欠缺を主張するにつき正当の利益を有するものといえない」としている。したがって,土地を所有し占有するYからAへ,AからXへと同土地が順次売買された場合,Yは「第三者」にあたらないから,Xが所有権の取得をYに対抗するのに登記は不要である。また,295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定し,判例(最判昭47.11.16【百選179】)は,要旨,甲所有の物を買受けた乙が,売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には,甲は,丙からの物の引渡請求に対して,未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる,としているが,それぞれの代金の支払を了した場合,留置権の抗弁権を主張することもできない。したがって,Yは引渡しを拒絶することができない

  • Q Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。土地を所有し占有するYは, Aに対し,同土地を売却して移転登記を行ったが,この売買にはAによる詐欺があったので, YはAに対して取消しの意思表示をした。その直後,Aは,同土地をXに売却して移転登記を行った。

    A拒絶することはできない  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。一方,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30 【百選I55】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の週及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者とは,取消の溯及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前上り既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すべく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取消の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる····と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為すを得ず。今之を本件に付て観るに,本件売買が···詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」としている。したがって,Yが,売買について許欺取消しの意思表示をした直後,Aが,同土地をXに売却して移転登記を行った場合,Yは,所有権の復帰をXに対抗することができないから, Yは引渡しを拒絶することができない。

  • Q  Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。XがYの代理人としてAから土地を買い受け,Yが同土地を所有し占有するようになったが,登記名義はAのままであった。その直後,Xは,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた。

    A拒絶することができる  不動産登記法5条2項本文は,「他人のために登記を申請する義務を負う第三者は,その登記がないことを主張することができない」と規定すると二ろ,裁判例(東京高判昭 53.6.28)は,「亡甲は,本件土地の前所有者乙の代理人として,本件土地を被控訴人に売却し,同人よりその所有権移転登記手続を委任されながらこれを怠り,一方で右売買契約成立後に本件土地を自らあるいは実子である控訴人の代理人として乙から買受けているものであるから,丕動産登記法5条の法意に鑑み,控訴人は,被控訴人に社し本件土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないものというべきである」としている。したがって,XがYの代理人としてAから土地を買い受け,Yが同土地を所有し占有するようになった直後,Xが,Aから同土地を買い受けて移転登記を受けた場合,Xは,Yに対し土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないから,Yは引渡しを拒絶することができる。

  • Q  Xが所有権に基づき占有者Yに対し土地の引渡しを請求した場合,判例の趣旨に照らしYが引渡しを拒絶することができるものはどれか。Aの父はYに土地を売却し引き渡したが,移転登記をする前に急死してしまった。その後,この土地を単独で相続したAが,Xに対して同土地を売却して移転登記を行った。

    A拒絶することはできない  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·…その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判大15.2.1)は,「民法第177条に所謂第三者とは,当事者若は其の包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有するものなることは当院の夙に判例とする所なり。仍て,被相続人が不動産を甲に譲渡し未だ譲渡の登記を為さざる間に相続開始し,其の相続人が同一不動産を更に乙に譲渡し其の登記を為したる場合に於ては,乙は同条に所謂第三者に該当するや否を案ずるに,不動産を甲に譲渡したる被相続人は甲との関係に於ては該不動産の所有者と謂うことを得ずと雖,譲渡の登記なきを以て甲は其の所有権取得を之と反対若は相容れざる権利を取得し其の登記を為したる第三者に対抗することを得ざるが故に,若此の被相続人が相続開始前同一不動産を更に乙に譲渡し登記を為したりとせば,乙は完全なる所有権を取得すベく,従て,乙は甲の登記欠缺を主張する正当の利益を有する第三者なること疑なき所なれば,右の被相続人は譲渡の登記あらざる結果甲に対する譲渡に因りて全く不動産の所有権を失いたる者に非ずして,乙に対する関係に於ては依然所有者にして,所謂関係的所有権を有するものなりと謂うを得ベし。然るに,右被相続人が該不動産を乙に譲渡する以前に於て相続開始したるときは其の相続人は此の関係的所有権を承継するものと謂うベく,従て乙が此の相続人より同一不動産の譲渡を受け其の登記を経由したるときは,甲は披相続人上り取得したる該不動産の所有権を以て之に対抗することを得士して,乙は完全なる所有権を取得するものと謂わざるを得ず。故に,乙は同一所有者が同一不動産を二重に売買したる場合に於て,先ず所有権取得の登記を為したる買主と同一の地位に在るものにして,甲の登記欠缺を主張すべき正当の利益を有する第三者に該当すベく, 乙が甲に売渡したる所有者より買受けたると,其の相続人より買受けたるとに由りて差異を生ずべきものに非ず」としている。したがって, Yに土地を売却し引き渡したAの父が,移転登記をする前に急死した後,この土地を単独で相続したAが,Xに対して同土地を売却して移転登記を行った場合,YはAの父より取得した土地の所有権をXに対抗することができず,Xは完全なる所有権を取得するから,Yは引渡しを拒絶することができない。

  • Q  Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBに対し, Aから甲土地を譲り受けたCは,AからCヘの所有権移転登記をしなければ,甲土地の所有権を主張して乙建物の収去を請求することができない。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭25.12.19【百選I62】) は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としている。したがって,Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBに対し,Aから甲土地を譲り受けたCは, AからCヘの所有権移転登記をしなくても,甲土地の所有権を主張して乙建物の収去を請求することができる。

  • Q  Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBから乙建物を譲り受けたDに対し, Aは,DがBからの乙建物の所有権移転登記を経由していない場合,Dが乙建物の所有者であることを主張して乙建物の収去を請求することができない。

    A×  判例(最判昭 35.6.17)は,「土地の所有権にもとづく物上請求権の訴訟においては,現実に家屋を所有することによって現実にその土地を占拠して土地の所有権を侵害しているものを被告としなければならないのである」としている。したがって,Aが所有する甲土地の上に権原なく乙建物を所有しているBから乙建物を譲り受けたDに対し,Aは,DがBからの乙建物をの所有権移転登記を経由していない場合でも、Dが乙建物の主張して乙建物の収去を請求することができる。なお,判例(最判平6.2.8【百選151】)は,「他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由所有権移転登記を経由していない倍した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自已所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというベきであるからである。もL,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって、Aは、DがBからの乙建物の所有権移転登記を経由していない場合,Bに乙建物の収去を請求することもできる。

  • Q  Aが所有する甲土地の上に建物所有目的の賃借権の設定を受けたEに対し,Aから甲土地を譲り受けたCは,AからCヘの所有権移転登記をしなければ,Eに対し賃料の支払を請求することができない。

    A〇  605条の2第1項は,「前条,借地借家法·····第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定する。また,605条の2第3項は,「賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって,Aが所有する甲土地の上に建物所有目的の賃借権の設定を受けたEに対し,Aから甲土地を譲り受けたCは,AからCヘの所有権移転登記をしなければ,賃貸人たる地位の移転を対抗することができないから, Eに対し賃料の支払を請求することはできない。

  • Q  Aが,その所有する甲土地をFに遺贈する旨の遺言をして死亡した場合において, Aの唯一の相続人である配偶者から甲土地を贈与されたGに対し,Fは,所有権移転登記をしなくても,甲土地の所有権取得を対抗することができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.3.6【百選I74】) は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ··.···,遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして,民法177 条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としいる。したがって, Aが,その所有する甲土地をFに遺贈する旨の遺言をして死亡した場合において, Aの唯一の相続人である配偶者から甲土地を贈与されたGに対し,Fは,所有権移転登記をしなければ,甲土地の所有権取得を対抗することができない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている

  • Q 甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡したことによりAの配偶者と子HがAの相続人となった場合において, Aの配偶者から甲土地を買った1に対し,Hは,相続登記をしなくても,甲土地について有する法定相続分に応じた持分の帰属を主張することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭38.2.22【百選159】)は,「相続財産に届する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって,甲土地を所有するAが遺言をしないで死亡したことによりAの配偶者と子HがAの相続人となった場合において, Aの配偶者から甲土地を買った1に対し,Hは,相続登記をしなくても,甲土地について有する法定相続分に応じた持分の帰属を主張することができる。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに譲渡し,Bが甲土地上に立木を植栽して明認方法を施した場合において,その後,AがCに甲土地を譲渡して,Cに対する所有権移転登記をしたときは,明認方法が存続していたとしても,BはCに対して,立木の所有権を対抗することができない。

    A×  判例(最判昭35.3.1)は,「立木所有権の地盤所有権からの分離は,立木が地盤に附合したまま移転する本来の物権奕動の効果を立木について制限することになるのであるから,その物権的効果を第三者に対抗するためには少なくとも立木所有権を公示する対抗要件を必要とすると解せられると二ろ,原審確定の事実によれば,被上告人らの本件山林所有権の取得は地盤の上の立木をその売買の目的から除外してなされたものとは認められず,かつ,被上告人らの山林取得当時には上告人の施した立木の明認方法仕既に消滅してしまっていたというのであるから,上告人の本件立木所有権は結局被上告人らに対抗しえないものと言わなければならない」としている。したがって,AがA所有の甲土地をBに譲渡し,Bが甲土地上に立木を植栽して明認方法を施した場合において,明認方法が存続していたときは,その後,AがCに甲土地を譲渡して,Cに対する所有権移転登記をしたとしても, BはCに対して,立木の所有権を対抗することができる。

  • Q  AがBに対して,完成した建物の所有権の帰属について特約をせずに,A所有の土地上に建物を建築することを注文したところ,Bが自ら材料を提供して建前を建築した段階で工事を中止した場合(その時点における時価400万円相当)において、Aから残工事を請け負ったCが自ら材料を提供して当該建前を独立の不動産である建物に仕上げ(その時点における時価900万円相当),かつ,AがCに代金を支払っていないときは,当該建物の所有権は,Cに帰属する。

    A〇  243 条は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも,同様とする」と規定する。一方,246条2項は,「前項に規定する場合【注:「他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるとき」〕において,加工者が材料の一部を供したときは,その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り,加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定する。そして,判例(最判昭54.1.25【百選I72】)は,「建物の建築工事請負人が建築途上において未だ独立の不動産に至らない建前を築造したままの状態で放置していたのに,第三者がこれに材料を供して工事を施し,独立の不動産である建物に仕上げた場合においての右建物の所有権が何びとに帰属するかは,243条の規定によるのではなく,セしろ,246条2項の規定に基づいて決定すべきものと解する。けだし,このような場合には,動産に動産を単純に附合させるだけでそこに施される工作の価値を無視してもよい場合とは異なり,右建物の建築のように,材料に対して施される工作が特段の価値を有し,仕上げられた建物の価格が原材料のそれよりも相当程度增加するような場合には,むしろ民法の加工の規定に基づいて所有権の帰属を決定するのが相当であるからである」としている。したがって,AがBに対して,完成した建物の所有権の帰属について特約をせずに,A所有の土地上に建物を建築することを注文したところ,Bが自ら材料を提供して建前を建築した段階で工事を中止した場合(その時点における時価400万円相当)において,Aから殘工事を請け負ったCが自ら材料を提供して当該建前を独立の不動産である建物に仕上げ(その時J点における時価900万円相当),AがCに代金を支払っていないときは,当該建物の所有権は,Cに帰属する。

  • Q  Aの所有する船舶(時価600万円相当)に,Bの所有する発動機(時価400万円相当)が取り付けられた場合において,損傷しなければこれらを分離することができず,主従の区別がつかないときは,当該発動機付船舶は,3対2の割合でAとBが共有する。

    A〇 243条は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも,同様とする」と規定するが,244 条は,「付合した動産について主従の区別をすることができないときは,各動産の所有者は,その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する」と規定寸る。したがって, Aの所有する船舶(時価 600 万円相当)に,Bの所有する発動機(時価400 万円相当)が取り付けられた場合において,損傷しなければこれらを分離することができず,主従の区別がっかないときは,当該発動機付船舶は,3対2の割合でAとBが共有する。

  • Q  Aが所有する建物を賃借したBがAの同意を得て增築をした場合には,その増築部分について取引上の独立性がなくても,増築部分の所有権は,Bに帰属する。

    A×  242 条は,「不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし,権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」と規定するところ,判例(最判昭44.7.25【百選173】)は,「第三建物は,既存の第二建物の上に増築された2階部分であり,その構造の一部を成すものでそれ自体では取引上の独立性を有せず,建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらないといわなければならず,たとえBが第三建物を構築するについて右第二建物の一部の賃貸人Aの承諾を受けたとしても 242 条但書の適用はないものと解するのが相当であり,その所有権は構築当初から第二建物の所有者Aに属したものといわなければならない」としているしたがって,Aが所有する建物を賃借したBがAの同意を得て増築をした場合において,その增築部分について取引上の独立性がないときは,増築部分の所有権は,Aに帰属する。

  • Q  Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において, Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。

    A〇  248条は,「第242 条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は,第703条及び第704条の規定に従い,その償金を請求することができ」と規定する。また,245条は,「前2条の規定は,所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用する」と規定L,243 条前段は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する」と規定する。したがって, Aの所有する液体甲(100立方メートル)が,Bの所有する液体乙(10 立方メートル)と混和して識別することができなくなり,液体丙(110立方メートル)となった場合において,Aが液体丙の所有権を取得したときは,BはAに対し,不当利得の規定に従い,その償金を請求することができる。

  • Q   A所有の不動産を占有するBが自己の占有に前の占有者Cの占有を併せて主張することによってその不動産の所有権を時効により取得したときは, Aは,Cの占有の開始日にさかのぽってその所有権を喪失する。

    A〇  162条1項は,「20年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する」と規定し,同条2項は,「10 年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」と規定するところ,187条1項は,「占有者の承継人は,その選択に従い,自己の占有のみを主張し,又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる」と規定する。そして,144条は,「時効の効力は,その起算日にさかのぼる」と規定する。したがって,A所有の不動産を占有するBが自己の占有に前の占有者Cの占有を併せて主張することによってその不動産の所有権を時効により取得したときは,Aは, Cの占有の開始日にさかのぼってその所有権を喪失する。

  • Q売主が他人の不動産を売り渡した後にその所有権を取得したときは,買主は,売主がその不動産の所有権を取得した後これを買主に移転する意思を表示した時に,その不動産の所有権を取得する。

    A×  176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生ずる」と規定するところ,判例(最判昭 40.11.19)は,要旨,売主が第三者所有の特定物を売り渡した後右物件の所有権を取得した場合には,買主への所有権移転の時期·方法について特段の約定がないかぎり,右物件の所有権は,なんらの意思表示がなくても,売主の所有権取得と同時に買主に移転する,としているしたがって,売主が他人の不動産を売り渡した後にその所有権を取得したときは,買主への所有権移転の時期·方法について特段の約定がないかぎり,買主は,それと同時にその不動産の所有権を取得する。

  • Q  詐害行為取消権に基づき不動産の贈与契約を取り消す旨の判決が確定したときは,贈与契約による所有権移転の効果は,贈与契約締結時にさかのぼって消滅する。

    A〇  424条1項本文は,「債権者は,債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる」と規定し,425条は「詐害行為取消請求を認容する確定判決は,債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」と規定する。そして,判例(最判平30.12.14)は,「詐害行為取消しの効果は詐害行為取消判決の確定により生ずるものであるが······,その効果が将来に向かってのみ生ずるのか,それとも過去に週って生ずるのかは,詐害行為取消制度の趣旨や,いずれに解するかにより生ずる影響等を考慮して判断されるべきものである。詐害行為取消権は,詐害行為を取消した上,逸出した財産を回復して債務者の一般財産を保全することを目的とするものであり,受益者又は転得者が詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として,その財産の回復義務を生じさせるものである····。そうすると,詐害行為取消しの効果は過去に測って生ずるものと解するのが上記の趣旨に沿うものといえる」したがって,詐害行為取消権に基づき不動産の贈与契約を取り消寸旨の</判決が確定したときは,贈与契約による所有権移転の効果は,贈与契約締結時にさかのぼって消滅する。

  • Q 不動産の譲渡をもって代物弁済契約がされた場合,所有権移転登記をするまでは,その不動産の所有権が債権者に移転することはない。

    A×  482条は,「弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が,債権者との間で,債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において,その弁済者が当該他の給付をしたときは,その給付は,弁済と同一の効力を有する」と規定する。一方,176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって, その効力を生ずる」と規定する。そして,判例(最判昭57.6.4)は,「不動産所有権の譲渡をもってする代物弁済による債務消滅の効果は,単に当事者がその意思表示をするだけでは足りず,登記その他引渡行為を完了し,第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ生じないことはいうまでもないが·····,そのことは,代物弁済による所有権移転の効果が,原則として当事者間の代物弁済契約の意思表示によって生ずることを妨げるものではないと解するのが相当である」としている。したがって,不動産の譲渡をもって代物弁済契約がされた場合,所有権移転登記をしなくても,その不動産の所有権は債権者に移転する。

  • Q  相続財産のうち,特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言があった場合,その遺言で相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして, その不動産の所有権は,被相続人の死亡の時に直ちに相続により当該相続人に承継される。

    A〇  判例(最判平3.4.19【百選I87】)は,「被相続人の遣産の承継関係に関する遺言については,遺言書において表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきものであるところ,遺言者は,各相続人との関係にあっては,その者と各相続人との身分関係及び生活関係,各相続人の現在及び将来の生活状況及び資力その他の経済関係,特定の不動産その他の遺産についての特定の相続人のかかわりあいの関係等各般の事情を配慮して遺言をするのであるから,遺言書において特定の遺産を特定の相続人に『相続させる』趣旨の遺言者の意思が表明されている場合,当該相続人も当該遺産を他の共同相続人と共にではあるが当然相続する地位にあることにかんがみれば,遺言者の意思は,右の各般の事情を配慮して,当該遺産を当該相続人をして,他の共同相続人と共にではなくして,単独で相続させようとする趣旨のものと解するのが当然の合理的な意思解釈というべきであり,遺言書の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り,遺贈と解十べきではない。そして,右の『相続させる』趣旨の遺言,すなわち,特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させようとする遺言は,前記の各般の事情を配慮しての被相続人の意思として当然あり得る合理的な遺産の分割の方法を定めるものであって,民法 908条において被相続人が遺言で遺産の分割の方法を定めることができるとしているのも,遺産の分割の方法として,このような特定の遺産を特定の相続人に単独で相続により承継させることをも遺言で定めることを可能にするために外ならない。したがって,右の『相続させる』趣旨の遺言は,正に同条にいう遺産の分割の方法を定めた遺言であり,他の共同相続人も右の遺言に拘束され,二れと異なる遺産分割の協議,さらには審判もなし得ないのであるから,このような遺言にあっては,遺言者の意思に合致するものとして,遺産の一部である当該遣産を当該相続人に帰属させる遺産の一部の分割がなされたのと同様の遺産の承継関係を生ぜしめるものであり,当遺言において相続に上る承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り,何らの行為を要せずして,被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継されるものと解すべきである」としている。

  • Q  AがBに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた後,Aは,Bの代金不払を理由に売買契約を解除した。その後BがCに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた場合,Aは, Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

    A〇  判例(最判昭 35.11.29 【百選156】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ,不動産の所有権が買主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と·····に拘らない」としている。したがって, AがBに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた後,Aが,Bの代金不払を理由に売買契約を解除したが,その後BがCに甲土地を売却し,所有権移転登記がされた場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権を主張することができない。

  • Q AがB所有の甲土地を占有し,取得時効が完成した後BからAへの所有権移転登記が未了の間に,CがBから甲土地を譲り受けて登記をした場合であっても,Aがその後さらに占有を継続し,Cが登記をした時から再度取得時効の期間が経過したときは,Aは,Cに対し,所有権移転登記をしなくても時効による所有権取得を主張することができる。

    A〇  判例(最判昭36.7.20) は,要旨,不動産の取得時効が完成しても,その登記がなければ, その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが,第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には,その第三者に対し,登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗しうるものと解すべきである,としている。したがって,AがB所有の甲土地を占有し,取得時効が完成した後BからAヘの所有権移転登記が未了の間に,CがBから甲土地を譲り受けて登記をした場合であっても, Aがその後さらに占有を継続し,Cが登記をした時から再度取得時効の期間が経過したときは, Aは,Cに対し,所有権移転登記をしなくても時効による所有権取得を主張することができる。

  • Q  甲土地を含む財産をABCが共同で相続し,その後Aのみが相続を放乘した場合,BCがBCのみの共有持分登記をする前に,Aの債権者DがAも共同相続したものとして代位によりAの共有持分登記をした上,Aの持分を差し押さえたときは,BCは,Dに対し,甲土地がB Cのみの共有であることを主張することができない。

    A×  939条は,「相続の放乘をした者は,その相統に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすべき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法 938条),相続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的可人,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」(-したがって,甲土地を含む財産をABCが共同で相続し,その後Aのみが相続を放棄した場合,BCがBCのみの共有持分登記をする前に,Aの債権者DがAも共同相続したものとして代位によりAの共有持分登記をした上,Aの持分を差し押さえたときであっても, BCは,Dに対し,甲土地がBCのみの共有であることを主張することができる。

  • Q  甲土地がAからB, BからCに順次売却された後,AB間の売買契約が合意により解除された場合,Cは, Aに対し,所有権移転登記をしなくても甲土地の所有権取得を主張することができる。

    A×  545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭 33.6.14)は,「いわゆる遡及効を有する契約の解除が第三者の権利を害することを得ないものであることは民法545条1項但書の明定するところである。合意解約は右にいう契約の解除ではないが,それが契約の時に測って効力を有する趣旨であるときは右契約解除の場合と別異に考うべき何らの理由もないから,右合意解約についても第三者の権利を害することを得ないものと解するを相当とする。しかしながら,右いずれの場合においてもその第三者が本件のように不動産の所有権を取得した場合はその所有権について不動産登記の経由されていることを必要とするものであって,もし右登記を経由していないときは第三者として保護するを得ないものと解すべきである。けだし右第三者を民法 177 条にいわゆる第三者の範囲から除外しこれを特に別異に遇すベき何らの理由もないからである」としいるしたがって,甲土地がAからB, BからCに順次売却された後,AB間の売買契約が合意により解除された場合,Cは,Aに対し,所有権移転登記をしなければ,甲土地の所有権取得を主張することができない。

  • Q  Aは,A所有の甲土地をBに売却し, AからBヘの所有権移転登記をした後,Bから強迫されたことを理由として, AB間の甲土地の売買契約を取り消した。その後,Cが,Bによる強迫の事実も,Aによる取消しの事実も知らずに,Bから甲土地を買い受け,BからC~の所有権移転登記をした場合,Cは, Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

    A〇  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するところ,判例(大判昭17.9.30【百選155】)は,「本件売買が··.···取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ざる」としている。したがって,Aが,Bから強迫されたことを理由として, AB間の甲士地の売買契約を取り消した後,Cが,Bによろ強迫の事実も,Aによる取消しの事実も知らずに,Bから甲土地を買い受け,BからCへの所有権移転登記をした場合,Cは,Aに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q  Aが,A所有の甲建物をBとCに二重に売却し,AからBヘの所有権移転登記も,AからCヘの所有権移転登記もされていない時に,Dが甲建物を勝手に占拠した場合,Bは,AからBへの所有権移転登記をするまでは,Dに対し,所有権に基づき甲建物の明渡しを請求することはできない。

    A×  判例(最判昭 25.12.19【百選162】)は,「不法占有者は民法第177条にいう『第三者』に該当せず,これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものである」としているしたがって,Aが,A所有の甲建物をBとCに二重に売却し,AからBヘの所有権移転登記も,AからCヘの所有権移転登記もされていない時に, Dが甲建物を勝手に占拠した場合,Bは,AからBヘの所有権移転登記をしなくても,Dに対し,所有権に基づき甲建物の明渡しを請求することができる。

  • Q  Aは,B所有の甲土地上に,勝手に乙建物を建築して所有権保存登記をした上,乙建物をCに売却した。その後,Bが,Aに対し,甲土地の所有権に基づき乙建物の収去を請求した場合,Aは,乙建物についてAからCへの所有権移転登記をする前であっても,乙建物の所有権を失ったことを理由としてBの請求を拒むことができる。

    A×  判例(最判平6.2.8【百選I51】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすベきである。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,右譲渡人は,土地所有者による建物収去·土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというベきであり·····,また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物收去·土地明渡しの義務を負わないものというべきである」とした上で,「もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても,引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去·土地明渡しの義務を免れることはできないものと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく,建物所有者は,自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し,これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど因難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならない」としている。したがって,Aが,B所有の甲土地上に,勝手に乙建物を建築して所有権保存登記をした上,乙建物をCに売却した後,Bが,Aに対し,甲土地の所有権に基づき乙建物の収去を請求した場合,Aは,乙建物についてAからCヘの所有権移転登記をするまで,乙建物の所有権を失ったことを理由としてBの請求を拒むことができない。

  • Q  Aは,Bの代理人として,C所有の甲土地をCから買い受けたが,CからBヘの所有権移転登記がされる前に,自ら甲土地をCから買い受け,CからAヘの所有権移転登記をし,さらに,Dに対して甲土地を売却し, AからDヘの所有権移転登記をした場合,Bは,Dに対し,登記をしなくても甲土地の所有権の取得を主張することができる。

    A×  不動産登記法5条2項本文は,「他人のために登記を申請する義務を負う第三者は,その登記がないことを主張することができない」と規定するところ,裁判例(東京高判昭 53.6.28)は,「亡甲は,本件土地の前所有者乙の代理人として,本件土地を被控訴人に売却し,同人よりその所有権移転登記手続を委任されながらこれを怠り,一方で右売買契約成立後に本件土地を自らあるいは実子である控訴人の代理人として乙から買受けているものであるから,丕動産登記法5条の法意に鑑み,控訴人は,被控訴人に対し本件土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないものというべきである」としている。方,判例(最判平8.10.29 【百選I61】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177 条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としていOしたがって, Aが,Bの代理人として,C所有の甲土地をCから買い受けたが,CからBへの所有権移転登記がされる前に,自ら甲土地をCから買い受け,CからAへの所有権移転登記をし,さらに, Dに対して甲土地を売却し,AからDへの所有権移転登記をした場合,Aは,背信的悪意者にあたるが,Dは,Bに対する関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,甲土地の所有権取得をもってBに対抗することができるから,Bは,Dに対し,甲土地の所有権の取得を主張することはできない。

  • Q  Aは,A所有の甲土地をBに売却したが,AからBヘの所有権移転登記をする前に死亡した。Aの法定相統人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCヘの所有権移転登記をした上,甲土地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができる。

    A〇  判例(最判昭38.2.22【百選159】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自已の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって, Aの法定相続人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCヘの所有権移転登記をした上,甲士地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができる。

  • Q  AがBから売買によってB所有の甲土地を取得し,BからAへの所有権移転登記がされた後に,AB間の売買契約が解除され,その後AからCへ甲土地が譲渡され,AからCヘの所有権移転登記がされた場合,Bは, Cに対し,AからCヘの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

    A×  判例(最判昭 35.11.29【百選I56】)は,「不動産を目的とする売買契約に基き賀主のため所有権移転登記があった後,右売買契約が解除せられ。不動産の所有権が売主に復帰した場合でも,売主は,その所有権取得の登記を了しなければ,右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し,所有権の復帰を以って対抗し得ないのであって,その場合,第三者が善意であると否と······に拘らない」としているしたがって,AがBから売買によってB所有の甲土地を取得し,BからAヘの所有権移転登記がされた後に,AB間の売買契約が解除され,その後,AからCへ甲土地が譲渡され,AからCヘの所有権移転登記がされた場合,Bは,Cに対し,AからCヘの所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができない。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに譲渡した後,これをCにも譲渡した場合,Cが背信的悪意者とされる場合であっても,Bは,Cからの譲受人Dが背信的悪意者でない限り,Dに対して自己の所有権を主張するためには登記が必要である。

    A〇  判例(最判平8.10.29【百選161】)は,「所有者甲から乙が不動産を買い受け,その登記が未了の間に,丙が当該不動産を甲から二重に買い受け,更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に,たとい丙が背信的悪意者に当たるとしても,丁は,乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り,当該不動産の所有権取得をもっててに対抗することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)丙が背信的悪意者であるがゆえに登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に当たらないとされる場合であっても,乙は,丙が登記を経由した権利を乙に対抗することができないことの反面として,登記なくして所有権取得を丙に対抗することができるというにとどまり,甲丙間の売買自体の無効を来すものではなく,したがって,丁は無権利者から当該不動産を買受けたことにはならないのであって,また,(二)背信的悪意者が正当な利益を有する第三者に当たらないとして民法177条の『第三者』から排除される所以は,第一譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第一譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないということにあるのであって,登記を経由した者がこの法理によって『第三者』から排除されるかどうかは,その者と第一譲受人との間で相対的に判断されるべき事柄であるからである」としている。したがって,AがA所有の甲土地をBに譲渡した後,これをCにも譲渡した場合,Cが背信的悪意者とされる場合であっても, Bは,Cからの譲受人Dが背信的悪意者でない限り,Dに対して自己の所有権を主張するためには登記が必要である。

  • Q  AがBに賃貸している甲土地をCに譲渡した場合において,Cが所有権移転登記をしていない場合は, BはCに対して賃料の支払を拒むことができる。

    A〇  605条の2第1項は,「前条,借地借家法····第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において,その不動産が譲渡されたときは,その不動産の賃貸人たる地位は,その譲受人に移転する」と規定するところ,借地借家法10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定する。また,605条の2第3項は,「賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができない」と規定する。したがって, AがBに賃貸している甲土地をCに譲渡した場合において,Cが所有権移転登記をしていない場合は,Cは賃貸人たる地位の移転を対抗することができないため,BはCに対して賃料の支払を拒むことができる。

  • Q  AとBは,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続したが,Bは,甲土地についてAに無断で相続を原因としてCからBヘの所有権移転登記をし,さらに,Dへ甲土地を譲渡した場合,Aの持分につい一, AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。

    A×  判例(最判昭38.2.22【百選159】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって,AとBが,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続したが,Bが,甲土地についてAに無断で相続を原因としてCからBヘの所有権移転登記をし,さらに,D^甲土地を讓渡した場合,Aの持分について, AがDに対して自己の権利を主張するために登記は必要ない。

  • Q  AとBは,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続し,Aが甲土地を単独で相続する旨の遣産分割を成立させた。その後,Bが,甲土地について相続を原因としてABの共有とする登記をし,さらにBの持分をDへ譲渡した場合,Bの持分について,AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。

    A〇  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超之る部分については,登記,登録その他の対抗要件を備之なければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがっ,AとBが,被相続人Cが所有していた甲土地を共同相続CL, Aが甲土地を単独で相続する旨の遺産分割を成立させた後,Bが,甲土地について相続を原因としてABの共有とする登記をし,さらにBの持分をDへ譲渡した場合,Bの持分について, AがDに対して自己の権利を主張するためには登記が必要である。

  • Q  AからB,BからCに甲土地が順次売却され,それぞれその売買代金が支払われたが,所有権の登記名義がAのままである場合,Cは,Bに代位して,Aに対し,AからBへの所有権移転登記手続を請求することはできない。

    A×  423条の7前段は,「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は,その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは,その権利を行使することができる」と規定する。したがって, AからB, BからCに甲土地が順次売却され,それぞれその売買代金が支払われたが,所有権の登記名義がAのままである場合,Cは,Bに代位して, Aに対し,AからBヘの所有権移転登記手続を請求することができる。

  • Q  A所有の甲土地及び乙土地に抵当権を有するBは,甲土地の抵当権設定の登記の抹消をするつもりで,誤って乙土地の抵当権設定の登記の抹消を申請し,その旨の登記がされた。この場合でも,Bは,乙土地の抵当権設定の登記の抹消後に上記事情を知らずに乙土地に抵当権の設定を受けたCに対し,Bの抵当権が優先することを主張することができる。

    A×  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法···-·その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭42.9.1)は,「登記が初めから全然ない場合と,一旦正当にされた登記がのちに抹消された場合とでは,第三者対抗力の点において区別して考うべきである·····。しかし,本件においては,登記権利者である被上告人が委任した司法書士の錯誤による申請によって登記が抹消されたのであって,登記官吏の過誤によって抹消された場合や,登記権利者以外の者が擅にした申請によって抹消された場合と同一に論じるのは相当ではない。けだし,後者のニつの場合には登記権利者に関係なく不法に抹消されたのであるが,本件においては,登記権利者がみずから委任した司法書士の申請によって抹消されたのであるから,他の二つの場合と同視することはできないからである。そして,本件のごとく登記権利者の代理人の申請によって登記が抹消された場合には,たとえ代理人に錯誤があったとしても,取引の安全保護のために,第三者対抗力を喪失すると解すべきである」としている.したがって, A所有の甲土地及び乙土地に抵当権を有するBが,甲土地の抵当権設定の登記の抹消をするつもりで,誤って乙土地の抵当権設定の登記の抹消を申請し,その旨の登記がされた場合,Bは,乙土地の抵当権設定の登記の抹消後に上記事情を知らずに乙土地に抵当権の設定を受けたCに対し,Bの抵当権が優先することを主張することができない。

  • Q  Aは,Bから代理権を与えられていないのに, Bの代理人として,Cとの間で, B所有の甲土地にCの債権を担保するための抵当権設定契約を締結し,その旨の登記がされた。この場合において,Bがその抵当権設定契約を追認したときは, Bは, Cに対し,その抵当権設定の登記の無効を主張することはできない。

    A〇  判例(最判昭42.10.27)は,「本人名義の偽造文書によって無権代理人が抵当権設定登記手続をし,その旨の登記がされたとしても,本人たる登記義務者において,その抵当権設定行為を追認したことにより,右抵当権の設定登記の記載が実体上の権利関係と符合するようになったときには,その結果,右登記義務者は,その登記をすることを拒みうるような事情がなくなったものというベきであって,その抵当権の設定登記の無効を主張することができないと解するのが相当である」としているしたがって, Aが,Bから代理権を与えられていないのに,Bの代理人として, Cとの間で,B所有の甲土地にCの債権を担保するための抵当権設定契約を締結し,その旨の登記がされた場合において,Bがその抵当権設定契約を追認したときは,Bは,Cに対し,その抵当権設定の登記の無効を主張することはできない。

  • Q  Aは,B所有の土地上に権原なく建物を建築して居住しているが,Cと通謀してその建物についてAからCヘの所有権移転登記をした。Cが実際にはその建物を所有したことがない場合でも,Cは, Bに対し,建物収去土地明渡の義務を負う。

    A×  判例(最判昭 47.12.7)は,「建物の所有権を有しない者は,たとえ,所有者との合意により,建物につき自已のための所有権保存登記をしていたとしても,建物を収去する権能を有しないから,建物の敷地所有者の所有権に基づく請求に対し,建物収去義務を負うものではないと解すべきであ」としている。したがって,B所有の土地上に権原なく建物を建築して居住しているAが,Cと通謀してその建物についてAからCヘの所有権移転登記をした場合において,Cが実際にはその建物を所有したことがないときは,CはBに対し,建物収去土地明渡の義務を負わない。

  • Q  Aは,その所有する甲建物の减失後に新築した乙建物について,新たな保存登記をせずに甲建物の登記を流用して,Bとの間で,停止条件付代物弁済契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記をし,その後,代物弁済を原因として仮登記に基づく本登記をした。この場合,その本登記は無効である

    A〇  判例(最判昭40.5.4)は,「建物が滅失した後,その跡地に同様の建物が新築された場合には,旧建物の登記簿は滅失登記により閉鎖され,新建物についてはその所有者から新たな所有権保存登記がなさるべきものであっ二,旧建物の既存の登記を新建物の右保存登記に流用することは許されず,かかる流用された登記は,新建物の登記としては無効と解するを相当とする。けだし,旧建物が滅失した以上,その後の登記は真実に符合しないだけでなく,新建物についてその後新たな保存登記がなされて,一個の不動産に二重の登記が存在するに至るとか,その他登記簿上の権利関係の錯雑·不明確をきたす等不動産登記の公示性をみだすおそれがあり,制度の本質に反するからである」としている。たがって, その所有する甲建物の滅失後に新築した乙建物について,新たな保存登記をせずに甲建物の登記を流用して,Bとの間で,停止条件付代物弁済契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記をし,その後,代物弁済を原因として仮登記に基づく本登記をした場合,その本登記は無効である。

  • Q  Aが所有する甲土地上に,Bが無権原で乙建物を所有している。Bは,自ら乙建物の所有権保存登記をした後,乙建物をCに売却してその所有権を移転した。この場合において, BからCヘの乙建物の所有権移転登記がされていないときは, Aは,Bに対し,所有権に基づき乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平 6.2.8【百遥151】)は,「土地所有権に基づく物上請求権を行使して建物収去·土地明渡しを請求するには,現実に建物を所有することによってその土地を占拠し,土地所有権を侵害している者を相手方とすべきである。したがって,未登記建物の所有者が未登記のままこれを第三者に譲渡した場合には,これにより確定的に所有権を失うことになるから,その後,その意思に基づかずに譲渡人名義に所有権取得の登記がされても,右譲渡人は,土地所有者による建物収去·土地明渡しの請求につき,建物の所有権の喪失により土地を占有していないことを主張することができるものというべきであり·····,また,建物の所有名義人が実際には建物を所有したことがなく,単に自己名義の所有権取得の登記を有するにすぎない場合も,土地所有者に対し,建物収去·土地明渡しの義務を負わないものというべきである」とした上で,「もっとも,他人の土地上の建物の所有権を取得した者が自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には,たとい建物を他に譲渡したとしても引き続き右登記名義を保有する限り,土地所有者に対し,右譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れることはできないと解するのが相当である。けだし,建物は土地を離れては存立し得ず,建物の所有は必然的に土地の占有を伴うものであるから,土地所有者としては,地上建物の所有権の帰属につき重大な利害関係を有するのであって,土地所有者が建物譲渡人に対して所有権に基づき建物収去·土地明渡しを請求する場合の両者の関係は,土地所有者が地上建物の譲渡による所有権の喪失を否定してその帰属を争う点で,あたかも建物についての物権変動における対抗関係にも似た関係というベく、建物保有者は、自らの意思に基づいて自己所有の登記を経由し、これを保有する以上,右土地所有者との関係においては,建物所有権の喪失を主張できないというべきであるからである。もし,これを,登記に関わりなく建物の『実質的所有者』をもって建物収去·土地明渡しの義務者を決すべきものとするならば,土地所有者は,その探求の困難を強いられることになり,また,相手方において,たやすく建物の所有権の移転を主張して明渡しの義務を免れることが可能になるという不合理を生ずるおそれがある。他方,建物所有者が真実その所有権を他に譲渡したのであれば,その旨の登記を行うことは通常はさほど困難なこととはいえず,不動産取引に関する社会の慣行にも合致するから,登記を自己名義にしておきながら自らの所有権の喪失を主張し,その建物の収去義務を否定することは,信義にもとり,公平の見地に照らして許されないものといわなければならないyとしている。したがって, Aが所有する甲土地上に,無権原で乙建物を所有しているBが,自ら乙建物の所有権保存登記をした後,乙建物をCに売却してその所有権を移転した場合において, BからCヘの乙建物の所有権移転登記がされていないときは,Aは, Bに対し,所有権に基づき乙建物の収去及び甲土地の明渡しを請求することができる。

  • Q  Aが所有する甲土地をAから賃借したBは,甲土地上に建築した自已所有建物につき,Bの妻C名義で所有権保存登記をした。この場合において,Aが甲土地をDに売却してAからDへの所有権移転登記がされたときは,Bは,甲土地の賃借権をDに対抗することができる。

    A×  借地借家法10条1項は,「借地権は,その登記がなくても,土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは,これをもって第三者に対抗することができる」と規定するところ,判例(最大判昭41.4.27 【百選II58】)は,「賃借人が地上に登記した建物を所有することを以って土地賃借権の登記に代わる対抗事由としている所以のものは,当該土地の取引をなす者は,地上建物の登記名義により,その名義者が地上に建物を所有し得る土地賃借権を有することを推知し得るが故である。従って,地上建物を所有する賃借権者は,自己の名義で登記した建物を有することにより,始めて右賃借権を第三者に対抗し得るものと解すベく,地上建物を所有する賃借権者が,自らの意思に基づき,他人名義で建物の保存登記をした上うな場合には,当該賃借権者はその賃借権を第三者に対抗することはできないものといわなければならない。けだし,他人名義の建物の登記によっては,自己の建物の所有権さえ第三者に対抗できないものであり,自己の建物の所有権を対抗し得る登記あることを前提として,これを以って賃借権の登記に代えんとする建物保護法1条[注:借地借家法10条〕の法意に照し,かかる場合は,同法の保護を受けるに値しないからである」としている。したがって, Aが所有する甲土地をAから賃借したBが,甲土地上に建築した自己所有建物につき,Bの妻C名義で所有権保存登記をした場合において, Aが甲土地をDに売却してAからDヘの所有権移転登記がされたときは,Bは,甲土地の賃借権をDに対抗することができない。

  • Q  Aは,所有する甲土地のために,Bが所有する乙土地上に地役権の設定を受け,その旨の登記がされた。この場合において,Aが甲土地をCに売却してAからCヘの所有権移転登記がされたときは,Cは,甲土地のための地役権をBに対抗することができる。

    A〇  280 条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定する。一方,肢アの解説のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判大13.3.17)は,要旨,要役地の所有権と共に地役権を譲受けたる者が,所有権の移転を承役地の所有者に対抗し得るときは,地役権の移転は,之を承役地の所有者に対抗することができる,としている。したがって,Aが,所有する甲土地のために,Bが所有する乙土地上に地役権の設定を受け,その旨の登記がされた場合において,Aが甲土地をCに売却してAからCヘの所有権移転登記がされたときは,Cは,甲土地のための地役権をBに対抗することができる。

  • Q   Aは,Bが所有する甲建物を賃借してその引渡しを受けた。この場合,Aは,Bに対し,当然に賃借権の設定登記を請求することができる。

    A×  605条は,「不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる」と規定するが,判例(大判大10.7.11)は,要旨,丕動産の賃借人は,賃貸借の登記を為すことの特約存せざる場合においては,特別の規定なき限り,賃貸人に対して賃貸借の本登記請求権は勿論,其仮登記を為す権利をも有せざるものと解するを相当とす,としている。したがって, Aが,Bが所有する甲建物を賃借してその引渡しを受けた場合でも,Aは,Bに対し,当然に賃借権の設定登記を請求することはできない。

  • Q  Aは,所有する甲土地につき,Bを第一順位とする抵当権及び,Cを第二順位とする抵当権をそれぞれ設定し,その旨の登記がされた。この場合において,甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは,Cは,Bに対し,自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。

    A〇  判例(大判大8.10.8)は,「既に弁済に因りて消滅に帰したる本件抵当権の設定登記が尚依然として登記海上に存在するに於ては,被上告人の如く登記簿上次順位に在る抵当権者は,形式に於て上告人の次位に在るが為めに,抵当権の行使其他諸般の取引上種々なる障害を受くることを免がれさるは当然なるを以て,被上告人は上告人に対して其消滅せる抵当権の設定登記の抹消を請求するの利益を有し,又上告人は其請求に応じて抹消手続を為すの義務を有する」 としている。したがって,Aが,所有する甲土地につき,Bを第一順位とする抵当権及び,Cを第二順位とする抵当権をそれぞれ設定し,その旨の登記がされたの場合において,甲土地のBの抵当権の被担保債権が消滅したときは,Cは, Bに対し,自己の抵当権に基づきBの抵当権設定登記の抹消を請求することができる。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。Bが既に甲土地と乙建物の引渡しを受けている場合には,少なくとも乙建物の所有権は完全にBに移転しているので,Cが善意であっても乙建物の所有権を取得することはできない。

    A×  判例(最判昭 39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべき」としている。また,判例(最判昭57.2.18)は,「私権の目的となりうる不動産の取得については,右不動産が未登記であっても,民法 177 条の適用があり,取得者は,その旨の登記を経なければ,取得後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し,自己の権利の取得を対抗することができないものと解される」としている。したがって,Bが既に甲土地と乙建物の引渡しを受けているだけでは,乙建物の所有権が完全にBに移転しているとはいえず,Cも乙建物の所有権を取得することができる。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。Bが既に甲土地について移松登記を得ている場合には,Cは善意であっても甲土地はもとより,甲土地上の乙建物の所有権も取得することができない。

    A×  上記のとおり,177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,Bが既に甲土地について移転登記を得ている場合には,Cは善意であっても甲土地の所有権を取得することはできないが,Bが甲士地上の乙建物について移転登記を得ていない限り,Cはその所有権を取得することができる

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。Bが乙建物について所有権保存登記を行ったが,それを知らないCが甲土地について所有権移転登記を行った場合,CはBに対して建物収去土地明渡の請求ができるのが原則である。

    AO 上記のとおり,177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定しており,Bが乙建物について所有権保存登記を行った場合には,Cは乙建物の所有権を取得することはできない。もっとも,それを知らないCが甲土地について所有権移転登記を行った場合,Cは,甲土地の所有権を取得することができる.したがって, CはBに対して建物収去土地明渡しの請求ができるのが原則である。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。甲土地·乙建物の双方についてBCともに未登記である場合,Bが,Cに対し,自己の所有権の確認を求める本訴を提起し,Cが,Bに対し,甲土地や乙建物へ立ち入ってはならない旨の反訴を提起し,お互いに相手方の所有権を争っているときは,両方の訴えとも棄却される。

    A〇  上記のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す······。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押について配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としているしたがって, Aが,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ場合,Bから見たCも,Cから見たBも,いずれも「第三者」にあたるから,甲土地·乙建物の双方についてBCともに未登記である場合において,Bが,Cに対し,自己の所有権の確認を求める本訴を提起し,Cが,Bに対し,甲土地や乙建物へ立ち入ってはならない旨の反訴を提起し,お互いに相手方の所有権を争っているときは,両方の訴えとも棄却される。

  • Q  Aは,甲土地と甲土地上の未登記の乙建物を共に,BとCに二重に売却する契約を結んだ。.AB間の契約の定めに従えば,甲土地についても乙建物についてもBに所有権がいまだ移転していない場合であっても,所有権を取得したCは登記をしなければ,Bに対して所有権の取得を主張することができない。

    A〇  上記のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大連判明 41.12.15)は,「本条に所謂第三者とは,当事者若くは其包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及び変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有する者を指称す····。即ち,同一の不動産に関する所有権抵当権等の物権又は賃借権を正当の権原に因りて取得したる者の如き,又同一の不動産を差押えたる債権者若くは其差押に付て配当加入を申立てたる債権者の如き,皆均しく所謂第三者なり」としている。したがって,AB間の契約の定めに従えば,甲土地についても乙建物についてもBに所有権がいまだ移転していない場合であっても,Bは「第三者」にあたるから,所有権を取得したCは登記をしなければ,Bに対して所有権の取得を主張することができない。

  • Q  AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Bは,甲土地をCに売却し,その旨の所有権移転登記がされた。その後,AがBの強迫を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がAからBに移転していないことを主張することができる。

    A〇  96条1項は,「詐欺又仕強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定し,121条は,「取り消された行為は,初めから無効であったものとみなす」と規定する。一方,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判明 39.12.13)は,「法律行為の取消は初めより其行為を無効ならしむるの効果を生ずることは民法第 121条に規定する所なれば,法律行為取消の効果は法律に特別規定あれば格別,然らざれば何人と雖も之を主張することを得べく,又何人に対しても之を主張し得ベく·。而して,詐欺に依る意思表示の取消に付きては之を以て善意の第三者〔注:「善意で過失がない第三者」〕に対抗することを得ざる仕民法第96条第3項に規定する所なるも,強迫に因る意思表示の取消に付きては斯る特別規定を存せざるを以て其効果は一般の原則に従ひ第三者に対抗し得べきものとなさざるを得ず」としている。したがって, Bが,甲土地をCに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,AがBの強迫を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がAからBに移転していないことを主張することができる

  • Q  AがA所有の甲土地をBに売却し,その旨の所有権移転登記がされた後,Aは,Bの詐欺を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した。その後,BがCに甲土地を売却し,Cへの所有権移転登記をした場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がBからAに復帰したことを主張することができない。

    A〇  96条1項は,「詐欺又は強迫による意思表示は,取り消すことができる」と規定するが,96条3項は,「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは,善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定する。そして,判例(大判昭17.9.30 【百選155】)は,「民法第96条第3項に於て詐欺に因る意思表示の取消は之を以て善意の〔注:「善意でかつ過失がない」〕第三者の対抗することを得ざる旨規定せるは,取消に因り其の行為が初より無効なりしものと看做さるる効果,即ち取消の週及効を制限する趣旨なれば,茲に所謂第三者と仕,取消の溯及効に因り影響を受くべき第三者,即ち取消前より既に其の行為の効力に付利害関係を有せる第三者に限定して解すベく,取消以後に於て始めて利害関係を有するに至りたる第三者は,仮令其の利害関係発生当時詐欺及取逍の事実を知らざりしとするも,右条項の適用を受けざる······と雖,右条項の適用なきの故を以て直に斯かる第三者に対しては取消の結果を無条件に対抗し得るものと為すを得ず。今之を本件に付て観るに,本件壳買が····詐欺に因り取消し得べきものなりとせば,本件売買の取消に依り土地所有権は被上告人先代に復帰し,初よりAに移転さりしものと為るも此の物権変動は民法第177条に依り,登記を為すに非されば之を以て第三者に対抗することを得さる」 としている。したがって, Aが,Bの詐欺を理由としてBに対する売買の意思表示を取り消した後,BがCに甲土地を売却し,Cヘの所有権移転登記をした場合,Aは,Cに対し,甲土地の所有権がBからAに復帰したことを主張することができない。

  • Q  Aは亡BからヒBの所有していた乙土地の遺贈を受けたが,その旨の所有権移転登記をしていなかった。その後,亡Bの共同相続人の一人であるCの債権者Dが乙土地についてCの相続分に相当する持分を差し押さえ,その旨の登記がされた。この場合,Aは,Dに対し,乙土地の所有権を亡Bから取得したことを主張することができる。

    A×  判例(最判昭 39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ、遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すベきである。そして民法177 条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遣贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すベきである」としている。したがって,Aが亡Bから亡Bの所有していた乙土地の遺贈を受けた後,亡Bの共同相続人の一人であるCの債権者Dが乙土地についてCの相続分に相当する持分を差し押さえ,その旨の登記がされた場合,Aは,Dに対し,乙土地の所有権を亡Bから取得したことを主張することができない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q  AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受けると同時に乙土地の所有権移転登記をしたときは, Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができる。

    A〇  判例(最判昭41.11.22)は,「時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたっては,単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであって,この関係においては,結局当該不動産についていかなる時期に何人によって登記がなされたかが問題となるのである。そして時効が完成しても,その登記がなければ, その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し,第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては,その第三者に対しては,登記を経由しなくても時効取得をもってこれに対抗することができるものと解すべき」としているしたがって,AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受けると同時に乙土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができる。

  • Q  AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが乙土地の所有権移転登記をしたときは, Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができない。

    A  x判例(最判昭42.7.21【百選145】)は,「被上告人は本件土地の占有により昭和33年3月21日に20年の取得時効完成したところ,上告人は,本件土地の前主から昭和33年2月本件土地を買受けてその所有者となり,同年12月8日所有権取得登記を経由したというのである。されば,被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり,したがって,上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから,被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり,二のことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによって消長を来さないものというべきである」としている。したがって,AがB所有の乙土地を占有し,取得時効が完成した場合において,その取得時効が完成する前に,Cが乙土地をBから譲り受け,その取得時効の完成後にCが乙土地の所有権移転登記をしたときは,Aは,Cに対し,乙土地の所有権を時効取得したことを主張することができる

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。AがBに対して自己所有の甲土地を売却して引き渡した後に死亡し, Aの唯一の相続人Dが相続による登記をした上で,甲土地をCに譲ㇼ渡し,Cが登記を備えた場合。

    A対抗できない  判例(大連判大15.2.1)は,「民法第177条に所謂第三者とは,当事者若は其の包括承継人に非ずして不動産に関する物権の得喪及変更の登記欠缺を主張する正当の利益を有するものなることは当院の夙に判例とする所なり。仍て,被相続人が不動産を甲に譲渡し未だ譲渡の登記を為さざる間に相続開始し,其の相続人が同一不動産を更に乙に譲渡し其の登記を為したる場合に於ては,乙は同条に所謂第三者に該当するや否を案ずるに,不動産を甲に譲渡したる被相続人は甲との関係に於ては該不動産の所有者と謂うことを得ずと雖,譲渡の登記なきを以て甲は其の所有権取得を之と反対若は相容れざる権利を取得し其の登記を為したる第三者に対抗することを得ざるが故に,若此の被相続人が相続開始前同一不動産を更に乙に譲渡し登記を為したりとせば,乙は完全なる所有権を取得すベく,従て,乙は甲の登記欠缺を主張する正当の利益を有する第三者なること疑なき所なれば,右の被相続人は譲渡の登記あらざる結果甲に対する譲渡に因りて全く不動産の所有権を失いたる者に非ずして,乙に対する関係に於ては依然所有者にして,所謂関係的所有権を有するものなりと謂うを得ベし。然るに,右被相続人が該不動産を乙に譲渡する以前に於て相続開始したるときは其の相続人は此の関係的所有権を承継するものと謂うベく,従て乙が此の相続人より同一不動産の譲渡を受け其の登記を経由したるときは,甲は被相続人より取得したる該不動産の所有権を以て之に対抗することを得ずして,乙は完全なる所有権を取得するものと謂わざるを得ず。故に,乙は同一所有者が同一不動産を二重に売買したる場合に於て,先ず所有権取得の登記を為したる買主と同一の地位に在るものにして,甲の登記欠缺を主張すベき正当の利益を有する第三者に該当すべく,乙が甲に売渡したる所有者より買受けたると,其の相続人より買受けたるとに由りて差異を生ずベきものに非ず」としている。したがって,AがBに対して自己所有の甲土地を売却して引き渡した後に死亡し,Aの唯一の相続人Dが相続による登記をした上で,甲土地をCに譲り渡し,Cが登記を備えた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できない。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。AがBに対して自已所有の甲土地を遺贈する遺言を残して死亡した後,Aの唯一の相続人Dの債権者CがDを代位してD名義の所有権取得登記を行い,甲土地を差し押さえた場合。

    A対抗できない  判例(最判昭 39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すべきところ·····,遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして民法177条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としている。したがって,AがBに対して自己所有の甲土地を遣贈する遺言を残して死亡した後,Aの唯一の相続人Dの債権者CがDを代位してD名義の所有権取得登記を行い,甲土地を差し押さえた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できない。なお,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。Aには相続人BDがいた。Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは相続を放棄し, Bは単純承認した。ところがDの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合。

    A対抗できる  939条は,「相続の放棄をした者は,その相統に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすベき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法938条),担続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としている。したがって,Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは相続を放棄し, Bは単純承認したが,Dの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。Aには相続人BDがいた。Aが自已所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは遺産分割協議書を偽造して,自らが単独で相続したとして甲土地の相続登記を行った上,甲土地をCに売却し,Cが登記を備えた場合。

    A対抗できる  判例(最判昭38.2.22【百選I59】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権の移転の登記をした共同相続人中の乙ならびにてから単独所有権移転の登記を受けた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自已の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって, Aには相続人BDがいた。Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,Dは遣産分割協議書を偽造して,自らが単独で相続したとして甲土地の相続登記を行った上,甲土地をCに売却し,Cが登記を備えた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる。

  • Q判例によるとBがCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できる場合を組み合わせたものはどれか。Aには相続人BDがいた。Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,遺産分割協議の結果,甲土地はBが取得することになった。ところが,Dの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合。

    A対抗できない  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定に上り算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,Aが自己所有の甲土地を残して死亡したところ,遺産分割協議の結果,甲土地はBが取得することになったが,Dの債権者Cが,Dを代位してBD共有名義の所有権取得登記を行い,甲土地のDの持分を差し押さえた場合,BはCに対して登記なくして所有権の取得を対抗できない。

  • Q被相続人Aから相続開始前に甲不動産を買い受けたXは,Aの唯一の相続人Bの債権者YがBに代位して甲につきBの相続登記をした上で甲を差し押さえた場合,登記がなくても,甲の所有権取得をYに対抗することができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭 39.3.6【百選I74】)は,要旨,甲からその所有不動産の遺贈を受けた乙がその旨の所有権移転登記をしない間に,甲の相続人の1人である丙に対する債権者丁が、丙に代位して同人のために前記不動産にっき相続による持分取得の登記をなし,ついでこれに対し強制麓売の申立をなし,該申立が登記簿に記入された場合においては,丁は,民法第 177 条にいう第三者に該当するとしている。したがって,被相続人Aから相続開始前に甲不動産を買い受けたXは,Aの唯一の相続人Bの債権者YがBに代位して甲につきBの相続登記をした上で甲を差し押さえた場合,登記がなければ,甲の所有権取得をYに対抗することができない。

  • Q被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXが,遺産分割によって甲の所有権全部を取得したとしても, Bの債権者YがBに代位して甲につきB及びXの共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,自己の権利の取得をYに対抗することができない。

    A〇  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXが,遺産分割によって甲の所有権全部を取得したとしても,Bの債権者YがBに代位して甲につきB及びXの共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,自己の権利の取得をYに対抗することができない。

  • Q被相続人Aから遺贈によって甲不動産の所有権を取得したXは,Aの唯一の相続人Bが甲をYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,遺贈があった事実を知らず所有権取得登記を備える機会がなかったとしても,Yに対し,甲の所有権取得を対抗することができない。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭39.3.6【百選皿74】)は,「不動産の所有者が右不動産を他人に贈与しても,その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず,所有者は全くの無権利者とはならないと解すベきところ····,遺贈は遺言によって受遺者に財産権を与える遺言者の意思表示にほかならず,遺言者の死亡を不確定期限とするものではあるが,意思表示によって物権変動の効果を生ずる点においては贈与と異なるところはないのであるから,遺贈が効力を生じた場合においても,遺贈を原因とする所有権移転登記のなされない間は,完全に排他的な権利変動を生じないものと解すべきである。そして,民法177条が広く物権の得喪変更について登記をもって対抗要件としているところから見れば,遺贈をもってその例外とする理由はないから,遺贈の場合においても不動産の二重譲渡等における場合と同様,登記をもって物権変動の対抗要件とするものと解すべきである」としいる。したがって,被相続人Aから遺贈によって甲不動産の所有権を取得したXは,Aの唯一の相続人Bが甲をYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,遺贈があった事実を知らず所有権取得登記を備える機会がなかったとしても,Yに対し,甲の所有権取得を対抗することができない。なお,肢イの解説のとおり,899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,これは,財産法上の対抗要件制度の規律が直接適用されない包括承継の場合について対抗要件主義を定めることに存在意義を有する規定であるから,特定承継である遺贈は本条の適用対象外であると解されている。

  • Q被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXは,Bが甲を単独相続した旨の登記をした上でYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,Yに対し,この所有権移転登記の全部抹消を求めることができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭38.2.22【百選I59】)は,「相統財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自已の持分を登記なくして対抗しうるものと解十べきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限ㇼ無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである。····そして,この場合に甲がその共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため乙,丙に対し請求できるのは,各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして,甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない·····。けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており,また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである」としている。したがって,被相続人Aから甲不動産をBと共に共同相続したXは,Bが甲を単独相続した旨の登記をした上でYに売却し,Yが所有権移転登記を備えた場合,Yに対し,この所有権移転登記の全部抹消を求めることはできず,Xの持分についてのみの一部抹消(更生)を求めるができるにとどまる。

  • Q「甲不動産はXに相続させる」旨の被相続人Aの遺言により,Aの死亡時にXが所有権を取得した甲につき,共同相続人Bの債権者YがBに代位してB及びXの法定相続分により共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,甲の所有権取得をYに対抗することができる。

    A×  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定に上り算定した相続分を超之る部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,「甲不動産はXに相続させる」旨の被相続人Aの遺言により,Aの死亡時にXが所有権を取得した甲につき,共同相続人Bの債権者YがBに代位してB及びXの法定相続分により共同相続登記をした上でBの持分を差し押さえた場合,Xは,甲の所有権取得をYに対抗することができない。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。Cが相続放棄をした後に,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,CからEへの持分移転登記を経由した場合,Eは,B及びDに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定し,939条は,「相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭42.1.20【百選皿73】)は,「民法が承認,放棄をなすベき期間(同法 915条)を定めたのは,相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして,相続人の利益を保護しようとしたものであり,同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法938条),相続人は相続開始時に溯ぼって相続開始がなかったと同じ地位におかれることとなり,この効力は絶対的で,何人に対しても,登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである」としている。したがって,Cが相続放棄をした後に,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,CからEへの持分移転登記を経由した場合でも,Eは,B及びDに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができない。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。AがEに甲土地を遺贈し,遺言により指定された遺言執行者Fがある場合において, Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分を悪意のGに売却し,BからGへの持分移転登記を経由したときは,Eは,Gに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

    A〇  1013条1項は,「遺言執行者がある場合には,相続人は,相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に違反してした行為は,無効とする。ただし,これをもって善意の第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,AがEに甲土地を遣贈し,遺言により指定された遺言執行者Fがある場合において,Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相統登記をした上で,甲土地の2分の1の持分を悪意のGに売却し,BからGヘの持分移転登記を経由したときは,Eは,Gに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができる。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。B,C及びDの遺産分割協議により,甲土地はBが取得することとされた場合であっても,その後,Dが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,DからEへの持分移転登記を経由したときには,Eは, Bに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

    A〇  899条の2第1項は,「相続に上る権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分につては,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,B,C及びDの遺産分割協議により,甲土地はBが取得寸ることとされた場合であっても,その後,Dが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の4分の1の持分をEに売却し,DからEへの持分移転登記を経由したときには,Eは,Bに対し,甲土地について4分の1の持分の取得を主張することができる。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。Aが[甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において,Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相統登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をEに売却し, BからEへの持分移転登記を経由したときには,Cは,Eに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

    A〇  899条の2第1項は,「相続による権利の承継は,遺産の分割によるものかどうかにかかわらず,次条及び第 901 条の規定により算定した相続分を超える部分については,登記,登録その他の対抗要件を備えなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,Aが[甲土地はCに相続させる」旨の遺言をしていた場合において, Bが,甲土地について法定相続分に応じた持分の割合により相続登記をした上で,甲土地の2分の1の持分をEに売却し, BからEへの持分移転登記を経由したときには,Cは,Eに対し,甲土地の所有権の取得を主張することができない。

  • Q甲土地を所有するAには,その妻Bとの間に子C及びDがいる。この場合において,Aが死亡したときの不動産物権変動に関する記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。Dが甲土地を単独で相続した旨の不実の登記をした上で,甲土地をEに売却し,DからEヘの所有権移転登記を経由した場合,Bは,Eに対し,甲土地について2分の1の持分の取得を主張することができない。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭38.2.22 【百選159】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中のDならびにDから単独所有権移転の登記をうけた第三取得者Eに対し,他の共同相続人Bは自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである」としている。したがって,Dが甲土地を単独で相続した旨の不実の登記をした上で,甲土地をEに売却し,DからEへの所有権移転登記を経由した場合,Bは,Eに対し,甲土地について2分の1の持分の取得を主張することができる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,10年経過後にCが移転登記を得た場合,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。

    A×  判例(最判昭42.7.21【百選I45】)は,「被上告人は本件土地の占有により昭和33年3月21日に20年の取得時効完成したところ,上告人は,本件土地の前主から昭和33年2月本件土地を買受けてその所有者となり,同年12月8日所有権取得登記を経由したというのである。されば,被上告人の取得時効完成当時の本件土地の所有者は上告人であり,したがって,上告人は本件土地所有権の得喪のいわば当事者の立場に立つのであるから,被上告人はその時効取得を登記なくして上告人に対抗できる筋合であり,二のことは上告人がその後所有権取得登記を経由することによって消長を来さないものというべきである」としているしたがって,Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,10年経過後にCが移転登記を得た場合,Bは登記がなくてもCに甲土地の時効取得を対抗できる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,Cが移転登記を得た場合,登記による取引安全確保の機能を重視する学説によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。

    A〇  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年が経過する直前にAがCに甲土地を譲渡し,Cが移転登記を得た場合でも,登記による取引安全確保の機能を重視する学説によると,Bは2不登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できないことになる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。ただし,Cが背信的悪意者に当たる場合はBは登記がなくても時効取得を対抗できる余地がある。

    A〇  判例(最判平18.1.17【百選I60】)は,「時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,特段の事情のない限り、これを対抗することができないと解すべきである」とした上で,「民法177条にいう第三者については,一般的にはその善意·悪意を問わないものであるが,実体上物権変動があった事実を知る者において,同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,このような背信的悪意者は,民法177条にいう第三者に当たらないものと解すべきである」としている。したがって,Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから 10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できないのが原則であるが,Cが背信的悪意者に当たる場合はBは登記がなくても時効取得を対抗できる余地がある。なお,判例(最判平18.1.17【百選I60】)は,上記に続けて,「そして甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというベきである。取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識·判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすベて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである」としている。

  • Q Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合において、BがCの登記時からさらに20年,Cから権利主張をされることなく甲土地の占有を続け,その後に取得時効を援用したときは,判例によると,Bは登記がなくてもCに対し,甲土地の時効取得を対抗できる。

    A〇  判例(最判昭36.7.20)は,要旨,不動産の取得時効が完成しても,その登記がなければ, その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが,第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には,その第三者に対し.登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗しうるものと解すベきである,としている。そして,162条1項は,「20 年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得寸る」と規定する。したがって,ウの事例において, BがCの登記時からさらに20年,Cから権利主張をされることなく甲土地の占有を続け,その後に取得時効を援用したときは, Bは登記がなくてもCに対し,甲土地の時効取得を対抗できる。

  • Q  Bが善意·無過失·平穩·公然にA所有の甲土地の自主占有を開始してから10年経過後にAがCに甲土地を譲渡してCが移転登記を得た場合において、,BがCから権利主張をされることなく占有開始時から20年間甲土地の占有を続けたとしても,判例によると,Bは登記がなければCに甲土地の時効取得を対抗できない。

    A×  162条1項は,「20年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その所有権を取得する」と規定する。また判例(最判平18.1.17【百選160】)は,「時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者対し特の事情のない限り,これを対抗することができないと解すべきである」としている。そして,判例(大判昭15.11.20)は,「時効制度は時効に因り利益を受くべき者の保護を目的とするものなれば,其者が既に完成したる時効の利益を放棄するや否又は援用するや否は,執れも其任意に属するものとなす法律の精神に鑑みれば,短期時効を援用し得る者が之を援用せずして長期時効を援用することは之を許容すべきものと解するを相当とす。是れ蓋し,当事者が任意に法定の時効期間を延長し又は時効の起算日を変更するものにあらざればなり」としている。そうすると,Bが162条2項の短期時効を援用したときは,Cは時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者にあたるから,特段の事情のない限り,時効取得した所有権を対抗することができないが,162条1項の長期時効を援用したときは,Cは時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者にあたるから,時効取得した所有権を対抗することができる。したがって,ウの事例において,BがCから権利主張をされることなく占有開始時から20年間甲土地の占有を続けた場合において,Bが162 条1項の長期時効を援用したときは,Bは登記がなくてもCに甲土地の時効取得を対抗できる。

  • Q未登記建物の買主であっても,売主に対して移転登記の請求ができる。

    A×  560条は,「売主は,買主に対し,登記,登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う」と規定するところ,判例(最判昭31.6.5)は,「未登記の建物所有権が売買によって他人に移転した場合においては,所有権取得者は判決をえて自己の所有権を証明して単独に保存登記をなすことを得るが(不動産登記法106条2号),また従来の所有者に対して移転登記の請求をなすこともできるのであって,この場合には従来の所有者は先ず保存登記をした上で所有権取得者に対して移転登記手続をなすべき義務を負担するのである」としている。したがって,未登記建物の買主であっても,売主に対して移転登記の請求ができる

  • Q通行地役権の承役地を譲り受けた者は,未登記の通行地役権者に対して背信的悪意者に当たらない場合でも,通行地役権の存在を否定できない場合があり,この場合には,通行地役権者は,地役権設定当事者ではないこの所有権者に対しても,地役権設定登記を求めることができる。

    A〇  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平10.2.13【百選163】)は,次のように判示している。「通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において,譲渡の時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識寸ることが可能であったときは,譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。」「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者は,民法177条にいう『第三者』(登記をしなければ物権の得喪又は変更を対抗することのできない第三者)に当たるものではなく,当該第三者に,不動産登記法4条又は5条に規定する事由のある場合のほか,登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には,当該第三者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。」「通行地役権の承役地が譲渡された時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,譲受人は,要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ,また,要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無,内容を容易に調査することができる。したがって,右の譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても,何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって,右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは,通常は信義に反するものといラベきである。ただし,例えば,承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており,かつ,そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合には,地役権設定登記の欠缺を主張することが信義に反するものということはできない。」「したがって,右の譲受人は,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないものというべきである。なお,このように解するのは,右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから,右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要するものではない。」また,判例(最判平10.12.18)は,「通行地役権の承役地の譲受人が地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらず,通行地役権者が譲受人に対し登記なくして通行地役権を対抗できる場合には,通行地役権者は,譲受人に対し,同権利に基づいて地役権設定登記手続を請求することができ,譲受人はこれに応ずる義務を負うものと解すべきである。譲受人は通行地役権者との関係において通行地役権の負担の存在を否定し得ないのであるから,このように解しても譲受人に不当な不利益を課するものであるとまではいえず,また,このように解さない限り,通行地役権者の権利を十分に保護することができず,承役地の転得者等との関係における取引の安全を確保することもできない」としている。したがって,通行地役権の承役地を譲り受けた者は,未登記の通行地役権者に対して背信的悪意者に当たらない場合でも,通行地役権の存在を否定できない場合があり,この場合には,通行地役権者は,地役権設定当事者ではないこの所有権者に対しても,地役権設定登記を求めることができる。

  • Q売買契約に基づき土地の所有権の移転登記を受けた買主は,この売買契約を解除した場合,売主に移転登記の抹消登記を請求することができる。

    A〇  判例(最判昭36.11.24)は,「真実の権利関係に合致しない登記があるときは,その登記の当事者の一方は他の当事者に対しいずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するとともに,他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである」としている。したがって,売買契約に基づき土地の所有権の移転登記を受けた買主は,この売買契約を解除した場合,登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権に基づき,売主に移転登記の抹消登記を請求することができる。

  • Q不動産を買い受けた者は,第三者の名義を勝手に使って,売主からその第三者への移転登記を行った場合,その後,この登記名義人に対して,真正な名義の回復を理由とする移転登Q不動産を買い受けた者は,第三者の名義を勝手に使って,売主からその第三者への移転登記を行った場合,その後,この登記名義人に対して,真正な名義の回復を理由とする移転登記を請求することができない。記を請求することができない。

    この動産をCに売って引き渡した場合について

    AがCに対して占有回収の訴えを提起することができる場合の説明として判例の趣旨に照らし正しいものは

    次のうちどれか。Cが

  • Q  Aが所有して占有する動産を奪ったBが,この動産をCに売って引き渡した場合について, AがCに対して占有回収の訴えを提起することができる場合の説明として判例の趣旨に照らし正しいものは,次のうちどれか。Cが,Bによる占有侵奪の事実を知っていたとき。

    A〇  200条2項は,「占有回収の訴えは,占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし,その承継人が侵奪の事実を知っていたときは,この限りでない」と規定する。したがって, Cが,Bによる占有侵奪の事実を知っていたときは,AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる

  • Q  Aが所有して占有する動産を奪ったBが,この動産をCに売って引き渡した場合について, AがCに対して占有回収の訴えを提起することができる場合の説明として判例の趣旨に照らし正しいものは,次のうちどれか。Cが,Aが動産の所有者であることを知っていたとき。

    A×  200条2項は,「占有回収の訴えは,占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし,その承継人が侵奪の事実を知っていたときは,この限りでない」と規定する。したがって, Cが,Bによる占有侵奪の事実を知っていたときは,AはCに対して占有回収の訴えを提起することができる

  • Q  Aが所有して占有する動産を奪ったBが,この動産をCに売って引き渡した場合について,AがCに対して占有回収の訴えを提起した場合の効果について,判例の趣旨に照らし正しいものは,次のうちどれか。 Aは,占有回収の訴えを提起したことにより占有を継続していたとみなされる。

    A×  203条は,「占有権は,占有者が占有の意思を放棄し,又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし,占有者が占有回収の訴えを提起したときは,この限りでない」と規定するところ。判例(最判昭 44.12.2)は,「民法203条本文によれば,占有権は占有者が占有物の所持を失うことによって消滅するのであり,ただ,占有者は,同条ただし書により,占有回収の訴を提起して勝訴し,現実にその物の占有を回復したときは,右現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制され石と解するのが相当である」としている。したがって,Aが,占有回収の訴えに勝訴し,その判決が確定した場合において,その確定判決により現実に動産の占有を回復したときは,現実に占有していなかった間も占有を継続していたとみなされる。

  • Q  Aが所有して占有する動産を奪ったBが,この動産をCに売って引き渡した場合について,AがCに対して占有回収の訴えを提起した場合の効果について,判例の趣旨に照らし正しいものは,次のうちどれか。Aは,占有回収の訴えに勝訴し,その判決が確定した場合において,その確定した時から,新しい占有が開始したものとみなされる

    A×  203条は,「占有権は,占有者が占有の意思を放棄し,又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし,占有者が占有回収の訴えを提起したときは,この限りでない」と規定するところ。判例(最判昭 44.12.2)は,「民法203条本文によれば,占有権は占有者が占有物の所持を失うことによって消滅するのであり,ただ,占有者は,同条ただし書により,占有回収の訴を提起して勝訴し,現実にその物の占有を回復したときは,右現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制され石と解するのが相当である」としている。したがって,Aが,占有回収の訴えに勝訴し,その判決が確定した場合において,その確定判決により現実に動産の占有を回復したときは,現実に占有していなかった間も占有を継続していたとみなされる。

  • Q  Aが所有して占有する動産を奪ったBが,この動産をCに売って引き渡した場合について,AがCに対して占有回収の訴えを提起した場合の効果について,判例の趣旨に照らし正しいものは,次のうちどれか。Aは,占有回収の訴えに勝訴し,その判決が確定した場合において, その確定判決により現実に動産の占有を回復したときは,現実に占有していなかった間も占有を継続していたとみなされる。

    A〇  203条は,「占有権は,占有者が占有の意思を放棄し,又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし,占有者が占有回収の訴えを提起したときは,この限りでない」と規定するところ。判例(最判昭 44.12.2)は,「民法203条本文によれば,占有権は占有者が占有物の所持を失うことによって消滅するのであり,ただ,占有者は,同条ただし書により,占有回収の訴を提起して勝訴し,現実にその物の占有を回復したときは,右現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制され石と解するのが相当である」としている。したがって,Aが,占有回収の訴えに勝訴し,その判決が確定した場合において,その確定判決により現実に動産の占有を回復したときは,現実に占有していなかった間も占有を継続していたとみなされる。

  • Q  Aは自己の所有するコピー機をBに賃貸していたが,Bはコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機を使用し続け,Aに返還しなかった。この場合,Aは,Bに対し,占有回収の訴えによりコピー機の返還を請求することができる。

    A×  200条1項は,「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより, その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」と規定するところ,判例(大判大11.11.27)は,「民法第200条第1項の『占有者が其の占有物を奪われたるとき』とは,占有者が其の意思に因らざるして物の所持を失いたる場合を指称するものなれば,占有侵奪の事実あるには占有者自ら占有の意思を失いたるに非さることを要す」としている。したがって,Aが自己の所有するコピー機をBに賃貸していた場合,Aがその意思によらずしてコピー機の所持を失ったとはいえないから,「占有者がその占有を奪われたとき」にはあたらず,Bがコピー機の賃貸借契約が終了した後もコピー機を使用し続け,Aに返還しなかった場合でも,Aは,Bに対し,占有回収の訴えによりコビー機の返還を請求することができない。

  • Q  Aは,底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のバソコンをBに窃取された。その後,Bは,バソコンの外観に変更を加えることなく,バソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した。この場合,Aは,Cに対し,占有回収の訴えにより同バソコンの返還を請求することはできない。

    A〇  200条2項は,「占有回収の訴えは,占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし,その承継人が侵奪の事実を知っていたときは,この限りでない」と規定する。したがって, Aが,底面に「所有者A」と印字されたシールを貼ってある自己所有のバソコンをBに窃取された後,Bが,バソコンの外観に変更を加えることなく,バソコンを盗難の事情を知らないCに譲渡した場合,Aは,Cに対し,占有回収の訴えにより同バソコンの返還を請求することはできない。

  • Q  Aは自己の所有する工作機械をBに賃貸しBは,工作機)械の賃貸借契約継続中に工作機械をCに窃取された。この場合,Bは,Aから独立して, Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。

    A〇  200条1項は,「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより,その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」と規定し,197条は,「占有者は,次条から第202条までの規定に従い,占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も,同様とする」と規定する。したがって, Aが自己の所有する工作機械をBに賃貸していた場合,Bは,「他人のために占有をする者」にあたるから,Bが,工作機械の貨貸借契約継続中に工作機械をCに窃取された場合,Bは,Aから独立して,Cに対して占有回収の訴えを提起することができる。

  • Q  Aは,自己の所有する自転車をBに詐取された。この場合,Aは,Bに対し,占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができる。

    A×  200条1項は,「占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えにより,その物の返還及び損害の賠償を請求することができる」と規定するところ,判例(大判大11.11.27)は,「占有者が他人に任意に物の占有を移転したるときは,仮令其の移転の意思が他人の欺罔仁因りて生じたる場合なりとするも,占有侵奪の事実ありと謂うを得ず」としている。したがって,Aが,自己の所有する自転車をBに詐取された場合,「占有者がその占有を奪われたとき」にはあたらないから,Aは,Bに対し,占有回収の訴えにより自転車の返還を請求することができない。

  • Q  Aは別荘地に土地を所有していた。その隣地の所有者であったBは,Aに無断で境界を越えてA所有の土地に塀を作り始め,2年後にその塀が完成した。Aは,この時点において,Bに対し,占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。

    A〇  201条1項は,「占有保持の訴えは,妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし,工事により占有物に損害を生じた場合において, その工事に着手した時から1年を経過し,又はその工事が完成したときは,これを提起することができない」と規定する。したがって,Aが別荘地に土地を所有していたが,その隣地の所有者であったBが,Aに無断で境界を越えてA所有の土地に塀を作り始め,2年後にその塀が完成した場合,Aは,この時点において, Bに対し,占有保持の訴えによりその塀の撤去を請求することはできない。

  • Q占有者が占有物から生ずる果実を取得したときは,通常の必要費は,占有者の負担に帰する。

    A〇  196条1項は,「占有者が占有物を返還する場合には,その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から借還させることができる。ただし,占有者が果実を取得したときは,通常の必要費は,占有者の負担に帰する」と規定する。

  • Q留置権者は,留置物について必要費を支出したときは,所有者に対し, その借還を請求することができる。

    A〇  299条1項は,「留置権者は,留置物について必要費を支出したときは,所有者にその償還をさせることができる」と規定する。

  • Q受任者は,委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは,委任者に対し,委任が終了した日以後に,その費用の借還を請求することができる。

    A×  650条1項は,「受任者は,委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは,委任者に対し,その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる」と規定しており,委任が終了した日以後でなくとも,その費用の償還を請求することができる。

  • Q受寄者は,受寄物を保管するのに必要と認められる債務を負担したときは,寄託者に対し,自己に代わってその弁済をすることを請求することができ,その債務が弁済期にないときは,寄託者に対し,相当の担保を供させることができる

    A〇  665条は,「第646条から第648条まで,第649条並びに第650条第1項及び第2項の規定は,寄託について準用する」と規定するところ,650条2項は,「受任者は,委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは,委任者に対し,自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において,その債務が弁済期にないときは,委任者に対し,相当の担保を供させることができる」と規定する。

  • Q事務管理における管理者が本人の意思に反して事務管理をした場合であっても,管理者は,本人のために有益な費用を出したときは,本人に対し,その全額の償還を請求することができる。

    A×  702条1項は「管理者は,本人のために有益な費用を支出したときは,本人に対しその償還を請求することができる」と規定するが,702 条3項は,「管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは,本人が現に利益を受けている限度においてのみ,前2項の規定を滴用する」と規定する。したがって,事務管理における管理者が本人の意思に反して事務管理をした場合において,管理者が,本人のために有益な費用を出したときは,本人に対し,本人が現に利益を受けている限度においてのみ,その借還を請求することができる。

  • Q隣接する土地の一方の所有者は,他方の土地の所有者に対し,共同の費用で境界標を設置することに協力するよう請求することができ,その協力の結果設置された境界標は共有に属するものと推定される。

    A〇  223条は,「土地の所有者は,隣地の所有者と共同の費用で,境界標を設けることができる」と規定し,229条は,「境界線上に設けた境界標,用障,障壁,溝及び堀は,相隣者の共有に属するものと推定する」と規定する。したがって,隣接する土地の一方の所有者は,他方の土地の所有者に対し,共同の費用で境界標を設置することに協力するよう請求することができ,その協力の結果設置された境界標は共有に属するものと推定される

  • Q建物を建築する際に境界線から50センチメートル以上の距離を保つ必要がある場合であっても,建築に着手してから1年を経過し,又は建物が完成した後は,隣地の所有者は建物の変更を請求することができず,損害賠償のみを請求することができる。

    A〇  234条1項は,「建物を築造するには,境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは,隣地の所有者は,その建築を中止させ,又は変更させることができる。ただし,建築に着手した時から1年を経過し,又はその建物が完成した後は,損害暗償の請求のみをすることができる」と規定する。したがって,建物を建築する際に境界線から50センチメートル以上の距離を保つ必要がある場合であっても,建築に着手してから1年を経過し,又は建物が完成した後は,隣地の所有者は建物の変更を請求することができず,損害賠償のみを請求することができる。

  • Q隣接する土地の一方の所有者がその所有地上の建物を改修する場合,必要な範囲内で隣地を使用することができるが,居住者の承諾がなければ,その住家に立ち入ることはできない。

    A〇  209条1項柱書は,「土地の所有者は,次に掲げる目的のため必要な範用内で,隣地を使用することができる。ただし,住家については,その居住者の承諾がなければ,立ち入ることはできない」と規定し,同項1号は「境界又はその付近における障壁,建物その他の工作物の築造,収去又は修繕」を挙げる。したがって,隣接する土地の一方の所有者がその所有地上の建物を改修する場合,必要な範囲内で隣地を使用することができるが,居住者の承諾がなければ,その住家に立ち入ることはできない。

  • Q判例によれば,袋地(他人の土地に囲まれて公道に通じない土地)を買い受けた者は,所有権移転登記をしなければ,囲梳地(袋地を囲んでいる土地)の所有者に対し,公道に至るため囲統地を通行する権利を有することを主張することができない。

    A×  210条1項は,「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と規定する。一方,177条は,「不動産に関する物権の得喪及ぴ変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。しかし,判例(最判昭 47.4.14)は,「袋地の所有権を取得した者は,所有権取得登記を経由していなくても,囲続地の所有者ないしこれにつき利用権を有する者に対して,用統地通行権を主張することができると解するのが相当である。なんとなれば,民法 209条ないし 238条は,いずれも,相隣接する不動産相互間の利用の調整を目的とする規定であって,同法210条において袋地の所有者が囲続地を通行することができるとされているのも,相隣関係にある所有権共存の一態様として,囲続地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務を課し,袋地の効用を完からしめようとしているためである。このような趣旨に照らすと,袋地の所有者が囲続地の所有者らに対して囲続地通行権を主張する場合は,不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がないと解するのが相当であり,したがって,実体上袋地の所有権を取得した者は,対抗要件を具備することなく,用統地所有者らに対し囲続地通行権を主張しうるものというべきである」としている。したがって,袋地を買い受けた者は,所有権移転登記をしなくても,囲囲続地の所有者に対し,公道に至るため囲続地を通行する権利を有することを主張することができる。

  • Q甲土地を所有するAが,同土地を袋地である乙土地と袋地でない丙土地に分筆した上,乙土地をBに売った場合には, Bは,丙土地についてのみ,公道に至るための通行権を有する。

    A〇  213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては,借金を支払うことを要しない」と規定し,同条2項は,「前項の規定は,土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用寸る」と規定する。したがって,甲土地を所有するAが,同土地を袋地である乙土地と袋地でない丙土地に分筆した上,乙土地をBに売った場合には, Bは,丙土地についてのみ,公道に至るための通行権を有する。

  • Q土地の所有者は,隣地との境界付近において建物を修繕するため必要な範囲内で,隣地を使用することができるが,隣地所有者がこれにより損害を受けたときは,その償金を支払わなければならない。

    A〇  209条1項柱書本文は,「土地の所有者は,次に掲げる目的のため必要な範囲内で,隣地を使用することができる」と規定し,同項1号は,「境界又はその付近における障壁,建物その他の工作物の築造,収去又は修縫」を挙げる。また,同条4項は,「第1項の場合において,隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは,その借金を請求することができる」と規定する。

  • Q土地の分割によって公道に通じない土地が生じた場合には, その士地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができ,その通行について借金を支払う必要はない。

    A〇  213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては,借金を支払うことを要しない」と規定する。

  • Q土地の所有者は,やむを得ない事由があろ場合には,直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けることができるが,隣地所有者がこれにより損害を受けたときは,その償金を支払わなければならない。

    A×  218条は,「土地の所有者は,直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない」と規定する。

  • Q土地の境界線から50センチメートル以上の距離を保って建物を築造しなければならない場合においても,境界線に接して建築をしようとする者がいるときに,隣地の所有者は,その建築を中止させ,又は変更させることができない。

    A×  234条1項は,「建物を築造するには,境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と規定し,同条2項は,「前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは,隣地の所有者は,その建築を中止させ,又は変更させることができる。ただし,建築に着手した時から1年を経過し,又はその建物が完成した後は,損害賠償の請求のみをすることができる」と規定する。

  • Q土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その枝を切除することができ,かつ,その費用を隣地の所有者に請求することができる。

    A×  233条1項は,「土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる」と規定する。一方,同条3項柱書は,「第1項の場合において,次に掲げるときは,土地の所有者は,その枝を切り取ることができる」と規定し,同項各号は,「竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず,竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき」(1号),「竹木の所有者を知ることができず,又はその所在を知ることができないとき」(2号),「急迫の事情があるとき」(3号)を挙げる。したがって,土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときであっても,直ちにその枝を切除することができるわけではない。なお,同条4項は,「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは,その根を切り取ることができる」と規定する。

  • Q共有物の分割によって袋地(他人の土地に囲まれて公道に通じない土地)が生じた場合,当該袋地の所有者は,囲続地(袋地を囲んでいる土地)のうち,他の分割者の所有地についてのみ無償の通行権を有するが,その通行権は,他の分割者の所有地について売買がされた場合には消滅する。

    A×  210条1項は,「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と規定する。一方,213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては,償金支払うことを要しない」と規定し,同条2項は,「前項の規定は,土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用才る」と規定する。そして,判例(最判平2.11.20【百選I71】)は,「共有物の分割又は土地の一部譲渡によって公路に通じない土地(以下,「袋地」という。)を生じた場合には,袋地の所有者は,民法213 条に基づき,これを囲続する土地のうち,他の分割者の所有地又は土地の一部の譲渡人若しくは譲受人の所有地(以下,これらの囲続地を「残余地」という。)についてのみ通行権を有するが,同条の規定する用続地通行権は,残余地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではなく,袋地所有者は,民法 210条に基づき残余地以外の囲続地を通行しうるものではないと解するのが相当である。けだし,民法 209 条以下の相隣関係に関する規定は,土地の利用の調整を目的とするものであって,対人的な関係を定めたものではなく,同法213条の規定する囲続地通行権も,袋地に付着した物権的権利で,残余地自体に課せられた物権的負担と解すべきものであるからである。残余地の所有者がこれを第三者に譲渡することによって囲続地通行権が消滅すると解するのは,袋地所有者が自己の関知しない偶然の事情によってその法的保護を奪われるという不合理な結果をもたらし,他方,残余地以外の囲続地を通行しうるものと解するのは,その所有者に不測の不利益が及ぶことになって,妥当でない。したがって,共有物の分割によって袋地が生じた場合,当該袋地の所有者は,囲続地のうち,他の分割者の所有地についてのみ無償の通行権を有する。また,その通行権は,他の分割者の所有地について売買がされた場合でも,消滅しない。

  • Q袋地の所有権を取得した者は,所有権取得登記を経由していなくても,囲続地の所有者及び囲続地につき利用権を有する者に対して,公道に至るため囲統地を通行する権利を主張することができる。

    A〇  210条1項は,「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と規定する。一方,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。しかし,判例(最判昭47.4.14)は,「袋地の所有権を取得した者は,所有権取得登記を経由していなくても,囲經地の所有者ないしこれにつき利用権を有する者に対して,囲続地通行権を主張することができると解するのが相当である。なんとなれば,民法 209 条ないし 238条は,いずれも,相隣接する不動産相互間の利用の調整を目的とする規定であって,同法210条において袋地の所有者が囲統地を通行することができるとされているのも,相隣関係にある所有権共存の一態様として,囲続地の所有者に一定の範囲の通行受忍義務を課し,袋地の効用を完からしめようとしているためである。このような趣旨に照らすと,袋地の所有者が囲続地の所有者らに対して囲続地通行権を主張する場合は,不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がないと解するのが相当であり,したがって,実体上袋地の所有権を取得した者は,対抗要件を具備することなく,囲続地所有者らに対し囲經地通行権を主張しうるものというべきである」としている。したがって,袋地の所有権を取得した者は,所有権取得登記を経由していなくても,囲続地の所有者及び囲続地につき利用権を有する者に対して,公道に至るため囲統地を通行する権利を主張することができる。

  • Q甲土地を所有するAは,甲土地の賃借人であるBがC所有の乙土地の上に通路を開設した場合であっても,Aがその通路の利用を20年間続けていたときには,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権の時効取得を主張することができる。

    A×  283条は,「地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができる」と規定するところ,判例(最判昭30.12.26)は,「民法283条に上る通行地役権の時効取得については,いわゆる『継続』の要件として、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し,その開設は要役地所有者によってなされることを要するものと解すベ」きとしている。したがって,甲土地を所有するAは,甲土地の賃借人であるBがC所有の乙土地の上に通路を開設した場合,Aがその通路の利用を 20年間続けていたときであっても,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権の時効取得を主張することができない。

  • Q甲土地を所有するAと,乙土地を所有するBとの間で,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権設定の合意がされたが,通行地役権の設定登記がない場合,その後,Aから甲土地を譲り受けたCは,甲土地の所有権移転の登記を経由しても,Bに対し,通行地役権を主張することができない。

    A×  280 条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定する。一方,肢イの解説のとおり,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。しかし,判例(大判大13.3.17)は,要旨,要役地の所有権と共に地役権を譲り受けたる者が,所有権の移転を承役地の所有者に対抗し得るときは,地役権の移転は,之を承役地の所有者に対抗することができる, としている。したがって,甲土地を所有するAと,乙土地を所有するBとの間で,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権設定の合意がされたが,通行地役権の設定登記がない場合でも,その後,Aから甲土地を譲り受けたCは,甲土地の所有権移転の登記を経由すれば, Bに対し,通行地役権を主張することができる。

  • Q甲土地をAとBが共有する場合において, Bが,甲土地を要役地,C所有の乙土地を承役地とする通行地役権を時効により取得したときは,Aも,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権を取得する。

    A〇  284条1項は,「土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは,他の共有者も,これを取得する」と規定する。したがって,甲土地をAとBが共有する場合において,Bが,甲土地を要役地,C所有の乙土地を承役地とする通行地役権を時効により取得したときは,Aも,甲土地を要役地,乙土地を承役地とする通行地役権を取得する。

  • Q  AとBが共有する土地の分割によって公道に通じないA所有の甲士地と公道に通じるB所有の乙土地が生じた場合において,甲土地から公道に至るためにはC所有の丙土地を通行するのが最も損害が少ないときは,Aは,丙土地を通行することができる。

    A×  213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては,償金を支払うことを要しない」と規定する。したがって,AとBが共有する土地の分割によって公道に通じないA所有の甲土地と公道に通じるB所有の乙土地が生じた場合,甲土地から公道に至るためにはC所有の丙土地を通行するのが最も損害が少ないときでも,Aは,丙土地を通行することはできず,乙土地のみしか通行することができない。なお,210条1項は,「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は,公道に至るため,その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と規定し,211条1項は,「前条の場合には,通行の場所及び方法は,同条の規定による通行権を有する者のために必要であり,かつ,他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」と規定する。

  • Q土地の所有者は,隣地の所有者が隣地に設置した排水溝の破壊又は閉塞により自己の土地に損害が及んでいる場合,隣地の所有者に,排水溝の修繕又は障害の除去をさせることができる

    A〇  216 条は,「他の土地に貯水,排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により,自己の土地に損害が及び,又仕及ぶおそれがある場合には,その土地の所有者は,当該他の土地の所有者に,工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ,又は必要があるときは予防工事をさせることができる」と規定する。

  • Q土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えているときは,いつでも,自らその枝を切除することができる。

    A×  233条1項は,「土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,その竹木の所有者に,その枝を切除させることができる」と規定する。一方,同条3項柱書は,「第1項の場合において,次に掲げるときは,土地の所有者は,その枝を切り取ることができる」と規定し,同項各号は,「竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず,竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき」(1号),「竹木の所有者を知ることができず,又はその所在を知ることができないとき」(2号),「急迫の事情があるとき」(3号)を挙げる。したがって,土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えているときであっても,直ちに自らその枝を切除することができるわけではない。なお,同条4項は,「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは,その根を切り取ることができる」と規定する。

  • Q境界線上に設けられた境界標は,相隣者の共有に属するものと推定される。

    A〇  229条は,「境界線上に設けた境界標,囲障,障壁,溝及び堀は,相隣者の共有に属するものと推定する」と規定する。

  • Q土地の所有者は,隣地の所有者と共同の費用で,境界標を設けることができる。

    A〇  223条は,「土地の所有者は,隣地の所有者と共同の費用で,境界標を設けることができる」と規定する。

  • Q  AとBが共有する土地の分割によって公道に通じない甲土地と公道に通じる乙土地が生じた場合,甲土地の所有者Aは,公道に至るため,Bの所有する乙土地を通行することができるが,その通行について償金を支払う必要がある。

    A×  213条1項は,「分割によって公道に通じない土地が生じたときは,その土地の所有者は,公道に至るため,他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては,借金を支払うことを要しない」と規定する。したがって, AとBが共有する土地の分割によって公道に通じない甲土地と公道に通じる乙土地が生じた場合,甲土地の所有者Aは,公道に至るため,Bの所有する乙土地を通行することができ,その通行について償金を支払う必要はない。

  • Q  2棟の建物がその所有者を異にし,かつ,その間に空地があるときは,各所有者は,他の所有者と共同の費用で,その境界に囲障を設けることができる。

    A〇  225条1項は,「2棟の建物がその所有者を異にし,かつ, その間に空地があるときは,各所有者は,他の所有者と共同の費用で,その境界に囲障を設けることができる」と規定する。

  • Q  A所有の主たる動産とB所有の従たる動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権はAに帰属するが,BはAに対して借金を請求することができる

    A〇  243 条前段は,「所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する」と規定する。また,248条は,「第242条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は,第703条及び第704条の規定に従い,その償金を請求することができる」と規定する。したがって,A所有の主たる動産とB所有の従たる動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権はAに帰属するが,BはAに対して償金を請求することができる

  • Q  AとBが建物を共有する場合において,AがBの持分に応じた管理費用について立替払をし,Bに対して償還義務の履行の催告をしたにもかかわらず,Bがその義務を1年以内に履行しないときは, Aは,相当の償金を支払ってBの持分を取得することができる。

    A〇  253条1項は,「各共有者は,その持分に応じ,管理の費用を支払い,その他共有物に関する負担を負う」と規定し,同条2項は,「共有者が1年以内に前項の義務を履行しないときは,他の共有者は,相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる」と規定する。したがって, AとBが建物を共有する場合において, AがBの持分に応じた管理費用について立替払をし,Bに対して借還義務の履行の催告をしたにもかかわらず,Bがその義務を1年以内に履行しないときは,Aは,相当の償金を支払ってBの持分を取得することができる。

  • Q  Aが,その所有する甲土地の排水を通過させるため,甲土地より低地である乙土地の所有者Bが既に設けていた排水設備を使用し始めた場合,Aは,その利益を受ける割合に応じて,同設備の保存費用を分担する必要があるが,同設備の設置費用を分担する必要はない。

    A×  221 条1項は,「土地の所有者は,その所有地の水を通過させるため,高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる」と規定し,同条2項は,「前項の場合には,他人の工作物を使用する者は,その利益を受ける割合に応じて,工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない」と規定する。したがって,Aが,その所有する甲土地の排水を通過させるため,甲土地より低地である乙土地の所有者Bが既に設けていた排水設備を使用し始めた場合,Aは,その利益を受ける割合に応じて,同設備の保存費用だけでなく,同設備の設置費用も分担する必要がある。

  • Q土地の使用収益の権原なく播種された種子が苗に生育した場合,その苗の所有権は,播種した者ではなく,その土地の所有者が取得する。

    A〇  242 条は,「不動産の所有者は,その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし,権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」と規定するところ,判例(最判昭31.6.19)は,要旨,播かれた種から生育した苗の所有権は,播種が土地使用の権原のない者によってなされた場合は,土地所有者に屈する,としている。したがって,土地の使用収益の権原なく播種された種子が苗に生育した場合,その苗の所有権は,播種した者ではなく,その土地の所有者が取得する。

  • Q立木の所有権に関する明認方法は,現所有者と前所有者が共同して,現所有者名のほか,所有権の取得原因,前所有者名を表示することが必要である。

    A×  判例(大判大9.2.19)は,「其公示方法たるや他人をして其所有権取得を明認せしむべき行為たるを以て足る·····。故に何人が其立木の現在所有者なるかを明かならしむるを以て足り,必ずしも登記簿の記載に於けるが如く権利移付者及び権利取得の原因を明示することを要せざるなり」としている。したがって,立木の所有権に関する明認方法は,現所有者名を表示すれば足り,所有権の取得原因,前所有者名を表示することは必要でい。

  • Q甲土地とその上の立木を所有するAが立木の所有権を留保して甲士地をBに譲渡した後,BがCに甲土地を立木とともに譲渡した場合,Aは,立木の所有権の留保について登記や明認方法を備えなくても,立木の所有権をCに主張することができる

    A×  判例(最判昭34.8.7)は,「立木は本来土地の一部として一個の土地所有権の内容をなすものであるが,土地の所有権を移転するに当り,特に当事者間の合意によって立木の所有権を留保した場合は,立木は土地と独立して所有権の目的となるものであるが,留保もまた物権変動の一場合と解すベきであるから,この場合には立木につき立木法による登記をするかまたは該留保を公示するに足る明認方法を講じない以上,第三者は全然立木についての所有権留保の事実を知るに由ないものであるから,右登記または明認方法を施さない限り,立木所有権の留保をもってその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗し得ないものと解するを相当とする」としている。したがって,甲土地とその上の立木を所有するAが立木の所有権を留保して甲土地をBに譲渡した後,BがCに甲土地を立木とともに譲渡した場合,Aは,立木の所有権の留保について登記や明認方法を備えなければ,立木の所有権をCに主張することができない。

  • Q甲土地とその上の立木を所有するAがBに甲土地を立木とともに譲渡し,甲土地についてAからBヘの所有権移転登記がされた後,CがAから立木のみを譲り受け,立木について明認方法を備えた場合,Cは立木の所有権をBに主張することができる。

    A×  177条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。一方,判例(大判大10.4.14)は,「立木に関する法律の適用を受けざる立木と雖も,土地と分離し独立して譲渡の目的と為ることを得るものにして,其所有権の譲渡を第三者に対抗するには第三者をして権利の譲渡を明認せしむるに足るペき行為を為すことを必要とす」としている。そして,判例(大判大10.4.14)は,「立木の所有権に付き同一所有者が数回の譲渡を為したるときは,立木の所有権は権利取得に付き最先に公示方法を施したる者に帰属し,何人も其権利取得を争うことを得ざるものとすとしている。したがって,甲土地とその上の立木を所有するAがBに甲土地を立木とともに譲渡し,甲土地についてAからBヘの所有権移転登記がされた場合,立木の所有権はBに帰属するから,その後,CがAから立木のみを譲り受け,立木について明認方法を備えた場合でも,Cは立木の所有権をBに主張することができない。

  • Q加工者が他人の木材のみを材料としてこれに工作を加えた場合において,その工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは,加工者がその加工物の所有権を取得する。

    A〇  246条1項は,「他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは,その加工物の所有権は,材料の所有者に帰属する。ただし,工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは,加工者がその加工物の所有権を取得する」と規定する。

  • Q ABが甲建物を持分各2分の1の割合で共有していた場合、Aが死亡して相続人も特別縁故者もいないときは、甲建物の所有権はBに帰属する。

    A〇  255条は,「共有者の一人が,その持分を放棄したとき,又は死亡して相続人がないときは,その持分は,他の共有者に帰属する」と規定する。一方,958条の2第1項は,「前条の場合[注:「第952条第2項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないとき」〕において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」と規定する。そして,判例(最判平元.11.24【百選I55】)は,以下のように判示している。「昭和37年法律第40号に寄る法の一部改正により,特別縁故者に対する財産分与に関する法958条の3〔注:958条の2〕の規定が,相続財産の国庫帰属に至る一連の手続の中に新たに設けられたのであるが,同規定は,本来国庫に帰属すべき相続財産の全部又は一部を被相続人と特別の縁故があった者に分与する途を開き,右特別縁故者を保護するとともに,特別縁故者の存否にかかわらず相続財産を国庫に帰属させることの不条理を避けようとするものであり,そこには,被相続人の合理的意思を推測探究L,いわば遺贈ないし死因贈与制度を補充する趣旨も含まれているものと解される。そして,右958条の3〔注:958条の2〕の規定の新設に伴い,従前の法959条1項の規定が法959条として『前条の規定によって処分されなかった相続財産は,国庫に帰属する。』と改められ,その結果,相続人なくして死亡した者の相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ,従前の法959条1項の特別規定である法255条による共有持分の他の共有者への帰属時期も右財産分与手続の終了後とされることとなったのである。この場合,右共有持分は法255 条により当然に他の共有者に帰属し,法958条の3【注:958条の2〕に基づく特別縁故者への財産分与の対象にはなりえないと解するとすれば,共有持分以外の相続財産は右財産分与の対象となるのに,共有持分である相続財産は右財産分与の対象にならないことになり,同じ相続財産でありながら何故に区別して取り扱うのか合理的な理由がないのみならず,共有持分である相続財産であっても,相続債権者や受遺者に対する弁済のため必要があるときは,相続財産管理人は,これを換価することができるところ,これを換価して弁済したのちに残った現金については特別縁故者への財産分与の対象となるのに換価しなかった共有持分である相続財産は右財産分与の対架とならないということになり,不合理である。さらに,被相続人の療養看護に努めた内縁の妻や事実上の養子など被相続人と特別の縁故があった者が,たまたま遺言等がされていなかったため相続財産から何らの分与をも受けえない場合にそなえて,家庭裁判所の審判による特別縁故者への財産分与の制度が設けられているにもかかわらず,相続財産が共有持分であるというだけでその分与を受けることができないというのも,いかにも不合理である。これに対し,右のような場合には,共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり,右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には,特別縁故者を保護することが可能となり,被相統人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに,家庭裁判所における相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり,具体的妥当性を図ることができるのである。したがって,共有者の1人が死亡し,相続人の不存在が確定し,相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは,その共有持分は,他の相続財座とともに,法958条の3〔注:958条の2]の規定に基うく特別縁故者に対する財産分与の対象となり,右財産分与がされず,当該共有持分が承継すベき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、法255条により他の共有者に帰属することになると解すベきである。」したがって, ABが甲建物を持分各2分の1の割合で共有していた場合,Aが死亡して相続人も特別縁故者もいないときは,甲建物の所有権はBに帰属する。

  • Q  ABがC所有の土地上に建物を共有してその土地の所有権を侵害している場合、Cが建物収去土地明渡の訴えを提起するときは、AB双方を被告とする必要がある。

    A×  判例(最判昭43.3.15)仕「土地の所有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし建物収去土地明渡を請求する訴訟は,いわゆる固有必要的共同訴訟ではないと解すべきである。けだし右の場合,共同相続人らの義務はいわゆる丕可分債務であるから,その請求において理由があるときは,同人らは土地所有者に対する関係では,各自係争物件の全部についてその侵害行為の全部を除去すべき義務を負うのであって,土地所有者は共同相続人ら各自に対し順次その義務の履行を訴求することができ,必ずしも全員に対して同時に訴を提起し,同時に判決を得ることを要しないからである。もし······これを固有必要的共同訴訟であると解するならば,共同相続人の全部を共同の被告としなければ被告たる当事者適格を有しないことになるのであるが,そうだとすると,原告は,建物収去土地明渡の義務あることについて争う意思を全く有しない共同相続人をも被告としなければならないわけであり,また被告たる共同相続人のうちで訴訟進行中に原告の主張を認めるにいたった者がある場合でも,当該被告がこれを認諾し,または原告がこれに対する訴を取り下げる等の手段に出ることができず,いたずらに無用の手続を重ねなければならないことになるのである。のみならず,相続登記のない家屋を数人の共同相続人が所有してその敷地を不法に占拠しているような場合には,その所有者が果して何びとであるかを明らかにしえないことで稀ではない。そのような場合は,その一部の者を手続に加えなかったために,既になされた訴訟手続ないし判決が無効に帰するおそれもあるのである。以上のように,これを必要的共同訴訟と解するならば,手続上の不経済と不安定を招来するおそれなしとしないのであって,これらの障碍を避けるためにも,これを必要的共同訴訟と解しないのが相当である。また,他面,これを通常の共同訴訟であると解したとしても,一般に,土地所有者は,共同相続人各自に対して債務名義を取得するか,あるいはその同意をえたうえでなければ,その強制執行をすることが許されないのであるから,かく解することが,直ちに,被告の権利保護に欠けるものとはいえないのである」としているしたがって, ABがC所有の土地上に建物を共有してその土地の所有権を侵害している場合において,Cが建物収去土地明渡の訴えを提起するときは, AB双方を被告とする必要はない。なお,430条は,「第4款(連帯債務)の規定(第440条の規定を除く。)仕,債務の目的がその性質上不可分である場合において,数人の債務者があるときについて準用する」と規定し,436 条は,「債務の目的がその性質上可分である場合において,法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは,債権者は,その連帯債務者の一人に対し,又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し,全部又は一部の履行を請求することができる」と規定する。

  • Q  ABが共有する土地について、その土地上に建物を所有して土地の占有を侵害するCに対し建物収去土地明渡を求める訴えを提起する場合、Aは、単独で当該訴えを提起することができる

    A〇   252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(大判大7.4.19)は,「被上告人は,本訴に於て,本件土地の共有者のー人として上告人に対し其不法占在に因る妨害を排除し之が明渡を請求するものにして,共有地の所有権確認の訴を起したるにあらザ。斯る請求は各共有者単独にて之を為すことを得る」としいる。したがって, ABが共有する土地について,その土地上に建物を所有して土地の占有を侵害するCに対し建物収去土地明渡を求める訴えを提起する場合,Aは,単独で当該訴えを提起することができる。

  • Q  ABが持分各2分の1の割合で共有している建物を目的とする使用貸借契約について、Aは、単独でこれを解除することができない

    A〇  252条1項前段は,「共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み,共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。···)は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する」と規定する。一方,544条1項は,「当事者の一方が数人ある場合には,契約の解除は,その全員から又はその全員に対してのみ,することができる」と規定する。そして,判例(最判昭 29.3.12)は,「使用貸借の解除は,民法252 条本文【注:252条1項前段〕の管理行為に該当し,したがって共有者(共同相続人)の過半数決を要する」としている。したがって, ABが持分各2分の1の割合で共有している建物を目的とする使用貸借契約について,Aは,単独でこれを解除することはできない。

  • Q  ABが共有している建物の管理費用をAがたてかえた場合、Aは、Bからその共有持ち分を譲り受けたCに対し、当該立替金の支払いを請求することができる

    A〇  253条1項は,「各共有者は,その持分に応じ,管理の費用を支払い,その他共有物に関する負担を負う」と規定し,254条は,「共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は,その特定承継人に対しても行使することができる」と規定する。したがって,ABが共有している建物の管理費用をAが立て替えた場合,Aは,Bからその共有持分を譲り受けたCに対し,当該立替金の支払を請求することができる。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合、第三者が甲土地を無断で資材置場として使用している場合,Aは単独でその第三者に対して,甲土地全部の明渡しを請求することができる。

    A〇  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(大判大7.4.19)は,「被上告人は,本訴に於て,本件土地の共有者の一人として上告人に対し其不法占有に因る妨害を排除し之が明渡を請求するものにして,共有地の所有権確認の訴を起したるにあらず、斯る請求は各共有者単独にてとを為すことを得る」としている。したがって,第三者が甲土地を無断で資材置場として使用している場合,Aは単独でその第三者に対して,甲土地全部の明渡しを請求することができる。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合、甲土地が山林である場合,AとBが合意すれば,開発のために甲土地上の樹木全部を伐採することができる。

    A×  251条1項は,「各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。·····)を加えることができない」と規定するところ,判例(大判昭2.6.6)は,「物の共有者は,各其の持分に応じ目的物の使用収益を為すことを得れども,他の共有者の同意あるに非れば之に変更を加うることを得ざると同時に,共有の目的物が山林なる場合に於て,其の林木を·····伐採するが如きは只に山林を需用に供し若くは其の果実を収得するに止らず,山林其のものを毀損するものなれば,是れ即ち共有物に変更を加うるものに外ならずして,其の使用若くは収益を以て目すべきものにあらざるが故に,設令被告人にして本件山林の共有者なりとするも他の共有者の同意なき限,······伐採を為すの権利を有せざること勿論なりとす」としている。したがって,甲土地が山林である場合,AとBが合意しても,Cが合意しなければ,開発のために甲土地上の樹木全部を伐採することはできない。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合、A,B及びCが共同して甲土地を第三者に賃貸している場合,第三者がその賃料の支払を怠ったときの賃貸借契約の解除は,AとBとですることができる。

    A〇  252 条1項前段は,「共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の遥任及び解任を含み,共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。···)は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する」と規定する。一方,544条1項は,「当事者の一方が数人ある場合には,契約の解除は,その全員から又はその全員に対してのみ,することができる」と規定する。そして,判例(最判昭39.2.25)は,「共有者が共有物を目的とする貸借契約を解除することは民法252条(注:252条1項〕にいう『共有物ノ管理=関スル事項』に該当し,右貸借契約の解除については民法544条1項の規定の適用が排除されると解すべき」としている。したがって,A, B及びCが共同して甲土地を第三者に賃貸している場合,第三者がその賃料の支払を怠ったときの賃貸借契約の解除は,AとBとですることができる。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合、Aは,Cの持分について第三者への不実の持分移転登記がされている場合には,単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

    A〇  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(最判平15.7.11【百選I75】)は,「不動産の共有者の一人は,その持分権に基づき,共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ,不実の持分移転登記がされている場合には,その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから,共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し,単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる」としている。したがって, Aは,Cの持分について第三者への不実の持分移転登記がされている場合には,単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の持分で甲土地を共有している場合、Aが単独で甲土地全部を占有している場合でも,B及びCは,その共有持分が過半数を超えることを理由としては, Aに対して甲土地の明渡しを請求することはできない。

    A〇  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭41.5.19【百選174】)は,「共同相続に基づく共有者の一人であって,その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は,他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権限を有するものでない····が,他方,他のすベての相続人らがその共有持分を合計すると,その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといって(以下このような共有持分権者を多数持分権者という),共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し,当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし,このような場合,右の少数持分権者は自己の持分によって,共有物を使用収益する権限を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従って,この場合,多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには,その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである」としている。すって,Aが単独で甲土地全部を占有している場合でも,B及びC、1は,その共有持分が過半数を超えることを理由としては,Aに対して甲士地の明渡しを請求することはできない。

  • Q共有者全員が賃貸人となり共有物を目的とする賃貸借契約が締結された場合,その賃貸借契約を解除するには,共有者全員が解除権を行使しなければならない。

    A×  544条1項は,「当事者の一方が数人ぁる場合には,契約の解除は,その全員から又はその全員に対してのみ,することができる」と規定する。一方,252条1項前段は,「共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み,共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。······)は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する」と規定する。そして,判例(最判昭 39.2.25)は,「共有者が共有物を目的とする貸借契約を解除することは,民法 252 条にいう『共有物の管理に関する事項』に該当し,右賃貸借契約の解除については544条1項の規定の適用が排除されると解すべき」としている。したがって,共有者全員が賃貸人となり共有物を目的とする賃貸借契約が締結された場合,その賃貸借契約を解除するには,共有者の持分の過半数で解除権を行使すれば足りる。

  • Q  A, B及びCが共有者である共有不動産についての裁判による分割において,AとBが原告となり,Cを被告として分割請求をした場合,Cの持分の限度で現物を分割し,残りの部分をAとBの共有とする方法は許される。

    A〇  258条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同項1号は,「共有物の現物を分割する方法」を挙げるところ,判例(最大判昭 62.4.22)は,「共有者が多数である場合,その中のただー人でも分割請求をするときは,直ちにその全部の共有関係が解消されるものと解すべきではなく,当該請求者に対してのみ持分の限度で現物を分割し,その余は他の者の共有として残すことも許されるものと解すべきである」としている。したがって, A, B及びCが共有者である共有不動産についての裁判による分割において,AとBが原告となり,Cを被告として分割請求をした場合,Cの持分の限度で現物を分割し,残りの部分をAとBの共有とする方法は許される。

  • Q組合財産である不動産について,所有権を有しないにもかかわらず登記簿上その所有者としての登記が行われている者に対して,組合員の一人が単独で登記の抹消を請求することはできない。

    A×  252条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭 33.7.22)は,「組合財産については,民法 667 条以下において特別の規定のなされていない限り,民法 249 条以下の共有の規定が適用されることになる。ところで,ある不動産の共有権者の一人が,その持分に基き,当該不動産につき登記簿上所有名義者たるものに対して,その登記の抹消を求めることは,妨害排除の請求に外ならず,いわゆる保存行為に屈するものというべきであるから,民法における組合財産の性質を前記の如く解するにおいては,その持分権者の一人は単独で右不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めることができる笹である」としているしたがって,組合財産である不動産について,所有権を有しないにもかかわらず登記簿上その所有者としての登記が行われている者に対して,組合員の一人は,単独で登記の抹消を請求することができる。

  • Q被相続人が遣言をしないで死亡したことにより相続人の共有となった財産の分割は,裁判所が判決手続によって行うことができない。

    A〇  258条1項は,「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,その分割を裁判所に請求することができる」と規定する。一方,907条2項本文は,「遺産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,各共同相続人は,その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる」と規定する。そして,判例(最判昭62.9.4)は,「遺産相続により相続人の共有となュた財産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家事審判法【注:家事事件手続法〕の定めるところに従い,家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり,通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である」としている。したがって,被相続人が遺言をしないで死亡したことにより相続人の共有となった財産の分割は,裁判所が判決手続によって行うことができない。

  • Q要役地の共有者の一人のために時効の更新がある場合であっても,他の共有者との関係では,消滅時効は進行する。

    A×  292 条は,「要役地が数人の共有に属する場合において, そのー人のために時効の完成猶予又は更新があるときは,その完成猶予又は更新は,他の共有者のためにも, その効力を生ずる」と規定する。

  • Q  Aが3分の1,Bが3分の2の持分で甲土地を共有している場合、Aは, Bに無断で,甲土地の自己の持分について抵当権を設定することができない。

    A×  206 条は,「所有者は,法令の制限内において,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利を有する」と規定するところ,判例(大判大8.11.3)は,「共有は数人が共同してーの所有権を有する状態にして,共有者は物を分割して其一部を所有するにあらず,各共有者は物の全部に付き所有権を有し,他の共有者の同一の権利によりて減縮せらるるに過ぎず。従て,共有者の有する権利は単独所有者の権利と性質内容を同くし,唯其分量及び範囲に広狭の差異あるのみ」としている。したがって,共有者は,自由にその共有持分の処分をする権利を有するから,Aは, Bに無断で,甲土地の自己の持分について抵当権を設定することができる。

  • Q  Aが3分の1,Bが3分の2の持分で甲土地を共有している場合、 Aに無断でBが甲土地を農地から宅地にする造成工事を行い,甲土地の形状を変更している場合,Aは,Bに対し,その工事の差止めを求めることができる。

    A〇  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定する。一方,251条1項は,「各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。··)を加えることができない」と規定する。そして,判例(最判平 10.3.24)は,「共有者の一部が他の共有者の同意を得ることなく共有物を物理的に損傷しあるいはこれを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には,他の共有者は,各自の共有持分権に基づいて、右行為の全部の禁止を求めることができるだけでなく,共有物を原状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き,右行為により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることもできると解するのが相当である。けだし,共有者は,自己の共有持分権に基づいて,共有物全部につきその持分に応じた使用収益をすることができるのであって(民法249条〔注:249条1項]),自己の共有持分権に対する侵害がある場合には,それが他の共有者によると第三者によるとを問わず,単独で共有物全部についての妨害排除請求をすることができ,既存の侵害状態を排除するために必要かつ相当な作為又は不作為を相手方に求めることができると解されるところ,共有物に変更を加える行為は,共有物の性状を物理的に変更することにより,他の共有者の共有持分権を侵害するものにほかならず,他の共有者の同意を得ない限りこれをすることが許されない(民法251条〔注:251条1項〕)からである」としている。したがって, Aに無断でBが甲土地を農地から宅地にする造成工事を行い,甲土地の形状を変更している場合,Aは,Bに対し,その工事の差止めを求めることができる。

  • Q  Aが3分の1,Bが3分の2の持分で甲土地を共有している場合、 Aに無断でBが甲土地上に乙建物を建て,甲土地全体を単独で使用している場合,Aは,Bに対し,自己の持分割合に応じ,甲土地の地代相当額の支払を請求することができる。

    A〇  249 条2項は,「共有物を使用する共有者は別段の合意がある場合を除き,他の共有者に対し,自己の持分を超える使用の対価を借還する義務を負之」と規定する。したがって, Aに無断でBが甲土地上に乙建物を建て,甲土地全体を単独で使用している場合,Aは,Bに対し,自己の持分割合に応じ,甲土地の地代相当額の支払を請求することができる。

  • Q  Aが3分の1,Bが3分の2の持分で甲土地を共有している場合、甲土地の利用方法についてAとBが協議したが意見が一致せず,Aに無断でBがCと甲土地の賃貸借契約を締結し,Cが甲土地を占有している場合,Aは,Cに対し,甲土地全体の明渡しを求めることができる。

    A×  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭63.5.20)は,「共同相続に基づく共有者は,他の共有者との協議を経ないで当然に共有物を単独で占有する権原を有するものではないが,自己の持分に基づいて共有物を占有する権原を有するので,他のすベての共有者らは,右の自己の持分に基づいて現に共有物を占有する共有者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないところ······,この理は,共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者とその余の共有者との関係にも妥当し,共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は,その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが,現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので,第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。なお,このことは,第三者の占有使用を承認した原因が共有物の管理又は処分のいずれに属する事項であるかによって結論を異にするものではないとしている。したがって, Aに無断でBがCと甲土地の賃貸借契約を締結し,Cが甲土地を占有している場合でも,Aは,Cに対し,当然には甲土地全体の明渡しを求めることはできない。

  • Q  Aが3分の1,Bが3分の2の持分で甲土地を共有している場合、AがBに無断で甲土地全体を単独で占有している場合であっても,Bは,自分の共有持分が過半数を超えることを理由として, Aに対し,甲土地全体の明渡しを求めることはできない。

    A〇  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について, その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭41.5.19【百選I74】)は,「共同相続に基づく共有者の一人であって,その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は,他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権限を有するものでない·····が,他方,他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると,その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといって(以下このような共有持分権者を多数持分権者という),共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し,当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし,このような場合,右の少数持分権者は自己の持分によって,共有物を使用収益する権限を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従って,この場合,多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには,その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである」としている。したがって,AがBに無断で甲土地全体を単独で占有している場合であっても,Bは,自分の共有持分が過半数を超えることを理由として, Aに対し,甲土地全体の明渡しを求めることはできない。

  • Q複数の共有者がそれぞれ共有持分を有している自転車を修理しようとする場合には,共有者全員で合意しなければ,その自転車を修理に出すことはできない。

    A×  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,複数の共有者がそれぞれ共有持分を有している自転車の修理は,「保存行為」にあたる。したがって,各共有者は,単独で,その自転車を修理に出すことができる。

  • Q共有者3人がそれぞれ同じ割合で共有持分を有している場合において,共有者の1人が持分権を放棄したときは,その放棄された持分の帰属は,放棄した共有者を除く共有者間の協議によって定めなければならない。

    A×  255条は,「共有者の一人が,その持分を放棄したとき,又は死亡して相続人がないときは,その持分は,他の共有者に帰属する」と規定する。したがって,共有者3人がそれぞれ同じ割合で共有持分を有している場合において,共有者の1人が持分権を放棄したときは,その放棄された持分は,他の共有者に帰属する。

  • Q共有者2人がそれぞれ共有持分を有している土地について,共有者の1人が自らの持分を第三者に譲渡しようとするときは,他の共有者の同意がなければ,これをすることができない。

    A×  206 条は,「所有者は,法令の制限内において,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利を有する」と規定するところ,例(大判大8.11.3)は,「共有は数人が共同してーの所有権を有する状態にして,共有者は物を分割して其一部を所有するにあらず,各共有者は物の全部に付き所有権を有し,他の共有者の同一の権利によりて減縮せらるるに過ぎず。従て,共有者の有する権利は単独所有者の権利と性質内容を同くし,唯其分量及び範囲に広狭の差異あるのみ」としており,共有者は,自由にその共有持分の処分をする権利を有する判例(最判昭50.11.7)も,「共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産について同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者は,適法にその権利を取得することができ······,他の共同相続人とともに右不動産を共同所有する関係にたつ」としいるしたがって,共有者2人がそれぞれ共有持分を有している土地について,共有者の1人が自らの持分を第三者に譲渡しようとするときは,他の共有者の同意がなくても,これをすることができる。

  • Q共有者2人のうち1人が他の共有者のために共有物の管理費用を立て替えた場合において,立替金返還債務を負っている共有者が第三者に共有持分を譲渡したときは,立替金返還債権を有している共有者は,その第三者に対し,立替費用の支払を求めることができる。

    A〇  253条1項は,「各共有者は,その持分に応じ,管理の費用を支払い,その他共有物に関する負担を負う」と規定し,254条は,「共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は,その特定承継人に対しても行使することができる」と規定するしたがって,共有者2人のうち1人が他の共有者のために共有物の管理費用を立て替えた場合において,立替金返還債務を負っている共有者が第三者に共有持分を譲渡したときは,立替金返還債権を有している共有者は,その第三者に対し,立替費用の支払を求めることができる。

  • Q共有物の共有者の1人が他の共有者との協議を経ないで第三者に共有物を貸した場合,第三者によるその占有を承認しなかった他の共有者は,当該共有物を占有している第三者に対し,当然には当該共有物の引渡しを求めることができない。

    A〇  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭 63.5.20)は,「共同相続に基づく共有者は,他の共有者との協議を経ないで当然に共有物を単独で占有する権原を有するものではないが,自己の持分に基づいて共有物を占有する権原を有するので,他のすベての共有者らは,右の自己の持分に基づいて現に共有物を占有する共有者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないところ····,この理は,共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者とその余の共有者との関係にも妥当し,共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は,その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが,現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので,第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。なお,このことは,第三者の占有使用を承認した原因が共有物の管理又は処分のいずれに属する事項であるかによって結論を異にするものではない」としている。したがって,共有物の共有者の1人が他の共有者との協議を経ないで第三者に共有物を貸した場合,第三者によるその占有を承認しなかった他の共有者は,当該共有物を占有していろ第三者に対し,当然には当該共有物の引渡しを求めることができない。

  • Q  AとBが各2分の1の割合で共有する甲土地の法律関係に関して、Aは,甲土地の不法占拠者に対し単独で不法行為に基づく損害賠償を請求することができるが,Aの請求することができる損害賠償の額は,Aの持分割合に相当する額に限られる。

    A〇  709 条は,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定L,249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について, その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭51.9.7)は,「共有にかかる土地が不法に占有されたことを理由として,共有者の全員又はその一部の者から右不法占有者に対してその損害賠償を求める場合には,右共有者は,それぞれその共有持分の割合に応じて請求をすべきものであり.その割合を超えて請求をすることは許されないものといわなければならない」としている。したがって, Aは,甲土地の不法占拠者に対し単独で不法行為に基づく損害賠償を請求することができるが,Aの請求することができる損害賠償の額は,Aの持分割合に相当する額に限られる。

  • Q  AとBが各2分の1の割合で共有する甲土地の法律関係に関して、 Aは,甲土地を単独で使用することができ,その使用の対価についてBに対し借還する義務を負わない。

    A×  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するが,同条2項は,「共有物を使用する共有者は別段の合意がある場合を除き,他の共有者に対し,自己の持分を超える使用の対価を借還する義務を負う」と規定する。したがって, Aは,甲土地を単独で使用することができるが,その使用の対価についてBに対し借還する義務を負う。

  • Q  AとBが各2分の1の割合で共有する甲土地の法律関係に関して、 Aが死亡し,その相続人の不存在が確定するとともに,甲土地がAの特別縁故者に対する財産分与の対象にもならなかったときは,Aの有していた甲土地の持分はBに帰属する。

    A〇  255条は,「共有者の一人が,その持分を放棄したとき,又は死亡して相続人がないときは,その持分は,他の共有者に帰属する」と規定する。一方,958条の2第1項は,「前条の場合〔注:「第952条第2項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときJ〕において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」と規定する。そして,判例(最判平元.11.24【百選皿55】)は,以下のように判示している。「昭和37 年法律第40号に寄る法の一部改正により,特別縁故者に対する財産分与に関する法958条の3〔注:958条の2〕の規定が,相続財産の国庫帰属に至る一連の手続の中に新たに設けられたのであるが,同規定は,本来国庫に帰属すべき相続財産の全部又は一部を被相続人と特別の縁故があった者に分与する途を開き,右特別縁故者を保護するとともに,特別縁故者の存否にかかわらず相続財産を国庫に帰属させることの不条理を避けようとするものであり,そこには,被相続人の合理的意思を推測探究L,いわば遺贈ないし死因贈与制度を補充する趣旨も含まれているものと解される。そして,右958条の3〔注:958条の2〕の規定の新設に伴い,従前の法959条1項の規定が法959条として『前条の規定によって処分されなかった相続財産は,国庫に帰属する。』と改められ,その結果,相続人なくして死亡した者の相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされ,従前の法 959条1項の特別規定である法 255条による共有持分の他の共有者への帰属時期も右財産分与手続の終了後とされることとなったのである。この場合,右共有持分は法255 条により当然に他の共有者に帰属し,法958条の3〔注:958条の2〕に基づく特別縁故者への財産分与の対象にはなりえないと解するとすれば,共有持分以外の相続財産は右財産分与の対象となるのに,共有持分である相続財産は右財産分与の対象にならないことになり,同じ相続財産でありながら何故に区別して取り扱うのか合理的な理由がないのみならず,共有持分である相続財産であっても,相続債権者や受遣者に対する弁済のため必要があるときは,相続財産管理人は,これを換価することができるところ,これを換価して弁済したのちに残った現金については特別縁故者への財産分与の対象となるのに,換価しなかった共有持分である相続財産は右財産分与の対象とならないということになり,不合理である。さらに,被相続人の療養看護に努めた内縁の妻や事実上の養子など被相続人と特別の縁故があった者が,たまたま遣言等がされていなかったため相続財産から何らの分与をも受けえない場合にそなえて,家庭裁判所の審判による特別縁故者への財産分与の制度が設けられているにもかかわらず,相続財産が共有持分であるというだけでその分与を受けることができないというのも,いかにも不合理である。これに対し,右のような場合には,共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり,右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には,特別縁故者を保護することが可能となり,被相続人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに,家庭裁判所における相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり,具体的妥当性を図ることができるのであるしたがって,共有者の1人が死亡し,相続人の不存在が確定し,相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは,その共有持分は,他の担続財産とともに,法958条の3【注:958条の2〕の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり,右財産分与がされず,当該共有持分が承継寸べき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて,法255条により他の共有者に帰属十ることになると解すべきである。」したがって,Aが死亡し,その相続人の不存在が確定するとともに,甲土地がAの特別縁故者に対する財産分与の対象にもならなかったときは,Aの有していた甲土地の持分はBに帰属する。

  • Q  AとBが各2分の1の割合で共有する甲土地の法律関係に関して、Aが甲土地の管理費用のうちBが負担すべき分を立て替えて支払った後,Bが甲土地の自己の持分をCに譲渡した場合,Aは,Cに対し,その立替金額の支払を請求することができる。

    A〇  253条1項は,「各共有者は,その持分に応じ,管理の費用を支払い,その他共有物に関する負担を負う」と規定し,254条は,「共有者のー人が共有物について他の共有者に対して有する債権は,その特定承継人に対しても行使することができる」と規定する。したがって,Aが甲土地の管理費用のうちBが負担すべき分を立て替えて支払った後,Bが甲土地の自己の持分をCに譲渡した場合,Aは,Cに対し,その立替金額の支払を請求することができる。

  • Q共有地について筆界の確定を求める訴えを提起しようとする場合に,一部の共有者が訴えの提起に同調しないときは,その余の共有者は,隣接する土地の所有者と訴えの提起に同調しない共有者とを被告として,上記訴えを提起することができる

    A〇  判例(最判平11.11.9)は,「境界の確定を求める訴えは,隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する場合には,共有者全員が共同してのみ訴え,又は訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解される······。したがって,共有者が右の訴えを提起するには,本来,その全員が原告となって訴えを提起すべきであるということができる。しかし,共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには,その余の共有者は,隣接する士地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。けだし,境界確定の訴えは,所有権の目的となるべき公海上特定の地番により表示される相隣接する土地の境界に争いがある場合に,裁判によってその境界を定めることを求める訴えであって,所有権の目的となる土地の範囲を確定するものとして共有地については共有者全員につき判決の効力を及ぼすべきものであるから,右共有者は,共通の利益を有する者として共同して訴え,又は訴えられることが必要となる。しかし,共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいる場合であっても,隣接する土地との境界に争いがあるときにはこれを確定する必要があることを否定することはできないところ,右の訴えにおいては,裁判所は,当事者の主張に拘束されないで,自らその正当と認めるところに従って境界を定めるべきであって,当事者の主張しない境界線を確定しても民訴法 246 条の規定に違反するものではないのである····。このような右の訴えの特質に照らせば,共有者全員が必于共同歩調をとることを要するとまで解する必要はなく,共有者の全員が原告又は被告いずれかの立場で当事者として訴訟に関与していれば足りると解すべきであり,このように解しても訴訟手続に支障を来すこともないからである」としている。したがって,共有地について筆界の確定を求める訴えを提起しようとする場合に,一部の共有者が訴えの提起に同調しないときは,その余の共有者は,隣接する土地の所有者と訴えの提起に同調しない共有者とを被告として,上記訴えを提起することができる。

  • Q裁判所に請求して共有物の分割をする場合,共有物の現物を分割するか,共有物を競売して売得金を分割する方法のいずれかによらなければならず,共有物を共有者のうちのー人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法によることはできない。

    A×  258条1項は,「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,その分割を裁判所に請求することができる」と規定する。そして,同条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同項各号は,「共有物の現物を分割する方法」(1号),「共有者に債務を負担させて,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」(2号)を挙げる。したがって,裁判所に請求して共有物の分割をする場合,共有物の現物を分割する方法のみならず,共有物を共有者のうちのー人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法によることもできる。なお,258 条3項は,「前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,その競売を命ずることができる」と規定する。

  • Q共有物について賃貸借契約を締結することは,過半数の持分を有する共有者によって可能であるが,賃貸借契約の解除は,共有者全員によってされる必要がある

    A×  252 条1項前段は,「共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み,共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。·····)は,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する」と規定する。一方,544条1項は,「当事者の一方が数人ぁる場合には,契約の解除は,その全員から又はその全員に対してのみ,することができる」と規定する。そして,判例(最判昭 39.2.25)は,「共有者が共有物を目的とナる貸借契約を解除することは民法252条[注:252条1項〕にいう『共有物ノ管理=関スル事項』に該当し,右貸借契約の解除については民法544条1項の規定の適用が排除されると解すべき」としている。したがって,共有物について賃貸借契約を締結することも,賃貸借契約の解除も,過半数の持分を有する共有者によって可能である。

  • Q  ABが共有する土地につき,Cが無権限で自己への所有権移転登記をした場合,Aは,単独で,Cに対し,抹消登記手続を請求することができる。

    A〇  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為を寸ることができる」と規定するところ,判例(最判昭31.5.10) は,「ある丕動産の共有権者の一人がその持分に基き当該不動産につき登記簿上の所有名義者に対してその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものというペく,従って,共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる」としているしたがって, ABが共有する土地につき,Cが無権限で自己への所有権移転登記をした場合,Aは,単独で,Cに対し,抹消登記手続を請求することができる。

  • Q  ABが各2分の1の持分で甲土地を共有している場合に,Bは,AB間の協議に基づかずにAの承認を受けて甲土地を占有するCに対し,単独で,甲土地の明渡しを求めることはできない。

    A〇  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭 63.5.20)は「共同相続に基づく共有者は,他の共有者との協議を経ないで当然に共有物を単独で占有する権原を有するものではないが,自己の持分に基づいて共有物を占有する権原を有するので,他のすベての共有者らは,右の自己の持分に基づいて現に共有物を占有する共有者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないところ······,この理は,共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者とその余の共有者との関係にも妥当し,共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は,その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが,現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので,第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。なお,このことは,第三者の占有使用を承認した原因が共有物の管理又は処分のいずれに属する事項であるかによって結論を異にするものではない」としている。したがって,ABが各2分の1の持分で甲土地を共有している場合に,Bは, AB間の協議に基づかずにAの承認を受けて甲土地を占有するCに対し,単独で,甲土地の明渡しを求めることはできない。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の割合で甲建物を共有している場合、Aは,その持分に抵当権を設定する場合,B及びCの同意を得る必要がある。

    A×  206 条は,「所有者は,法令の制限内において,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利を有する」と規定するところ,判例(大判大8.11.3)は,「共有は数人が共同してーの所有権を有する状態にして,共有者は物を分割して其一部を所有するにあらず,各共有者は物の全部に付き所有権を有し,他の共有者の同一の権利によりて波縮せらるるに過ぎず。従て,共有者の有する権利は単独所有者の権利と性質内容を同くし,唯其分量及び範囲に広狭の差異あるのみ」としている。したがって,共有者は,自由にその共有持分の処分をする権利を有する。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の割合で甲建物を共有している場合、DがA, B及びCに無断でD名義の所有権移転登記をした場合,Aは,B及びCの同意を得ることなく単独で,Dに対してその所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

    A〇  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭 31.5.10)は,「ある不動産の共有権者の一人がその持分に基き当該不動産につき登記簿上の所有名義者に対してその登記の抹消を求めることは、妨客排除の請求に外ならずいわゆる保存行為に属するものといラベく,従って,共同相続人の一人が単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めうる」としている

  • Q  A, B及びCが各3分の1の割合で甲建物を共有している場合、Aは,その持分を放棄する場合,B又はCの同意を得る必要がある。

    A×  206条は,「所有者は,法令の制限内において,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利を有する」と規定するところ,判例(大判大8.11.3)は,「共有は数人が共同してーの所有権を有寸る状態にして,共有者は物を分割して其一部を所有するにあらず,各共有者は物の全部に付き所有権を有し,他の共有者の同一の権利によりて減縮せらるるに過ぎず。従て,共有者の有する権利は単独所有者の権利と性質内容を同くし,唯其分量及び範囲に広狭の差異あるの。4)とLてい>たがって,共有者は,自由にその共有持分の処分をする権利を有する。なお,255条は,「共有者の一人が,その持分を放棄したとき,又は死亡して相続人がないときは,その持分は,他の共有者に帰属する」と規定する。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の割合で甲建物を共有している場合、AがB及びCに無断で甲建物をEに引き渡し,無償で使用させている場合,Bは, Cの同意を得ることなく単独で,Eに対して甲建物の明渡しを請求することができる。

    A×  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭 63.5.20)は,「共同相続に基づく共有者は,他の共有者との協議を経ないで当然に共有物を単独で占有する権原を有するものではないが,自己の持分に基づいて共有物を占有する権原を有するので,他のすベての共有者らは,右の自己の持分に基づいて現に共有物を占有する共有者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないところ······,この理は,共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者とその余の共有者との関係にも妥当し,共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は,その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが,現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用寸る権原を有するので,第三者の占有使用を承認しなかった共有者仕右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。なお,このことは,第三者の占有使用を承認した原因が共有物の管理又は処分のいずれに属する事項であるかによって結論を異にするものではない」としている。

  • Q  A, B及びCが各3分の1の割合で甲建物を共有している場合、AがBに対して甲建物の管理に関する債権を有する場合において,Bがその持分をFに譲渡したときは, Aは,Fに対してもその債権を行使することができる。

    A〇  253条1項は,「各共有者は,その持分に応じ,管理の費用を支払い,その他共有物に関する負担を負う」と規定し,254条は,「共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は,その特定承継人に対しても行使することができる」と規定する。

  • Q金塊の共有者は,分割をしない旨の契約をしていない場合には,いつでも,その動産の分割を請求することができる。

    A〇  256条1項は,「各共有者は,いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし,5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない」と規定する。

  • Q共有物分割訴訟においては,共有者の全員が当事者とならなければならない。

    A〇  258条1項は,「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときは,その分割を裁判所に請求することができる」と規定するところ,判例(大判明 41.9.25)は,「共有物の分割は,共有者全員が当事者たらざるべからずとせるものにして、本件当事者間に裁判上の分割に異議あるが故に共有者全員を訴訟当事者とせざるべからずと云うに非らず」としている。

  • Q共有物の分割を求める裁判において共有物の現物を分割することができないとき,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,その競売を命じなければならない。

    A×  258条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同条各号は,「共有物の現物を分割する方法」(1号),「共有者に債務を負担させて,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」(2号)を挙げる。そして,同条3項は,「前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,その競売を命ずることができる」と規定する。

  • Q各共有者は,他の共有者が共有物の分割によって取得した物について,その持分に応じて担保の責任を負う。

    A〇  261 条は,「各共有者は,他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく, その持分に応じて担保の責任を負う」と規定する。

  • Q共有者の一人が,その持分を譲渡するためには,他の共有者の同意を得なければならない。

    A×  206 条は,「所有者は,法令の制限内において,自由にその所有物の使用,収益及び処分をする権利を有する」と規定するところ,判例(大判大8.11.3)は,「共有は数人が共同してーの所有権を有する状態にして,共有者は物を分割して其一部を所有するにあらず,各共有者は物の全部に付き所有権を有し,他の共有者の同一の権利によりて减縮せらるるに過ぎず。従て,共有者の有する権利は単独所有者の権利と性質内容を同くL,唯其分量及び範困に広狭の差異あるのみ」としている。したがって,共有者は,自由にその共有持分の処分をする権利を有する。

  • Q  A, B及びCの3名が各3分の1の割合による持分を有する建物について, Aが単独でその建物を占有している場合, Bは, Aに対し,その建物の明渡しを請求することができる。

    A×  249条1項は,「各共有者は,共有物の全部について,その持分に応じた使用をすることができる」と規定するところ,判例(最判昭41.5.19【百選174】)は,「共同相続に基づく共有者の一人であって,その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は,他の共有者の協議を経ないで当然に共有物(本件建物)を単独で占有する権限を有するものでない····が,他方,他のすベての相続人らがその共有持分を合計すると,その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者を多数持分権者という),共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し,当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし,このような場合,右の少数持分権者は自己の持分によって,共有物を使用収益する権限を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従って,この場合,多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには,その明渡を求める理由を主張し立証しなければならないのである」としている。

  • Q A, B及びCの3名が各3分の1の割合による持分を有する土地につき,Aがその所有者をAのみとする登記をした場合,Bは,Aに対L,A, B及びCの3名の持分を各3分の1とする更正登記手続を求めることができる

    A×  判例(最判昭38.2.22【百選I59】)は,「相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し,他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。けだし乙の登記は甲の持分に関する限り無権利の登記であり,登記に公信力なき結果丙も甲の持分に関する限りその権利を取得するに由ないからである。······そして,二の場合に甲がその共有権に対する妨害排除として登記を実体的権利に合致させるため乙,丙に対し請求できるのは,各所有権取得登記の全部抹消登記手続ではなくして,甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続でなければならない·····。けだし右各移転登記は乙の持分に関する限り実体関係に符合しており,また甲は自己の持分についてのみ妨害排除の請求権を有するに過ぎないからである」としている

  • Q  A, B及びCの3名が共同相続し,その遺産分割の前に,法定相続分に応じた持分の割合により相続登記がされた土地につき,CからDに不実の持分権移転登記がされた場合,Aは,Dに対し,当該持分権移転登記の抹消登記手続を求めることができる

    A〇  252 条5項は,「各共有者は,前各項の規定にかかわらず,保存行為をすることができる」と規定するところ,判例(最判平 15.7.11【百選I75】)は,「不動産の共有者の一人は,その持分権に基づき,共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ,不実の持分移転登記がされている場合には, その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから,共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し,単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる」としている。

  • Q入会権は,登記がなくても第三者に対抗することができる

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するが,判例(大判大10.11.28)は,「民法第177 条には不動産に関する物件の得喪及び変更は登記法の定むる所に従ひ其登記を為すに非ざれば之を以て第三者に対抗することを得ずとの規定ありて,物権の存在を対抗せしむるに登記を必要とするや否やは全然登記法の規定に依りて之を定むるべき旨趣を明にせり。而して不動産登記法には入会権に付きては共有の性質を有すると地役の性質を有するとを問わず総て登記を以て其対抗条件と為したる規定存せざるを以て,入会権は之を登記することを要せずして第三者に対抗せしむることを得るものと解するを相当とす」としている。

  • Q入会団体の構成員が採枝·採草の収益を行う権能を有する入会地がある場合において,その入会地にA名義の不実の地上権設定登記があるときは,その入会団体の構成員であるBは,Aに対し,入会地におけるBの使用収益権に基づき,当該地上権設定登記の抹消登記手続を求めることができる。

    A×  判例(最判昭57.7.1)は,「当事者参加人らが有する使用収益権を根拠にしては右抹消登記手続を請求することはできないものと解するのが相当である。けだし,原審が適法に確定したところによれば,当事者参加人らが入会部落の構成員として入会権の内容である使用収益を行う権能は,本件山林に立ち入って採枝,採草等の収益行為を行うことのできる権能にとどまることが明らかであるところ,かかる権能の行使自体は,特段の事情のない限り,単に本件山林につき地上権設定に関する登記が存在することのみによっては格別の妨害を受けることはないと考えられるからである。もっとも,かかる地上権設定に関する登記の存在は,入会権自体に対しては侵害的性質をもつといえるから,入会権自体に基づいて右登記の抹消請求をすることは可能であるが,かかる妨害排除請求権の訴訟上の主張,行使は,入会権そのものの管理処分に関する事項であって,入会部落の個々の構成員は,右の管理処分については入会部落の一員として参与しうる資格を有するだけで,共有におけるような持分権又はこれに類する権限を有するものではないから,構成員各自においてかかる入会権自体に対する妨害排除としての抹消登記を請求することはできないのである」としている。

  • Q  遣産分割前において共同相続人の一人から遺産を構成する不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が,その不動産の共同所有関係の解消を求めるためには,共有物分割訴訟によらなければならない。

    A〇  258条1項は,「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,その分割を裁判所に請求することができる」と規定する。一方,907条2項本文は,「遣産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,各共同相続人は,その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる」と規定する。そして,判例(最判昭 50.11.7)は,「第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は,民法 907 条に基づく遺産分割審判ではなく,民法 258 条に基づく共有物分割訴訟であると解するのが相当である。けだし,共同相続人の一人が特定不動産について有する共有持分権を第三者に譲渡した場合,当該譲渡部分は遣産分割の対象から逸出するものと解すべきであるから,第三者がその譲り受けた持分権に基づいて寸る分割手続を遺産分割審判としなければならないものではない。のみならず,遺産分割審判は,遺産全体の価値を総合的に把握し,これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法 906 条所定の基準に従って分割することを目的とするものであるから,本来共同相続人という身分関係にある者または包括受遺者等相続人と同視しうる関係にある者の申立に基づき,これらの者を当事者とし,原則として遺産の全部について進められるべきものであるところ,第三者が共同所有関係の解消を求める手続を遺産分割審判とした場合には,第三者の権利保護のためには第三者にも遺産分割の申立権を与え,かつ,同人を当事者として手続に関与させることが必要となるが,共同相続人に対して全遺産を対象とし前叙の基準に従いつつこれを全体として合目的的に分割すべきであって,その方法も多様であるのに対し,第三者に対しては当該不動産の物理的一部分を分与することを原則とすべきものである等,それぞれ分割の対象,基準及ぴ方法を異にするから,これらはかならずしも同一手続によって処理されることを必要とするものでも,またこれを適当とするものでもなく,さらに,第三者に対し右のような遺産分割審判手続上の地位を与えることは前叙遺産分割の本旨にそわず,同審判手続を複雑にし,共同相続人側に手続上の負担をかけることになるうえ,第三者に対しても,その取得した権利とはなんら関係のない他の遺産を含めた分割手続の全てに関与したうえでなければ分割を受けることができないという著しい負担をかけることがありうる。これに対して,共有物分割訴訟は対象物を当該不動産に限定するものであるから,第三者の分割目的を達成するために適切であるということができるうえ,当該不動産のうち共同相続人の一人が第三者に譲渡した持分部分を除いた残余持分部分は,なお遣産分割の対象とされるべきものであり,第三者が右持分権に基づいて当該不動産につき提起した共有物分割訴訟は,ひっきょう,当該不動産を第三者に対する分与部分と持分譲渡人を除いた他の共同相続人に対する分与部分とに分割することを目的とするものであって,右分割判決によって共同相続人に分与された部分は,なお共同相続人間の遺産分割の対象になるものと解すべきであるから,右分割判決が共同相続人の有する遣産分割上の権利を害することはないということができる。このような両手続の目的,性質等を対比し,かつ,第三者と共同相続人の利益の調和をはかるとの見地からすれば,本件分割手続としては共有物分割訴訟をもって相当とすべきである」としている。なお,判例(最判昭62.9.4)は,「遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について,共同相続人間に協議が調わないとき,又は協議を寸ることができないときは,家事審判法〔注:家事事件手続法〕の定めるところに従い,家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり,通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないと解するのが相当である」としている。

  • Q共有物の分割請求をした共有者が多数の場合,分割請求をされた共有者の持分の限度で現物を分割し,その余は分割請求をした共有者の共有として残す方法により共有物の分割をすることはできない。

    A×  258条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同項1号は,「共有物の現物を分割する方法」を挙げるところ,判例(最判平4.1.24)は,「多数の共有不動産について,民法 258 条により現物分割をする場合には,これらを一括して分割の対象とすることも許されること,また,共有者が多数である場合には,分割請求者の持分の限度で現物を分割し,その余は他の者の共有として残す方法によることも許されることは,当審の判例(昭和······62年4月22日大法廷判決····-)の判示するところであり,その趣旨に徴すれば,分割請求をする原告が多数である場合において仕,被告の持分の限度で現物を分割レ.その余は原告らの共有として残す方法によることも許されると解するのが相当である」としている。

  • Q共有物を共有者のうちのー人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法により共有物の分割をすることはできない。

    A×  258条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同項2号は,「共有者に債務を負担させて,他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」を挙げる。

  • Q裁判所は,共有物の現物分割が物理的に不可能な場合のみでなく,社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合にも,共有物の競売を命ずることができる。

    A〇  258条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同項1号は,「共有物の現物を分割する方法」を挙げる。一方,同条3項は,「前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき,又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは,裁判所は,その競売を命ずることができる」と規定する。そして,判例(最判昭 46.6.18)は,「民法 258条2項【注:258条3項〕にいう『現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ』とは,現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく,社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合をも包含するものと解すべきである」としている。

  • Q数個の共有建物を一括して分割の対象とし,共有者各自が各個の建物の単独所有権を取得する方法により共有物の分割をすることはできない。

    A×  258条2項柱書は,「裁判所は,次に掲げる方法により,共有物の分割を命ずることができる」と規定し,同項1号は,「共有物の現物を分割する方法」を挙げるところ,判例(最大判昭 62.4.22)は「分割の対象となる共有物が多数の不動産である場合には,これらの不動産が外形上一団とみられるときはもとより,数か所に分かれて存在するときでも,右不動産を一括して分割の対象とし,分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも,現物分割の方法として許されるものというベき」であるとしている。

  • Q入会団体の構成員は,入会権の目的となっている山林原野の使用収益を妨げる者がいる場合には別段の慣習がない限り,単独で,その者に対し,妨害排除を請求することができる。

    A〇  判例(最判昭57.7.1)は,「入会部落の構成員が入会権の対象である山林原野において入会権の内容である使用収益を行う権能は,入会部落の構成員たる資格に基づいて個別的に認められる権能であって,入会権そのものについての管理処分の権能とは異なり,部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものであるとはいえ,本来,各自が単独で行使することができるものであるから,右使用収益権を争い又はその行使を妨害する者がある場合には,その者が入会部落の構成員であるかどうかを問わず,各自が単独で,その者を相手方として自己の使用収益権の確認又は妨害の排除を請求することができるものと解するのが相当である」としている。

  • Q借地借家法にいう借地権には,建物の所有を目的とする地上権も含まれる。

    A〇  借地借家法2条1号は,「借地権」とは,「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」と規定する。

  • Q建物が存する土地を目的として,先順位の甲抵当権及びこれと抵当権者を異にする後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が被担保債権の弁済により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立する。

    A〇  388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす」と規定するところ,判例(最判平 19.7.6【百選191】)仕,次のように判示している「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立するというベきである。その理由は,次のとおりである。」「上記のような場合,乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては,仮に,甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば,法定地上権は成立しない結果となる······ものと予測していたということはできる。しかし,抵当権は,被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって,甲抵当権が被担保債権の弁済,設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから,乙抵当権者としては,そのことを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって,甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって,法定地上権が成立することを認めても,乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして,甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから,競売による法定地上権の成否を判断するに当たり,甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると,民法388条が規定する『土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する』旨の要件(以下『同一所有者要件』という。)の充足性を,甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はな191「民法 388条は,土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としいるものと理解することができる。」

  • Q要役地の所有者が,他人所有の土地を承役地とする通行地役権を時効により取得するためには,自ら通路を開設して継続的に通行の用に供することが必要である。

    A〇  283条は,「地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができる」と規定するところ,判例(最判昭30.12.26)は,「民法283条による通行地役権の時効取得については,いわゆる『継続』の要件として,承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し,その開設は要役地所有者によってなされることを要するものと解すベ」きとしている。

  • Q通行地役権の承役地がAに譲渡された場合において,譲渡の時に要役地の所有者Bによって承役地が継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況からして客観的に明らかであったとしても,Aが通行地役権の存在を認識していなかったときは,Aは,通行地役権につき,地役権設定登記の不存在を主張する正当な利益を有する第三者に当たる。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平10.2.13【百選163】) は,次のように判示している。「通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において,譲渡の時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識士ることが可能であったときは,譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。」「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者は,民法177条にいう『第三者』(登記をしなければ物権の得喪又は変更を対抗することのできない第三者)に当たるものではなく,当該第三者に,不動産登記法4条又は5条に規定する事由のある場合のほか,登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には,当該第三者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。1「通行地役権の承役地が譲渡された時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,譲受人は,要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ,また,要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無,内容を容易に調査することができる。したがって,右の譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても,何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって,右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは,通常は信義に反するものというベきである。ただし,例えば,承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており,かつ,そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合には,地役権設定登記の欠缺を主張することが信義に反するものということはできない。」「したがって,右の譲受人は,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないものというベきである。なお,このように解するのは,右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから,右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要するものではない。」

  • Q地上権は,抵当権の目的とすることができない。

    A×  369条2項前段は,「地上権及び永小作権も,抵当権の目的とすることができる」と規定する。

  • Q土地の所有者と地上権者との間において,地上権の譲渡を禁ずる旨の特約がある場合であっても,地上権者がその後に第三者との間で地上権を譲渡する旨の契約を締結したときは,その第三者は,地上権を取得することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。一方,不動産登記法78条柱書は,「地上権の登記の登記事項は,第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする」と規定するが,同法78条各号及び59条各号に[地上権の譲渡を禁ずる旨の特約は挙げられていない。したがって,その特約を第三者に対抗できない。

  • Q地役権者は,承役地の所有者に対し,必ず便益の対価を支払わなければならない

    A×  280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自已の土地の便益に供する権利を有する」と規定するのみで,必ず便益の対価を支払わなければならないわけではない。なお,270条は,「永小作人は,小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する」と規定する。

  • Q法定地上権を取得した者は,土地の所有者に対し,地代を支払う義務を負わない

    A×  388条は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす。この場合において,地代は,当事者の請求により,裁判所が定める」と規定しており,法定地上権を取得した者は,土地の所有者に対し,地代を支払う義務を負うことが前提とされている。

  • Q定期の地代を支払うベき地上権者が引き続き2年以上地代の支払を怠ったときは,土地の所有者は,地上権の消滅を請求することができる。

    A〇  266条1項は,「第274条から第276条までの規定は,地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する」と規定し,276 条は,「永小作人が引き続き2年以上小作料の支払をなったとさは,土地の所有者は,永小作権の消滅を請求することができる」と規定する。

  • Q無償の地上権を設定することはできない。

    A×  266条1項は,「第274条から第276条までの規定は,地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する」と規定しており,無償の地上権を設定することができることが前提とされている。

  • Q地上権は,存続期間を定めないで,設定することができる。

    A〇  268条1項本文は,「設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において別段の慣習がないときは,地上権者は,いつでもその権利を放棄することができる」と規定しており,地上権は存続期間を定めないで設定することができることが前提とされている。

  • Q無償の永小作権を設定することはできない。

    A〇  270条は,「永小作人は,小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する」と規定する

  • Q無償の地役権を設定することはできない。

    A×  280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定するのみであり,無償の地役権を設定することができる。

  • Q地役権は,存続期間を定めないで,設定することができる。

    A〇  280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自已の七地の便益に供する権利を有する」と規定するのみであり,地役権は存続期間を定めないで設定することができる。

  • Q地上権者は,地上権設定者に対し,その地上権の設定登記を請求する権利を有する。

    A〇地上権(265条)は物権であるため(第2編第4章),地上権者は,地上権設定者に対し,登記と実体的な権利関係との不一致を是正するための物権的登記請求権又は物権変動の過程をそのまま登記に表すための物権変動的登記請水権を有すると解されている。

  • Q約定による地上権の存続期間は,20年以上50年以下の範囲内で定めなければならない。

    A×  268条2項は,「地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは,裁判所は,当事者の請求により,20年以上50年以下の範囲内において,工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して, その存続期間を定める」と規定するところ,判例(大判明36.11.16)は,「地上権に付ては,民法第268 条第2項に於て,設定行為を以て存続期間を定めざりし場合,当事者の請求に因り裁判所は20年以上50年以下の範囲に於て工作物又は竹木の種類及ぴ情況其他地上権設定当時の事情を斟酌し其存続期間を定む可き旨規定しある迄にて,当事者間設定行為を以て存続期間を定むることに付ては短期長期共亳も其制限あることなし。若し民法が幾数百年又若くは永代と云う如き無制限の契約を為すことを許さざる律意なりとせば,永小作権に於ける規定の如く期間を制限す可き箸なるに,其制限なきを以て之を見れば,其期間は当事者の設定行為に一任し,一切制限せざる律意なり」としている。なお,278条1項は,「永小作権の存続期間は,20年以上50年以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても,その期間は,50年とする」と規定する。

  • Q地上権は,工作物又は竹木を所有する目的で土地を使用する権利である。

    A〇  265条は,「地上権者は,他人の土地において工作物又は竹木を所有するため,その土地を使用する権利を有する」と規定する。

  • Q地下又は空間は,工作物を所有するため,上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。

    A〇  269条の2第1項前段は,「地下又は空間は,工作物を所有するため,上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる」と規定する。

  • Q地上権は,地上権設定者の承諾を得なければ,譲渡することができない。

    A×  176 条は,「物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって.その効力を生ずる」と規定する。また,地上権は,地上権設定者の承諾を得なければ,譲渡することができないとの規定はない。なお,272 条は,「永小作人は,その権利を他人に譲り渡し,又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし,設定行為で禁じたときは,この限りでない」と規定する。

  • Q地役権者がその権利の一部を行使しないときは,その部分のみが時効によって消滅する。

    A〇  293条は,「地役権者がその権利の一部を行使しないときは,その部分のみが時効によって消滅する」と規定する。

  • Q要役地に隣接しない土地を承役地として地役権を設定することはできない。

    A×  280条本文は,「地役権者は,設定行為で定めた目的に従い,他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する」と規定するのみであり,要役地に隣接しない土地を承役地として地役権を設定することもできる。なお,相隣関係の規定(209 条以下)は,隣接する土地所有者相互間の利用を調整する法定の制度である(法定地役権とも呼ばれる)。

  • Q要役地が数人の共有に属する場合において,要役地の共有者の一人は,その持分につき,その土地のために存する地役権を放棄することができる。

    A×  282条1項は,「土地の共有者の一人は,その持分につき, その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができない」 と規定する。

  • Q要役地が数人の共有に属する場合において,その一人のために時効の更新があるときは,その更新は,他の共有者のためにも,その効力を生ずる。

    A〇  292 条は,「要役地が数人の共有に属する場合において, そのー人のために時効の完成猶予又は更新があるときは, その完成猶予又は更新は,他の共有者のためにも,その効力を生ずる」と規定する。

  • Q要役地の所有者は,地役権を要役地から分離して譲渡することができない。

    A〇  281 条2項は,「地役権は,要役地から分離して譲り渡し,又は他の権利の目的とすることができない」と規定する。

  • Q  Aは,自己の所有する甲土地を利用するため,B所有の乙土地の一部に通路を開設し,その通路を通行していた。Aは,Bから通行地役権の設定を受けていたが,未登記であった。Aによる通路の利用を認識していたものの通行地役権の存在は知らなかったCがBから乙土地を譲り受けた場合,Aは,Cに通行地役権を対抗することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平10.2.13【百選I63】)は,次のように判示している。「通行地役権(通行を目的とする地役権)の承役地が譲渡された場合において,譲渡の時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識士ることが可能であったときは,譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないと解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。」「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者は,民法 177条にいう『第三者』(登記をしなければ物権の得喪又は変更を対抗することのできない第三者)に当たるものではなく,当該第三者に,不動産登記法4条又は5条に規定する事由のある場合のほか,登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事由がある場合には,当該第三者は,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない。」「通行地役権の承役地が譲渡された時に,右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは,譲受人は,要役地の所有者が承役地について通行地役権その他の何らかの通行権を有していることを容易に推認することができ,また,要役地の所有者に照会するなどして通行権の有無,内容を容易に調査することができる。したがって,右の譲受人は,通行地役権が設定されていることを知らないで承役地を譲り受けた場合であっても,何らかの通行権の負担のあるものとしてこれを譲り受けたものというべきであって,右の譲受人が地役権者に対して地役権設定登記の欠缺を主張することは,通常は信義に反するものというべきである。ただし,例之ば,承役地の譲受人が通路としての使用は無権原でされているものと認識しており,かつ,そのように認識するについては地役権者の言動がその原因の一半を成しているといった特段の事情がある場合には,地役権設定登記の欠缺を主張することが信義に反するものということはできない。」「したがって,右の譲受人は,特段の事情がない限り,地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらないものというべきである。なお,このように解するのは,右の譲受人がいわゆる背信的悪意者であることを理由とするものではないから,右の譲受人が承役地を譲り受けた時に地役権の設定されていることを知っていたことを要寸るものではない。」

  • Q  Aは,自己の所有する甲土地を利用するため,B所有の乙土地の一部に通路を開設し,その通路を通行していた。AがBから通行地役権の設定を受けていた場合において,その後Aがこの通路を全く通行しなくなったときは, Aの地役権は,Aが通路を通行した最後の時を起算点として消滅時効にかかる。

    A×  291条は,「第166 条第2項に規定する消滅時効の期間は,継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し,継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する」と規定するところ,通行地役権は,「継続的に行使される地役権」にあたる。

  • Q  Aは,自己の所有する甲土地を利用するため,B所有の乙土地の一部に通路を開設し,その通路を通行していた。 Aは, Bから通行地役権の設定を受けずに通路を開設して通行していたが,Bはそのことを知りつつ然認していた。この場合,Aは,Bに対して通行の対価を支払っていなければ,通行地役権を時効取得寸ることができない。

    A×  163条は,「所有権以外の財産権を,自己のためにする意思をもって,平穩に,かつ,公然と行使する者は,前条の区別に従い20年又は10年を経過した後,その権利を取得する」と,283 条は,「地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができ五」と規定するのみで,通行の対価の支払いは,通行地役権の時効取得の要件ではない。

  • Q  Aは,自己の所有する甲土地を利用するため,B所有の乙土地の一部に通路を開設し,その通路を通行していた。 AがBから通行地役権の設定を受けていた場合,Aは,乙土地の通行を必要とするCに対し,甲土地の所有権を譲渡することなく,その通行地役権のみを譲渡することができる。

    A×  281条2項は,「地役権は,要役地から分離して譲り渡し,又は他の権利の目的とすることができない」と規定する。

  • Q  Aは,自己の所有する甲土地を利用するため,B所有の乙土地の一部に通路を開設し,その通路を通行していた。Aが甲土地の2分の1の持分をCに譲渡して,A及び℃が甲土地を共有するに至った場合において,Aが通行地役権を時効により取得したときは,Cも通行地役権を取得する。

    A〇  284条1項は,「土地の共有者の1人が時効によって地役権を取得したときは,他の共有者も,これを取得する」と規定する。

  • Q民法上の留置権は債務者が破産すると消滅するが,商法上の留置権は債務者が破産しても消滅しない。

    A〇  破産法66条1項は,「破産手続開始の時において破産財団に属する財産にっき存する商法又は会社法の規定による留置権は,破産財団に対しては特別の先取特権とみなす」と規定しており,商法上の留置権は債務者が破産しても消減しない。一方,同条3項は,「第1項に規定するものを除き,破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する留置権は,破産財団に対してはその効力を失う」と規定しており,民法上の留置権は債務者が破産すると消滅する。

  • Q民法上の留置権が成立するには,被担保債権が対象物に関して生じた物であることを必要とするが,商法上の留置権の場合には,そのような要件を必要としない。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定しており,民法上の留置権が成立するには,被担保債権が対象物に関して生じた物であることを必要とする。一方,商法521条本文は,「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは,債権者は,その債権の弁済を受けるまで,その債務者との問における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる」と規定しており,商法上の留置権の場合には,そのような要件を必要としない。

  • Q民法上の留置権は土地についても成立するが,商人間の留置権は,文理上も動産と有価証券についてしか成立しない。

    A×  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,85条は,「この法律において『物』とは,有体物をいう」と規定する。そして,86条1項は,「土地及ぴその定着物は,不動産とする」と規定し,同条2項は,「不動産以外の物は,すベて動産とする」と規定する。したがって,「物」に不動産が含まれることは明らかであり,民法上の留置権は土地についても成立する。一方,商法521 条本文は,「商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときは,債権者は,その債権の弁済を受けるまで,その債務者との間における商行為によって自己の占有に属した債務者の所有する物又は有価証券を留置することができる」と規定しており,文理上も動産と有価証券についてしか成立しないとはいえない。また,判例(最判平29.12.14)も,「民法は,同法における『物』を有体物である不動産及び動産と定めた上(85条,86条1項,2項),留置権の目的物を『物』と定め(295条1項),不動産をその目的物から除外していない。一方,商法 521条は,同条の留置権の目的物を『物又は有価証券」と定め,不動産をその目的物から除外することをうかがわせる文言はない。他に同条が定める『物』を民法における『物』と別異に解すべき根拠は見当たらない。また,商法521 条の趣旨は,商人間における信用取引の維持と安全を図る目的で,双方のために商行為となる行為によって生じた債権を担保するため,商行為によって債権者の占有に属した債務者所有の物等を目的物とする留置権を特に認めたものと解される。不動産を対象とする商人間の取引が広く行われている実情からすると,不動産が同条の留置権の目的物となり得ると解することは,上記の趣旨にかなうものである。以上によれば,丕動産は,商法 521条が商人間の留置権の目的物として定める『物』に当たると解するのが相当である」としている。

  • Q同一の不動産所有権の上に成立する特別の先取特権と抵当権の優先関係は,登記の先後によって決まる

    A×  339条は,「前2条の規定に従って登記をした先取特権【注:不動産保在の先取特権及び不動産工事の先取特権〕は,抵当権に先立って行使することができる」と規定する。したがって,同一の不動産所有権の上に成立する特別の先取特権と抵当権の優先関係は,登記の先後によって決まるとは限らない。

  • Q動産売買の売主が売り渡した動産に対して有する先取特権は,買主からの転得者がそのような先取特権の存在を知りつつ買い受けて占有改定による引渡しを受けた場合であっても消滅する

    A〇  333条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定L,183条は,「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有才る意思を表示したときは,本人は,これによって占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判大6.7.26) は,「民法第333条に所謂引渡中には,同法第183条に依る占有改定の場合をも包含するものと解するを相当とす」としている。したがって,動産売買の売主が売り渡した動産に対して有する先取特権は,買主からの転得者がそのような先取特権の存在を知りつつ買い受けて占有改定による引渡しを受けた場合であっても消滅する。

  • Q動産の買主が買い受けた動産を用いた請負工事を行って請負代金債権を取得したとすると,この請負代金債権に対しても,売主は,動産売買先取特権に基づく物上代位権を行使できる場合がある。

    A〇  304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定するところ,判例(最決平10.12.18【百選181】)は,「動産の買主がこれを他に転売することによって取得した売買代金債権は,当該動産に代わるものとして動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使の対象となる(民法304条)。これに対し,動産の買主がこれを用いて請負工事を行ったことによって取得する請負代金債権は,仕事の完成のために用いられた材料や労力等に対する対価をすべて包含するものであるから,当然にはその一部が右動産の転売による代金債権に相当するものということはできない。したがって,請負工事に用いられた動産の売主は,原則として,請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが,請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には,右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができると解するのが相当である」としている。したがって,動産の買主が買い受けた動産を用いた請負工事を行って請負代金債権を取得したとすると,この請負代金債権に対して売主は、動産売買先取特権に基づく物上代位権を行使できる場合がある。

  • Q留置権,質権及び抵当権には,いずれも物上代位性が認められている。

    A×  304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定する。そして,350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定し,372 条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定する。したがって,質権及び抵当権には,いずれも物上代位性が認められている。一方,304条の規定を留置権について準用する規定は存在しない。したがって,留置権には,物上代位性は認められない。

  • Q留置権,先取特権及び質権は,いずれも,それが担保している債権が譲渡されれば,債権譲受人に移転する。

    A×  担保物権は,被担保債権が譲渡されるとそれに伴って移転するのが原則である(随伴性)。したがって,先取特権及び質権は,いずれも,それが担保している債権が譲渡されれば,債権譲受人に移転する。一方,295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定し,また,302 条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する」と規定していることから,留置権は目的物の占有なしには存在しえないため,債権とともに目的物の占有が移転されなければならないと解されている。したがって,留置権は,それが担保している債権が譲渡されても,当然には債権譲受人に移転しない。

  • Q不動産先取特権,不動産質権及び抵当権の順位は,登記の先後によって決まる

    A×  373条は,「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは,その抵当権の順位は,登記の前後による」と規定し,361 条は,「不動産質権については,この節に定めるもののほか,その性質に反しない限り,次章(抵当権)の規定を準用する」と規定する。したがって,不動産質権及び抵当権の順位は,登記の先後によって決まる。また,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,不動産売買先取特権と抵当権の順位は,登記の先後によって決まる。一方,339条は,「前2条の規定に従って登記をした先取特権〔注:不動産保存の先取特権及び不動産工事の先取特権〕は,抵当権に先立って行使することができる」と規定する。したがって,不動産保存及び不動産工事の先取特権及び抵当権の順位は,登記の先後によって決まるわけではない。なお,331 条2項は,「同一の不動産について売買が順次された場合には,売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は,売買の前後による」と規定する。したがって,不動産売買先取特権同士の順位も,登記の先後によって決まるわけではない。

  • Q性質上譲渡できない債権の上に質権を設定する契約をした場合,譲渡できないことについて質権者が善意であるか悪意であるかを問わず,その質権設定契約は無効である

    A〇  343 条は,「質権は,譲り渡すことができない物をその目的とすることができない」と規定する。したがって,性質上譲渡できない債権の上に質権を設定する契約をした場合,譲渡できないことについて質権者が善意であるか悪意であるかを問わず,その質権設定契約は無効である。

  • Q動産先取特権を有する者は,その目的物が第三者に売却され,引き渡された場合であっても,第三者が,その動産が動産先取特権の目的であることを知っているときは,その動産について先取特権を行使することができる。

    A×  333条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定する。したがって,動産先取特権を有する者は,その目的物が第三者に売却され,引き渡された場合,第三者が,その動産が動産先取特権の目的であることを知っているか否かにかかわらず,その動産について先取特権を行使することができなくなる。

  • Q民法上の留置権者は,物に関して生じた債権の全部が弁済されるまでは,その物を留置することができる。

    A×  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定し,296条は,「留置権者は,債権の全部の弁済を受けるまでは,留置物の全部についてその権利を行使することができる」と規定寸る。したがって,民法上の留置権者は,物に関して生じた債権の全部が弁済されるまでは,その物を留置することができる。

  • Q雇用関係の先取特権は,定期に支払われる給料を担保するが,使用人が退職する際に支払われるべき退職金を担保しない。

    A×  308条は,「屈用関係の先取特権は,給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する」と規定するところ,使用人が退職する際に支払われるべき退職金債権も,「債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権」にあたる。したがって,雇用関係の先取特権は,定期に支払われる給料のみならず,使用人が退職する際に支払われるべき退職金を担保する。

  • Q不動産質権は,担保する債権の元本のほか,利息その他の定期金のうち満期となった最後の2年分に限り,それらを担保する。

    A×  358条は,「不動産質権者は,その債権の利息を請求することができな」と規定しており,不動産質権は,利息を担保しない。なお,346条は,「質権は,元本,利息,違約金,質権の実行の費用,質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する」と規定しており,不動産質権以外の質権は,担保する債権の元本のほか,利息を担保するが,満期となった最後の2年分に限るとの規定は存在しない。

  • Q根抵当権でない抵当権は,担保する債権の元本のほか,利息その他の定期金のうち満期となった最後の2年分に限り,それらを担保する。

    A〇  369条1項は,「抵当権者は,債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と規定し,375条1項本文は,「抵当権者は,利息その他の定期金を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その抵当権を行使することができる」と規定する。したがって,根抵当権でない抵当権は,担保する債権の元本のほか,利息その他の定期金のうち満期となった最後の2年分に限り,それらを担保する。

  • Q元本の確定した根抵当権は,確定した元本のほか,利息その他の定期金のうち満期となった最後の2年分について,極度額を限度として担保する。

    A×  398条の3第1項は,「根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として, その根抵当権を行使することができる」と規定する。したがって,元本の確定した根抵当権は,確定した元本のほか,利息その他の定期金の全部について,極度額を限度として担保する。

  • Q動産の売主と買主との間で,売買の目的物を買主が第三者に転売して引き渡したときでも,売主はその目的物に先取特権を行使することができる旨の特約がある場合において,買主がその目的物を転売して転買主にこれを引き渡したときは,売主は,転買主が占有している目的物について,その特約について転買主が悪意であるときでも,先取特権を行使することはできない。

    A〇  333条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定する。また,175条は,「物権は,この法律その他の法律に定めるもののほか,創設することができない」と規定しており,売買の目的物を買主が第三者に転売して引き渡したときでも,売主はその目的物に先取特権を行使することができる旨の特約は無効である。したがって,買主がその目的物を転売して転買主にこれを引き渡したときは,売主は,転買主が占有している目的物について,その特約について転買主が悪意であるときでも,先取特権を行使することはできない。

  • Q動産質権において,質権者と質権設定者との間で,被担保債権の利息はその質権によって担保されないとの特約がされた場合においても,利息は,質権の被担保債権に含まれる。

    A×  346 条は,「質権は,元本,利息,違約金,質権の実行の費用,質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし,設定行為に別段の定めがあるときは,この限りでない」と規定する。動産質権において,質権者と質権設定者との間で,被担保債権の利息はその質権によって担保されないとの特約がされた場合,利息は,質権の被担保債権に含まれない。

  • Q不動産質権者は,質権の目的物を使用及び収益をすることができ,質権者と質権設定者との間の特約で,その使用収益権を排除することはできない。

    A×  356条は,「不動産質権者は,質権の目的である不動産の用法に従い,その使用及び収益をすることができる」と規定するが,359 条は,「前3条の規定は,設定行為に別段の定めがあるとき,又は担保不動産収益執行······の開始があったときは,適用しない」と規定する。したがって,不動産質権者は,質権の目的物を使用及び収益をすることができるが,質権者と質権設定者との間の特約で,その使用収益権を排除することもできる。

  • Q建物が存する土地について抵当権が設定された場合において,その抵当権者と抵当権設定者との特約で,その土地上の建物にも抵当権の効力を及ぼすことができる旨の合意がされたときは,その土地の抵当権は,土地の上に存するその建物にも及ぶ。

    A×  370 条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定する。また,肢1の解説のとおり,175条は,「物権は,この法律その他の法律に定めるもののほか,創設することができない」と規定しており,その土地上の建物にも抵当権の効力を及ぼすことができろ旨の合意は無効である。したがって,建物が存する土地について抵当権が設定された場合でも,その土地の抵当権は,土地の上に存するその建物には及ばない。

  • Q留置権者は,債権の全部の弁済を受けるまでは,留置物の全部についてその権利を行使することができる。

    A〇  296条は,「留置権者は,債権の全部の弁済を受けるまでは,留置物の全部についてその権利を行使することができる」と規定する。→ 2022 総合講義·136頁

  • Q一般の先取特権者は,不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価が配当される場合を除き,まず不動産以外の財産から弁済を受け,なお不足があるのでなければ,不動産から弁済を受けることができない。

    A〇  335条1項は,「一般の先取特権者は,まず不動産以外の財産から弁済を受け,なお不足があるのでなければ,不動産から弁済を受けることができない」と規定し,同条4項は,「前3項の規定は,不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し,又は他の不動産の代価に先立って特別目的である不動産の代価を配当する場合には,滴用しない」と規定する。したがって,一般の先取特権者は,不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価が配当される場合を除き,まず不動産以外の財産から弁済を受け,なお不足があるのでなければ,不動産から弁済を受けることができない。

  • Q質権の目的である債権が金銭債権であるときは,質権者は,その被担保債権の額にかかわらず,当該金銭債権の全額を取り立てることができる。

    A×  366条2項は,「債権の目的物が金銭であるときは,質権者は,自己の債権額に対応する部分に限り,これを取り立てることができる」と規定しており,当該金銭債権の全額を取り立てることができるとは限らない。

  • Q抵当権の実行としての競売がされる前に抵当権の被担保債権について抵当不動産以外の財産の代価を配当すべき場合には,当該抵当権者以外の債権者は,当該抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる。

    A〇  394条1項は,「抵当権者は,抵当不動産の代価から弁済を受けない債権の部分についてのみ,他の財産から弁済を受けることができる」と規定するが,同条2項は,「前項の規定は,抵当不動産の代価に先立って他の財産の代価を配当すベき場合には,適用しない。この場合において,他の各債権者は,抵当権者に同項の規定による弁済を受けさせるため,抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる」と規定する。したがって,抵当権の実行としての競売がされる前に抵当権の被担保債権について抵当不動産以外の財産の代価を配当すべき場合には,当該抵当権者以外の債権者は,当該抵当権者に配当すべき金額の供託を請求することができる

  • Q根抵当権の元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは,他人の債務を担保するため当該根抵当権を設定した者は,その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して,当該根抵当権の消滅請求をすることができる。

    A〇  398条の22第1項前段は,「元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは,他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権,地上権,永小作権若しくは第三者に対抗することができる貨借権を取得した第三者は,その極度額に相当する企額を払い渡し又は供託して,その根抵当権の消波請求をすることができる」と規定する。

  • Q同一不動産上の先取特権,質権及び抵当権の優先権の順位は,当該各担保物権の登記の前後によって決まる。

    A×  373条は,「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは,その抵当権の順位は,登記の前後による」と規定し,361条は,「不動産質権については,この節に定めるもののほか,その性質に反しない限り,次章(抵当権)の規定を準用する」と規定する。したがって,不動産質権及び抵当権の優先権の順位は,当該各担保物権の登記の前後によって決まる。また,177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,不動産売買先取特権と抵当権の優先権の順位は,当該各担保物権の登記の前後によって決まる。一方,339条は,「前2条の規定に従って登記をした先取特権【注:不動産保存の先取特権及び不動産工事の先取特権〕は,抵当権に先立って行使することができる」と規定する。したがって,不動産保存及び不動産工事の先取特権及び抵当権の優先権の順位は,当該各担保物権の登記の前後によって決まるわけではない。なお,331 条2項は,「同の不動産について売買が順次された場合には,売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は,売買の前後による」と規定する。たがって,不動産売買先取特権同士の順位も,登記の先後によって決まるわけではない。

  • Q留置権,先取特権,質権及び抵当権には,いずれも物上代位性が認められる。

    A×  304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定する。そして,350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定し,372 条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用寸る」と規定する。したがって,先取特権,質権及ぴ抵当権には,いずれも物上代位性が認められる。一方,304条の規定を留置権につて準用する規定は存在しない。したがって,留置権には,物上代位性は認められない。

  • Q留置権は,占有を第三者に奪われた場合も消滅しないが,その場合には,第三者に対抗することができない。

    A×  302 条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する」と規定する。したがって,留置権は,占有を第三者に奪われた場合,消滅する。

  • Q留置権者及び抵当権者は,いずれも目的物の競売を申し立てることができる。

    A〇  民事執行法180条柱書は,「不動産······を目的とする担保権······の実行は,次に掲げる方法であって債権者が選択したものにより行う」と規定し,同条1号は,「担保不動産競売······の方法」を挙げる。したがって,抵当権者は,目的物の競売を申し立てることができる。また,民事執行法195条は,「留置権に上る競売及び民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による」と規定する。したがって,留置権者も,目的物の競売を申し立てることができる。なお,この競売は,優先弁済権のない換価のための競売であり,換価金から優先的に弁済を受けることはできない。

  • Q動産先取特権は,動産質権に優先する。

    A×  334条は,「先取特権と動産質権とが競合する場合には,動産質権者は,第330 条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する」と規定する。そして,330条1項柱書前段は,「同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,次に掲げる順序に従う」と規定し,同項1号は,「不動産の賃貸,旅館の宿泊及び運輸の先取特権」を,同項3号は,「動産の売買,種苗又は肥料の供給,農業の労務及ぴ工業の労務の先取特権」を挙げる。したがって,動産先取特権は,動産質権に劣後する。

  • Q留置権は,債務者以外の者の物についても成立する。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,「他人の物」は,債務者所有の物に限られないと解されている。したがって,留置権は,債務者以外の者の物についても成立する。

  • Q一般の先取特権は,債務者以外の者の財産についても成立する。

    A×  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定する。したがって,一般の先取特権は,債務者以外の者の財産については成立しない。

  • Q質権は、債務者の財産についてのみ設定することができる

    A×  342 条は,「質権者は,その債権の担保として債務者又仕第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と規定する。したがって,質権は,債務者の財産のみならず,第三者の財産についても設定することができる。

  • Q抵当権は,永小作権を目的として設定することができる。

    A〇  369条2項前段は,「地上権及び永小作権も,抵当権の目的とすることができる」と規定する。したがって,抵当権は,永小作権を目的として設定することができる。

  • Q立木に土地と分離して抵当権を設定した場合,明認方法によって,その抵当権を第三者に対抗することはできない。

    A〇  明認方法によって対抗できる物権変動は,所有権の移転·留保·復帰のみであり(譲渡担保を含),抵当権設定は含まれないと解されている。したがって,立木に土地と分離して抵当権を設定した場合,明認方法によって,その抵当権を第三者に対抗することはできない。

  • Q留置権は,その目的物の一部が債務者に引き渡された場合,目的物の残部についても消滅する

    A×  296条は,「留置権者は,債権の全部の弁済を受けるまでは,留置物の全部についてその権利を行使することができる」と規定するところ,判例(最判平3.7.16)は,「民法296条は,留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで留置物の全部につきその権利を行使し得る旨を規定しているが,留置権者が留置物の一部の占有を喪失した場合にもなお右規定の適用があるのであって,この場合,留置権者は,占有喪失部分にっき留置権を失うの仕格別として,その債権の全部の弁済を受けるまで留置物の残部につき留置権を行使し得るものと解するのが相当である。そして,この理は,土地の宅地造成工事を請け負った債権者が造成工事の完了した土地部分を順次債務者に引き渡した場合においても妥当するというべきであって,債権者が右引渡しに伴い宅地造成工事代金の一部につき留置権による担保を失うことを承認した等の特段の事情がない限り,債権者は,宅地造成工事残代金の全額の支払を受けるに至るまで,残余の七地につきその留置権を行使することができるものといわなければならない」としているしたがって,留置権は,その目的物の一部が債務者に引き渡された場合でも,目的物の残部については消滅しない。

  • Q  AがBに対して動産売買の先取特権を有していた場合,BがCに対してその目的物である動産を売却し,占有改定によりこれを引き渡したとしても,Aの動産売買の先取特権は消滅しない。

    A×  333条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定し, 183条は,「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは,本人は,これによって占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判大6.7.26) は,「民法第333条に所謂引渡中には,同法第183条に依る占有改定の場合をも包含するものと解するを相当とす」としている。したがって, AがBに対して動産売買の先取特権を有していた場合でも,BがCに対してその目的物である動産を売却し,占有改定によりこれを引き渡したときは, Aの動産売買の先取特権は消滅する。

  • Q動産質権の設定は,指図による占有移転をもって目的物を債権者に引き渡すことによっても,その効力を生じる

    A〇  344 条は,「質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって, その効力を生ずる」と規定し,184 条は,「代理人によって占有をする場合においいて,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その第三者がこれを承諾したときは,その第三者は,占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判昭 9.6.2)は,「質権の目的たる不動産が質権設定以前既に他人に賃貸しある場合に於ては,質権設定者たる賃貸人が賃借人に対して爾後質権者の為に該不動産を占有すべき旨を命じ,賃借人之を承諾することに依り並に質権は適法に設定せらるベくとしていたがって,動産質権の設定は,指図による占有移転中をもって目的物を債権者に引き渡すことによっても,その効力を生じるなお,345条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定しており,動産質権の設定は占有改定をもって目的物を債権者に引き渡すことによっては,その効力を生じない。

  • Q不動産質権については,質権者と質権設定者との間の特約で,質権者が目的物を使用収益しない旨を定めることができる

    A〇  356 条は,「不動産質権者は,質権の目的である不動産の用法に従い,その使用及び収益をすることができる」と規定するが,359条は,「前3条の規定は,設定行為に別段の定めがあるとき,又は担保不動産収益執行······の開始があったときは,適用しない」と規定する。したがって,不動産質権については,質権者と質権設定者との間の特約で,質権者が目的物を使用収益しない旨を定めることができる。

  • Q抵当権者は,目的物が不法に占有された場合であっても,不法占有者に対して,抵当権に基づいて目的物を直接自己に明け渡すよう求めることはできない。

    A×  判例(最判平17.3.10【百遥I89】)は,「所有者以外の第三者が抵当不動産を不法占有することにより,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ。抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は,占有者に対し,抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状熊の排除を求めることができ」,「抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者において抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を適切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができる」としいる。したがって,抵当権者は,目的物が不法に占有された場合,不法占有者に対して,抵当権に基づいて目的物を直接自己に明け渡すよう求めることができることがある。

  • Q留置権者は,債務者の承諾を得なくても,目的不動産を賃貸することができる。

    A×  298条2項本文は,「留置権者は,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し,賃貸し,又は担保に供することができない」と規定する。

  • Q不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには,保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。

    A〇  337 条は,「不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには,保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない」と規定する。

  • Q不動産質権の設定後に質権者が質権設定者に目的不動産を占有させたとしても,質権の効力は影響を受けない。

    A〇  345条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定するところ,判例(大判大 5.12.25)は,「民法第 345条には,単に質権者は質権設定者をして自己に代りては質物を占有せしむることを得さる旨の規定あるに過ぎざるを以て,質権者が一旦有効に質権を設定したる後,右規定に潦背し質権設定者をして質物を占有せしめたりとするも,其占有が法律上代理占有の効力を生せざるに止まり,之が為め質権が消滅に帰すべきものにあらずと解するを相当とす」としている。したがって,不動産質権の設定後に質権者が質権設定者に目的不動産を占有させたとしても,質権の効力は影響を受けない。なお,302条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する」と規定する。

  • Q不動産質権者は,設定行為に定めがあるときは,その債権の利息を請求することができる。

    A〇  358条は,「不動産質権者は,その債権の利息を請求することができない」と規定するが,359条は,「前3条の規定は,設定行為に別段の定めがあるとき,又は担保不動産収益執行······の開始があったときは,適用しない」と規定する。したがって,不動産質権者は,設定行為に定めがあるときは,その債権の利息を請求することができる。

  • Q抵当権の存続期間は,10年を超えることができない。

    A×  抵当権には,存続期間の規定はないから,抵当権の存続期間は,10年を超えることもできる。なお,360条1項は,「不動産質権の存続期間は,10年を超えることができない。設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても,その期間は,10年とする」と規定する。

  • Q留置権は,担保されるべき債権の債権者が目的物を占有していなければ成立せず,仮に占有していても,その占有が不法行為によって始まった場合には成立しない。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置すろことができる」と規定しており,留置権は,担保されるべき債権の債権者が目的物を占有していなければ成立しない。また,同条2項は,「前項の規定は,占有が不法行為によって始まった場合には,適用しない」と規定しており,仮に占有していても,その占有が不法行為によって始まった場合には成立しない。

  • Q留置権は,担保されるべき債権が弁済期にないときは,成立しない。

    A〇  295条1項は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは, その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる。ただし,その債権が弁済期にないときは,この限りでない」と規定寸る。したがって,留置権は,担保されるべき債権が弁済期にないときは,成立しない。

  • Q留置権者は,目的物から優先弁済を受けることはできないが,目的物から生じた果実からは優先弁済を受けることができる。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定しており,留置権者は,目的物から優先弁済を受けることはできない。一方,297条1項は,「留置権者は,留置物から生ずる果実を収取し,他の債権者に先立って,これを自己の債権の弁済に充当することができる」と規定しており,目的物から生じた果実からは優先弁済を受けることができる。

  • Q留置権者は,留置権の目的物が第三者に譲渡された場合でも,目的物に関して生じた債権の全部の弁済を受けるまでは,当該第三者に対して留置権を主張することができる。

    A〇  296条は,「留置権者は,債権の全部の弁済を受けるまでは,留置物の全部についてその権利を行使することができる」と規定するところ,判例404(最判昭 47.11.16【百遥I79】)は,「留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても,債権者がその留置権を主張しうることは,留置権が物権であることに照らして明らかである」としている。したがって,留置権者は,留置権の目的物が第三者に譲渡された場合でも,目的物に関して生じた債権の全部の弁済を受けるまでは,当該第三者に対して留置権を主張することができる。

  • Q留置権者は,目的物の滅失によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して物上代位をすることができる。

    A×  304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,减失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定するが,304条の規定を留置権について準用する規定は存在しない。したがって,留置権者は,目的物の滅失によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して物上代位をすることはできない。

  • Q留置権によって拒絶できる給付の内容は,物の引渡しであるが,同時履行の抗弁権によって拒絶することができる給付の内容は,物の引渡しに限られない。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定しており,留置権によって拒絶できる給付の内容は,物の引渡しである。一方,533条本文は,「双務契約の当事者の一方は,相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは,自己の債務の履行を拒扣ことができる」と規定しており,同時履行の抗弁権によって拒絶することができる給付の内容は,物の引渡しに限られない。

  • Q特定動産の売買契約の売主が目的物の占有を失った場合には,買主からの当該目的物の引渡請求に対し,もはや留置権を行使することはできないが,代金支払との同時履行を主張することはできる。

    A〇  302 条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する」と規定しており,特定動産の売買契約の売主が目的物の占有を失った場合には,買主からの当該目的物の引渡請求に対し,もはや留置権を行使することはできない。一方,533条本文は,「双務契約の当事者の一方は,相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含起。)を提供するまでは,自己の債務の履行を拒むことができる」と規定しており,同時履行の抗弁権は「双務契約の当事者の一方」たる地位から発生するものである。したがって,代金支払との同時履行を主張することはできる。

  • Q留置権を行使されている者は,相当の担保を供してその消滅を請求することができるが,同時履行の抗弁権を行使されている者は,相当の担保を供してその消減を請求することができない。

    A〇  301 条は,「債務者は,相当の担保を供して,留置権の消滅を請求することができる」と規定しており,留置権を行使されている者は,相当の担保を供してその消滅を請求することができる。一方,同時履行の抗弁権について, 301 条のような規定は存在しないから,同時履行の抗弁権を行使されている者は,相当の担保を供してその消滅を請求することができない。

  • Q物の引渡しを請求する訴訟において被告の同時履行の抗弁が認められた場合は,被告に対して,原告の負う債務の履行との引換給付判決がされることになるが,被告の留置権の抗弁が認められた場合は,請求棄却の判決がされる。

    A×  533 条本文は,「双務契約の当事者の一方は,相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは,自己の債務の履行を拒むことができる」と規定するところ,判例(大判明 44.12.11)は,要旨,双務契約当事者の一方が訴を以て単純に相手方の債務の履行を請求したる場合に於て,相手方が同時履行の抗弁を提出したるときは,裁判所は其請求を全部排斥することなく,双方債務の履行を引換にて相手方に其履行を命ずべきものとす,としている。したがって,物の引渡しを請求する訴訟において被告の同時履行の抗弁が認められた場合は,被告に対して,原告の負う債務の履行との引換給付判決がされることになる。一方,肢アの解説のとおり,295条1項本文は,「他人の物の占有者はその物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭33.3.13)は,「留置権は,物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置することを得るに過ぎないものであって,物に関して生じた債権を他の債権に優先して弁済を受けしめることを趣旨とするものではない。従って,裁判所は,物の引渡請求に対する留置権の抗弁を理由ありと認めるときは,その引渡請求を棄却することなく,その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする」としている。たがって,被告の留置権の抗弁が認められた場合Aにも,引換給付判決がされることになる。

  • Q双務契約の当事者の一方が,相手方に対して同時履行の抗弁権を行使することができるときでも,その相手方の債権について債権者代位権を行使する者に対しては,同時履行の抗弁権を行使することができない。

    A×  423条の4は,「債権者が被代位権利を行使したときは,相手方は,債務者に対して主張することができる抗弁をもって,債権者に対抗することができる」と規定する。したがって,双務契約の当事者の一方が,相手方に対して同時履行の抗弁権を行使することができるときは,その相手方の債権について債権者代位権を行使する者に対しても,同時履行の抗弁権を行使することができる。

  • Q留置権は,他人の物の占有者に認められる権利であるから,留置権者が目的物を第三者に賃貸した場合には,目的物の賃貸について所有者の同意を得ていても,留置権は消滅する

    A×  302条は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによって,消滅する。ただし,第298条第2項の規定により留置物を賃貸し,又は質権の目的としたときは、この限りでない」と規定し,298条2項本文は,「留置権者は,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し,賃貸し,又は担保に供することができない」と規定する。したがって,留置権者が目的物を第三者に賃貸した場合おいて,目的物の賃貸について所有者の同意を得ていたときは,留置権は消滅しない。

  • Q留置権者が目的物の占有を奪われた場合,留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し,現実の占有を回復すれば,留置権は消滅しない

    A〇  203条は,「占有権は,占有者が占有の意思を放棄し,又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし,占有者が占有回収の訴えを提起したときは,この限りでない」と規定するところ,判例(最判昭 44.12.2)は,「民法203条本文によれば,占有権は占有者が占有物の所持を失うことによって消滅するのであり,ただ,占有者は,同条但書により,占有回収の訴を提起して勝訴し,現実にその物の占有を回復したときは,右現実に占有しなかった間も占有を失わず占有が継続していたものと擬制されると解するのが相当である」としている。したがって,留置権者が目的物の占有を奪われた場合,留置権者が占有回収の訴えを提起して勝訴し,現実の占有を回復すれば,留置権は消滅しない。

  • Q抵当権者は,目的物が第三者の行為により减失した場合,物上代位により,その第三者に対して所有者が有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができるのに対し,留置権者は,目的物が第三者の行為により減失した場合には,損害賠償請求権に物上代位権を行使寸ることができない。

    A〇  372条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定し,304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,减失又は損傷によって債務者が受けるべき企銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定する。したがって,抵当権者は,目的物が第三者の行為により滅失した場合,物上代位により,その第三者に対して所有者が有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる。一方,304条の規定を留置権について準用する規定は存在しない。したがって,留置権者は,目的物が第三者の行為により减失した場合には,損害賠償請求権に物上代位権を行使することができない

  • Q抵当権は,債権の弁済がないときに目的物を換価して優先弁済を受ける権利であるから,抵当権者は,目的物の競売を申し立てることができるが,留置権は,債権の弁済を受けるまで目的物を留置する権利にすぎないから,留置権者は,目的物の競売を申し立てることはできない。

    A×  民事執行法180条柱書は,「不動産······を目的とする担保権······の実行は,次に掲げる方法であって債権者が選択したものにより行う」と規定し,同条1号は,「担保不動産競売····の方法」を挙げる。したがって,抵当権者は,目的物の競売を申し立てることができる。一方,民事執行法195条は,「留置権に上る競売及び民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による」と規定する。したがって,留置権者も,目的物の競売を申し立てることができる。この競売は,優先弁済権のない換価のための競売であり、換価金から優先的に弁済を受けることはできない。

  • Q留置権においては,目的物の留置自体により被担保債権の権利行使がされていることになるから,債権者が目的物を占有している限り,被担保債権が時効消滅することはない。

    A×  300 条は,「留置権の行使は,債権の消滅時効の進行を妨げない」と規定する。したがって,留置権においては,債権者が目的物を占有している場合でも,被担保債権が時効消滅することはある。

  • Q債権者は,債務者との合意によって先取特権の設定を受けることはできないが,債務者との合意により留置権の設定を受けることはできる。

    A×  先取特権も留置権も,当事者の合意によることなく法律上当然に成立する法定担保物権であるから,債権者は,債務者との合意によって先取特権と留置権のいずれの設定も受けることはできない。

  • Q留置権者は,留置物について留置権に基づき競売を申し立てることができ、換価金から優先的に弁済を受けることができる。

    A×  民事執行法195条は,「留置権による競売及び民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による」と規定しており,留置権者は,留置物について留置権に基づき競売を申し立てることができるが,この競権は,優先弁済権のない換価のための競売であり,換価金から優先的に弁済を受けることはできない。

  • Q留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を賃貸した場合,債務者は,留置権の消滅を請求することができる。

    A〇  298条2項は,「留置権者は,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し、賃貸し,又は担保に供することができない。ただし,その物の保存に必要な使用をすることは,この限りでない」と規定し,同条3項は,「留置権者が前2項の規定に違反したときは,債務者は,留置権の消滅を請求寸ることができる」と規定する。したがって,留置権者が債務者の承諾を得ずに留置物を賃貸した場合,債務者は,留置権の消滅を請求することができる。

  • Q請負人が,注文者に対する報酬債権を被担保債権として,留置権に基づき仕事の目的物の引渡しを拒んでいる場合,その報酬債権の消滅時効の進行は妨げられない。

    A〇  300 条は,「留置権の行使は,債権の消滅時効の進行を妨げない」と規定する。したがって,請負人が,注文者に対する報酬債権を被担保債権として,留置権に基づき仕事の目的物の引渡しを拒んでいる場合でも,その報酬債権の消滅時効の進行は妨げられない。

  • Q留置権者は,目的物の滅失によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して物上代位をすることができる。

    A×  304 条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定するが,304条の規定を留置権について準用する規定は在在しない。したがって,留置権者は,目的物の減失によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対して物上代位をすることができない。

  • Q  AがBから甲建物を賃借し,Bに敷金を交付していた場合において,その賃貸借契約が終了したときは, Aは,敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる。

    A×  295条1項は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる。ただし,その債権が弁済期にないときは,この限りでない」と規定寸る。しかし,622 条の2第1項柱書は,「賃貸人は,敷金·····を受け取っている場合において,次に掲げるときは,賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」と規定し,同条1号は,「賃貸借が終了し,かつ,貨貸物の返還を受けたとき」を挙げるところ,判例(最判昭 49.9.2 【百選I65】)は,「期間満了による家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務が同時履行の関係にあるか否かについてみるに,賃貸借における敷金は,賃貸借の終了後家屋明渡義務の履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのある一切の債権を担保するものであり,賃貸人は,賃貸借の終了後家屋の明渡がされた時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除してなお残額がある場合に,その殘額につき返還義務を負担するものと解すべきものである······。そして,敷金契約は,このようにして賃貸人が賃借人に対して取得することのある債権を担保するために締結されるものであって,賃貸借契約に附随するものではあるが,貨貸借契約そのものではないから,賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは,一個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものとすることはできず,また,両債務の問には著しい価値の差が存しうることからしても,両債務を相対立させてその間に同時履行の関係を認めることは,必ずしも公平の原則に合致するものとはいいがたいのである。一般に家屋の賃貸借関係において,賃借人の保護が要請されるのは本来その利用関係についてであるが,当面の問題は賃貸借終了後の敷金関係に関することであるから,賃借人保護の要請を強調することは相当でなく,また,両債務間に同時履行の関係を肯定することは,右のように家屋の明渡までに賃貸人が取得することのある一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合するとはいえないのである。このような観点からすると,賃貸人は,特別の約定のないかぎり,賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解すベく,したがって,家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり,このことは,賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であっても異なるところはないと解すべきである。そして,このように賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあっては,賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないというべきであるとしている。したがって,AがBから甲建物を賃借し,Bに敷金を交付していた場合において,その賃貸借契約が終了したときは,Aは,敷金が返還されるまで甲建物を留置することができない。

  • Q  AからB,BからCに建設機械が順次売却され,BがAに対して代金を支払っていない場合に,Cが提起した所有権に基づく建設機械の引渡請求訴訟においてAの留置権が認められるときは,Cの請求は棄却される

    A×  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭 47.11.16【百選I79】)は,「留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても,債権者がその留置権を主張しうることは,留置権が物権であることに照らして明らかである」が,「物の引渡を水める訴訟において,留置権の抗弁が理由のあるときは,引渡請求を棄却することなく,その物に関して生じた債権の弁済と引換えに物の引渡を命ずべきである」としている。したがって,AからB, BからCに建設機械が順次売却され,BがAに対して代金を支払っていない場合に,Cが提起した所有権に基づく建設機械の引渡請求訴訟においてAの留置権が認められるときは,引換給付判決がされることになる。

  • Q  AがBから甲建物を賃借していたが,Aの賃料不払によりその賃貸借契約が解除された後,明渡しの準備をしている問にAが甲建物について有益費を支出した場合,Aは, Bに対し,その費用の償還請求権を被担保債権とする留置権を行使して甲建物の明渡しを拒むことはできない。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するが,同条2項は,「前項の規定は,占有が不法行為によって始まった場合には,適用しない」と規定する。そして,判例(最判昭 46.7.16【百選I80】) は,要旨,建物の賃借人が,債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち,権限のないことを知りながら右建物を不法に占有する問に有益費を支出しても,その者は,民法295条2項の類推適用により,右費用の償還請求権に基づいて右建物に留置権を行使することはできない,としている。したがって, AがBから甲建物を賃借していたが,Aの賃料不払によりその賃貸借契約が解除された後,明渡しの準備をしている間にAが甲建物について有益費を支出した場合,Aは, Bに対し,その費用の償還請求権を被担保債権とする留置権を行使して甲建物の明渡しを拒むことはできない。

  • Q甲土地の借地権者であるAが甲土地上にある建物について買取請求権を行使した場合,Aは,甲土地の賃貸人であるBに対し,その買取代金債権を被担保債権とする留置権を行使して甲土地の明渡しを拒七ことはできない。

    A×  借地借家法 13条1項は,「借地権の存続期間が満了した場合において,契約の更新がないときは,借地権者は,借地権設定者に対し,建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる」と規定するところ,判例(大判昭 18.2.18)は,「地上建物の買取請求を為したる為,同時履行の抗弁又は留置権に依り,土地賃貸人たる被上告人が右建物の代金の支払を為すまで建物の引渡を拒絶し之を占有する必要上,其の敷地···の占有をも為す」としている。したがって,甲土地の借地権者であるAが甲土地上にある建物について買取請求権を行使した場合,Aは,甲土地の賃貸人であるBに対し,その買取代金債権を被担保債権とする留置権を行使して甲土地の明渡しを拒むことができる。

  • Q甲建物の賃貸人Aが,賃借人Bに対して賃貸借契約の終了に基づき甲建物の明渡しを請求したのに対し,Bが賃貸借の期間中に支出した有益費の償還請求権に基づいて留置権を行使し,従前と同様の態様で甲建物に居住した場合,Bは,Aに対し,その居住による利得を返還する義務を負う。

    A〇  298 条2項は,「留置権者は,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し,賃貸し,又は担保に供することができない。ただし,その物の保存に必要な使用をすることは,この限りでない」と規定するところ,判例(大判昭 10.5.13)は,「家屋の賃借人が,其の賃借中支出したる必要費若は有益費の為め留置権を行使し其の償還を受くる迄従前の如く当該家屋に居住するは,他に特殊の事情なき限り民法第 298条第2項但書の所謂留置物の保存に必要なるものと解するを妥当とす」としているもっとも,703条は,「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者·····は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う」と規定するところ,Bが甲建物に居住するのは「保存に必要な使用」のためであって,その居住による利得までをも保持できる権限を有するものではないから,「法律上の原因」がないといえる。したがって,甲建物の賃貸人Aが,賃借人Bに対して賃貸借契約の終了に基づき甲建物の明渡しを請求したのに対し,Bが賃貸借の期間中に支出した有益費の償還請求権に基づいて留置権を行使し,従前と同様の態様で甲建物に居住した場合,Bは,Aに対し,その居住による利得を返還する義務を負う。

  • Q留置権者が目的物を紛失したときは,留置権は消滅する。

    A〇  302 条本文は,「留置権は,留置権者が留置物の占有を失うことによつて,消滅する」と規定しており,留置権者が目的物を紛失したときは,留置権は消滅する。

  • Q他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権が弁済期にないときであっても, その物を留置することができる。

    A×  295条1項は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる。ただし,その債権が弁済期にないときは,この限りでない」と規定寸る。したがって,他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権が弁済期にないときは,その物を留置することができない。

  • Q債務者は,相当の担保を供して,留置権の消減を請求することができる。

    A〇  301 条は,「債務者は,相当の担保を供して,留置権の消滅を請求することができる」と規定する。

  • Q留置権者は,留置権に基づき,目的物の競売を申し立てることはできない。

    A×  民事執行法195条は,「留置権による競売及び民法,商法その他の法律の規定による換価のための競売については,担保権の実行としての競売の例による」と規定しており,留置権者も,留置権に基づき,目的物の競売を申し立てることができる。なお,この競売は,優先弁済権のない換価のための競売であり,換価金から優先的に弁済を受けることはできない。

  • Q Aがその所有する甲建物をBに売却して引き渡した後,Aが甲建物をCに売却してその旨の登記をした場合において,CがBに対して甲建物の明渡請求をしたときは, Bは, Aの債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として,甲建物を留置することができる。

    A×  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭 43.11.21)は,要旨,丕動産の二重売買において,第2の買主のため所有権移転登記がされた場合,第1の買主は,第2の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し,売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもって,留置権を主張することは許されない,としている。したがって, Aがその所有する甲建物をBに売却して引き渡した後,Aが甲建物をCに売却してその旨の登記をした場合において,CがBに対して甲建物の明渡請求をしたときは,Bは,Aの債務不履行に基づく損害賠償請求権を被担保債権として,甲建物を留置することができない。

  • Q留置権者が留置権を行使して目的物を留置している間は,留置権の被担保債権の消减時効は,進行しない。

    A×  300条は,「留置権の行使は,債権の消滅時効の進行を妨げない」と規定する。したがって,留置権者が留置権を行使して目的物を留置している間でも,留置権の被担保債権の消滅時効は,進行する。

  • Q賃借物について賃貸人Aの負担に属する必要費を支出した賃借人Bは,賃貸借終了後,その償還請求権を被担保債権として留置権を行使している間に,更にAの負担に属する必要費を支出した場合には,更に支出したものを含めた必要費全額の弁済を受けるまで,留置権を行使することができる

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定し,299条1項は,「留置権者は,留置物について必要費を支出したときは,所有者にその償還をさせることができる」と規定するところ,判例(最判昭 33.1.17)は,「被上告人は管理契約終了前本件浴場建物に関し必要費の償還請求権を有し,契約終了後も右建物に対し留置権を有することは,原判決の確定するところである。そして,原判決は被上告人は右契約終了後その留置物について必要費,有益費を支出し,その有益費については,価格の增加が現存するものとなし,上告人に対しその償還請求権を有することを判示しているのであるから,この償還請求権もまた民法295条の所謂その物に関し生じた債権に外ならないものである。従って契約終了前既に生じた費用借還請水権と共に,その弁済を受くるまでは,該浴場建物を留置し明渡を拒み得るものというべきである」としている。したがって,賃借物について賃貸人Aの負担に属する必要費を支出した賃借人Bは,賃貸借終了後,その償還請求権を被担保債権として留置権を行使している間に,更にAの負担に属する必要費を支出した場合には,更に支出したものを含めた必要費全額の弁済を受けるまで,留置権を行使寸ることができる。

  • Q留置権者は,債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸してその賃料を自己の債権の弁済に充当することができる

    A〇  297条1項は,「留置権者は,留置物から生ずる果実を収取し,他の債権者に先立って,これを自己の債権の弁済に充当することができる」と規定L,298条2項本文は,「留置権者は,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し,賃貸し,又は担保に供することができない」と規定する。したがって,留置権者は,債務者の承諾を得て留置物を第三者に賃貸してその賃料を自己の債権の弁済に充当することができる。

  • Q建物の賃借人は,造作買取請求権の行使によって生じた賃貸人に対する代金債権を被担保債権として,建物について留置権を行使することができる。

    A×  借地借家法33条1項前段は,「建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した覺,建具その他の造作があう場合には,建物の賃借人は,建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに,建物の賃貸人に対し,その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる」と規定するところ,判例(最判昭 29.7.22)は,要旨,「造作買取代金債権は,造作に関して生じた債権で,建物に関して生じた債権でないと解するを相当と」するから,借家法第5条〔注:現借地借家法33条〕により造作の買取を請求した建物の賃借人は,その代金の不払を理由として右家屋を留置し,または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない,としている。したがって,建物の賃借人は,造作買取請求権の行使によって生じた賃貸人に対する代金債権を被担保債権として,建物について留置権を行使することができない。

  • Q建物の賃借人が,賃貸借終了後,有益費の償還請求権を被担保債権として留置権を行使している場合において,賃貸人の請求により裁判所がその償還について期限を許与したときは,留置権は消滅する。

    A〇  295条1項は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる。ただし,その債権が弁済期にないときは,この限りでない」と規定するところ,608条2項は,「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは,賃貸人は,賃貸借の終了の時に,第196条第2項の規定に従い,その償還をしなければならない。ただし,裁判所は,賃貸人の請求により, その償還について相当の期限を許与することができる」と規定する。したがって,建物の賃借人が,賃貸借終了後,有益費の償還請求権を被担保債権として留置権を行使している場合において,賃貸人の請求により裁判所がその償還について期限を許与したときは,有益費の償還請求権は「弁済期にない」ことになるから,留置権は消滅する。

  • Q甲動産を所有するAが,これをBに売り,さらにBがCに譲渡したが,AがBから代金の支払を受けていない場合、Aは,甲動産を占有する場合,Cからの甲動産の引渡請求に対し留置権を行使することができる

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭 47.11.16【百選I79】)は,「留置権が成立したのち債務者からその目的物を譲り受けた者に対しても,債権者がその留置権を主張しうることは,留置権が物権であることに照らして明らかである」としている。したがって, Aは,甲動産を占有する場合, Cからの甲動産の引渡請求に対し留置権を行使することができる。

  • Q甲動産を所有するAが,これをBに売り,さらにBがCに譲渡したが,AがBから代金の支払を受けていない場合、甲動産がAからBへ,さらに壳買により引き渡された場合,Aは,動産売買先取特権の行使として,甲動産を差し押さえることができる

    A×  333条は「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定する。したがって,甲動産がAからBへ,さらにBからCへ売買により引き渡された場合,Aは,動産売買先取特権の行使として,甲動産を差し押さえることができない。

  • Q甲動産を所有するAが,これをBに売り,さらにBがCに譲渡したが,AがBから代金の支払を受けていない場合、BからCへの甲動産の譲渡が売買に基づくものである場合,Bに対して破産手続開始の決定がされたときであっても,Aは,動産売買先取特権の行使として, BのCに対する代金債権を差し押さえることができる。

    A〇  311 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の動産について先取特権を有する」と規定し,同条5号は,「動産の売買」を挙げる。また,304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定する。そして,判例(最判昭59.2.2)は,「債務者が破産宣告決定を受けた場合においても,その効果の実質的内容は,破産者の所有財産に対する管理処分権能が剥奪されて破産管財人に帰属せしめられるとともに,破産債権者による個別的な権利行使を禁止されることになるというにとどまり,これにより破産者の財産の所有権が破産財団又は破産管財人に譲渡されたことになるものではなく,これを前記一般債権者による差押の場合と区別すべき積極的理由はない。したがって,先取特権者は,債務者が破産宣告決定を受けた後においても,物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である」としているしたがって, BからCへの甲動産の譲渡が売買に基づくものである場合,Bに対して破産手続開始の決定がされたときであっても,Aは,動産売買先取特権の行使として,BのCに対する代金債権を差し押さえることができる。

  • Q甲動産を所有するAが,これをBに売り,さらにBがCに譲渡したが,AがBから代金の支払を受けていない場合、A·B間の売買契約において,甲動産の所有権はBがAに代金を完済した時にBへ移転する旨が定められていた場合,Aは,甲動産をBがCに転売することに協力していたときであっても,Bに代金を支払って甲動産の引渡しを受けたCに対し,所有権に基づき甲動産の返還を請求することができる。

    A×  1条3項は,「権利の溢用は,これを許さない」と規定するところ,判例(最判昭50.2.28)は,「上告人は,ディーラーとして,サプディーラーである甲が本件自動車をユーザーである被上告人に販売するについては,前述のとおりその売買契約の履行に協力しておきながら,その後甲との間で締結した本件自動車の所有権留保特約付売買について代金の完済を受けないからといって,すでに代金を完済して自動車の引渡しを受けた被上告人に対し,留保された所有権に基づいてその引渡しを求めるものであり,右引渡請水は,本来上告人においてサブディーラーである甲に対してみずから負担すベき代企回収不能の危険をューザーである被上告人に転嫁しようとするものであり,自己の利益のために代金を完済した被上告人に不測の損害を蒙らせるものであって,権利の濫用として許されないものと解するを相当とする」としている。したがって, A·B間の売買契約において,甲動産の所有権はBがAに代金を完済した時にBへ移転する旨が定められていた場合において,Aは,甲動産をBがCに転売することに協力していたときは,Bに代金を支払って甲動産の引渡しを受けたCに対し,所有権に基づき甲動産の返還を請求することができない

  • Q甲動産を所有するAが,これをBに売り,さらにBがCに譲渡したが,AがBから代金の支払を受けていない場合、BからCヘの譲渡がCの有する債権を担保するためのものである場合,甲動産がAからBに現実に引き渡され,さらにBからCに占有改定がされたときは,Aは,動産売買先取特権の行使として,甲動産を差し押さえることができない。

    A〇  333 条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定し,183条は,「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは,本人は,これによって占有権を取得する」と規定するところ,判例(最判昭62.11.10)は,「構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができるものと解すべきであることは,当裁判所の判例とするところである·····。そして,債権者と債務者との聞に,右のような集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され,債務者がその構成部分である動産の占有を取得したときは債権者が占有改定の方法によってその占有権を取得する旨の合意に基づき,債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には,債権者は,当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り,この対抗要件具備の効力は,その後構成部分が変動したとしても,集合物としての同一性が損なわれない限り,新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶものと解すべきである。したがって,動産売買の先取特権の存在する動産が右譲渡担保権の目的である集合物の構成部分となった場合においては,債権者は,右動産についても引渡を受けたものとして譲渡担保権を主張することができ,当該先取特権者が右先取特権に基づいて動産競売の申立をしたときは,特段の事情のない限り,民法333条所定の第三取得者に該当するものとして,訴えをもって,右動産競売の丕許を求めることができるものというベきである」としている。したがって,BからCヘの譲渡がCの有する債権を担保するためのものである場合,甲動産がAからBに現実に引き渡され,さらにBからCに占有改定がされたときは,Aは,動産売買先取特権の行使として,甲動産を差し押さえることができない。

  • Q民法上の留置権の成立には,目的物と牽連性のある債権の存在及び債権者による目的物の占有が必要であるが,その債権の成立時に債権者が目的物を占有している必要はない。

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定しており,民法上の留置権の成立には,目的物と牽連性のある債権の存在及び債権者による目的物の占有が必要であるが,その債権の成立時に債権者が目的物を占有している必要はないと解されている。

  • Q質権者が任意に質権設定者に質物を返還した場合,質権は消滅する。

    A×  345 条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定するところ,判例(大判大5.12.25)は,「民法第345 条には,単に質権者は質権設定者をして自己に代りては質物を占有せしむることを得さる旨の規定あるに過ぎざるを以て,質権者が一旦有効に質権を設定したる後,右規定に違背し質権設定者をして質物を占有せしめたりとするも,其占有が法律上代理占有の効力を生せざるに止まり,之が為め質権が消滅に帰すべきものにあらずと解するを相当とす」としている。したがって,質権者が任意に質権設定者に質物を返還した場合でも,質権は消滅しない。

  • Q必要費償還請求権を被担保債権として建物を留置している留置権者は,その建物のための必要費を更に支出した場合,後者の必要費償還請求権を被担保債権として留置権を行使することはできない。

    A×  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭 33.1.17)は,「被上告人は管理契約終了前本件浴場建物に関し必要費の償還請求権を有し,契約終了後も右建物に対し留置権を有することは,原判決の確定寸るところである。そして,原判決は被上告人は右契約終了後その留置物について必要費,有益費を支出し,その有益費については,価格の增加が現存するものとなし,上告人に対しその借還請水権を有することを判示しているのであるから,この借還請求権もまた民法 295条の所謂その物に関し生じた債権に外ならないものである。従って契約終了前既に生じた費用償還請求権と共に,その弁済を受くるまでは,該浴場建物を留置し明渡を拒み得るものというべきである」としいる。したがって,必要費償還請求権を被担保債権として建物を留置している留置権者は,その建物のための必要費を更に支出した場合,後者の必要費償還請求権を被担保債権として留置権を行使することができる。

  • Q仮登記担保権の実行により不動産の所有権を取得した仮登記担保権者が,債務者に清算金を支払わないでその不動産を第三者に譲渡した場合,債務者は,清算金支払請求権を被担保債権として,譲受人たる第三者に対し,その不動産につき留置権を行使することができる

    A〇  295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭 58.3.31)は,要旨,清算金の支払のないまま仮登記担保権者から第三者が目的不動産の所有権を取得した場合には,債務者は,右第三者からの右不動産の明渡請求に対し,仮登記担保権者に対する清算企支払請求権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる, としているしたがって,仮登記担保権の実行により不動産の所有権を取得した仮登記担保権者が,債務者に清算金を支払わないでその不動産を第三者に譲渡した場合,債務者は,清算金支払請求権を被担保債権として,譲受人たる第三者に対し,その不動産につき留置権を行使することができる。

  • Q質権の目的物を所有する債務者が,質権者に対して被担保債権を消減させずに目的物の返還を求める訴訟を提起した場合に質権の主張が認められるときは,債務者の請求は棄却されるが,留置権の目的物を所有する債務者が,留置権者に対して被担保債権を消滅させずに目的物の返還を求める訴訟を提起した場合に留置権の主張が認められるときは,引換給付判決がされる。

    A〇  347 条本文は,「質権者は,前条に規定する債権の弁済を受けるまでは,質物を留置することができる」と規定するところ,判例(大判大 9.3.29)は,「動産質権者は,其質権により担保せらるる債権の弁済を受くるに至るまでは質権の目的物を留置するの権利を有すること民法第 347 条に依り明らかなれば,質権の目的物の所有者は先ず其担保せらるる債権の弁済を益すにあらざれば,其物の引渡を受くることを得さる」としており,質権の目的物を所有する債務者が,質権者に対して被担保債権を消滅させずに目的物の返還を求める訴訟を提起した場合に質権の主張が認められるときは,債務者の請求は棄却される。一方,肢アの解説のとおり,295条1項本文は,「他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで, その物を留置することができる」と規定するところ,判例(最判昭33.3.13)は,「留置権は,物の占有者がその物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置することを得るに過ぎないものであって,物に関して生じた債権を他の債権に優先して弁済を受けしめることを趣旨とするものではない。従って,裁判所は,物の引渡請求に対する留置権の抗弁を理由ありと認めるときは,その引渡請求を棄却することなく,その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする」としており,留置権の目的物を所有する債務者が,留置権者に対して被担保債権を消滅させずに目的物の返還を求める訴訟を提起した場合に留置権の主張が認められるときは,引換給付判決がされる。

  • Q不動産売買の先取特権について登記があるときは,その先取特権者は,登記の先後を問わず,抵当権に先立って先取特権を行使することができる。

    A×  341 条は,「先取特権の効力については,この節に定めるもののほか,その性質に反しない限り,抵当権に関する規定を準用する」と規定し,373条は,「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは,その抵当権の順位は,登記の前後による」と規定する。したがって,不動産売買の先取特権について登記があるときにおいて,その先取特権者が抵当権に先立って先取特権を行使することができるか否かは,登記の先後による。なお,339条は,「前2条の規定に従って登記をした先取特権【注:不動産保存の先取特権及び不動産工事の先取特権〕は,抵当権に先立って行使することができる」と規定する。

  • Q動産売買の先取特権の目的物が転売され,第三者に引き渡されたときは,先取特権者は,その動産について先取特権を行使することができない。

    A〇  333条は,「先取特権は,債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は,その動産について行使することができない」と規定寸る。したがって,動産売買の先取特権の目的物が転売され,第三者に引き渡されたときは,先取特権者は,その動産について先取特権を行使することができない。

  • Q雇用関係の先取特権は,給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。

    A〇  308条は,「雇用関係の先取特権は,給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する」と規定する。

  • Q一般の先取特権者は,不動産について登記をしなくても,不動産売買の先取特権について登記をした者に優先して当該不動産から弁済を受けることができる。

    A×  336条は,「一般の先取特権は,不動産について登記をしなくても,特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし,登記をした第三者に対しては,この限りでない」と規定する。したがって,一般の先取特権者は,不動産について登記をしなければ,不動産売買の先取特権について登記をした者に優先して当該不動産から弁済を受けることができない。

  • Q判例によれば,日用品供給の先取特権の債務者は,自然人に限られ,法人は含まれない。

    A〇  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定し,同条4号は,「日用品の供給」を挙げる。また,310条は,「日用品の供給の先取特権は,債務者又はその扶養すベき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の6箇月間の飲食料品,燃料及び電気の供給について存在する」と規定する。そして,判例(最判昭 46.10.21)は,「民法 306条4号,310 条の法意は,同条の飲食品および薪炭油の供給者に対し一般先取特権を与えることによって,多くの債務を負っている者あるいは資力の乏しい者に日常生活上必要不可欠な飲食品およぴ薪炭油の入手を可能ならしめ,もってその生活を保護しようとすることにあると解される。かかる法意ならびに同法310条の文言に照らせば,同条の債務者は,自然人に限られ,法人は右債務者に含まれないと解するのが相当である。もし法人が右債務者に含まれると解するならば,法人に対する日用品供給の先取特権の範囲の限定が著しく困難になり,一般債権者を不当に害するに至ることは明らかである。そして,このような解釈は,法人の規模,経営態様等のいかんを問わず妥当寸るものというべきであり,·····いわゆる個人会社であっても結論を異にするものではない」としいる。したがって,日用品供給の先取特権の債務者は,自然人に限られ,法人は含まれない。

  • Q一般の先取特権者は,債務者の財産の中の動産が売却されて買主にその引渡しがされた場合,債務者が取得する代金債権について,その払渡しの前に差押えをしなくても先取特権を行使することができる

    A〇  304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定するが,306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定しており,一般の先取特権には,物上代位の問題は生じないと解されている。したがって,一般の先取特権者は,債務者の財産の中の動産が売却されて買主にその引渡しがされた場合,債務者が取得する代金債権について,その払渡しの前に差押えをしなくても先取特権を行使することができる。

  • Q宿泊客が旅館に持ち込んだ手荷物がその宿泊客の所有物でない場合,旅館の主人は,その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたとしても,その手荷物について先取特権を行使することができない。

    A×  311 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の動産について先取特権を有する」と規定し,同条2号は,「旅館の宿泊」を挙げる。また,317 条は,「旅館の宿泊の先取特権は,宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し,その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する」と規定すそして,319条は,「192 条から第195条までの規定は,第312 条から前条までの規定による先取特権について準用する」と規定するところ,192 条は,「取引行為によって,平穩に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定する。したがって,宿泊客が旅館に持ち込んだ手荷物がその宿泊客の所有物でない場合において,旅館の主人が,その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときは,その手荷物について先取特権を行使することができる。

  • Q家屋の賃借人がその家屋に備え付けた家具が競売された場合において,その執行費用に関する先取特権は,その家屋の賃貸人が賃料債権に基づき家具について有する先取特権に優先する。

    A〇  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定し,同条1号は,「共益の費用」を挙げるところ,執行費用に関する先取特権は,これにあたる。一方,312 条は,「不動産の賃貸の先取特権は,その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し,賃借人の動産について存在する」と規定するところ,家屋の賃貸人が賃料債権に基づき家具について有する先取特権は,これにあたる。そして,329条2項は,「一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には,特別の先取特権は,一般の先取特権に優先する。ただし,共益の費用の先取特権は,その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する」と規定する。したがって,家屋の賃借人がその家屋に備之付けた家具が競売された場合において,その執行費用に関する先取特権は,その家屋の賃貸人が賃料債権に基づき家具について有する先取特権に優先する。

  • Q動産売買の先取特権の目的物について質権が設定された場合,動産売買の先取特権が質権に優先する

    A×  334条は,「先取特権と動産質権とが競合する場合には,動産質権者は,第330 条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する」と規定する。一方,330 条1項柱書前段は,「同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,次に掲げる順序に従う」と規定し,同項1号は,「不動産の賃貸,旅館の宿泊及び運輸の先取特権」を,同項3号は,「動産の売買,種苗又は肥料の供給,農業の労務及び工業の労務の先取特権」を挙げる。したがって,動産売買の先取特権の目的物について質権が設定された場合,質権が動産売買の先取特権に優先する。

  • Q判例によれば,日用品の供給の先取特権は,債務者が法人のときは認められない。

    A〇  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定し,同条4号は,「日用品の供給」を挙げる。また,310条は,「日用品の供給の先取特権は,債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の6箇月間の飲食料品,燃料及ぴ電気の供給について存在する」と規定する。そして,判例(最判昭 46.10.21)は,「民法 306条4号,310 条の法意は,同条の飲食品および薪炭油の供給者に対し一般先取特権を与えることによって,多くの債務を負っている者あるいは資力の乏しい者に日常生活上必要不可欠な飲食品およぴ薪炭油の入手を可能ならしめ,もってその生活を保護しようとすることにあると解される。かかる法意ならびに同法310条の文言に照らせば,同条の債務者は,自然人に限られ,法人は右債務者に含まれないと解するのが相当である。もし法人が右債務者に含まれると解するならば,法人に対する日用品供給の先取特権の範囲の限定が著しく困難になり,一般債権者を不当に害するに至ることは明らかである。そして, このような解釈は,法人の規模,経営態様等のいかんを問わず妥当寸るものというベきであり,····いわゆる個人会社であっても結論を異に寸るものではない」としているしたがって,日用品の供給の先取特権は,債務者が法人のときは認められない。

  • Q一般の先取特権者は,債務者の財産の中の動産が売却されて買主にその引渡しがされた場合,債務者が取得する代金債権について,その払渡しの前に差押えをしなくても先取特権を行使することができる。

    A〇  304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定するが,306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定しており,一般の先取特権には,物上代位の問題は生じないと解されている。したがって,一般の先取特権者は,債務者の財産の中の動産が売却されて買主にその引渡しがされた場合,債務者が取得する代金債権についてその払渡しの前に差押えをしなくても先取特権を行使することができる。

  • Q動産売買の先取特権者がその代金債権を第三者に譲渡した場合,その先取特権は代金債権とともに第三者に移転する。

    A担保物権は,被担保債権が譲渡されるとそれに伴って移転するのが原則である(随伴性)。したがって,動産売買の先取特権者がその代金債権を第三者に譲渡した場合,その先取特権は代金債権とともに第三者に移転する。

  • Q動産売買先取特権と動産質権が競合する場合,動産質権は動産売買先取特権より先順位となる。

    A×  334 条は,「先取特権と動産質権とが競合する場合には,動産質権者は,第330条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する」と規定する。一方,330条1項柱書前段は,「同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,次に掲げる順序に従う」と規定し,同項1号は,「不動産の賃貸,旅館の宿泊及び運輸の先取特権」を,同項3号は,「動産の売買,種苗又は肥料の供給,農業の労務及び工業の労務の先取特権」を挙げるが,330条2項前段は,「前項の場合において,第一順位の先取特権者は,その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたらの者に対しx22工優先権を行使することができ、したがって,動産売買先取特権と動産質権が競合する場合,動産質権は動産売買先取特権より先順位となるとは限らない

  • Q不動産の保存行為が完了した後直ちに不動産の保存の先取特権の登記をした場合であっても,その先取特権は,その登記より前にその不動産について登記された抵当権に先立って行使することができない。

    A×  339条は,「前2条の規定に従って登記をした先取特権【注:不動産保在の先取特権及び不動産工事の先取特権〕は,抵当権に先立って行使することかできる」と規定する。したがって,不動産の保存行為が完了した後直ちに不動産の保存の先取特権の登記をした場合,その先取特権は,その登記より前にその不動産について登記された抵当権に先立って行使することができる。

  • Q不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。

    A〇  338条1項前段は,「丕動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない」と規定する。

  • Q建物の賃貸人は,賃借人が賃料を支払わない場合,敷金を受け取っており,未払賃料額が敷金額の範囲内であっても,賃借人が当該建物に備え付けた動産について先取特権を行使することができる

    A×  316 条は,「賃貸人は,第622条の2第1項に規定する数金を受け取っている場合には,その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する」と規定する。したがって,建物の賃貸人は,賃借人が賃料を支払わない場合において,敷金を受け取っており,未払賃料額が敷金額の範囲内であるときは,賃借人が当該建物に備え付けた動産について先取特権を行使することができない。

  • Q建物の賃借人が,家具店から購入して当該建物に備之付けたタンスについて未だ売買代金を支払わず,かつ,建物の賃料の支払も怠っている場合,家具店が当該タンスについて有する先取特権は,建物の賃貸人が当該タンスについて有する先取特権に優先する。

    A×  330条1項柱書前段は,「同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,次に掲げる順序に従う」と規定し,同項1号は,「不動産の賃貸,旅館の宿泊及び運輸の先取特権」を,同項3号は,「動産の売買,種苗又は肥料の供給,農業の労務及び工業の労務の先取特権」を挙げる。そして,家具店がタンスについて有する先取特権は「動産の売買······の先取特権」に,建物の賃貸人がタンスについて有する先取特権は「不動産の賃貸······の先取特権」にあたるしたがって,建物の賃借人が,家具店から購入して当該建物に備え付けたタンスについて未だ売買代金を支払わず,かつ,建物の賃料の支払も怠っている場合,家具店が当該タンスについて有する先取特権は,建物の賃貸人が当該タンスについて有する先取特権に劣後する。

  • Q会社の従業員は,会社が給料を支払っていない場合,その給料債権につき,未払となっている期間にかかわらず,当該会社の総財産について先取特権を有する

    A〇  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定し,同条2号は,「雇用関係を挙げる。また,308条は,「屈用関係の先取特権は,給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する」と規定する。したがって,会社の従業員は,会社が給料を支払っていない場合,その給料債権につき,未払となっている期間にかかわらず,当該会社の総財産について先取特権を有する。

  • Q会社が,電器店から購入した冷蔵庫の売買代金を支払わず,かつ従業員への給料も支払っていない場合,電器店が当該冷蔵庫について有する先取特権は,従業員が当該冷蔵庫について有する先取特権に優先する。

    A〇  329条2項は,「一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には,特別の先取特権は,一般の先取特権に優先する。ただし,共益の費用の先取特権は,その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する」と規定する。そして,電器店が冷蔵庫について有する先取特権は「動産の売買」の先取特権(311条5号)であり,「特別の先取特権」にあたる。一方,従業員が冷蔵庫について有する先取特権は「扉用関係」の先取特権(306条2号)であり,「一般の先取特権」にあたる。したがって,会社が,電器店から購入した冷蔵庫の売買代金を支払わず,かつ,従業員への給料も支払っていない場合,電器店が当該冷蔵庫について有する先取特権は,従業員が当該冷蔵庫について有する先取特権に優先する。

  • Q債務者が約定担保物権,留置権及び特別の先取特権の目的とされていない不動産と動産を有している場合,一般の先取特権者は,まず不動産から弁済を受け,なお不足がある場合に動産から弁済を受ける。

    A×  335条1項は,「一般の先取特権者は,まず不動産以外の財産から弁済を受け,なお不足があるのでなければ,不動産から弁済を受けることができない」と規定する。したがって,債務者が約定担保物権,留置権及び特別の先取特権の目的とされていない不動産と動産を有している場合,一般の先取特権者は,まず動産から弁済を受け,なお不是がある場合に不動産から弁済を受ける。

  • Q法人に対して電気料金債権を有する者は,供給した電気がその代表者及びその家族の生活に使用されていた場合,法人の財産についてー般の先取特権を有する。

    A×  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定し,同条4号は,「日用品の供給」を挙げる。また,310条は,「日用品の供給の先取特権は,債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の6箇月間の飲食料品,燃料及び電気の供給について存在する」と規定する。そして,判例(最判昭 46.10.21)は,「民法306条4号,310条の法意は,同条の飲食品およぴ薪炭油の供給者に対し一般先取特権を与えることによって,多くの債務を負っている者あるいは資力の乏しい者に日常生活上必要不可欠な飲食品およぴ薪炭油の入手を可能ならしめ,もってその生活を保護しようとすることにあると解される。かかる法意ならびに同法310条の文言に照らせば,同条の債務者は,自然人に限られ,法人は右債務者に含まれないと解するのが相当である。もし法人が右債務者に含まれると解するならば,法人に対する日用品供給の先取特権の範囲の限定が著しく困難になり,一般債権者を不当に害するに至ることは明らかである。そして,このような解釈は,法人の規模,経営態様等のいかんを問わず妥当寸るものというべきであり,·····いわゆる個人会社であっても結論を異にするものではない」としている。したがって,法人に対して電気料金債権を有する者は,供給した電気がその代表者及びその家族の生活に使用されていた場合でも,法人の財産について一般の先取特権を有しない。

  • Q旅館に宿泊客が持ち込んだ手荷物がその宿泊客の所有物でなく他人の所有物であった場合,旅館主は,その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときであっても,その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することはできない。

    A×  311 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の動産について先取特権を有する」と規定し,同条2号は,「旅館の宿泊」を挙げる。また,317 条は,「旅館の宿泊の先取特権は,宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し,その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する」と規定する。そして,319 条は,「第192 条から第195条までの規定は,第312 条から前条までの規定による先取特権について準用する」と規定するところ,192条は,「取引行為によって,平穩に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり、かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定する。したがって,旅館に宿泊客が持ち込んだ手荷物がその宿泊客の所有物でなく他人の所有物であった場合において,旅館主が,その手荷物がその宿泊客の所有物であると過失なく信じたときであったときは,その手荷物について旅館の宿泊の先取特権を行使することができる

  • Q動産の売主は,買主がその動産の転売によって得た売買代金債権につき,買主の一般債権者が当該売買代金債権を差し押さえた後は,動産の売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することはできない。

    A×  304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定するところ,判例(最判昭 60.7.19【百選I82】)は,「民法304条1項但書において,先取特権者が物上代位権を行使するためには物上代位の対象となる金銭その他の物の払渡又は引渡前に差押をしなければならないものと規定されている趣旨は,先取特権者のする右差押によって,第三債務者が金銭その他の物を債務者に払い渡し又は引き渡すことを禁止され,他方,債務者が第三債務者から債権を取立て又はこれを第三者に譲渡することを禁止される結果,物上代位の目的となる債権(以下「目的債権」という。)の特定性が保持され,これにより,物上代位権の効力を保全せしめるとともに,他面目的債権の弁済をした第三債務者又は目的債権を譲り受け若しくは目的債権につき転付命令を得た第三者等が不測の損害を被ることを防止しようとすることにあるから,且的債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは,その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではないと解すべきである」としている。したがって,動産の売主は,買主がその動産の転売によって得た売買代金債権につき,買主の一般債権者が当該売買代金債権を差し押さえた後でも,動産の売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。

  • Q不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。

    A〇  338条1項前段は,「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない」と規定する。

  • Q建物賃貸借において,賃借権が適法に譲渡され,譲受人が建物に動産を備え付けた場合,賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても,不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ。

    A〇  311 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の特定の動産について先取特権を有する」と規定し,同条1号は,「不動産の賃貸借」を挙げる。そして,313条2項は,「建物の賃貸人の先取特権は,賃借人がその建物に備え付けた動産について存在する」と規定し,314条は,「賃借権の譲渡又は転貸の場合には,賃貸人の先取特権は,譲受人又は転借人の動産にも及ぶ」と規定する。したがって,建物賃貸借において,賃借権が適法に譲渡され,譲受人が建物に動産を備え付けた場合,賃貸借関係から生じた賃貸人の債権が譲渡前に発生していたものであっても,不動産の賃貸の先取特権はその動産に及ぶ。

  • Q共益の費用の先取特権は,全ての特別の先取特権に優先する

    A×  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定し,同条1号は,「共益の費用」を挙げる。また,329条2項は,「一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には,特別の先取特権は,一般の先取特権に優先する。ただし,共益の費用の先取特権は,その利益を受けたすベての債権者に対して優先する効力を有する」と規定するもっとも,336条は,「一般の先取特権は,不動産について登記をしなくても,特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし,登記をした第三者に対しては,この限りでない」と規定しており,共益の費用の先取特権も,登記をした第三者には劣後する。

  • Q農地の天然果実については,農業労務の先取特権が不動産賃貸の先取特権に優先する。

    A〇  330条3項は,「果実に関しては,第一の順位は農業の労務に従事する者仁,第二の順位は種苗又は肥料の供給者に,第三の順位は土地の賃貸人に属する」と規定する。したがって,農地の天然果実については,農業労務の先取特権が不動産賃貸の先取特権に優先する。

  • Q工事を始める前にその費用の予算額を登記した不動産工事の先取特権は,その登記に先立って設定登記がされている抵当権に優先する

    A〇  338条1項前段は,「不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには,工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない」と規定し,339 条は,「前2条の規定に従って登記をした先取特権は,抵当権に先立って行使することができる」と規定する。したがって,工事を始める前にその費用の予算額を登記した不動産工事の先取特権は,その登記に先立って設定登記がされている抵当権に優先する。

  • Q同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合,その優先権の順位は同一となる

    A×  331 条1項は,「同一の不動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には,その優先権の順位は,第325条各号に掲げる順序に従う」と規定する。そして,325条1号は,「不動産の保存」を,同条2号は,「不動産の工事」を,同条3号は,「不動産の売買」を挙げる。したがって,同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合,不動産保存の先取特権が不動産工事の先取特権に優先する。

  • Q同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは,各先取特権者は,その債権額の割合に応じて弁済を受ける

    A〇  332条は,「同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは,各先取特権者は,その債権額の割合に応じて弁済を受ける」と規定する。

  • Q質権者は,質物の所有者の承諾がなくても,質物をさらに質入れすることができる。

    A〇  348 条前段は,「質権者は,その権利の存続期間内において,自己の責任で,質物について、転質をすることができる」と規定する。したがって,質権者は,質物の所有者の承諾がなくても,質物をさらに質入れすることができる。

  • Q動産質は,引渡しがなければ効力を生じないことから,同一の動産について,複数の質権が設定されることはない。

    A×  344 条は,「質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって,その効力を生ずる」と規定しており,動産質は,引渡しがなければ効力を生じない。もっとも,184条は,「代理人によって占有をする場合において,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その第三者がこれを承諾したときは,その第三者は,占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判昭9.6.2)は,「質権の目的たる不動産が質権設定以前既に他人に賃貸しある場合に於ては,質権設定者たる賃貸人が賃借人に対して爾後質権者の為に該不動産を占有すベき旨を命じ,賃借人之を承諾することに依り並に質権は適法に設定せらるべく」としている。すなわち,「質権の設定」に必要な「引き渡」しは,指図による占有移転(184条)でも足りるから,同一の動産に複数の質権が設定されることもある。また,355条も,「同一の動産について数個の質権が設定されたときは,その質権の順位は,設定の前後による」と規定しており,同一の動産について複数の質権が設定されることがあることを前提としている。なお,345 条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定しており,占有改定により動産甲の引渡しを受けたときは,質権の効力は生じない。

  • Q不動産質権者は,不動産を使用収益することができるから,当事者間で特約をしても利息を請求することはできない。

    A×  356 条は,「不動産質権者は,質権の目的である不動産の用法に従い,その使用及び収益をすることができる」と規定しており,不動産質権者は,不動産を使用収益することができる.一方,358条は,「不動産質権者は,その債権の利息を請求することができない」と規定するが,359条は,「前3条の規定は,設定行為に別段の定めがあるとき,又は担保不動産収益執行······の開始があったときは,適用しない」と規定する。したがって,当事者間で特約をすれば,利息を請求することができる。

  • Q法人を債権者とする債権の債権質については,確定日付のある証書をもってする通知又は承諾によってのみ,債務者以外の第三者に対する対抗要件を具備することができる。

    A×  364 条は,「債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は,第467 条の規定に従い,第三債務者にその質権の設定を通知し,又は第三債務者がこれを承諾しなければ,これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない」と規定し,467条2項は,「前項の通知又は承諾は,確定日付のある証書によってしなければ,債務者以外の第三者に対抗することができない」と規定するもっとも,動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律4条1項は,「法人が債権(金銭の支払を目的とするものであって,民法第3編第1章第4節の規定に上り譲渡されるものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において,当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは,当該債権の債務者以外の第三者については,同法第467 条の規定による確定目付のある証書による通知があったものとみなす。この場合においては,当該登記の日付をもって確定日付とする」と規定し,同法 14条1項前段は,「第4条······の規定······は法人が債権を目的として質権を設定した場合において当該質権の設定につき債権譲渡登記ファイルに記録された質権の設定の登記(以下「質権設定登記」という。)について····準用する」と規定する。したがって,法人を債権者とする債権の債権質については,確定日付のある証書をもってする通知又は承諾又は質権設定登記よって,債務者以外の第三者に対する対抗要件を具備することができる。

  • Q動産質の質権者が第三者に占有を奪われた場合,質権に基づいて返還請求をすることができる。

    A×  353条は,「動産質権者は,質物の占有を奪われたときは,占有回収の訴えによってのみ,その質物を回復することができる」と規定する。したがって、動産質の質権者が第三者に占有を奪われた場合,質権に基づいて返還請求をすることはできない。

  • Q債権質の質権者は,質権の目的が金銭債権でない場合,これを直接に取り立てることはできない。

    A×  366条1項は,「質権者は,質権の目的である債権を直接に取り立てることができる」と規定しており,債権質の質権者は,質権の目的が金銭債権でない場合でも,これを直接に取り立てることができる。なお,同条2項は,「債権の目的物が金銭であるときは,質権者は,自己の債権額に対応する部分に限り,これを取り立てることができる」と規定する。

  • Q動産質権者は,質物から生ずる果実を収取し,他の債権者に優先して被担保債権の弁済に充当することができる。

    A〇  350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定し,297条1項は,「留置権者は,留置物から生ずる果実を収取し,他の債権者に先立って,これを自己の債権の弁済に充当寸ることができる」と規定する。

  • Q質権者は,質権設定者の承諾を得なければ,自己の債務の担保として質物をさらに質入れすることはできない。

    A×  348 条前段は,「質権者は,その権利の存続期間内において,自己の責任で,質物について,転質をすることができる」と規定する。したがって,質権者は,質権設定者の承諾を得なくても,自己の債務の担保として質物をさらに質入れすることができる。

  • Q質権は,設定行為に定めがないときは,質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保しない。

    A×  346 条は,「質権は,元本,利息,違約金,質権の実行の費用,質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし,設定行為に別段の定めがあるときは,この限りでない」と規定する。したがって,質権は,設定行為に定めがないときでも,質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。

  • Q  Aは, Bに対して有する債権を担保するために,BがAに対して有する債権を目的として質権の設定を受けることができる。

    A〇  判例(最判昭40.10.7)は,要旨,銀行のため質権の目的とされていた右銀行に対する定期預金債権につきいわゆる書替が行なわれた場合には,右書替にあたり,預金名義が預金者の仮名であったのを預金者の氏名に改め,既経過分の利息を右銀行において任意に支払うなど判示の事情があっても,質権は当該新定期預金債権に及ぶと解することができる,としており,質権者が債務者である債権も質入れすることができることが前提とされている。したがって, Aは,Bに対して有する債権を担保するために,BがAに対して有する債権を目的として質権の設定を受けることができる。

  • Q留置権者が留置物の占有を継続していても,その被担保債権の消減時効は進行するが,質権者が質物の占有を継続していれば,その被担保債権の消滅時効は完成しない。

    A×  300条は,「留置権の行使は,債権の消滅時効の進行を妨げない」と規定すろ。また,350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定する。したがって,留置権者が留置物の占有を継続していても,質権者が質物の占有を継続していても,その被担保債権の消滅時効は進行する。

  • Q質権は,留置権とは異なり,約定担保物権であるから,約定があれば,質権設定者を代理人としてその者に占有させることにより,これを設定することができる

    A×  345 条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定するところ,判例(大判明 35.2.10)は,「質権なるものは,民法質権の総則たる其第 344 条に『質権の設定は債権者に其目的物の引渡を為すに因り其効力を生ず』と規定して質権の占有を以て質権成立の要件と為し,又其第 345 条には『質権者は質権設定者をして自己に代わりて質物の占有を為さしむることを得ず』と規定して質権設定者をして質権者に代り質物を占有せしむることは絶対に之を禁止せり」としている。したがって,質権は,約定があれっても,質権設定者を代理人としてその者に占有させることにより,これを設定することができない。

  • Q留置権は,質権と異なり,目的物が滅失した場合,これに代わって債務者が取得する物には効力が及ばず,消滅する。

    A〇  304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,减失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定し,350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定する。一方,304条の規定を留置権について準用する規定は存在しない。したがって,留置権は,質権と異なり,目的物が滅失した場合,これに代わって債務者が取得する物には効力が及ばず,消滅する。

  • Q留置権と質権は,不可分性により,いずれも被担保債権の一部の弁済を受けただけでは消滅しないが,留置権については,債務者が相当の担保を提供して留置権の消滅を請求することができる

    A〇  296条は,「留置権者は,債権の全部の弁済を受けるまでは,留置物の全部についてその権利を行使することができる」と規定し,350条は,「堃296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定する。したがって,留置権と質権は,不可分性により,いずれも被担保債権の一部の弁済を受けただけでは消滅しない。また,301 条は,「債務者は,相当の担保を供して,留置権の消滅を請求することができる」と規定しており,留置権については,債務者が相当の担保を提供して留置権の消減を請求することができる。

  • Q留置権者は債務者の同意があれば,また,質権者は質権設定者の同意があれば,いずれもそれぞれ担保物を賃貸することができる。

    A〇  298条2項本文は,「留置権者は,債務者の承諾を得なければ,留置物を使用し,賃貸し,又は担保に供することができない」と規定し,350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用寸る」と規定する。したがって,留置権者は債務者の同意があれば,また,質権者は質権設定者の同意があれば,いずれもそれぞれ担保物を賃貸することができる。

  • Q建物の賃貸人が有する不動産賃貸の先取特権は,賃借人がその建物に備之付けた動産について存在する。

    A〇  313条2項は,「建物の賃貸人の先取特権は,賃借人がその建物に備之付けた動産について存在する」と規定する。

  • Q一般の先取特権を有する債権者は,債務者がその所有物の代償として支払を受けた金銭についても,先取特権を行使することができる。

    A〇  306 条柱書は,「次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は,債務者の総財産について先取特権を有する」と規定する。したがって,一般の先取特権を有する債権者は,債務者がその所有物の代償として支払を受けた金銭についても,先取特権を行使することができる。

  • Q質権は,譲り渡すことができない物についても設定することができる。

    A×  343条は,「質権は,譲り渡すことができない物をその目的とすることができない」と規定する。したがって,質権は,譲り渡すことができない物について設定することができない。

  • Q不動産及び動産を目的とする質権設定契約は,目的物の引渡しによって効力を生ずるが,この引渡しは,簡易の引渡し又は指図による占有移転でもよい。

    AO  344 条は,「質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって, その効力を生ずる」と規定し,182条2項は,「譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には,占有権の譲渡は,当事者の意思表示のみによってすることができる」と規定する。また,184条は,「代理人によって占有をする場合において,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その第三者がこれを承諾したときは,その第三者は,占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判昭9.6.2)は,「質権の目的たる不動産が質権設定以前既に他人に賃貸しある場合に於ては,質権設定者たる貨貸人が賃借人に対して爾後質権者の為に該不動産を占有すベき旨を命じ,貨借人之を承諾することに依り並に質権は適法に設定せらるべく」としている。したがって,不動産及び動産を目的とする質権設定契約は,目的物の引渡しによって効力を生ずるが,この引渡しは,簡易の引渡し又は指図による占有移転でもよい。なお,345 条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定しており,占有改定による引渡しによっては効力を生じない。

  • Q質権により担保される債権の弁済期後であっても,質権者と質権設定者は,債務の弁済として質物を質権者に取得させることを合意することができない。 

    A×  349条は,「質権設定者は,設定行為又は債務の弁済期前の契約におい二,質権者に弁済として質物の所有権を取得させ,その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない」と規定する。したがって,質権により担保される債権の弁済期後であれば,質権者と質権設定者は,債務の弁済として質物を質権者に取得させることを合意することができる

  • Q  Aは, Bのために,AがCに対して有する債権である金銭債権を目的として,質権を設定し,Cに対して質権の設定を通知した。目的債権が保証債務によって担保されている場合,Bの質権の効力は,その保証債権に及ぶ。

    A〇  保証債務の随伴性の帰結として,目的債権が保証債務で担保されている場合,Bの質権の効力は,その保証債権に及ぶと解されている。

  • Q  Aは, Bのために,AがCに対して有する債権である金銭債権を目的として,質権を設定し,Cに対して質権の設定を通知した。Aは,第三者に対して目的債権を譲渡することができない。

    A×  判例(大判大8.8.25)は,「指名債権者が其債権を目的として質権を設定したる後,更に同債権を他人に譲渡したる場合に於て,若し質権設定の通知又は承諾が確定日附ある証書を以て為されずして債権譲渡の通知又は承諾のみ確定日附ある証書を以て為されたるときは,質権者は其質権を以て債権譲受人に対抗することを得さるに反し,譲受人は債権譲渡を以て質権者に対抗することを得るの結果として第三債務者(債権譲渡に付ては債務者)は譲受人の権利を尊重し質権の行使を拒むことを得ベし····と雖も,債権譲渡の通知又は承諾も同じく確定日附ある証書を以て為されざりしときは譲受人も其譲渡を以て質権者に対抗することを得ざれば,第三債務者に於て質権の行使を拒み得べき理由なきを以て,斯かる場合に於ては第三債務者は前に通知あり又は承諾を為したる質権の設定を尊重すべきこと当然なるに由り,之れが行使を拒むことを得ざるものと為すを至当とす」としている。したがって,Aも,第三者に対して目的債権を譲渡することができ,その優劣は,「確定日付のある証書」による「通知又は承諾」の有無によって決まる(467条2項,364条

  • Q  Aは, Bのために,AがCに対して有する債権である金銭債権を目的として,質権を設定し,Cに対して質権の設定を通知した。Cは,質権の設定の通知を受けるより前にAから目的債権について債務の一部の免除を受けていたときは,目的債権の一部が消滅したことをBに対して主張することができる。

    A〇  364 条は,「債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含起。)は,第467条の規定に従い,第三債務者にその質権の設定を通知し,又は第三債務者がこれを承諾しなければ,これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない」 と規定しており,質権の設定の通知を受けるより前に存在していた事由は,質権者に対抗寸ることができる。したがって,Cは,質権の設定の通知を受けるより前にAから目的債権について債務の一部の免除を受けていたときは,目的債権の一部が消滅したことをBに対して主張することができる。なお,通知後の事由については,481条1項又は民事執行法145条1項類推適用により,質権者に対抗することができないと解されている。

  • Q  Aは, Bのために,AがCに対して有する債権である金銭債権を目的として,質権を設定し,Cに対して質権の設定を通知した。Aは,目的債権の消滅時効の完成猶予のために必要があるときは,Cを被告として,債権存在確認の訴えを提起することができる

    A〇  147 条1項柱書は,「次に掲げる事由がある場合には,その事由が終了寸る(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては,その終了の時から6箇月を経過する)までの間は,時効は,完成しない」と規定し,同項1号は,「裁判上の請求」を挙げる。一方,366条1項は,「質権者は,質権の目的である債権を直接に取り立てることができる」と規定する。そして,判例(大判昭5.6.27)は,「債権を目的として質権を設定したる場合に於ては,質権者は其の債権を直接に取立つる権利を取得し,質権設定者は質入債権に付其の債務者に対し支払の請求を為すことを得さるは言を俟たざる所なりと雖,債権質は債権の譲渡に非ざるを以て,債権の帰属者は依然として質権設定者にして,従て,質権設定者は債権者として其の債権に付消滅時効の進行を中断(注:完成猶予〕せしむることを得るものなり······。唯,質権設定者は質権の存続する間は債務者に対し自己に支払を為すべき旨の請求を為すことを得ざる結果として,右の如き請求権の行使に因りて消滅時効を中断〔注:完成猶予〕することを得ざるべきと雖,債務者が質権設定者に対して其の債務を承認したるときは固より,質入債権に付時効中断【注:完成猶予〕の効力を生ずべきこと疑なく,又債務者と質権設定者との間に債権閔係若は其の基本たる法律関係の存否に付争う場合に於て,質権設定者が其の存在の確定を求むる訴訟を提起したる場合に於ては,質入債権に付時効中断【注:完成猶予】の効力を生ずる··.·。蓋,時効中断〔注:完成猶予]の原因たる裁判上の請求は,給付訴訟のみに限定せらるるものに非ずして,積極的確認訴訟をも包含するものなると以て,債権者が債権質の設定に因り一時債権の取立権を有せざる場合に於ても,確認訴訟に依りて其の債権の時効を中断〔注:完成猶予]せしむることは毫も之を妨げざるを以てなり」としている。したがって, Aは,目的債権の消滅時効の完成猶予のために必要があるときは,Cを被告として,債権存在確認の訴えを提起することができる。

  • Q  Aは, Bのために,AがCに対して有する債権である金銭債権を目的として,質権を設定し,Cに対して質権の設定を通知した。Bは,被担保債権及び目的債権が弁済期にある場合,被担保債権額の範囲内でCから目的債権を直接取り立て,被担保債権に充当することができる。

    A〇  366条1項は,「質権者は,質権の目的である債権を直接に取り立てることができる」と規定し,同条2項は,「債権の目的物が金銭であるときは,質権者は,自己の債権額に対応する部分に限り,これを取り立てることができる」と規定する。したがって,Bは,被担保債権及び目的債権が弁済期にある場合,被担保債権額の範囲内でCから目的債権を直接取り立て,被担保債権に充当寸ることができる。

  • Q債権である甲債権の質権者は,被担保債権の弁済期が到来するとともに,質権の目的である甲債権の弁済期が到来したときは,甲債権を直接に取り立てることができる。

    A〇  366条1項は,「質権者は,質権の目的である債権を直接に取り立てることができる」と規定する。したがって,債権である甲債権の質権者は,被担保債権の弁済期が到来するとともに,質権の目的である甲債権の弁済期が到来したときは,甲債権を直接に取り立てることができる。なお,同条3項は,「前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは,質権者は,第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において,質権は, その供託金について存在寸る」と規定する。

  • Q譲渡制限特約のある債権を質権の目的とする場合には,その特約につき質権者が悪意であっても,質権設定の効力は妨げられない。

    A〇  343条は,「質権は,譲り渡すことができない物をその目的とすることができない」と規定するが,466条2項は,「当事者が債権の譲渡を禁止し,又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という.) をしたも,債権の譲渡は,その効力を妨げられない」と規定する。人したか譲渡制限特約のある債権を質権の目的とする場合には,その1特約につき質権者が悪意であっても,質権設定の効力は妨げられない。なお,同条3項は,「前項に規定する場合には,譲渡制限の意思表示がされたことを知り,又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては,債務者は,その債務の履行を拒むことができ,かつ,譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる」と規定する。

  • Q債権者が個人である債権を質権の目的とした場合において,その質権設定を質権の目的である債権の債務者以外の第三者に対抗するには,確定日付のある証書による通知又は承諾が必要である。

    A〇  364条は,「債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含起。)は,第467条の規定に従い,第三債務者にその質権の設定を通知し,又は第三債務者がこれを承諾しなければ,これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない」と規定し,467条2項は,「前項の通知又は承諾は,確定日付のある証書によってしなければ,債務者以外の第三者に対抗することができない」と規定する。したがって,債権者が個人である債権を質権の目的とした場合において, その質権設定を質権の目的である債権の債務者以外の第三者に対抗するには,確定日付のある証書による通知又は承諾が必要である。

  • Q同一の動産について,複数の動産質権を設定することはできない。

    A×  344条は,「質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって,その効力を生ずる」と規定し,184条は,「代理人によって占有をする場合において,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その第三者がこれを承諾したときは,その第三者は,占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判昭 9.6.2)は,「質権の日的たる不動産が質権設定以前既に他人に賃貸しある場合に於ては,質権設定者たる賃貸人が賃借人に対して爾後質権者の為に該不動産を占有十べき旨を命じ,賃借人之を承諾することに依り並に質権は適法ににせらるべく」としている。すなわち,「質権の設定」に必要な「引き渡」しは,指図による占有移転(184条)でも足りるから,同一の動産について,複数の動産質権を設定することもできる。また,355条も,「同一の動産について数個の質権が設定されたときは,その質権の順位は,設定の前後による」と規定しており,同一の動産について,複数の動産質権を設定することができることを前提としている。

  • Q動産質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物を占有させることができない。

    A〇  345 条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定する。

  • Q  動産質権者は,占有している質物について必要費を支出しても,所有者にその借還を請求することはできない。

    A×  350条は,「第296条から第300条まで及び第304条の規定は,質権について準用する」と規定し,299条1項は,「留置権者は,留置物について必要費を支出したときは,所有者にその借還をさせることができる」と規定する。したがって,動産質権者は,占有している質物について必要費を支出した場合,所有者にその償還を請求することができる。

  • Q動産質権者は,被担保債権の弁済を受けないときは,正当な理由がある場合に限り,鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる

    A〇  354 条前段は,「動産質権者は,その債権の弁済を受けないときは,正当な理由がある場合に限り,鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済に充てることを裁判所に請求することができる」と規定する。

  • Q動産質権者は,被担保債権について利息を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その質権を行使することができる。

    A×  346条本文は,「質権は,元本,利息,違約金,質権の実行の費用,質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する」と規定すると規定するのみで,「動産質権者は,被担保債権について利息を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その質権を行使することができる」旨の規定は存在しない。したがって,動産質権者は,被担保債権について利息を請求する権利を有するときは,その全てについて,その質権を行使することができる。なお,375条1項本文は,「抵当権者は,利息その他の定期金を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その抵当権を行使することができる」と規定する。

  • Q  2005年1月,AはBに建物建築資金を融資し,Bの所有する甲土地に根抵当権の設定を受け根抵当権設定登記を得た。その後Bは自分自身で建物を建築することを断念し,甲土地を期間20年の約定でCに賃貸し,Cが甲土地上に乙建物を建築した。Aや,甲土地の根抵当権が実行された場合の甲土地の買受人Dに対して,Cが甲土地の賃借権を対抗できる方法はない。

    A×  387条1項は,「登記をした賃貸借は,その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし,かつ,その同意の登記があるときは,その同意をした抵当権者に対抗することができる」と規定する。したがって,Aや,甲土地の根抵当権が実行された場合の甲土地の買受人Dに対して,Cが甲土地の賃借権を対抗できる方法はある。

  • Q  2005年1月,AはBに建物建築資金を融資し,Bの所有する甲土地に根抵当権の設定を受け根抵当権設定登記を得た。その後Bは自分自身で建物を建築することを断念し,甲土地を期間20年の約定でCに賃貸し,Cが甲土地上に乙建物を建築した。Aが,甲土地の根抵当権の実行として,甲土地と一緒に乙建物の毓売を申し立てることはできない。

    A×  389条1項本文は,「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができる」 と規定する。したがってAが,甲土地の根抵当権の実行として,甲土地と一緒に乙建物の競売を申し立てることもできる。

  • Q  2005年1月,AはBに建物建築資金を融資し,Bの所有する甲土地に根抵当権の設定を受け根抵当権設定登記を得た。その後Bは自分自身で建物を建築することを断念し,甲土地を期間20年の約定でCに賃貸し,Cが甲土地上に乙建物を建築した。Aが建物の建築を想定して甲土地に根抵当権の設定を受けた場合であっても,法定地上権は成立しない。

    A〇  388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭 36.2.10)は,「民法388条により法定地上権が成立するためには,抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって,抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とする。······また被上告人が本件建物の築造を予め承認した事実があっても。······本件抵当権は本件土地を更地として評価して設定されたことが明らかであるから,民法388条の適用を認ャべきではな」いとしている,Aが建物の建築を想定して甲土地に根抵当権の設定を受けA)た場合であっても,法定地上権は成立しない。

  • Q  2005年1月,AはBに建物建築資金を融資し,Bの所有する甲土地に根抵当権の設定を受け根抵当権設定登記を得た。その後Bは自分自身で建物を建築することを断念し,甲土地を期間20年の約定でCに賃貸し,Cが甲土地上に乙建物を建築した。Aは,Cが乙建物を建築した時点以降は,BのCに対する賃料債権につき,甲土地に対する収益執行手続か抵当権に基づく物上代位手続のいずれかを自由に選択して,優先権を主張することができる。

    A×  372条は,「第296条,第304条及び第351 条の規定は,抵当権について準用する」と規定し,304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,貨貸,减失又は損傷によって債務者が受けるベき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定しており,Aは,Cが乙建物を建築した時点以降は,BのCに対する賃料債権につき,抵当権に基づく物上代位手続を選択して,優先権を主張することができる一方,371 条は,「抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」と規定しており,Bの被担保債権につき債務不履行が生じていない限り,甲土地に対する収益執行手続を選択して,優先権を主張することはできない。

  • Q  Aが所有する土地について, Bを抵当権者とする抵当権が設定され,その登記がされていた場合、Bが抵当権を実行しCが買受人としてこの土地の所有権を取得した場合,CはAに対してこの土地について所有権に基づいて引渡しを請求することができる。

    A〇  Bが抵当権を実行しCが買受人としてこの土地の所有権を取得した場合,CはAに対してこの土地について所有権に基づいて引渡しを請求することができる。

  • Q  Aが所有する土地について, Bを抵当権者とする抵当権が設定され,その登記がされていた場合、Bのために抵当権設定登記がされた後,抵当権の実行の前に,AがDとの間でこの土地の賃貸借契約を締結しその賃借権が登記された場合において,その後Bが抵当権を実行しCが買受人としてこの土地の所有権を取得したとき,Dは,Cからのこの土地についての所有権に基づく引渡しの請求に対して,賃貸借契約を理由にして拒むことができる。

    A×  387条1項は,「登記をした賃貸借は,その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし,かつ,その同意の登記があるときは,その同意をした抵当権者に対抗することができる」と規定する。したがって,Bのために抵当権設定登記がされた後,抵当権の実行の前に,AがDとの間でこの土地の賃貸借契約を締結しその賃借権が登記されただけでは,その後Bが抵当権を実行しCが買受人としてこの土地の所有権を取得したとき,Dは,Cからのこの土地についての所有権に基づく引渡しの請求に対して、契約を理由にして拒むことができない。

  • Q  Aが所有する土地について, Bを抵当権者とする抵当権が設定され,その登記がされていた場合、Bが抵当権を実行する前に,AがEとの間でこの土地の賃貸借契約を締結した場合において,その後抵当権の被担保債権について不履行があったとき,抵当権の効力は,Aが賃貸借契約に基づいてEに対して有する賃料債権で被担保債権について不履行があった後に生じたものに及ぶ。

    A〇  371 条は,「抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」と規定する。したがって,Bが抵当権を実行する前に,AがEとの間でこの土地の賃貸借契約を締結した場合において,その後抵当権の被担保債権について不履行があったとき,抵当権の効力は,Aが賃貸借契約に基づいてEに対して有する賃料債権で被担保債権について不履行があった後に生じたものに及ぶ。

  • Q  Aが所有する土地について, Bを抵当権者とする抵当権が設定され,その登記がされていた場合、Bが抵当権を実行する前に,AがFとの間でこの土地の売買契約を締結した場合において, AF間の売買契約で定めた代価を,FがBの請求に応じてBに支払ったとき,抵当権はFのために消滅する。

    A〇  378 条は,「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する」と規定する。したがって,Bが抵当権を実行する前に,AがFとの間でこの土地の売買契約を締結した場合F間の売買契約で定めた代価を,FがBの請求に応じてB)、1に支払ったとき,抵当権はFのために消滅する。

  • Q  Aが所有する土地について, Bを抵当権者とする抵当権が設定され,その登記がされていた場合、Bのために抵当権設定登記がされた後,抵当権の実行の前に,Aがこの土地の上に建物を築造した場合において, Bが土地と共にこの建物を競売したとき,Bは抵当権に基づく優先権を土地及び建物の代価について行使することができる。

    A×  389条1項は,「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができる。ただし,その優先権は,土地の代価についてのみ行使することができる」と規定する。したがって, Bのために抵当権設定登記がされた後,抵当権の実行の前に,Aがこの土地の上に建物を築造した場合において, Bが土地と共にこの建物を競売したとき,Bは抵当権に基づく優先権を土地の代価についてのみ行使することができ,建物の代価については行使することができない。

  • Q将来発生するかどうか不確実な債権について抵当権の設定登記がなされた場合,抵当権設定者は,被担保債権の不存在を理由として,抵当権者に対して,抵当権設定登記の抹消を求めることができる。

    A×  判例(最判昭33.5.9)は,「当事者間の合意によって,特定の数個の債権を一定金額の限度で担保する一個の抵当権を設定することも,また将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも,有効と解すべきであ」るとしている。したがって,将来発生するかどうか不確実な債権について抵当権の設定登記がなされた場合,抵当権設定者は,被担保債権の不存在を理由として,抵当権者に対して,抵当権設定登記の抹消を求めることができない。

  • Q金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが,結局元本が交付されなかった場合,抵当権設定者は,被担保債権の不存在を理由として,抵当権者に対して,抵当権設定登記の抹消を求めることができる。

    A〇  587条は,「消費貸借は,当事者の一方が種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取るこ上によって,その効力を生ずる」と規定する。また,587条の2第1項は,「前条の規定にかかわらず,書面でする消費貸借は,当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し,相手方がその受け取った物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することにょって,その効力を生ずる」と規定する。したがって,金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが,結局元本が交付されなかった場合,被担保債権は不存在となるから,抵当権設定者は,被担保債権の不存在を理由として,抵当権者に対して,抵当権設定登記の抹消を求めることができる

  • Q金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが,その金銭消費貸借契約が公序良俗に違反するとともに,貸金の交付が不法原因給付に当たる場合,抵当権設定者は,抵当権者に対して,抵当権設定登記の抹消を求めることができる。

    A〇  708 条本文は,「不法な原因のために給付をした者は,その給付したものの返還を請求することができない」と規定するが,判例(最判昭40.12.17)は「このような事実関係のもとにおいては,被上告人が右抵当権設定登記の抹消を求めることは,一見民法 708 条の適用を受けて許されないようであるが,他面,上告人が右抵当権を実行しようとすれば,被上告人において睹博行為が民法90条に違反することを理由としてその行為の無効,したがって被担保債権の不存在を主張し,その実行を阻止できるものというべきであり,被担保債権の存在しない抵当権の存続は法律上許されないのであるから,このような場合には,結局,民法708条の適用はなく,被上告人において右抵当権設定登記の抹消を上告人に対して請求でき百ものと解するのが相当である」としている。したがって,金銭消費貸借契約に基づく貸金債権について抵当権の設定登記がなされたが,その金銭消費貸借契約が公序良俗に違反するとともに,貸金の交付が不法原因給付に当たる場合,抵当権設定者は,抵当権者に対して,抵当権設定登記の抹消を求めることができる。

  • Q債務者A所有の不動産上にYが第一順位,Xが第二順位の抵当権の設定を受け,それぞれ設定登記を行った後,AがYに対する被担保債権をいったん弁済し,その後YがAに同額の新たな貸付を行い,抹消されていなかった第一順位の登記を合意の上新たな貸付債権の担保として流用することにした場合,Xは,Yの抵当権設定登記の抹消を求めることができない。

    A×  判例(大判昭6.8.7)は,要旨,逍滅したる抵当権の登記を他の抵当権の登記として利用する契約は無効なるものとす,としている。また,判例(大判昭8.11.7)は,「本件不動産に対し,訴外甲は第一順位の抵当権を有し,被上告人は第二順位の抵当権を有し居りたるところ,抵当権設定者たる訴外乙は,前記甲に対し債務完済したるも,其の抵当権の抹消登記は未だ之を為さざる間に,訴外丙より金1200 円を借り受け,之が担保を供与するが為,先に前記甲より返還を受けたる借用証書を利用し,右甲に於て其の債権及抵当権を訴外丙に譲渡したる形式を用いて抵当権譲渡の附記登記を為すに至りしものとす。此の事実に依れば,訴外乙は訴外丙に対する債務の為,本件不動産上に抵当権を設定したるも,其の登記を為すに当り設定登記を為すに代之,便宜右の如き抵当権譲渡の附記登記を為したるに外ならず,所謂隠慝行為なるが故に,固より第一順位の抵当権は之を有するに由無さ」としい5したがって,債務者A所有の不動産上にYが第一順位,Xが第二順位の抵当権の設定を受け,それぞれ設定登記を行った後,AがYに対する被担保債権をいったん弁済し,その後YがAに同額の新たな貸付を行い,抹消されていなかった第一順位の登記を合意の上新たな貸付債権の担保として流用することにした場合,Xは,Yの抵当権設定登記の抹消を求めることができるなお,判例(大判昭11.1.14)は,要旨,甲は丙より金円を借受け,乙に対する抵当付債務を弁済したる上,新に丙の為め,該不動産に対し抵当権を設定したるところ,偶々乙丙の債権が同一金額なりしを以て,已に消滅せる乙の債権及び抵当権を尚存するものとして之を丙に譲渡する旨の附記登記を為したる場合に,其の後,登記の記載を信じて該不動産を買受けたる丁は,丙の抵当権設定登記の欠缺を主張する正当なる利益を有せざるものとす,としている。

  • Q  Xが所有する甲不動産について、Yに対して抵当権を設定して金銭を借り入れるとともに,Aが,XのYに対する借入れ債務を担保するため,Yとの間で連帯保証契約を結んだ場合,Aが借入れ債務を全額弁済したとしても,Xは,Yに対して,抵当権設定登記の抹消を求めることはできない。

    A〇  499条は,「債務者のために弁済をした者は,債権者に代位する」と規定L,501 条1項は,「前2条の規定により債権者に代位した者は,債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」と規定する。したがって,Xが所有する甲不動産について,Yに対して抵当権を設定して金銭を借り入れるとともに,Aが,XのYに対する借入れ債務を担保するため,Yとの間で連帯保証契約を結んだ場合,Aが借入れ債務を全額弁済したとしても, AがYに代位して,Aが有していた一切の権利を行使することができるから,Xは,Yに対して,抵当権設定登記の抹消を求めることはできない。

  • Q債務者が所有する不動産に抵当権の設定登記がされ,これが存続している場合には,債務者は継続的に被担保債権に係る債務の存在を承認していることになるから,その抵当権の被担保債権については消滅時効が進行しない。

    A×  152条1項は,「時効は,権利の承認があったときは,その時から新たにその進行を始める」と規定するところ,判例(大判大6.10.29) は,「時効中断〔注:更新〕の事由たる債務の承認は,債務者に於て相手方たる債権者の債権の存在を認識するを謂うものにして,而て,其認識の方法は裁判上たると裁判外たると,将又,明示たると然示たるとは固より問う所に非ずと雖も,担手方たる債権者に対してさを為すことを要するは承認の性質上正に然らざるを得ざる所なりとす。而て,係争債権に対し一番抵当権の設定登記ありたる場合に,債務者が同一物件に付き更に他の債権者に対し二番抵当権を設定し,之が登記を為すの行為は,其行為自体に依り直に債権者に対し係争債権を承認したるものと謂うことは能わず。何となれば,登記簿上係争の債権に対し一番抵当権の設定ある物件に付き更に他の債権者に抵当権を設定せんとせば,債務者が係争債権を承認すると否とに拘わらず,苟も登記簿上一番抵当権の存在する以上は二番抵当の形式を以て之が登記を為さざる可からざるは当然にして,二番抵当権の設定登記を為したるの一事を以て直に係争債権を承認したるものと謂うこと能わざればな21277ΓGしたがって,債務者が所有する不動産に抵当権の設定登記がされ,これが存続している場合だけでは,債務者は継続的に被担保債権に係る債務の存在を承認していることにはならず,その抵当権の被担保債権の消滅時効は進行する。

  • Q債務者が所有する不動産に抵当権が設定され,その登記がされている場合,その債務者が当該不動産を10年間継続して占有したとしても, その債務者は,抵当権者に対し,抵当権の負担のない所有権を時効により取得したとして,抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない。

    A〇  162条2項は,「10年間,所有の意思をも平穩に,かつ,公然と他2人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」と規定するが,396条は,「抵当権は,債務者及び柢当権設定者に対しては,その担保才る債権と同時でなければ,時効によって消滅しない」と規定する。したがって,債務者が所有する不動産に抵当権が設定され,その登記がされている場合,その債務者が当該不動産を10年間継続して占有したとしても,その債務者は,抵当権者に対し,抵当権の負担のない所有権を時効により取得したとし,抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することはできない。なお,397 条は,「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは,抵当権は,これによって消滅する」と規定する。

  • Q債務者が所有する同一の不動産について,第一順位の抵当権と第二順位の抵当権が設定され,それぞれその旨の登記がされている場合,第一順位の抵当権の実行としての競売の結果,第一順位の抵当権者のみが配当を受けたときは,第二順位の抵当権は消滅しない。

    A×  民事執行法188条(第3章)は,「第44条の規定は不動産担保権の実行について,前章第2節第1款第2目(第81条を除く。)の規定は担保不動産競売について,同款第3目の規定は担保不動産収益執行につて準用寸る」と規定し,同法59条1項(第2章第2節第1款第2目)は,「不動産の上に存する先取特権,使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は,売却により消滅する」と規定する。したがって,第一順位の抵当権の実行としての競売の結果,第一順位の抵当権者のみが配当を受けたときは,第二順位の抵当権は消滅する。

  • Q債務者が所有する同一の不動産について,第一順位の抵当権と第二順位の抵当権が設定され,それぞれその旨の登記がされている場合,第一順位の抵当権の被担保債権に係る債務を債務者が弁済したときは,債務者は,弁済による代位によって第一順位の抵当権を取得する。

    A×  499条は,「債務者のために弁済をした者は,債権者に代位する」と規定Lし501 条1項は,「前2条の規定により債権者に代位した者は,債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」と規定する。したがって,第一順位の抵当権の被担保債権に係る債務を債務者自身が弁済したときは,債務者は,弁済による代位によって第一順位の抵当権を取得しない。

  • Q債務者が所有する不動産に抵当権が設定されている場合,その被担保債権に係る債務について他の者により併存的債務引受がされたときは,当該債務引受によって生じた債権も,その抵当権の被担保債権となる。

    A×  470条1項は,「併存的債務引受の引受人は,債務者と連帯して,債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する」と規定するが,当該債務引受によって生じた債権は,債務者が所有する不動産に設定された抵当権の被担保債権とは異なるものであるから,その抵当権の被担保債権とはならない

  • Q保証人の求償権は,主たる債務者が弁済しないときに保証人が弁済することによって生じる将来の債権であるから,保証人の求償権を被担保債権として抵当権を設定することはできない。

    A×  判例(最判昭33.5.9)は,「原審の適法に確定した事実によれば,上告人が被上告人に対し、被上告人が将来その保証債務の履行により訴外会社の被上告人に対し負担十べき求償債務を上告人において重骨的に引受け,その支払の責に任ずる旨を約し,その限度を上告人の被上告人に対する別途金10万円の債務を加えて金100 万円と協定し,右金100万円の債務を担保するため本件抵当権を設定することを約したものであるが,右抵当権の設定登記に当り,当事者合意のうえ,上告人が恰も被上告人より金100 万円を借り受け,その債務を担保するため抵当権を設定するが如き旨の抵当権設定登記手続をなしたものであるというのである。然らば当事者は真実抵当権を設定する意思の下に抵当権設定を約したものであって,本件抵当権設定について所論の如き虚偽表示が存するものではない。しかし,本件被担保債権の大部分は将来成立すべき条件付債権であるのに,恰も上告人が被上告人より金100万円を借り受けた如きものとして抵当権設定登記手続をなしたことは,この点について事実と登記の間に不一致が存するわけであるが,かかる場合でも当事者が真実その設定した抵当権を登記する意思で登記手続を終えた以上,この登記を以て当然に無効のものと解すべきものではなく,抵当権設定者は抵当権者に対し該登記が事実に吻合しないことを理由として,その抹消を請求することはできないものと云わねばならない」としいる。したがって,保証人の求償権を被担保債権として抵当権を設定することもできる。→

  • Q土地を賃借し,その土地上に建物を所有している者が,その建物に抵当権を設定した場合であっても,土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したときは,土地の賃貸人は,その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができる。

    A×  398条は,「地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は,その権利を放棄しても,これをもって抵当権者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大判大14.7.18)は,「建物の抵当権設定者が元他人の土地に付滴法に賃借権を有せしが為,其の地上に建物を建設し之を抵当と為したる場合に於て,其の後賃貸人たる土地所有者と合意し以て賃貸借契約を解除したりとするも,右賃貸借の終了は抵当権者に対抗するを得ざるものと解すベく,従て抵当権の実行に依り該建物の競落したる者は,建物の所有権を取得すると同時に,土地の所有者に対し賃借人として其儘土地を占有使用し得る権利あるものと解すべきなり。蓋し,斯の如く解するに非されば土地と建物と其所有者を異にせる場合に建物を抵当と為すことは実際上行われ難きに至るべく,我法制上建物のみの抵当を認めたる立法の趣旨に副わざることとなるベければなり。尚,此の事実たるや民法第 388条,第398条の規定の趣旨より推すも察するに難からず」としている。したがって,土地を賃借し,その土地上に建物を所有している者が,その建物に抵当権を設定した場合,土地の賃貸人が賃借人との合意により賃貸借契約を解除したときであっても,土地の賃貸人は,その解除による賃借権の消滅を抵当権者に対抗することができない。

  • Q抵当不動産を買い受けた第三者が,抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する。

    A〇  378条は,「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が,抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する」と規定する。

  • Q抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば,抵当権設定者は,抵当権者に対し,時効による抵当権の消滅を主張することができる。

    A×  166条2項は,「債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から 20年間行使しないときは,時効によって消滅する」と規定するが,396条は,「抵当権は,債務者及び抵当権設定者に対しては,その担保する債権と同時でなければ,時効によって消滅しない」と規定する。したがって,抵当権を実行することができる時から20年が経過しても,抵当権設定者は,抵当権者に対し,時効による抵当権の消滅を主張することができない。

  • Q  A所有の建物について,Bが第一順位の抵当権を,Cが第二順位の抵当権をそれぞれ有している場合,BがAからその建物を買い受けた場合であっても,第一順位の抵当権は消滅しない。

    A〇  179条1項は,「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は,消滅する。ただし,その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」と規定する。したがって, A所有の建物について,Bが第一順位の抵当権を,Cが第二順位の抵当権をそれぞれ有している場合,建物がCの「権利の目的であるとき」にあたるから,BがAからその建物を買い受けた場合であっても,第一順位の抵当権は消滅しない。

  • Q抵当権は,目的物の交換価値を把握する権利であるから,被担保債権額が抵当不動産の価格を上回っていても,物上保証人が抵当不動産の価格に相当する額を弁済すれば,抵当権は消滅する。

    A×  判例(大判明 42.3.12)は,「抵当権は性質上不可分のものなれば,設定当時に於ける債権額元利の弁済を受くるにあらざれば債権者は其抹消登録を為すべき義務なきものなり。而して,債権者に於て債権一部の弁済を受けたときは,録抹消又は変更を為すべき規定なきは勿論,復,其法理あるなし-Lしたがって,被担保債権額が抵当不動産の価格を-(上回っている場合,物上保証人が抵当不動産の価格に相当する額を弁済しても,被担保債権額を弁済しなければ,抵当権は消滅しない。

  • Q抵当権の被担保債権について不履行があった場合であっても,抵当権の効力は,その後に生じた抵当不動産の果実には及ばない。

    A×  371 条は,「抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及」と規定する。

  • Q抵当権者が第三取得者に対して代価弁済の請求をした場合,第三取得者は,その請求に応じなければならない。

    A×  378 条は,「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が,抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する」と規定する。したがって,抵当権者が第三取得者に対して代価弁済の請求をした場合でも,第三取得者は,その請求に応じなければならないわけではない。

  • Q第一順位の抵当権者の被担保債権が弁済により消滅した場合,第二順位の抵当権者は,消滅した第一順位の抵当権の抹消登記手続を求めることができる。

    A〇  判例(大判大8.10.8)は,「既に弁済に因りて消滅に帰したる本件抵当権の設定登記が尚依然として登記簿上に存在するに於ては,被上告人の如く登記簿上次順位に在る抵当権者は,形式に於て上告人の次位に在るが為めに,抵当権の行使其他諸般の取引上種々なる障害を受くることを免がれざるは当然なるを以て,被上告人は上告人に対して其消滅せる抵当権の設定登記の抹消を請求するの利益を有し、又上告人は其請求に応じて抹消手続を為すの義務を有する」としている。したがって,第一順位の抵当権者の被担保債権が弁済により消滅した場合,第二順位の抵当権者は,消滅した第一順位の抵当権の抹消登記手続を求めることができる。

  • Q  AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合、甲土地の従物である石灯能が本件抵当権の設定前に備え付けられていた場合,本件抵当権の効力は,その石灯施には及ばない。

    A×  370条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定するところ,判例(最判昭44.3.28【百選185】)は,「本件石灯能および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり,本件植木および取り外しの困難な庭石等は右宅地の構成部分であるが,右従物は本件根抵当権設定当時右宅地の常用のためこれに付属せしめられていたものである··して,本件宅地の根抵当権の効力は,右構成部分に及ぶことはもち従物にも及び······,この場合右根抵当権は本件宅地に対する根抵当権設定登記をもって,その構成部分たる右物件についてはもちろん,抵当権の効力から除外する等特段の事情のないかぎり,民法 370条により従物たる右物件についても対抗力を有するものと解するのが相当である」としているしたがって,甲土地の従物である石灯能が本件抵当権の設定前に備え付けられていた場合,本件抵当権の効力は,その石灯能にも及ぶ。

  • Q  AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合、Cが甲土地をDに賃貸し,さらにDが甲土地をEに転貸したときは,DをCと同視することを相当とする場合を除き,Aは, Dが取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

    A〇  372条は,「第296条,第304条及び第351 条の規定は,抵当権について準用する」と規定し,304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,减失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定するところ,判例(最決平12.4.14)は,「民法372 条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する『債務者』には,原則として,抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし,所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し,抵当不動産の賃借人は,このような責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても,これを『債務者』に含めることはできない。また,転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると,正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも,所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得す心き転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである」としいる。したがって,Cが甲土地をDに賃貸し,さらにDが甲土地をEに転貸したときは,DをCと同視することを相当とする場合を除き,Aは,Dが取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

  • Q  AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合、本件抵当権が根抵当権でない場合において,AがBに対して被担保債権として元本債権のほか3年分の利息債権を有しているときは,Cは,Aに対して,元本債権のほかその最後の2年分の利息債権を弁済すれば,本件抵当権を消滅させることができる。

    A×  375条1項本文は,「抵当権者は,利息その他の定期金を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その抵当権を行使することができる」と規定するが,判例(大判大 4.9.15)は,要旨,抵当権設定者又は抵当不動産の第三取得者は,抵当権者に対し,元本債権と共に満期と為りたる定期金の全額を弁済するに非ざれば,抵当権の逍滅を原因として之が登記抹消を請求する権利なきものとす,としている。したがって,本件抵当権が根抵当権でない場合において, AがBに対して被担保債権として元本債権のほか3年分の利息債権を有しているときは,Cは,Aに対して,元本債権のほかその最後の2年分の利息債権を弁済するだけでは,本件抵当権を消滅させることができない。

  • Q  AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合、被担保債権の弁済期が到来した場合であっても,Cは, Aに対し,本件抵当権が実行される前に,あらかじめ求償権を行使することはできない。

    A〇  372 条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定するところ,351 条は,「他人の債務を担保するため質権を設定した者は,その債務を弁済し,又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは,保証債務に関する規定に従い,債務者に対して求償権を有する」と規定する。一方,460 条柱書は,「保証人は,主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において,次に掲げるときは,主たる債務者に対して,あらかじめ,求償権を行使することができる」と規定し,同条2号本文は,「債務が弁済期にあるとき」を挙げる。そして,判例(最判平 2.12.18)は,「債務者の委託を受けてその者の債務を担保するため抵当権を設定した者(物上保証人)は,被担保債権の弁済期が到来したとしても,債務者に対してあらかじめ求償権を行使することはできないと解するのが相当である。けだし,抵当権については,民法372条の規定によって同法351条の規定が準用されるので,物上保証人が右債務を弁済し,又は抵当権の実行により右債務が消滅した場合には,物上保証人は債務者に対して求償権を取得し,その求償の範囲については保証債務に関する規定が準用されることになるが,右規定が債務者に対してあらかじめ求償権を行使することを許容する根拠となるものではなく,他にこれを許容する根拠となる規定もないからである。なお,民法 372 条の規定によって抵当権について準用される同法 351 条の規定は,物上保証人の出捐により被担保債権が消滅した場合の物上保証人と債務者との法律関係が保証人の弁済により主債務が消滅した場合の保証人と主債務者との法律関係に類似することを示すものであるということができる。ところで,保証の委託とは,主債務者が債務の履行をしない場合に,受託者において右債務の履行をする責に任ずることを内容とする契約を受託者と債権者との間において締結することについて主債務者が受託者に委任することであるから,受託者が右委任に従った保証をしたときには,受託者は自ら保証債務を負担することになり,保証債務の弁済は右委任に係る事務処理により生ずる負担であるということができる。これに対して,物上保証の委託は,物権設定行為の委任にすぎず,債務負担行為の委任ではないから,受託者が右委任に従って抵当権を設定したとしても,受託者は抵当不動産の価額の限度で責任を負担するものにすぎず,抵当不動産の売却代金による被担保債権の消滅の有無及びその範囲は,抵当不動産の売却代金の配当等によって確定するものであるから,求償権の範囲はもちろんその存在すらあらかじめ確定することはできず,また,抵当不動産の売却代金の配当等による被担保債権の消滅叉は受託者のする被担保債権の弁済をもって委任事務の処理と解することもできないのである。したがって,物上保証人の出捐によって債務が消滅した後の求償関係に類似性があるからといって,右に説示した相違点を無視して,委託を受けた保証人の事前求償権に関する民法 460 条の規定を委託を受けた物上保証人に類推適用することはできないといわざるをえない」としているしたがって,被担保債権の弁済期が到来した場合であっても,Cは,Aに対し,本件抵当権が実行される前に,あらかじめ求償権を行使することはできない。

  • Q  AのBに対する債権を被担保債権として,C所有の甲土地について抵当権(以下「本件抵当権」という。)が設定され,その旨の登記がされている場合、本件抵当権の登記がされた後に,CがDに対し甲土地を賃貸し,Dが甲土地上に乙建物を建築して所有する場合において,Dが甲土地の占有についてAに対抗することができる権利を有しないときは,Aは, Dの承諾の有無にかかわらず,甲土地及び乙建物を一括して競売することができる。

    A〇  389条1項本文は,「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたとき仕,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができる」と規定し,同条2項は,「前項の規定は,その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には,適用しな」と規定する。したがって,本件抵当権の登記がされた後に,CがDに対し甲土地を賃貸し,Dが甲土地上に乙建物を建築して所有する場合において, Dが甲土地の占有についてAに対抗することができる権利を有しないときは,Aは,Dの承諾の有無にかかわらず,甲土地及び乙建物を一括して競売することができる。

  • Q抵当権者は,目的物が第三者の行為により滅失した場合,物上代位により,所有者がその第三者に対して有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる。

    A〇  372 条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定し,304条1項本文は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる」と規定する。したがって,抵当権者は目的物が第三者の行為により滅失した場合,物上代位により,所有者がその第三者に対して有する損害賠償請求権から優先弁済を受けることができる

  • Q一人の者が所有する互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物が工事により1棟の丙建物となった場合において,甲建物と乙建物とにそれぞれ抵当権が設定されていたときは,それらの抵当権は,丙建物のうちの甲建物と乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。

    A〇  判例(最判平6.1.25)は,「互いに主従の関係にない甲,乙2棟の建物が,その間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合においても,これをもって,甲建物あるいは乙建物を目的として設定されていた抵当権が消滅することはなく,右抵当権は,丙建物のうちの甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続すると解するのが相当である。けだし,右のような場合,甲建物又は乙建物の価値は,丙建物の価値の一部として存続しているものとみるべきであるから,不動産の価値を把握することを内容とする抵当権は,当然に消滅するものではなく,丙建物の価値の一部として存続していろ甲建物又は乙建物の価値に相当する各建物の価格の割合に応じた持分の上に存続するものと考えるべきだからである」としている。

  • Q借地上の建物について抵当権が設定された場合,抵当権の効力は,敷地の賃借権に及ぶことはない。

    A×  判例(最判昭 40.5.4【百選I86】)は,「土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により,競落人が該建物の所有権を取得した場合には,民法612条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき,従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり,右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である····。けだし,建物を所有するために必要な敷地の賃借権は,右建物所有権に付随し,これと一体となってーの財産的価値を形成しているものであるから,建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである」としている。したがって,借地上の建物について抵当権が設定された場合,抵当権の効力は,敷地の賃借権に及ぶ。

  • Q物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約は,無効である。

    A×  不動産登記法83条1項柱書は,「先取特権,質権若しくは転質又は抵当権の登記の登記事項は,第59条各号に掲げるもののほか,次のとおりとする」と規定し,同項1号は,「債権額(一定の金額を目的としない債権については, その価額)」を挙げる。したがって,物の引渡請求権を担保するために抵当権を設定する契約も,有効であることが前提とされている。物の引渡請求権も,損害賠償請求権に転化することにより被担保債権となり得るからである。

  • Q後日発生すべき貸付金債権を担保するために抵当権を設定する契約がされ,その旨の登記がされた後にその貸付金債権が生じた場合,抵当権はその債権を有効に担保する。

    A〇  判例(最判昭33.5.9)は,「当事者間の合意によって,特定の数個の債権を一定金額の限度で担保する一個の抵当権を設定することも,また将来発生の可能性のある条件付債権を担保するため抵当権を設定することも,有効と解すべきであ」るとしている。したがって,後日発生すべき貸付金債権を担保するために抵当権を設定する契約がされ,その旨の登記がされた後にその貸付金債権が生じた場合,抵当権はその債権を有効に担保する。

  • Q土地に抵当権が設定された後にその土地上に建物が築造された場合,抵当権者は,抵当権が設定されていない当該建物をその土地とともに一括して競売することができる

    A〇  389条1項本文は,「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができる」 と規定する。

  • Q甲土地の所有権が自己にあると過失なく信じて10年間その占有を継続した者は,甲土地上の抵当権の存在につき悪意であったときは,甲土地の所有権を時効取得することができない。

    A×  162条2項は,「10年間,所有の意思をもって,平穩に,かつ,公然と他人の物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,かつ,過失がなかったときは,その所有権を取得する」と規定するところ,判例(最判昭43.12.24)は,「民法162条2項にいう占有者の普意·無過失とは,自己に所有権があるものと信じ,かつ,そのように信じるにつき過失がないことをいい,占有の目的物件に対し抵当権が設定されていること,さらには,その設定登記も経由されていることを知り,または,不注意により知らなかったような場合でも,ここにいう善意·無過失の占有というを妨げないものと解すべきである」としているしたがって,甲土地の所有権が自己にあると過失なく信じて 10年間その占有を継続した者は,甲土地上の抵当権の存在につき悪意であったときでも,甲土地の所有権を時効取得することができる。

  • Q  Aが甲土地を賃借したが,その対抗要件を具備しない間に,甲土地にBのための抵当権が設定されてその登記がされた。Aは,この登記がされた後,賃借権の時効取得に必要とされる期間,甲土地を継続的に用益したとしても,競売により甲土地を買い受けたCに対し,賃借権を時効により取得したと主張して,これを対抗することができない。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法·····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判昭36.7.20)は,要旨,不動産の取得時効が完成しても,その登記がなければ,その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが,第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には,その第三者に対し,登記を経由しなくとも時効取得をもって対抗しうるものと解すべきである,としている。しかし,605条は,「不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる」と規定するところ,判例(最判平23.1.21【百選148】)は,「抵当権の目的不動産につき賃借権を有する者は,当該抵当権の設定登記に先立って対抗要件を具備しなければ,当該抵当権を消滅させる競売や公売により目的不動産を買い受けた者に対し,賃借権を対抗することができないのが原則である。このことは,抵当権の設定登記後にその目的不動産について賃借権を時効により取得した者があったとしても,異なるところはないというペきである。したがって,丕動産につき賃借権を有する者がその対抗要件を具備しない間に,当該不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合,上記の者は,上記登記後,貨借権の時効取得に必要とされる期間,当該不動産を継続的に用益したとしても,競売又は公売により当該不動産を買い受けた者に対し,賃借権を時効により取得したと主張して,これを対抗することはできないことは明らかである」としている。したがって, Aが甲土地を賃借したが,その対抗要件を具備しない間に,甲土地にBのための抵当権が設定されてその登記がされた場合において,Aが,この登記がされた後,賃借権の時効取得に必要とされる期間,甲土地を継続的に用益したとしても,競売により甲土地を買い受けたCに対し,賃借権を時効により取得したと主張して,これを対抗することができない。

  • Q  AがB所有の甲土地を占有して取得時効が完成した後,所有権移転登記がされることのないまま,甲土地にCのための抵当権が設定されてその登記がされた。Aがその後引き続き時効取得に必要とされる期間,甲土地の占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を援用した場合は,AがCの抵当権の存在を容認していたときであっても,Cの抵当権は消滅する。

    A×  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法······その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(最判平24.3.16【百選I58】)は,次のとおり判示している。「不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消減を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者は,上記不動産を時効取得し,その結果,上記抵当権は消減すると解するのが相当である。その理由は,以下のとおりである。」「取得時効の完成後,所有権移転登記がされないうちに,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了したならば,占有者がその後にいかに長期間占有を継続しても抵当権の負担のない所有権を取得することができないと解することは,長期間にわたる継続的な占有を占有の態様に応じて保護寸べきものとする時効制度の趣旨に鑑みれば,是認し難いというべきである。」「そして,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者に上記不動産が譲渡され,その旨の登記がされた場合において,占有者が,上記登記後に,なお引き続き時効取得に要すろ期間占有を継続したときは,占有者は,上記第三者に対し,登記なくして時効取得を対抗し得るものと解されるところ····,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者が上記不動産につき抵当権の設定を受け,その登記がされた場合には,占有者は,自らが時効取得した不動産につき抵当権に上る制限を受け,これが実行されると自らの所有権の取得自体を買受人に対抗することができない地位に立たされるのであって,上記登記がされた時から占有者と抵当権者との間に上記のような権利の対立関係が生ずるものと解され,かかる事態は,上記不動産が第三者に譲渡され,その旨の登記がされた場合に比肩するということができる。また,上記判例によれば,取得時効の完成後に所有権を得た第三者は,占有者が引き続き占有を継続した場合に,所有権を失うことがあり,それと比べて,取得時効の完成後に抵当権の設定を受けた第三者が上記の場合に保護されることとなるのは,不均衡である。」したがって, AがB所有の甲土地を占有して取得時効が完成した後,所有権移転登記がされることのないまま,甲土地にCのための抵当権が設定されてその登記がされた場合において,Aがその後引き続き時効取得に必要とされる期間,甲土地の占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を援用した場合であっても,AがCの抵当権の存在を容認していたときは,Cの抵当権は消滅しない。

  • Q債務の弁済と,当該債務の担保として設定された抵当権の設定登記の抹消登記手続とは,同時履行の関係に立つ。

    A×  533条は,「双務契約の当事者の一方は,相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは,自己の債務の履行を拒むことができる。ただし,相手方の債務が弁済期にないときは,二の限りでない」と規定するところ,判例(最判昭 57.1.19)は,「債務の弁済と該債務担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは,前者が後者に対し先展行の関係にあるものであって,同時履行の関係に立つものではないと解すべきである」としている。

  • Q判例によれば,債務者が破産した後であっても,動産売買先取特権に基づく物上代位権も抵当権に基づく物上代位権も行使できる。

    A〇  判例(最判昭59.2.2)は,「債務者が破産宣告決定を受けた場合においても,その効果の実質的内容は,破産者の所有財産に対する管理処分権能が剥奪されて破産管財人に帰属せしめられるとともに,破産債権者による個別的な権利行使を禁止されることになるというにとどまり,これにより破産者の財産の所有権が破産財団又は破産管財人に譲渡されたことになるものではなく,これを前記一般債権者による差押の場合と区別すべき積極的理由はない。したがって,先取特権者は,債務者が破産宣告決定を受けた後においても,物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である」としており,抵当権に基づく物上代位権についても同様に解されている。したがって,債務者が破産した後であっても,動産売買先取特権に基づく物上代位権も抵当権に基づく物上代位権も行使できる。

  • Q判例によれば,債務者が第三者に対して有する賃料債権につき,債務者の一般債権者が差押えを行ったとしても,抵当権は優先弁済権を第三者に対抗できるから,配当要求の終期までに設定登記をして物上代位の手続をとれば,抵当権者は物上代位権を行使して,一般債権者に優先することができる

    A× 判例(最判平10.3.26)は,「一般債権者による債権の差押えの処分禁止効は差押命令の第三債務者への送達によって生ずるものであり,他方,抵当権者が抵当権を第三者に対抗するには抵当権設定登記を経由することが必要であるから,債権について一般債権者の押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には,両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命合の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ,右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記上り先であれば,抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである」るとしている。したがって,債務者が第三者に対して有する賃料債権につき,債務者の一般債権者が差押えを行った場合,一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達までに設定登記をしなければ,抵当権者は物上代位権を行使して,一般債権者に優先することができない。

  • Q目的物の売買代金に対して,動産売買先取特権に基づく物上代位のみならず,抵当権に基づく物上代位も明文で認められており,解釈で否定することはできない。

    A×  304 条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,减失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定し,372 条は,「第296条,第304条及び第351 条の規定は,抵当権について準用する」と規定する。したがって,目的物の売買代金に対して,動産売買先取特権に基づく物上代位のみならず,抵当権に基づく物上代位も明文で認められている。もっとも,抵当権は登記を備之れば第三取得者に対抗できること,抵当権者が売却代金から優先弁済を受けるには代価弁済の制度(378条)を利用できることから,目的物の売買代金への物上代位を否定する解釈も存在しており,解釈で否定することはできないとはいえない。

  • Q判例によれば,抵当目的不動産の賃料債権に対する物上代位は,賃料債権を生じる賃貸借契約が,抵当権設定登記後に設定された場合にのみ可能である。

    A×  判例(最判平元.10.27 【百選I87】)は,訴外甲が本件建物を賃貸した後,被告との間で,本件建物につき被告を権利者とする根抵当権設定契約を結びその登記を了したという事案において,「抵当権の日的不動産が賃貸された場合においては,抵当権者は,民法372条,304条の規定の趣旨に従い,目的不動産の賃借人が供託した賃料の還付請求権についても抵当権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし,民法372 条によって先取特権に関する同法 304 条の規定が抵当権にも準用されているところ,抵当権は,目的物に対する占有を抵当権設定者の下にとどめ,設定者が目的物を自ら使用し又は第三者に使用させることを許寸性質の担保権であるが,抵当権のこのような性質は先取特権と異なるものではないし,抵当権設定者が目的物を第三者に使用させることによって対価を取得した場合に,右対価について抵当権を行使することができるものと解したとしても,抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならないから,前記規定に反してまで目的物の賃料について抵当権を行使することができないと解すベき理由はなく,また賃料が供託された場合には,賃料債権に準ずるものとして供託金還付請求権について抵当権を行使することができるものというベきだからである」としている。したがって,抵当目的不動産の賃料債権に対する物上代位は,賃料債権を生じる賃貸借契約が,抵当権設定登記前に設定された場合でも可能である。

  • Q請負工事に用いられた動産の売主には,請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対しても,動産売買先取特権に基づく物上代位権の行使が認められる場合がある。

    A〇  判例(最決平10.12.18 【百選I81】)は,「動産の買主がこれを他に転売することによって取得した売買代金債権は,当該動産に代わるものとして動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使の対象となる(民法 304条)。これに対し,動産の買主がこれを用いて請負工事を行ったことによって取得する請負代金債権は,仕事の完成のために用いられた材料や労力等に対する対価をすべて包含するものであるから,当然にはその一部が右動産の転売による代金債権に相当するものということはできない。したがって,請負工事に用いられた動産の売主は,原則として,請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産壳買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが,請負代企全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には,右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができると解するのが相当である」としている。したがって,請負工事に用いられた動産の売主には,請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対しても,動産売買先取特権に基づく物上代位権の行使が認められる場合がある。

  • Q  AのBに対する金銭債権を担保するために,BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された場合におけるAの物上代位権の行使に関して、Bの一般債権者DがBのCに対する賃料債権を差し押さえた後にAのための抵当権設定登記がされた場合,Aは,同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。

    A× 判例(最判平10.3.26)は,「一般債権者による債権の差押えの処分禁止効は差押命令の第三債務者への送達によって生ずるものであり,他方,抵当権者が抵当権を第三者に対抗するには抵当権設定登記を経由することが必要であるから,債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押之が競合した場合には,両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命合の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ,右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記上り先であれば,抵当権者は配当を受けることができないと解すべきであるとしている。したがって,Bの一般債権者DがBのCに対する賃料債権を差し押さえた後にAのための抵当権設定登記がされた場合,Aは,同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができない。

  • Q  AのBに対する金銭債権を担保するために,BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された場合におけるAの物上代位権の行使に関して、Aのために抵当権設定登記がされた後にCに対する賃料債権がBからEに譲渡されてその第三者対抗要件が具備された場合,Aは,同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる

    A〇  判例(最判平10.1.30【百選188】)は,次のように判示している「民法372 条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は,主として,抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから,右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は,右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため,差押えを物上代位権行使の要件とし,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り,右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして,二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。」「右のような民法 304条1項の趣旨目的に照らすと,同項の『払渡又八引渡』には債権譲渡は含まれず,抵当権者は,物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても,自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)民法304条1項の払渡又^引渡』という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし,物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ,(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ,弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから,抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず,(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ,(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば,抵当権設定者は,抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが,このことは抵当権者の利益を不当に害するものというベきだからである。」したがって, Aのために抵当権設定登記がされた後にCに対する賃料債権がBからEに譲渡されてその第三者対抗要件が具備された場合,Aは,同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる

  • Q  AのBに対する金銭債権を担保するために,BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された場合におけるAの物上代位権の行使に関して、Aのために抵当権設定登記がされた後にBの一般債権者下がCに対する既発生の賃料債権を差し押さえ,その債権をFに転付する旨の命合が効力を生じた場合,Aは,同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができる。

    A×  判例(最判平14.3.12)は,「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても,転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは,転付命令の効力を妨げることはできず,差押命合及び転付命令が確定したときには,転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ,抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。けだし,転付命合は,金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として,被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって,転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として,差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項,160条),他方,抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには,自ら被転付債権を差し押さえることを要し·····,この差押えは債権執行における差押之と同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段,2項,194条),同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば,抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はな<,これを反対に解するときは,転付命合を規定した趣旨に反することになるからである」としている。したがって, Aのために抵当権設定登記がされた後にBの一般債権者FがCに対する既発生の賃料債権を差し押さえ,その債権をFに転付する旨の命令が効力を生じた場合,Aは,同じ賃料債権を差し押さえて優先弁済を受けることができない。

  • Q  AのBに対する金銭債権を担保するために,BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された場合におけるAの物上代位権の行使に関して、Aのために抵当権設定登記がされるより前にCがBに対して金銭を貸し付けていた場合,Aが賃料債権を差し押さえたときは,Cは,その貸金債権の弁済期が差押え後に到来するものであっても,当該貸金債権と賃料債権との相殺をもってAに対抗することができる。

    A〇  判例(最判平13.3.13)は,「抵当権者が物上代位権を行使して貨料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して收得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというベきであるからである」としている。したがって, Aのために抵当権設定登記がされるより前にCがBに対して金銭を貸し付けていた場合,Aが賃料債権を差し押さえたときは,Cは,その貸金債権の弁済期が差押え後に到来するものであっても,当該貸金債権と賃料債権との相殺をもってAに対抗することができる

  • Q  AのBに対する金銭債権を担保するために,BがCに賃貸している建物を目的とする抵当権が設定された場合におけるAの物上代位権の行使に関して、Bの承諾を得てCがGに建物を転貸した場合,Aは,建物の賃貸借により生ずる果実であるCのGに対する賃料の債権を差し押さえることができる。

    A×  判例(最決平12.4.14)は,「民法372 条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する『債務者』には,原則として,抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すベきである。けだし,所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し,抵当不動産の賃借人は,このような責任を負担するものではな<,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても,二れを『債務者』に含めることはできない。また,転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると,正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも,所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであろなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得十ベき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである」としている。したがって,Bの承諾を得てCがGに建物を転貸した場合であっても,Aは,CとGを同視することを相当とする場合を除き,建物の賃貸借により生ずる果実であるCのGに対する賃料の債権を差し押さえることができない。

  • Q動産売買の先取特権を有する者は,債務者が第三者に先取特権の目的物を売却した場合,その転売代金債権について,物上代位権を行使することができる。

    A〇  判例(最決平10.12.18【百選I81】)は,「動産の買主がこれを他に転売することによって取得した売買代金債権は,当該動産に代わるものとして動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使の対象となる(民法304条)」としている。したがって,動産売買の先取特権を有する者は,債務者が第三者に先取特権の目的物を売却した場合,その転売代金債権について,物上代位権を行使することができる

  • Q動産売買の先取特権を有する者は,物上代位権行使の目的である債権について,一般債権者が差押えをした後であっても,物上代位権を行使することができる。

    A〇  判例(最判昭60.7.19【百選I82】)は,「民法304条1項但書において,先取特権者が物上代位権を行使するためには物上代位の対象となる金銭その他の物の払渡又は引渡前に差押をしなければならないものと規定されている趣旨は,先取特権者のする右差押によって,第三債務者が金銭その他の物を債務者に払い渡し又は引き渡すことを禁止され,他方,債務者が第三債務者から債権を取立て又はこれを第三者に譲渡することを禁止される結果,物上代位の目的となる債権(以下目的債権』という。)の特定性が保持され,これにより,物上代位権の効力を保全せしめるとともに,他面目的債権の弁済をした第三債務者又は目的債権を譲り受け若しくは目的債権につき転付命令を得た第三者等が不測の損害を被ることを防止すようとすることにあるから,且的債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは,その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではないと解すべきである」としている。したがって,動産売買の先取特権を有する者は,物上代位権行使の目的である債権について,一般債権者が差押えをした後であっても,物上代位権を行使することができる。

  • Q抵当権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても,それより前に抵当権が設定され,第三者に対する対抗要件が備えられていたならば,抵当権者は,自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

    A〇  判例(最判平10.1.30【百選I88】)は,次のように判示している「民法372 条において準用する 304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は,主として,抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから,右債権の債務者(以下『第三債務者』という。)は,右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下『抵当権設定者』という。)に弁済をしても弁済によろ目的債権の消減の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため,差押えを物上代位権行使の要件とし,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り,右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして,二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。」「右のような民法304条1項の趣旨目的に照らすと,同項の『払渡又引渡』には債権譲渡は含まれず,抵当権者は,物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備之られた後においても,自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)民法304条1項の『払渡又ハ引渡』という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし,物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ,(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ,弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから,抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず,(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ,(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば,抵当権設定者は,抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが,このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。」したがって,抵当権に基づく物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた場合であっても,それより前に抵当権が設定され,第三者に対する対抗要件が備えられていたならば,抵当権者は,自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

  • Q抵当権者は,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き,その賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

    A〇  判例(最決平12.4.14)は,「民法372 条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する『債務者』には,原則として,抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし,所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し,抵当不動産の賃借人は,このような責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても,これを『債務者』に含めることはできない。また,転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると,正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも,所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである」としている。したがって,抵当権者は,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き,その賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

  • Q抵当権者が,物上代位権を行使して,抵当不動産の賃貸借契約に基づく未払の賃料債権の全額を差し押えた場合,当該不動産の賃借人と賃貸人の間で敷金が授受されていて,かつ,賃貸借契約が終了し,賃借人が不動産を明け渡したとしても,敷金は未払の賃料に充当されない。

    A×  622 条の2第1項柱書は,「賃貸人は,敷金····を受け取っている場合において,次に掲げるときは,賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」と規定し,同条1号は,「賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき」を挙げるところ,判例(最判平14.3.28)は,「これを賃料債権等の面からみれば,目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになる。このような敷金の充当による未払賃料等の消滅は,敷金契約から発生する効果であって,相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないから,民法511 条によって上記当然消滅の効果が妨げられないことは明らかである。また,抵当権者は,物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前は,原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであるから,抵当不動産の所有者等は,賃貸借契約に付随する契約として敷金契約を締結するか否かを自由に決定することができる。したがって,敷金契約が締結された場合は,賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり,このことを抵当権者に主張することができるというベきである。以上によれば,敷金が授受された賃貸借契約に係る貨料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し終えた場合においても,当該貨貸借契約が終了し,目的物が明け渡されたときは,賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消滅するというべきであ」るとしているしたがって,抵当権者が,物上代位権を行使して,抵当不動産の賃貸借契約に基づく未払の賃料債権の全額を差し押えた場合であっても,当該不動産の賃借人と賃貸人の間で敷金が授受されていて,かつ,賃貸借契約が終了し,賃借人が不動産を明け渡したときは,敷金は未払の賃料に充当される。

  • Q動産売買の先取特権者は,一般債権者が物上代位権行使の目的となる債権を差し押さえた後は,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。

    A×  判例(最判昭60.7.19【百選I82】)は,「民法304条1項但書において,先取特権者が物上代位権を行使するためには物上代位の対象となる金銭その他の物の払渡又は引渡前に差押をしなければならないものと規定されている趣旨は,先取特権者のする右差押によって,第三債務者が金銭その他の物を債務者に払い渡し又は引き渡すことを禁止され,他方,債務者が第三債務者から債権を取立て又はこれを第三者に譲渡することを禁止される結果,物上代位の目的となる債権(以下『目的債権』という。)の特定性が保持され,これにより,物上代位権の効力を保全せしめるとともに,他面目的債権の弁済をした第三債務者又は目的債権を譲り受け若しくは目的債権につき転付命令を得た第三者等が不測の損害を被ることを防止すようとすることにあるから,且的債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしたにすぎないときは,その後に先取特権者が目的債権に対し物上代位権を行使することを妨げられるものではないと解すべきである」としている。したがって,動産売買の先取特権者は,一般債権者が物上代位権行使の目的となる債権を差し押さえた後でも,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

  • Q動産売買の先取特権者は,物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

    A×  判例(最判平17.2.22)は,「民法 304条1項ただし書は,先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要する旨を規定しているところ,この規定は,抵当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである。そうすると,動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備之られた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないものと解するのが相当である」としている。したがって,動産売買の先取特権者は,物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後は,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。

  • Q動産売買の先取特権者は,買主が目的動産を用いて施工した請負工事の請負代金債権に対しては,原則として物上代位権を行使することができないが,請負代金全体に占める当該動産の価値の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らし,請負代金債権の全部又は一部を動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には,物上代位権を行使することができる。

    A〇  判例(最決平10.12.18【百選I81】)は,「動産の買主がこれを他に転売することによって取得した売買代金債権は,当該動産に代わるものとして動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使の対象となる(民法304条)。これに対し,動産の買主がこれを用いて請負工事を行ったことによって取得する請負代金債権は,仕事の完成のために用いられた材料や労力等に対する対価をすべて包含するものであるから,当然にはその一部が右動産の転売による代金債権に相当するものということはできない。したがって,請負工事に用いられた動産の売主は,原則として,請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが,請負代企全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事措がある場合には,右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使寸ることができると解するのが相当である」としているしたがって,動産売買の先取特権者は,買主が目的動産を用いて施工した請負工事の請負代金債権に対しては,原則として物上代位権を行使することができないが,請負代金全体に占める当該動産の価値の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らし,請負代金債権の全部又は一部を動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には,物上代位権を行使することができる

  • Q抵当権者は,一般債権者が物上代位権行使の目的となる債権を差し押さえて転付命合が第三債務者に送達された後であっても,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる

    A×  判例(最判平 14.3.12)は,「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても,転付命令が第三債務者に送遠される時までに抵当権者が被転付債権の差押之をしなかったときは,転付命令の効力を妨げることはできず,差押命合及び転付命令が確定したときには,転付命合が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ,抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。けだし,転付命合は,金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として,被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって,転付命合が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法 159条3項に規定寸る差押等をしていないことを条件として,差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項,160条),他方,抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには,自ら被転付債権を差し押さえることを要し······,この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段,2項,194条),同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば,抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はな<,これを反対に解するときは,転付命合を規定した趣旨に反することになるからである」。したがって,抵当権者は,一般債権者が物上代位権行使の目的となる債権を差し押さえて転付命令が第三債務者に送達された後は,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。

  • Q抵当権者は,物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

    A〇  判例(最判平10.1.30【百遥188】)は,次のように判示している。「民法372 条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は,主として,抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから,右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は,右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため,差押えを物上代位権行使の要件とし,第三債務者は,差押命合の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り,右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして,二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。「右のような民法304条1項の趣旨目的に照らすと,同項の『払渡又八引渡』には債権譲渡は含まれず,抵当権者は,物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備之られた後においても,自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)民法304条1項の『払渡又ハ引渡』という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし,物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ,(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ,弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから,抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず,(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ,(四)対抗要件を備えた債権讓渡が物上代位に優先するものと解するならば,抵当権設定者は,抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが,このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。」したがって,抵当権者は,物上代位権行使の目的となる債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後であっても,自らその目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

  • Q抵当権者は,抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

    A〇  判例(最判平10.1.30【百選I88】)は,次のように判示している。「民法 372 条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は,主として,抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから,右債権の債務者(以下『第三債務者』という。)は,右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下『抵当権設定者』という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため,差押えを物上代位権行使の要件とし,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り,右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして,二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。」「右のような民法 304条1項の趣旨日的に照らすと,同項の『払渡又ハ引渡』には債権譲渡は含まれず,抵当権者は,物上代位の日的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備之られた後においても。自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。けだし,(一)民法304条1項の『払渡又ハ引渡』という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし,物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ,(二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において,第三債務者は,差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消減を抵当権者に対抗することができ,弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから,抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず,(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ,(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば,抵当権設定者は,抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが,このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。」したがって,抵当権者は,抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた場合においても,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

  • Q動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。

    A〇  判例(最判平17.2.22)は,「民法304条1項ただし書は,先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要する旨を規定しているところ,この規定は,抵当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというベきである。そうすると,動産売質の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備之られた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないものと解するのが相当である」としている。したがって,動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡されて第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。

  • Q抵当権者は,抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が転付命令の確定により差押債権者に移転した場合においても,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

    A×  判例(最判平 14.3.12)は,「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても,転付命合が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押之をしなかったときは,転付命令の効力を妨げることはできず、差押命合及び転付命令が確定したときには,転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ,抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。けだし,転付命合は,金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として,被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって,転付命合が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として,差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項,160条),他方,抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには,自ら被転付債権を差し押さえることを要し·····,この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法 193条1項後段,2項,194条),同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば,抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いを十べき理由はな<,これを反対に解するときは,転付命合を規定した趣旨に反することになるからである」としている。したがって,抵当権者は,抵当権設定登記がされた後に物上代位の目的債権が転付命令の確定により差押債権者に移転した場合においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。

  • Q抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし,賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできない。

    A〇  判例(最判平13.3.13)は,「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである」としている。したがって,抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とし,賃料債権を受働債権とする相殺をもって抵当権者に対抗することはできない。

  • Q抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした場合には,その後に賃貸借契約が終了し,抵当不動産が明け渡されたとしても,抵当不動産の賃借人は,抵当権者に対し,敷金の充当によって当該賃料債権が消滅したことを主張することはできない。

    A×  622 条の2第1項柱書は,「賃貸人は,敷金·····を受け取っている場合において,次に掲げるときは,賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の貨貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」と規定し,同条1号は,「賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき」を挙げるところ,判例(最判平 14.3.28)は,「これを賃料債権等の面からみれば,目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになる。このような敷金の充当による未払賃料等の消滅は,敷金契約から発生する効果であって,相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないから,民法511 条によって上記当然消滅の効果が妨げられないことは明らかである。また,抵当権者は,物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前は,原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであるから,抵当不動産の所有者等は,賃貸借契約に付随する契約として敷金契約を締結するか否かを自由に決定することができる。したがって,敷金契約が締結された場合は,賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり,このことを抵当権者に主張することができるというベきである。以上によれば,数金が授受された貨貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押えた場合においても,当該貨貸借契約が終了し,目的物が明け渡されたときは,賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消滅するというべきであ」るとしているしたがって,抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした場合であっても,その後に賃貸借契約が終了し,抵当不動産が明け渡されたときは,抵当不動産の賃借人は,抵当権者に対し,敷金の充当によって当該賃料債権が消滅したことを主張することができる。

  • Q買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする見解がある。この見解に関して、当該見解の論拠とすることができないものを組み合わせたものはどれか。.買戻権は留保された解除権であるところ,法定解除の法的構成ないし効果に関する直接効果説の立場に従えば,解除(買戻権の行使)によって売買契約は通及的に消滅し,買戻特約の登記後にされた処分はすベて効力を失うのであって,買主が目的不動産上に設定した担保物権も初めからなかったことになる。

    A〇 抵当権と物上代位1304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定し,372条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定する。そして,判例(最判平11.11.30)は,「買戻特約付売買の買主から目的不動産にっき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると解するのが相当である。けだし,買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は,買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが,抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては,買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはない上解すべきであり〔注:肢ェ],また,買戻代金は,実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ,目的不動産の価値変形物として,民法372 条により準用される 304条にいう且的物の売却又は滅失によって債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えない〔注:肢ウ]からである」としている。他方,買戻権は留保された解除権であるところ,法定解除の法的構成ないし効果に関する直接効果説の立場に従えば,解除(買戻権の行使)によって売買契約は遡及的に消滅し,買戻特約の登記後にされた処分はすべて効力を失うのであって,買主が目的不動産上に設定した担保物権も初めからなかったことになると考えるのであれば,抵当権も,初めからなかったことになるのであり,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることはできないことになる。また,肢イのように,買戻特約の登記に後れて目的不動産に抵当権の設定を受けた抵当権者は,買戻代金債権についてあらかじめ質権ないし譲渡担保権の設定を受けることができると考えるのであれば,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする必要はないことになる。

  • Q買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする見解がある。この見解に関して、当該見解の論拠とすることができないものを組み合わせたものはどれか。買戻特約の登記に後れて目的不動産に抵当権の設定を受けた抵当権者は,買戻代金債権についてあらかじめ質権ないし譲渡担保権の設定を受けることができる

    A〇  抵当権と物上代位1304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定し,372条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定する。そして,判例(最判平11.11.30)は,「買戻特約付売買の買主から目的不動産にっき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると解するのが相当である。けだし,買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は,買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが,抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては,買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはない上解すべきであり〔注:肢ェ],また,買戻代金は,実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ,目的不動産の価値変形物として,民法372 条により準用される 304条にいう且的物の売却又は滅失によって債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えない〔注:肢ウ]からである」としている。他方,買戻権は留保された解除権であるところ,法定解除の法的構成ないし効果に関する直接効果説の立場に従えば,解除(買戻権の行使)によって売買契約は遡及的に消滅し,買戻特約の登記後にされた処分はすべて効力を失うのであって,買主が目的不動産上に設定した担保物権も初めからなかったことになると考えるのであれば,抵当権も,初めからなかったことになるのであり,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることはできないことになる。また,肢イのように,買戻特約の登記に後れて目的不動産に抵当権の設定を受けた抵当権者は,買戻代金債権についてあらかじめ質権ないし譲渡担保権の設定を受けることができると考えるのであれば,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする必要はないことになる。

  • Q買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする見解がある。この見解に関して、当該見解の論拠とすることができないものを組み合わせたものはどれか。買戻代金は,実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ,目的不動産の価値変形物として,目的物の売却又は滅失により債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えない。

    A×  抵当権と物上代位1304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定し,372条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定する。そして,判例(最判平11.11.30)は,「買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると解するのが相当である。けだし,買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は,買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが,抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては,買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはない上解すべきであり〔注:肢ェ],また,買戻代金は,実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ,目的不動産の価値変形物として,民法372 条により準用される 304条にいう且的物の売却又は滅失によって債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えない〔注:肢ウ]からである」としている。他方,肢アのように,買戻権は留保された解除権であるところ,法定解除の法的構成ないし効果に関する直接効果説の立場に従えば,解除(買戻権の行使)によって売買契約は遡及的に消滅し,買戻特約の登記後にされた処分はすべて効力を失うのであって,買主が目的不動産上に設定した担保物権も初めからなかったことになると考えるのであれば,抵当権も,初めからなかったことになるのであり,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることはできないことになる。また,肢イのように,買戻特約の登記に後れて目的不動産に抵当権の設定を受けた抵当権者は,買戻代金債権についてあらかじめ質権ないし譲渡担保権の設定を受けることができると考えるのであれば,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする必要はないことになる。

  • Q買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする見解がある。この見解に関して、当該見解の論拠とすることができないものを組み合わせたものはどれか。買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は,買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが,抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては,買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはないと解すべきである。

    A×  抵当権と物上代位1304条1項は,「先取特権は,その目的物の売却,賃貸,滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても,行使することができる。ただし,先取特権者は,その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定し,372条は,「第296条,第304条及び第351条の規定は,抵当権について準用する」と規定する。そして,判例(最判平11.11.30)は,「買戻特約付売買の買主から目的不動産につき抵当権の設定を受けた者は,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができると解するのが相当である。けだし,買戻特約の登記に後れて目的不動産に設定された抵当権は,買戻しによる目的不動産の所有権の買戻権者への復帰に伴って消滅するが,抵当権設定者である買主やその債権者等との関係においては,買戻権行使時まで抵当権が有効に存在していたことによって生じた法的効果までが買戻しによって覆滅されることはない上解すべきであり〔注:肢ェ],また,買戻代金は,実質的には買戻権の行使による目的不動産の所有権の復帰についての対価と見ることができ,目的不動産の価値変形物として,民法372 条により準用される 304条にいう且的物の売却又は滅失によって債務者が受けるべき金銭に当たるといって差し支えない〔注:肢ウ]からである」としている。他方,肢アのように,買戻権は留保された解除権であるところ,法定解除の法的構成ないし効果に関する直接効果説の立場に従えば,解除(買戻権の行使)によって売買契約は遡及的に消滅し,買戻特約の登記後にされた処分はすべて効力を失うのであって,買主が目的不動産上に設定した担保物権も初めからなかったことになると考えるのであれば,抵当権も,初めからなかったことになるのであり,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることはできないことになる。また,肢イのように,買戻特約の登記に後れて目的不動産に抵当権の設定を受けた抵当権者は,買戻代金債権についてあらかじめ質権ないし譲渡担保権の設定を受けることができると考えるのであれば,抵当権に基づく物上代位権の行使として,買戻権の行使により買主が取得した買戻代金債権を差し押さえることができるとする必要はないことになる。

  • Q  AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され,その登記がされている。この場合における抵当権に基づくCの物上代位権の行使について、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け,その貸金債権の弁済期が到来した場合,AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした後であっても,Bは,Aに対する貸金債権を自働債権とし, Aの賃料債権を受働債権とする相殺をもって, Cに対抗することができる。

    A×  判例(最判平13.3.13)は,「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできないと解するのが相当である。けだし,物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである」としている。したがって,Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け,その貸金債権の弁済期が到来した場合において, AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした後は,Bは,Aに対する貸金債権を自働債権とし, Aの賃料債権を受働債権とする相殺をもって, Cに対抗することができなくなる。

  • Q  AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され,その登記がされている。この場合における抵当権に基づくCの物上代位権の行使について、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け,その貸金債権の弁済期が到来した場合AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした場合において, BがCに賃料を支払わないままAB間の賃貸借契約が終了し,Bが甲建物をAに明け渡した。この場合において,BがAにあらかじめ敷金を預託していたときは,Cが差し押さえた賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消滅する。

    A〇  622 条の2第1項柱書は,「賃貸人は,敷金····を受け取っている場合において,次に掲げるときは,賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した殘額を返還しなければならない」と規定し,同条1号は,「賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき」を挙げるところ,判例(最判平14.3.28)は,「これを賃料債権等の面からみれば,目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消減することになる。このような敷金の充当による未払賃料等の消滅は,敷金契約から発生する効果であって,相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではないから,民法 511条によって上記当然消滅の効果が妨げられないことは明らかである。また,抵当権者は,物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前は,原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであるから,抵当不動産の所有者等は,賃貸借契約に付随する契約として敷金契約を締結するか否かを自由に決定することができる。したがって,敷金契約が締結された場合は,賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり,このことを抵当権者に主張することができるというべきである。以上によれば,敷金が授受された賃貸借契約に係る貨料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押えた場合においても,当該賃貸借契約が終了し,目的物が明け渡されたときは,賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消减するというベきであ」るとしている。したがって, AのBに対する賃料債権についてCが物上代位権を行使して差押えをした場合において,BがCに賃料を支払わないままAB間の賃貸借契約が終了し, Bが甲建物をAに明け渡した。この場合において,BがAにあらかじめ敷金を預託していたときは,Cが差し押さえた賃料債権は,敷金の充当によりその限度で消滅する。

  • Q  AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され,その登記がされている。この場合における抵当権に基づくCの物上代位権の行使について、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け,その貸金債権の弁済期が到来した場合Bが甲建物をDに転貸した場合,Cは, BをAと同視することが相当であるときを除き,BのDに対する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができる。

    A×  判例(最決平12.4.14)は,「民法 372 条によって抵当権に準用される同法304 条1項に規定する『債務者』には,原則として,抵当不動産の賃借人(転貸人)は含まれないものと解すべきである。けだし,所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し,抵当不動産の賃借人は,このような責任を負担するものではなく,自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである。同項の文言に照らしても,これを『債務者』に含めることはできない。また,転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるとすると,正常な取引により成立した抵当不動産の転貸借関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。もっとも,所有者の取得すべき賃料を減少させ,又は抵当権の行使を妨げるために,法人格を溢用し,又は賃貸借を仮装した上で,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には,その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである」としさいる。したがって,Bが甲建物をDに転貸した場合,Cは,BをAと同視することが相当であるときを除き,BのDに対する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。

  • Q  AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され,その登記がされている。この場合における抵当権に基づくCの物上代位権の行使について、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け,その貸金債権の弁済期が到来した場合AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえて転付命合を取得し,その転付命令がBに送達された後は,Cは,同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。

    A〇  判例(最判平14.3.12)は,「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても,転付命令が第三債務者に送遠される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは,転付命令の効力を妨げることはできず,差押命令及び転付命令が確定したときには,転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ,抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。けだし,転付命合は,金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として,被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって,転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として,差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項,160条),他方,抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには,自ら被転付債権を差し押さえることを要し····,この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段,2項,194条),同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば,抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はな<,これを反対に解するときは,転付命令を規定した趣旨に反することに人なるからである」。したがって, AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえて転付命合を取得し,その転付命令がBに送達された後は,Cは,同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。

  • Q  AがBに賃貸しているA所有の甲建物にCのための抵当権が設定され,その登記がされている。この場合における抵当権に基づくCの物上代位権の行使について、Cのための抵当権の設定登記がされた後にBがAに対して金銭を貸し付け,その貸金債権の弁済期が到来した場合AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえ,その差押命令がBに送達された後に,AがCのために甲建物に抵当権を設定し, その登記がされた場合,Cは,同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。

    AO 判例(最判平 10.3.26)は,「一般債権者による債権の差押えの処分禁止効は差押命令の第三債務者への送達によって生ずるものであり,他方,抵当権者が抵当権を第三者に対抗するには抵当権設定登記を経由することが必要であるから,債権について一般債権者の差押之と抵当権者の物上代位権に基づく差押之が競合した場合には,両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ,右の差押命合の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば,抵当権者は配当を受けることができないと解十べきである」るとしている。したがって, AのBに対する賃料債権をAの一般債権者Eが差し押さえ,その差押命合がBに送達された後に,AがCのために甲建物に抵当権を設定し,その登記がされた場合,Cは,同一の債権を差し押さえて物上代位権を行使してEに対抗することができない。

  • Q  Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合に関して、A及びBは,土地賃貸借契約を合意解除した。この合意解除に基づいて土地賃貸借契約が終了したことを,BはCに対抗することができない。

    A〇  398条は,「地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は,その権利を放棄しても,これをもって抵当権者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大判大14.7.18)は,「建物の抵当権設定者が元他人の土地に付適法に賃借権を有せしが為,其の地上に建物を建設し之を抵当と為したる場合に於て,其の後賃貸人たる土地所有者と合意し以て賃貸借契約を解除したりとするも、右賃貸借の終了は抵当権者に対抗するを得ざるものと解すべく,従て抵当権の実行に依り該建物の競落したる者は,建物の所有権を取得すると同時に,土地の所有者に対し賃借人として其の盛土地を占有使用し得る権利あるものと解寸べきなり。蓋し,斯の如く解するに非ざれば土地と建物と其所有者を異にせる場合に建物を抵当と為すことは実際上行われ難きに至るベく,我法制上建物のみの抵当を認めたる立法の趣旨に副わざろこととなるベければなり。尚,此の事実たるや民法第 388条,第398条の規定の趣旨より推すも察するに難からず」としている。したがって,合意解除に基づいて土地賃貸借契約が終了したことを,BはCに対抗することができない。

  • Q  Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合に関して、Aの不在期間中に,Dが甲建物を不法に占有した場合,Dが不法占有することにより,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときは,CはAのDに対する妨害排除請求権を代位行使して,Dに対して直接自己に甲建物を明け渡すよう求めることができる。

    A〇  423条1項本文は,「債権者は,自己の債権を保全するため必要があるときは,債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる」と規定するところ,判例(最大判平11.11.24)は,「抵当権は,競売手続において実現される抵当不動産の交換価値から他の債権者に優先して被担保債権の弁済を受けることを内容とする物権であり,不動産の占有を抵当権者に移すことなく設定され,抵当権者は,原則として,抵当不動産の所有者が行う抵当不動産の使用又は収益について干渉することはできない。しかしながら,第三者が抵当不動産を不法占有することにより,競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,これを抵当権に対する侵害と評価することを妨げるものではない。そして,抵当不動産の所有者は,抵当権に対する侵害が生じないよう抵当不動産を適切に維持管理することが予定されているものということができる。したがって,右状態があるときは,抵当権の効力として,抵当権者は,抵当不動産の所有者に対し.その有する権利を滴切に行使するなどして右状熊を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を有するというべきである。そうすると,抵当権者は,右請求権を保全する必要があるときは,民法 423条の法意に従い,所有者の不法占有者に対する妨客排除請求権を代位行使することができると解するのが相当である」とした上で,「右請求権を保全するため,甲の上告人らに対する妨害排除請求権を代位行使し,甲のために本件建物を管理することを目的として,上告人らに対し,直接被上告人に本件建物を明け渡す上う求めることができるものというベきである」としている。したがって, Aの不在期間中に,Dが甲建物を不法に占有した場合,Dが不法占有することにより,抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態にあるときは,CはAのDに対する妨害排除請求権を代位行使して,Dに対して直接自己に甲建物を明け渡すよう求めることができる。

  • Q  Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合に関して、AがBに対し,甲建物を売り渡した後,抵当権が実行され,甲建物をEが買い受けた場合,法定地上権は成立しない。

    A〇  388条前段は,「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合においいて, その土地又は建物につき抵当権が設定され,その実行により所有者を異にするに至ったときは,その建物について,地上権が設定されたものとみなす」と規定するところ,判例(最判昭 44.2.14)は,「抵当権設定当時において土地および建物の所有者が各別である以上,その土地または建物に対する抵当権の実行に上る競落のさい,たまたま,右土地お上び建物の所有権が同一の者に帰していたとしても,民法 388条の規定が適用または準用されるいわれはな」いとしている。したがって, AがBに対し,甲建物を売り渡した後,抵当権が実行され,甲建物をEが買い受けた場合,法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合に関して、AがFに対して,抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸した場合,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態のときでも,Cは抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してFに対し直接自己に甲建物の明渡しを求めることはできない。

    A×  判例(最判平17.3.10【百選I89】)は,「抵当権設定登記後に抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者についても,その占有権原の設定に抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的が認められ, その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは,抵当権者は、当該占有者に対し抵当権に基づく妨害排除請求として,上記状態の排除を求めることができるものというべきである。なぜなら,抵当不動産の所有者は,抵当不動産を使用又は収益するに当たり,抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており,抵当権の実行としての競売手続を妨害するような占有権原を設定することは許されないからである。また,抵当権に基づく妨害排除請求権の行使に当たり,抵当不動産の所有者にねいて抵当権に対する侵害が生じないように抵当不動産を滴切に維持管理することが期待できない場合には,抵当権者は,占有者に対し,直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるものというべきである」としている。したがって, AがFに対して,抵当権の実行としての競売手続を妨害する目的で甲建物を賃貸した場合,その占有により抵当不動産の交換価値の実現が妨げられて抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態のときは,Cは抵当権に基づく妨害排除請求権を行使してFに対し直接自己に甲建物の明渡しを求めることができる。

  • Q  Aが土地所有者Bから賃借した土地上に所有している甲建物についてCのために抵当権を設定した場合に関して、Aは,甲建物に対する抵当権設定後,長期にわたりBに対する賃料の支払を怠った。土地賃借権は,従たる権利として抵当権の目的となっているから,Bは土地賃貸借契約を解除することができない。

    A×  87条2項は,「従物は,主物の処分に従う」と規定するところ,判例(最判昭 40.5.4【百選I86】)は,「建物を所有するために必要な敷地の賃借権は,右建物所有権に付随し,これと一体となってーの財産的価値を形成しているものであるから,建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則てその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきである」と人しいるしたがって,土地賃借権は,従たる権利として抵当権の目的となつ-C0しかし,545条1項は,「当事者の一方がその解除権を行使したときは各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない」と規定するところ,判例(最判昭48.11.29)は,「賃借人の賃料不払による土地賃貸借契約の解除については,借地上の建物の抵当権者は民法 545条の第三者に該当しないと解すべきである」としている。したがって, Aは,甲建物に対する抵当権設定後,長期にわたりBに対する賃料の支払を怠った場合,土地賃借権が,従たる権利として抵当権の目的となっているとしても, Bは土地賃貸借契約を解除することができる。

  • Q抵当不動産についてその所有者から地上権を買い受けた第三者が抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する。

    A〇  378条は,「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する」と規定する。

  • Q主たる債務者の承継人は,抵当権消滅請求をすることができない。

    A〇  380条は,「主たる債務者,保証人及びこれらの者の承継人は,抵当権消滅請求をすることができない」と規定する。

  • Q建物の賃貸借は,その登記がなくても,建物の引渡しがあったときは,その引渡し前に登記をした抵当権を有する全ての者が同意をし,かつ,その同意の登記があれば,その同意をした抵当権者に対抗することができる。

    A×  387条1項は,「登記をした賃貸借は,その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし,かつ,その同意の登記があるときは,その同意をした抵当権者に対抗することができる」と規定する。したがって,建物の賃貸借は,その登記がなければ,その引渡し前に登記をした抵当権を有する全ての者が同意をし,かつ,その同意の登記があっても,その同意をした抵当権者に対抗することができない。

  • Q抵当不動産をその所有者から買い受けた者は,その不動産について必要費を支出した場合において,抵当権の実行によりその不動産が競売されたときは,その代価から最先順位の抵当権者より先にその支出した額の償還を受けることができる

    A〇  391 条は,「抵当不動産の第三取得者は,抵当不動産について必要費又は有益費を支出したときは,第196条の区別に従い,抵当不動産の代価から,他の債権者より先にその借還を受けることができる」と規定し,196条1項本文は,「占有者が占有物を返還する場合には,その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から借還させることができる」と規定する。したがって,抵当不動産をその所有者から買い受けた者は,その不動産について必要費を支出した場合において,抵当権の実行によりその不動産が競売されたときは,その代価から最先順位の抵当権者より先にその支出した額の償還を受けることができる。

  • Q抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である土地を使用収益する者は,抵当権の実行によりその土地が競売された場合,買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは,その土地を買受人に明け渡す必要がない。

    A×  395条1項柱書は,「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は,その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは,その建物を買受人に引き渡すことを要しない」と規定する。したがって,抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である土地を使用収益する者については,395条1項は適用されない。

  • Q抵当権が設定された建物を,抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づいて使用する者は,競売手続開始前から使用していれば,建物の買受人が買い受けた時から6か月を経過するまでは,その建物の買受人への引渡しを猶予される。

    A〇  395条1項柱書は,「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は,その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは,その建物を買受人に引き渡すことを要しない」と規定し,同項1号は,「競売手続の開始前から使用又仕収益をする者」を挙げる。したがって,抵当権が設定された建物を,抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づいて使用する者は,競売手続開始前から使用していれ任,建物の買受人が買い受けた時から6か月を経過するまでは,その建物の買受人への引渡しを猶予される。

  • Q登記をした賃貸借は,その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をすれば, その同意をした抵当権者に対抗することができる。

    A×  387条1項は,「登記をした賃貸借は,その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をしかつ.その同意の登記があるときは,その同意をした抵当権者に対抗することができる」と規定する。したがって,登記をした賃貸借は,その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をするだけでは,その同意をした抵当権者に対抗することができない。

  • Q土地に抵当権が設定された当時,その土地に建物が築造されていた場合,その建物の所有者が,その土地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有しないとしても,抵当権者は,土地とともに建物を競売することはできない。

    A〇  389条1項本文は,「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができる」と規定する。したがって,土地に抵当権が設定された当時,その土地に建物が築造されていた場合,その建物の所有者が,その土地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有しないとしても,抵当権者は,土地とともに建物を競売することはできない。

  • Q抵当権が設定された不動産について,地上権の設定を受けた者は,抵当権消滅請求をすることができない。

    A〇  379条は,「抵当不動産の第三取得者は,第383条の定めるところにより,抵当権消滅請求をすることができる」と規定する。したがって,抵当権が設定された不動産について,地上権の設定を受けた者は,抵当権消滅請求をすることができない。なお,378条は,「抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が,抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは,抵当権は,その第三者のために消滅する」と規定する。(

  • Q被担保債権の債務不履行後に,抵当不動産の所有者が,その後に生じた果実を収受しても,不当利得にはならない。

    A〇  371 条は,「抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」と規定するのみで,被担保債権の債務不履行後の抵当不動産の所有者が果実の収取権を失うわけではない。したがって,被担保債権の債務不履行後に,抵当不動産の所有者が,その後に生じた果実を収受しても,不当利得にはならない。

  • Q抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

    A〇  371 条は,「抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは,その後に生じた抵当不動産の果実に及」と規定する。

  • Q借地上の建物が抵当権の目的となっている場合,建物の敷地利用権であろ借地権にも抵当権の効力が及ぶ。

    A〇  判例(最判昭 40.5.4【百選I86】)は,「建物を所有するために必要な敷地の賃借権は,右建物所有権に付随し,これと一体となってーの財産的価値を形成しているものであるから,建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきである」としている。したがって、借地上の建物が抵当権の目的となっている場合,建物の敷地利用権である借地権にも抵当権の効力が及ぶ。

  • Q抵当権の被担保債権について主たる債務者となっている者は,抵当一権消滅請求を行うことができないが,その債務の連帯保証人は,抵当権消滅請求を行うことができる。

    A×  380条は,「主たる債務者,保証人及びこれらの者の承継人は,抵当権消滅請求をすることができない」と規定する。したがって,抵当権の被担保債権について主たる債務者となっている者も,その債務の連帯保証人も,抵当権消滅請求を行うことができない。

  • Q建物に設定された抵当権が実行された場合において,抵当権の設定登記後であって競売手続の開始前からその建物の引渡しを受けて占有し使用している者が存在するときは,その建物の占有者は,買受人による建物買受けの時から6か月間,買受人に対する使用の対価を支払うことなく建物の明渡しを猶予される

    A×  395条1項柱書は,「抵当権者に対抗することができない賃貸借に上り抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は,その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは,その建物を買受人に引き渡すことを要しない」と規定し,同項1号は,「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」を挙げる。したがって,建物に設定された抵当権が実行された場合において,抵当権の設定登記後であって競売手続の開始前からその建物の引渡しを受けて占有し使用している者が存在するときは,その建物の占有者は,買受人による建物買受けの時から6か月間,建物の明渡しを猶予される。もっとも,同条2項は,「前項の規定は,買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたとの対価について,買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告をし,その相当の期間内に履行がない場合には,適用しない」と規定しており,買受人に対する使用の対価を支払う必要があることが前提とされている。

  • Q更地に抵当権が設定された後,その土地の上に第三者が建物を築造したとき,抵当権者は,その土地とともにその建物を競売することができる。

    A〇  389条1項本文は,「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは,抵当権者は,土地とともにその建物を競売することができる」と規定する。したがって,更地に抵当権が設定された後,その土地の上に第三者が建物を築造したとき,抵当権者は,その土地とともにその建物を競売することができる。

  • Q抵当権設定者が,抵当権の目的である土地を第三者に賃貸していた場合,その担保する債権について不履行がなくても,抵当権の効力は,その賃料債権に及ぶ。

    A×  371 条は,「抵当権は,その担保する債権について不履行があったときは, その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ」と規定する。したがって抵当権設定者が,抵当権の目的である土地を第三者に賃貸していた場合,その担保する債権について不履行がなければ,抵当権の効力は,その賃料債権に及ばない。

  • Q  土地の所有者が,土地に抵当権を設定した後,その土地上に立木を植栽した場合,抵当権の効力は,その立木に及ぶ。

    A〇  370 条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定するところ,判例(最判昭44.3.28【百選I85】)は,「本件石灯能および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり,本件植木および取り外しの困難な庭石等は右宅地の構成部分であるが,右従物は本件根抵当権設定当時右宅地の常用のためこれに付属せしめられていたものであることは,原判決の適法に認定,判断したところである。そして,本件宅地の根抵当権の効力は,右構成部分に及ぶことはもちろん,右従物にも及び······,この場合右根抵当権は本件宅地に対する根抵当権設定登記をもって,その構成部分たる右物件についてはもちろん,抵当権の効力から除外する等特段の事情のないかぎり,民法 370条により従物たる右物件についても対抗力を有するものと解するのが相当である」としている。したがって,土地の所有者が,土地に抵当権を設定した後,その土地上に立木を植栽した場合,抵当権の効力は,その立木に及ぶ。

  • Q抵当権設定者が,抵当権の目的である建物に宝石を持ち込んで保管していた場合,抵当権の効力は,その宝石に及ぶ

    A〇  370条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定するところ,判例(最判昭 44.3.285【百選I85】)は,「本件宅地の根抵当権の効力は,右構成部分に及ぶことはもちろん,右従物にも及Iぶとしているしかし,宝石は,建物の構成部分ではない。また,87条1項は,「物の所有者が,その物の常用に供するため,自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは,その附属させた物を従物とする」と規定するところ,宝石は建物の「常用に供する」とはいえないし,建物に「附属させた」ともいえないから,「従物」にもあたらない。したがって,抵当権設定者が,抵当権の目的である建物に宝石を持ち込んで保管していた場合,抵当権の効力は,その宝石に及ばない。

  • Q抵当権の目的である建物が天災のため崩壊し動産となった場合,抵当権の効力は,その動産に及ぶ。

    A×  判例(大判大5.6.28)は,「不動産を目的物とせる抵当権は,其目的物の減失又は毀損に依り其全部若くは一部が不動産たる性質を失うときは,抵当権は其部分に対して効力を喪失すべく,唯抵当権者が其権利の実行に着手して目的物に対する差押の効果の生じたる後に至り前示事由の発生したる場合に限り其効力を保持し得るに止る·····所なれば,抵当権の実行に着手する以前に於て,抵当権の目的物たる家屋が天災の為め崩壊し不動産たる性質を失いて動産と為りたるときは,家屋を目的物とせる抵当権は之に依り消滅し,崩壊に依り生じたる動産の上に其効力の及ばざること勿論な21277F.りとpしたがって,抵当権の目的である建物が天災のため崩壊し動産となった場合,抵当権の効力は,その動産に及ばない。

  • Q抵当権設定者から抵当権の目的である建物を賃借した賃借人が,その所有する取り外し可能なエアコンを建物内に設置している場合,抵当権の効力は,そのエアコンに及ばない。

    A〇  370 条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定するところ,判例(最判昭 44.3.28【百選I85】)は,「本件宅地の根抵当権の効力は,右構成部分に及ぶことはもちろん,右従物にも及」ぶとしている。取り外し可能なエアコンは,建物の構成部分ではない。また,肢ウの解説のとおり,87条1項は,「物の所有者が,その物の常用に供するため,自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは,その附属させた物を従物とする」と規定するところ,建物の「所有者」は抵当権設定者であるのに対し,ェアコンの「所有者」は賃借人であるから,「従物」にもあたらない。したがって,抵当権設定者から抵当権の目的である建物を賃借した賃借人が,その所有する取り外し可能なエアコンを建物内に設置している場合,抵当権の効力は,そのェアコンに及ばない。

  • Q  Aが所有する土地に,その更地としての評価に基づき,Bのための抵当権が設定され,続けて,土地上にA所有の建物が建てられた後,抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権は成立しない。

    A〇  判例(最判昭36.2.10)は,「民法 388条により法定地上権が成立するためには,抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とする。····また被上告人が本件建物の築造を予め承認した事実があっても,····本件抵当権は本件土地を更地上して評価して設定されたことが明らかであるから,民法388条の適用を認起べきではな」いとしているしたがって, Aが所有する土地に,その更地としての評価に基づき,Bのための抵当権が設定され,続けて,土地上にA所有の建物が建てられた後,抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する土地上に,土地の使用借主であるDが所有する建物が建てられ,続けて,土地にBのための抵当権が設定され,さらに,Dが死亡したためDの単独相続人であるΆが建物を相続した後,抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権は成立しない。

    A〇  判例(最判昭44.2.14)は,「抵当権設定当時において土地および建物の所有者が各別である以上,その土地または建物に対する抵当権の実行に上る競落のさい、たまたま,右土地および建物の所有権が同一の者に帰していたとしても,民法 388 条の規定が適用または準用されるいわれはな」いとしている。したがって,Aが所有する土地上に,土地の使用借主であるDが所有する建物が建てられ,続けて,土地にBのための抵当権が設定され,さらに, Dが死亡したためDの単独相続人であるAが建物を相続した後,抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する土地上に,A所有の建物が建てられ,続けて,土地と建物にBのための抵当権が共同抵当として設定された後,土地の抵当権のみが実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権が成立する。

    A〇  判例(最判昭37.9.4)は,「所論は,民法388条は,土地建物の両方が同時に抵当権の目的となっている場合の規定ではないから,右の場合にも類推適用した原判決は,不当に右規定を拡張解釈したものであり,土地所有者の所有権を犯し憲法29条に違反するものであるという。しかしながら,民法388条の適用は,右のような場合でも妨げない」としているしたがって, Aが所有する土地上に,A所有の建物が建てられ,続けて,土地と建物にBのための抵当権が共同抵当として設定された後,土地の抵当権のみが実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権が成立する。

  • Q  Aが所有する土地上に,A所有の建物が建てられ,続けて,土地にBのための抵当権が設定され,さらに,AがDに対し建物を譲渡するとともに,AD間で土地の賃貸借契約が締結された後,抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権が成立する

    AO  判例(大連判大 12.12.14)は,「土地及其の上に存する建物の所有者が土地又は建物のみを抵当と為し,其の一が抵当権に基き競売せられ,二者其の所有者を異にするに至りたる場合に於て,建物の所有者は土地使用の権利なきの故を以て建物を収去するを免れずと為さんが建物の利用を害し,一般経済上不利なること論を俟たず,民法第388条は,此の不利を避けんが為に建物所有者に地上権を附与したるものなれば,土地のみを抵当と為したる場合に於ては,同条に依り地上権を有すべき者は,競売の時に於ける建物所有者ならざるべからず,其の抵当権設定者たると否とは問う所に非ず」としている。したがって, Aが所有する土地上に,A所有の建物が建てられ,続けて,土地にBのための抵当権が設定され,さらに,AがDに対し建物を譲渡するとともに,AD間で土地の賃貸借契約が締結された後,抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に建物のための法定地上権が成立する。

  • Q  Aが所有する土地上に,A所有の甲建物が建てられ,続けて,土地と甲建物にBのための抵当権が共同抵当として設定され,さらに,甲建物が取り壊されて同主地上にA所有の乙建物が新しく建築された後,乙建物に抵当権が設定されないまま,土地の抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に乙建物のための法定地上権が成立する。

    A×  判例(最判平 9.2.14【百選I92】)は,「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後,右建物が取り壊され,右土地上に新たに建物が建桀された場合には,新建物の所有者が土地の所有者と同一であり,かつ,新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り,新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだし,土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合,抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから,抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが,建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが,抵当権設定当事者の合理的意思であり,抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば,抵当権者は,当初は土地全体の価値を把握していたのに,その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって,不測の損害を被る結果になり,抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。なお,このように解すると,建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが,抵当権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。したがって,Aが所有する土地上に,A所有の甲建物が建てられ,続けて,土地と甲建物にBのための抵当権が共同抵当として設定され,さらに,甲建物が取り壊されて同土地上にA所有の乙建物が新しく建築された後,乙建物に抵当権が設定されないまま,土地の抵当権が実行された結果,Cが土地の所有者になった場合,土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する甲土地に,その更地としての評価に基づき,Bのための抵当権が設定され,その後,甲土地上にA所有の乙建物が建てられた後,抵当権が実行された結果,Cが甲土地の所有者になった場合,Bが抵当権設定時,甲土地上にA所有の乙建物が建てられることをあらかじめ承諾していたとしても,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

    A〇  判例(最判昭36.2.10)は,「民法 388条により法定地上権が成立するためには,抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって,抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とする。······また被上告人が本件建物の築造を予め承認した事実があっても,·····本件抵当権は本件土地を更地として評価して設定されたことが明らかであるから,民法 388条の適用を認如べきではな」いとしているしたがって,Aが所有する甲土地に,その更地としての評価に基づきBのための抵当権が設定され,その後,甲土地上にA所有の乙建物が建てられた後,抵当権が実行された結果,Cが甲土地の所有者になった場合,Bが抵当権設定時,甲土地上にA所有の乙建物が建てられることをあらかじめ承諾していたとしても,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する甲土地に,Bのための第一順位の抵当権が設定され,その後,Bの承諾を受けて甲土地上にA所有の乙建物が建てられ,さらに,甲土地にCのための第二順位の抵当権が設定された後,Cの申立てに基づいて甲土地の抵当権が実行された結果,Dが甲土地の所有者になった場合,甲土地に乙建物のための法定地上権が成立する。

    A×  判例(最判昭 47.11.2)は,「土地の抵当権設定当時,その地上に建物が存在しなかったときは,民法 388条の規定の適用はないものと解すべきところ,土地に対する先順位抵当権の設定当時,その地上に建物がなく,後順位抵当権設定当時には建物が建築されていた場合に後順位抵当権者の申立に上り地の競売がなされるときであっても,右土地は先順位抵当権設定当時の状態において競売されるべきものであるから,右建物のため法定地上権が成立するものではないと解される。また,右の場合において,先順位抵当権者が建物の建築を承認した事実があっても, そのような当事者の個別的意思によって競売の効果をただちに左右しうるものではなく,土地の競落人に対抗しうる土地利用の権原を建物所有者に取得させることはできないというべきであって,右事実によって,抵当権設定後に建築された建物のため法定地上権の成立を認めることはできないものと解すべきである」としている。したがって, Aが所有する甲土地に,Bのための第一順位の抵当権が設定され,その後,Bの承諾を受けて甲土地上にA所有の乙建物が建てられ,さらに,甲土地にCのための第二順位の抵当権が設定された後,Cの申立てに基づいて甲土地の抵当権が実行された結果,Dが甲土地の所有者になった場合,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する甲土地上に,A所有の乙建物が存在し,その後,甲土地にBのための抵当権が設定され,抵当権が実行された結果,Cが甲土地の所有者になった場合,Aが乙建物の所有権の登記をしていなかったときは,甲土地に乙建物のための法定地上権は成立しない。

    A×  判例(大判昭14.12.19)は,「民法第388条は,土地及其の地上の建物を所有する者が土地又は建物のみに付き抵当権を設定したるときは,競売の結果其の所有者を異にするの結果を生すベく,斯る場合に於ては建物は之を該地上より収去することを要し,建物として之を利用するの由なきに至るを以て,国家経済上の見地より建物の所有者の為めに地上権を設定したるものと見做し,建物としての利用を全たからしめんとする趣旨に出てたるものない。而して,本件の場合の如く,土地のみに付き抵当権を取得したる者は,最初抵当権の設定を受けたるものなると後日其の権利を譲受けたるものなるとを問わず,該地上に建物の存在したる事実は之を了知せることを通常の事例とするが故に,競売の場合に於て建物を所有する何人かが其の土地に付き地上権を取得すベきことは当然予期すベき所にして,斯る土地を競落したるものの亦同様なり······。即ち,甲たると乙たるとを問わず,競売の当時,該建物を所有する何人かが存在し,地上権を取得すべきことは之を予期せさるベからす。然るに,所有権保存登記なるものは特定の所有者が其の所有権を第三者に対抗するの手段なれば,建物に付き所有権保存登記の存すると否とは叙上の場合に於ける地上権の取得とは自ら別個の問題なりと謂うベく,土地の抵当権者又は競落人は保存登記の欠缺を主張するに付き正当の利益を有せざるものなり。之を要するに,抵当権設定当時又は其の移転登記の当時,建物に付所有権保存登記の存せざることは,競売の場合に於て建物の所有者が地上権を取得するの妨げとなるべきものにあらず」としている。したがって, Aが所有する甲土地上に,A所有の乙建物が存在し,その後,甲土地にBのための抵当権が設定され,抵当権が実行された結果,Cが甲土地の所有者になった場合,Aが乙建物の所有権の登記をしていなかったときでも,甲土地に乙建物のための法定地上権が成立する。

  • Q  Aが所有する甲土地上に,A所有の乙建物が建てられ,その後,甲土地と乙建物にBのための第一順位の共同抵当権がそれぞれ設定され,さらに,乙建物が取り壊されて甲土地上にA所有の丙建物が建てられた場合,その後,丙建物にBのための第一順位の共同抵当権が設定され,甲土地の抵当権が実行された結果,Cが甲土地の所有者になったときであっても,甲土地に丙建物のための法定地上権は成立しない。

    A×  判例(最判平 9.2.14【百選I92】)は,「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後,右建物が取り壊され,右土地上に新たに建物が建築された場合には,新建物の所有者が土地の所有者と同一であり,かつ,新建物が建築された時点での七地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り,新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだし,土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合,抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから,抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが,建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが,抵当権設定当事者の合理的意思であり,抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば,抵当権者は,当初は土地全体の価値を把握していたのに,その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって,不測の損害を被る結果になり,抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。なお,このように解すると,建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが,抵当権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえないとしている。したがって,Aが所有する甲土地上に,A所有の乙建物が建てられ,その後,甲土地と乙建物にBのための第一順位の共同抵当権がそれぞれ設定され,さらに,乙建物が取り壊されて甲土地上にA所有の丙建物が建てられた場合,その後,丙建物にBのための第一順位の共同抵当権が設定された場合は,「新建物の所有者が土地の所有者と同一であり,かつ,新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき」にあたるから,甲土地の抵当権が実行された結果,Cが甲土地の所有者になったときは,甲土地に丙建物のための法定地上権が成立する。

  • Q  Aが所有する甲土地及びその上の乙建物にBのために共同抵当権が設定された後,乙建物が取り壊され,甲土地上に新たにAが所有する丙建物が建築されて,丙建物につきCのために抵当権が設定された場合において,甲土地に対するBの抵当権の実行によりDが甲土地を取得したときは,法定地上権が成立する。

    A×  判例(最判平 9.2.14【百選I92】)は,「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後,右建物が取り壊され,右土地上に新たに建物が建築された場合には,新建物の所有者が土地の所有者と同一でありかつ,新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り,新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだし,土地及び地上建物に共同抵当権が設定された場合,抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから,抵当権の設定された建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが,建物が取り壊されたときは土地について法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが,抵当権設定当事者の合理的意思であり,抵当権が設定されない新建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば,抵当権者は,当初は土地全体の価値を把握していたのに,その担保価値が法定地上権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって,不測の損害を被る結果になり,抵当権設定当事者の合理的な意思に反するからである。なお,このように解すると,建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが,抵当権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。したがって, Aが所有する甲土地及びその上の乙建物にBのために共同抵当権が設定された後,乙建物が取り壊され,甲土地上に新たにAが所有する丙建物が建築されて,丙建物につきCのために抵当権が設定された場合は,「新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき」にはあたらないから,甲土地に対するBの抵当権の実行によりDが甲土地を取得したときでも,法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する更地の甲土地に第一順位の抵当権が設定された後,甲土地上にAが所有する乙建物が建築され,甲土地に第二順位の抵当権が設定された場合において,第二順位の抵当権の実行によりBが甲士地を取得したときは,法定地上権は成立しない。

    A〇  判例(最判昭 47.11.2)は,「土地の抵当権設定当時,その地上に建物が存在しなかったときは,民法 388条の規定の適用はないものと解すべきところ,土地に対する先順位抵当権の設定当時,その地上に建物がなく,後順位抵当権設定当時には建物が建築されていた場合に後順位抵当権者の申し立てにより土地の競売がなされるときであっても,右土地は先順位抵当権設定当時の状態において競売されるべきものであるから,右建物のため法定地上権が成立するものではないと解される。また,右の場合において,先順位抵当権者が建物の建築を承認した事実があっても,そのような当事者の個別的意思によって競売の効果をただちに左右しうるものではなく,土地の競落人に対抗しうる土地利用の権原を建物所有者に取得させることはできないというベきであって,右事実によって,抵当権設定後に建築された建物のため法定地上権の成立を認めることはできないものと解すべきである」としいる。したがって, Aが所有する更地の甲土地に第一順位の抵当権が設定された後,甲土地上にAが所有する乙建物が建築され,甲土地に第二順位の抵当権が設定された場合において,第二順位の抵当権の実行によりBが甲士地を取得したときは,法定地上権は成立しない。

  • Q  Aが所有する甲土地上にBが所有する乙建物があるところ,甲土地にCのために第一順位の抵当権が設定された後,Bが甲土地の所有権を取得し,甲土地にDのために第二順位の抵当権を設定した場合において, Cの抵当権が弁済により消滅し,その後,Dの抵当権の実行によりEが甲土地を取得したときは,法定地上権が成立する。

    A〇  判例(最判平19.7.6【百遥191】)は,次のように判示している。「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時に仕同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立するというべきである。その理由は,次のとおりである。」[上記のような場合,乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては,仮に,甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば,法定地上権は成立しない結果となる······ものと予測していたということはできる。しかし,抵当権は,被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって,甲抵当権が被担保債権の弁済,設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから,乙抵当権者としては,そのことを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって,甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって,法定地上権が成立することを認めても,乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。そして,甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから,競売による法定地上権の成否を判断するに当たり,甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると,民法 388条が規定する『土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する』旨の要件(以下同一所有者要件』という。)の充足性を,甲抵当権の設定時にさかのぼって判断十べき理由はな「1「民法 388条は,土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。」したがって,Aが所有する甲土地上にBが所有する乙建物があるところ,甲土地にCのために第一順位の抵当権が設定された後,Bが甲土地の所有権を取得し,甲土地にDのために第二順位の抵当権を設定した場合において, Cの抵当権が弁済により消滅し,その後,Dの抵当権の実行によりEが甲土地を取得したときは,法定地上権が成立する。

  • Q  Aが甲土地及びその上の乙建物を所有しているが,甲土地の所有権移転登記をしていなかったところ,乙建物に抵当権が設定され,抵当権の実行によりBが乙建物を取得したときは,法定地上権は成立しない。

    A×  判例(最判昭53.9.29)は,要旨,土地及びその地上建物の所有者が建物につき抵当権を設定したときは,土地の所有権移転登記を経由していなくても,法定地上権の成立を妨げない,としている。したがって,Aが甲士地及びその上の乙建物を所有しているが,甲土地の所有権移転登記をしていなかったところ,乙建物に抵当権が設定され,抵当権の実行によりBが乙建物を取得したときでも,法定地上権は成立する。

  • Q  AとBが共有する甲土地上にAが所有する乙建物があるところ,Aが甲土地の共有持分について抵当権を設定した場合において,抵当権の実行によりCがその共有持分を取得したときは,法定地上権が成立する。

    A×  判例(最判昭29.12.23)は,「元来共有者は,各自,共有物について所有権と性質を同じくする独立の持分を有しているのであり,しかも共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから,共有地全体に対する地上権の設定には共有者全員の同意を必要とする····。換言すれば,共有者中一部の者だけがその共有地につき地上権設定行為をしたとしても,これに同意しなかった他の共有者の持分は,これによりその処分に服すべきいわれはないのであり,結局右の如く他の共有者の同意を欠く場合には,当該共有地についてはなんら地上権を発生するに由なきものといわざるを得ないのである。そして,二の理は民法 388条のいわゆる法定地上権についても同様であり偶々本件の如く,右法条により地上権を設定したものと石做すベき事由が単に土地共有者の一人だけについて発生したとしても,これがため他の共有者の意思如何に拘わらずそのものの持分までが無視さるべきいわれはないのであって,当該共有土地については地上権を設定したと看做すべきでないものといわなければならない。······けだし同条が建物の存在を全うさせようとする国民経済上の必要を多分に顧慮した規定であることは疑を容れないけれども,しかし同条により地上権を設定したと看做される者は,もともと当該土地について所有者として完全な処分権を有する者に外ならないのであって,他人の共有持分につきなんら処分権を有しないい共有者に他人の共有持分につき本人の同意なくして地上権設定等の処分をなし得ることまでも認めた趣旨でないことは同条の解釈上明白だからである」としている。したがって, AとBが共有する甲土地上にAが所有する乙建物があるところ,Aが甲土地の共有持分について抵当権を設定した場合において,抵当権の実行によりCがその共有持分を取得したときは,法定地上権は成立しない。

  • Q  Aがその所有する甲建物をBに賃貸している場合において, Aが甲建物にCのために抵当権を設定したときは,その抵当権の効力は,Bが甲建物において使用しているB所有の覺に対しても及ぶ

    A×  370 条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定するところ,判例(最判昭44.3.28【百選I85】)は,「本件石灯龍および取り外しのできる庭石等は本件根抵当権の目的たる宅地の従物であり,本件植木および取り外しの困難な庭石等は右宅地の構成部分であるが,右従物は本件根抵当権設定当時右宅地の常用のためこれに付属せしめられていたものであることは,原判決の適法に認定,判断したところである。そして,本件宅地の根抵当権の効力は,右構成部分に及ぶことはもちろん,右従物にも及1ぶとしている。しかし,覺は取り外しが用意であるから,甲建物の構成部分ではない。また,87条1項は,「物の所有者が,その物の常用に供するため,自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは,その附属させた物を従物とする」と規定するところ,甲建物の「所有者」はAであるのに対し,覺の「所有者」はBであるから,「従物」にもあたらない。したがって,Aがその所有する甲建物をBに賃貸している場合において, Aが甲建物にCのために抵当権を設定したときは,その抵当権の効力は,Bが甲建物において使用しているB所有の畳に対しては及ばない。

  • Q  AがBから建物所有目的で土地を賃借し,その上にAが建てた甲建物にCのために抵当権を設定した場合,その抵当権の効力は甲建物の従たる権利である当該土地賃借権にも及び,抵当権実行としての競売がされた時に当該土地賃借権も甲建物の買受人Dに移転するから,Dは, Bの承諾がなくても,Bに対し,当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することができる。

    A×  87条2項は,「従物は,主物の処分に従う」と規定するところ,判例(最判昭 40.5.4【百選I86】)は,「土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により,競落人が該建物の所有権を取得した場合には,民法612 条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき,従前の建物所有者との間においては,右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり,右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である······。けだし,建物を所有するために必要な敷地の賃借権は,右建物所有権に付随し,これと一体となってーの財産的価値を形成しているものであるから,建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである」としている2。したがって,AがBから建物所有目的で土地を賃借し,その上にAが建てた甲建物にCのために抵当権を設定した場合,その抵当権の効力は甲建物の従たる権利である当該土地賃借権にも及び,抵当権実行としての競売がされた時に当該土地賃借権も甲建物の買受人Dに移転する。もっとも,612条1項は,「賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができない」と規定する。したがって,Dは,Bの承諾がなければ,Bに対し,当該土地賃借権を甲建物の占有権原として主張することはできない。なお,借地借家法 20条1項前段は,「第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を競売又は公売により取得した場合において,その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず,借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは,裁判所は,その第三者の申立てにより,借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる」と規定する。

  • Q根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができる。

    A〇  398条の3第1項は,「根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができる」と規定する。

  • Q抵当権が設定された土地の上に存する建物については別段の定めをした場合に限り,土地の抵当権の効力が及ぶ。

    A×  370条本文は,「抵当権は,抵当地の上に存する建物を除き,その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ」と規定する。したがって,抵当権が設定された土地の上に存する建物については,土地の抵当権の効力は及ばない。

  • Q  AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合、乙土地について第二順位の抵当権の設定を受けその旨の登記をしているDに対しAが抵当権の順位を譲渡する場合において,その旨をAが債権譲渡の対抗要件に関する規定に従いBに通知したときには,Dは,Cに対し抵当権の順位の譲渡を受けたことを対抗することができる。

    A〇  376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放棄することができる」と規定し,377条1項は,「前条の場合には,第467条の規定に従い,主たる債務者に抵当権の処分を通知し,又は主たる債務者がこれを承諾しなければ,これをもって主たる債務者,保証人,抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない」と規定する。したがって,乙土地について第二順位の抵当権の設定を受けその旨の登記をしているDに対しAが抵当権の順位を譲渡する場合において,その旨をAが債権譲渡の対抗要件に関する規定に従いBに通知したときには,Dは,Cに対し抵当権の順位の譲渡を受けたことを対抗することができる。

  • Q  AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合、Bに対して債権を有するEに対しAが抵当権を譲渡する場合において, その旨をAが債権譲渡の対抗要件に関する規定に従いBに通知したときには,Eは,Cに対し抵当権の譲渡を受けたことを対抗することができる。

    A〇   376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放棄することができる」と規定し,377条1項は,「前条の場合には,第467条の規定に従い,主たる債務者に抵当権の処分を通知し,又は主たる債務者がこれを承諾しなけれ汪,これをもって主たる債務者,保証人,抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない」と規定する。したがって, Bに対して債権を有するEに対しAが抵当権を譲渡する場合において,その旨をAが債権譲渡の対抗要件に関する規定に従いBに通知したときには,Eは,Cに対し抵当権の譲渡を受けたことを対抗することができる。

  • Q  AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合、Dに対しAが抵当権の順位を譲渡したにもかかわらずその旨の登記がされていない場合において,Aが乙土地の抵当権をEに譲渡してその旨の登記をしたときには,Eは,Dに対し抵当権の譲渡を受けたことを対抗することができる。

    A〇  177 条は,「不動産に関する物権の得喪及ぴ変更は,不動産登記法····その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することができない」と規定する。したがって, Dに対しAが抵当権の順位を譲渡したにもかかわらずその旨の登記がされていない場合において,Aが乙土地の抵当権をEに譲渡してその旨の登記をしたときには,Eは,Dに対し抵当権の譲渡を受けたことを対抗することができる。

  • Q  AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合、CがAに対し保証債務の全額を弁済したときには,その後,Bが乙土地をFに譲渡してその旨の登記がされても,Cは,乙土地にAが有していた抵当権を行使することができる。

    A〇  499条は,「債務者のために弁済をした者は,債権者に代位する」と規定L,501条1項は,「前2条の規定に上り債権者に代位した者は,債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」と規定する。したがって,CがAに対し保証債務の全額を弁済したときには,その後,Bが乙土地をFに譲渡してその旨の登記がされても,Cは,乙土地にAが有していた抵当権を行使することができる。

  • Q  AがBに対し有する甲債権を担保するため,Bが所有する乙土地を目的とする第一順位の抵当権が設定されてその旨が登記され,また,Cが保証人となった場合、Aが,Bに対し有する甲債権をGに譲渡し,その旨をBに通知した場合において,Gから保証債務の履行を請求する訴訟を提起されたCは,Cに対する債権譲渡の通知がされるまで保証債務を弁済しない旨の抗弁を提出して請求棄却の判決を得ることができる。

    A×  467条1項は,「債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は,譲渡人が債務者に通知をし,又は債務者が承諾をしなければ,債務者その他の第三者に対抗することができない」と規定するところ,判例(大判明39.3.3)は,「保証人は主たる債務者が其債務を履行せざる場合に於て其履行を為す責に任ずべきものにして,即ち保証債務は主たる債務と其運命を共にすべきものなるが故に,主たる債権が譲渡せられたる場合に於ては,其譲渡の効力は当然従たる債権をも包含するものと解釈すべきは保証債務の性質持上当然の結果と云わざる可らず。随て,債権譲渡人が民法第467条の規定に依り主たる債権の譲渡を債務者に通知し若くは債務者が之を承諾したる以上は,従令保証人に之が通知を為さざるも,主たる債権譲渡の効力として当然保証人に対し従たる債権の譲渡を主張することを得べきものなるや蹇に明かなりとす打としているしたがって, Aが,Bに対し有する甲債権をGに譲渡し,その旨をBに通知した場合において,Gから保証債務の履行を請求する訴訟を提起されたCは,Cに対する債権譲渡の通知がされるまで保証債務を弁済しない旨の抗弁を提出して請求棄却の判決を得ることはできない。

  • Q  A所有の甲土地には, BのAに対する500万円の債権を担保するための第一順位の抵当権,CAに対する1000万円の債権を担保するための第二順位の抵当権及びDのAに対する2000万円の債権を担保するための第三順位の抵当権がそれぞれ設定されているが,EのAに対する2000万円の債権を担保するための担保権は設定されていない。この場合において,甲土地の競売により2500万円が配当されることになった。なお,各債権者が有する債権の利息及び損害金並びに執行費用は考慮しないものとする。競売の申立て前にEの利益のためにBの抵当権が譲渡されて対抗要件が備えられていたときは, Cに1000万に1000万円,Eに500万円が配当される。

    A〇  「抵当権」の「譲渡」により,抵当権者の有する優先弁済権を一般債権者が取得する。したがって,競売の申立て前に一般債権者Eの利益のためにBの一番抵当権が譲渡されて対抗要件が備えられていたときは,Eに 500万円,二番抵当権者Cに 1000 万円,三番抵当権者Dに 1000 万円が配当される。

  • Q  A所有の甲土地には, BのAに対する500万円の債権を担保するための第一順位の抵当権,CAに対する1000万円の債権を担保するための第二順位の抵当権及びDのAに対する2000万円の債権を担保するための第三順位の抵当権がそれぞれ設定されているが,EのAに対する2000万円の債権を担保するための担保権は設定されていない。この場合において,甲土地の競売により2500万円が配当されることになった。なお,各債権者が有する債権の利息及び損害金並びに執行費用は考慮しないものとする。競売の申立て前にEの利益のためにBの抵当権が放棄されて対抗要件が備えられていたときは, Bに100万円,Cに1000万円,Dに1000万円,Eに400万円が配当される。

    A〇  「抵当権」の「放棄」とは,抵当権者の有する優先弁済権を一般債権者との関係で主張しないことをいい,抵当権者と一般債権者は,債権額に応じて平等に優先弁済を受ける。したがって,競売の申立て前に一般債権者Eの利益のためにBの一番抵当権が放棄されて対抗要件が備えられていたときは,両者の債権額(B500万円:E2000 万円)に応じて,Bに 100万円,Eに 400 万円が配当される。次に,二番抵当権者CIに 1000万円,三番抵当権者Dに1000万円が配当される。

  • Q  A所有の甲土地には, BのAに対する500万円の債権を担保するための第一順位の抵当権,CAに対する1000万円の債権を担保するための第二順位の抵当権及びDのAに対する2000万円の債権を担保するための第三順位の抵当権がそれぞれ設定されているが,EのAに対する2000万円の債権を担保するための担保権は設定されていない。この場合において,甲土地の競売により2500万円が配当されることになった。なお,各債権者が有する債権の利息及び損害金並びに執行費用は考慮しないものとする。競売の申立て前にDの利益のためにBの抵当権の順位が譲渡されて対抗要件が備えられていたときは,Cに500万円,Dに2000万円が配当される。

    A×  「抵当権······の順位」の「譲渡」により,抵当権者の有する優先弁済権を後順位抵当権者が取得する。したがっマ競売の申立て前に三番抵当権(者Dの利益のためにBの一番抵当権の順位が譲渡されて対抗要件が備えられていたときは,まずDに 500 万円が配当される。次に,二番抵当権者Cに 1000万円,三番抵当権者Dに 1000 万円が配当される。したがって,最終的には,Cに 1000万円,Dに1500万円が配当される。

  • Q  A所有の甲土地には, BのAに対する500万円の債権を担保するための第一順位の抵当権,CAに対する1000万円の債権を担保するための第二順位の抵当権及びDのAに対する2000万円の債権を担保するための第三順位の抵当権がそれぞれ設定されているが,EのAに対する2000万円の債権を担保するための担保権は設定されていない。この場合において,甲土地の競売により2500万円が配当されることになった。なお,各債権者が有する債権の利息及び損害金並びに執行費用は考慮しないものとする。競売の申立て前にDの利益のためにBの抵当権の順位が放棄されて対抗要件が備えられていたときは,Cに1000万円,Dに1500万円が配当される。

    A×  [抵当権······の順位」の「放乘」とは,先順位抵当権者の有する優先弁済権を後順位抵当権者との関係で主張しないことをいい,先順位抵当権者と後順位抵当権者は,債権額に応じて平等に優先弁済を受ける。したがって,競売の申立て前に三番抵当権者Dの利益のためにBの一番抵当権の順位が放棄されて対抗要件が備えられていたときは両者が受け取るはずであった配当額1500 万円について,両者の債権額(B500 万円:D2000 万円)に応じて, BIに 300 万円, Dに 1200万円が配当される。次に,二番抵当権者Cに1000万円が配当される

  • Q  A所有の甲土地には, BのAに対する500万円の債権を担保するための第一順位の抵当権,CAに対する1000万円の債権を担保するための第二順位の抵当権及びDのAに対する2000万円の債権を担保するための第三順位の抵当権がそれぞれ設定されているが,EのAに対する2000万円の債権を担保するための担保権は設定されていない。この場合において,甲土地の競売により2500万円が配当されることになった。なお,各債権者が有する債権の利息及び損害金並びに執行費用は考慮しないものとする。競売の申立て前に抵当権の順位が変更されてDの抵当権が第一順位,Cの抵当権が第二順位,Bの抵当権が第三順位となったときは,Cに1000万円,Dに1500万円が配当される。

    A×  374条1項本文は,「抵当権の順位は,各抵当権者の合意によって変更することができる」と規定する。したがって,競売の申立て前に抵当権の順位が変更されてDの抵当権が第一順位,Cの抵当権が第二順位,Bの抵当権が第三順位となったときは,Dに 2000 万円,Cに 500 万円が配当される。

  • Q  AがBに対する債務を担保するために,Aの所有する甲土地に第一順位の抵当権を設定し,その登記がされた。Bが,Cに対する債務を担保するために,甲土地の抵当権に転抵当権を設定したときは,Aに対する通知又はAの承諾がなければ,Cは,転抵当権の設定を受けたことをAに対抗することができない。

    A〇  376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放乘することができる」と規定し,377 条1項は,「前条の場合には,第467条の規定に従い,たる借務者に抵当権の処分を通知し,又は主たる債務者がこれを承諾しなければ,これをもって主たる債務者,保証人,抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない」と規定する。したがって,Bが,Cに対する債務を担保するために,甲土地の抵当権に転抵当権を設定したときは,Aに対する通知又はAの承諾がなければ,Cは,転抵当権の設定を受けたことをAに対抗することができない。

  • Q  AがBに対する債務を担保するために,Aの所有する甲土地に第一順位の抵当権を設定し,その登記がされた。BがAの一般債権者Dに対してその抵当権を譲渡するには,Aの承諾を必要としない。

    A〇  376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放乘することができる」と規定し,377条1項は,「前条の場合には,第467 条の規定に従い,主たる債務者に抵当権の処分を通知し,又は主たる債務者がこれを承諾しなければ,これをもって主たる債務者,保証人,抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない」と規定するのみで,抵当権設定者の承諾は不要である。したがって, BがAの一般債権者Dに対してその抵当権を譲渡するには, Aの承諾を必要としない。

  • Q  AがBに対する債務を担保するために,Aの所有する甲土地に第一順位の抵当権を設定し,その登記がされた。Aが,甲土地について,Eのために第二順位の抵当権,Fのために第三順位の抵当権を設定し,その登記がされている場合において,BF間で抵当権の順位の変更が合意されたとき,その登記をしなければ変更の効力は生じない。

    A〇  374条1項本文は,「抵当権の順位は,各抵当権者の合意によって変更することができる」と規定し,同条2項は,「前項の規定による順位の変更は,その登記をしなければ,その効力を生じない」と規定する。したがって, Aが,甲土地について,Eのために第二順位の抵当権,Fのために第三順位の抵当権を設定し,その登記がされている場合において,BF間で抵当権の順位の変更が合意されたとき,その登記をしなければ変更の効力は生じない。

  • Q  AがBに対する債務を担保するために,Aの所有する甲土地に第一順位の抵当権を設定し,その登記がされた。Aが,甲土地について, Gのために第二順位の抵当権,Hのために第三順位の抵当権を設定し,その登記がされている場合において,BのHに対する抵当権の順位の譲渡は,その登記をしなければ譲渡の効力は生じない。

    A×  376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放棄することができる」と規定し,376条2項は,「前項の場合において,抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは,その処分の利益を受ける者の権利の順位は,抵当権の登記にした付記の前後による」と規定するのみで,「抵当権の順位の譲渡は,その登記をしなければ譲渡の効力は生じない」とは規定していない。したがって, Aが,甲土地について, Gのために第二順位の抵当権,Hのために第三順位の抵当権を設定し,その登記がされている場合において, BのHに対する抵当権の順位の譲渡は,その登記をしなくても,譲渡の効力は生じる。

  • Q  AがBに対する債務を担保するために,Aの所有する甲土地に第一順位の抵当権を設定し,その登記がされた。Aが,甲土地について, Iのために第二順位の抵当権を設定し, その登記がされている場合において,BがIに対して抵当権の順位の放棄をしたときは,甲土地が競売されたときの配当において,IがBに優先する。

    A×  376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放棄することができる」と規定するところ,「抵当権······の順位」の「放乘」とは,先順位抵当権者の有する優先弁済権を後順位抵当権者との関係で主張しないことをいい,先順位抵当権者と後順位抵当権者は,債権額に応じて平等に優先弁済を受ける。したがって,Aが,甲土地について, 1のために第二順位の抵当権を設定し,その登記がされている場合において,Bが1に対して抵当権の順位の放棄をしたときは,甲土地が競売されたときの配当において, 1とBは,債権額に応じて平等に優先弁済を受ける。

  • Q  債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し,その旨の登記がされた。この場合における抵当権の消滅に関して、Aは,抵当権を実行することができる時から20年が経過すれば被担保債権が消滅していなくても,抵当権が時効により消滅したと主張することができる。

    A×  166条2項は,「債権又は所有権以外の財産権は,権利を行使することができる時から20年間行使しないときは,時効によって消減する」と規定するが,396条は,「抵当権は,債務者及び抵当権設定者に対しては, その担保する債権と同時でなければ,時効によって消滅しない」と規定する。したがって, Aは,抵当権を実行することができる時から 20年が経過しても,被担保債権が消滅していなければ,抵当権が時効により消滅したと主張することはできない。

  • Q  債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し,その旨の登記がされた。この場合における抵当権の消滅に関して、甲について,その後,AがCのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合において, BがAから甲を買い受けたときは,Bの抵当権は消滅しない。

    A〇  179条1項は,「同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは,当該他の物権は,消滅する。ただし,その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは,この限りでない」と規定する。したがって,甲について,その後,AがCのために抵当権を設定し,その旨の登記がされた場合は,「その物···が第三者の権利の目的であるとき」にあたるから,BがAから甲を買い受けたときであっても, Bの抵当権は消滅しない。

  • Q  債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し,その旨の登記がされた。この場合における抵当権の消滅に関して、Aの一般債権者が甲につき強制競売の申立てをし,当該強制競売手続において甲が売却されたときは,Bの抵当権は消滅する。

    A〇  民事執行法188条(第3章)は,「第44 条の規定は不動産担保権の実行について,前章第2節第1款第2日(第81条を除く。)の規定は担保不動産競売について,同款第3目の規定は担保不動産収益執行について準用する」と規定し,同法59条1項(第2章第2節第1款第2目)は,「不動産の上に存する先取特権,使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は,売却により消滅する」と規定する。したがって, Aの一般債権者が甲につき強制競売の申立てをし,当該強制競売手続において甲が売却されたときは,Bの抵当権は消滅する。

  • Q  債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し,その旨の登記がされた。この場合における抵当権の消滅に関して、甲について、その後,Aから譲渡担保権の設定を受けたDは,譲渡担保権の実行前であっても,抵当権消滅請求をすることにより,Bの抵当権を消滅させることができる

    A×  379 条は,「抵当不動産の第三取得者は,第383 条の定めるところにより,抵当権消滅請求をすることができる」と規定するが,判例(最判平7.11.10)は,「譲渡担保権者は,担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り,民法378条(注:379条〕所定の滁除権者たる第三取得者には該当せず,抵当権を縫除することができないものと解するのが相当である。けだし,滁除は,抵当不動産を適宜に評価した金額を抵当権者に弁済することにより抵当権の消減を要求する権限を抵当不動産の第三取得者に対して与え,抵当権者の把握する価値権と第三取得者の有する用益権との調整を図ることなどを目的とする制度であるが,抵当権者にとっては,抵当権実行時期の選択権を奪われ,增価による買受け及び保証の提供などの負担を伴うものであるところから,民法378条〔注:379条〕が滁除権者の範囲を『抵当不動産二付キ所有権,地上権又ハ永小作権ヲ取得シタル第三者』に限定していることにかんがみれば,右規定にいう滫除権者としての『所有権ヲ取得ンタル第三者』とは,確定的に抵当不動産の所有権を取得した第三取得者に限られるものと解すべきである。そして,不動産について譲渡担保が設定された場合には,債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ目的不動産の所有権移転の効力が生じるにすぎず,譲渡担保権者が目的不動産を確定的に自己の所有とするには,自己の債権額と目的不動産の価額との清算手続をすることを要し,他方,譲渡担保設定者は,譲渡担保権者が右の換価処分を完結するまでは,被担保債務を弁済して目的不動産を受け戻し,その完全な所有権を回復することができるのであるから·····,このような譲渡担保の趣旨及び効力にかんがみると,担保権を実行して右の清算手続を完了するに至らない譲渡担保権者は,いまだ確定的に目的不動産の所有権を取得した者ではなく,民法 378条[注:379条〕所定の滁除権者たる第三取得者ということができないからである」としているしたがってC,甲にこその後,Aから譲渡担保権の設定を受けたDは,譲渡担保権の実行後でなければ,抵当権消滅請求をすることにより,Bの抵当権を消滅させることはできない。

  • Q  債務者Aは債権者BのためにAの所有する不動産甲に抵当権を設定し,その旨の登記がされた。この場合における抵当権の消滅に関して、甲が建物である場合において,Aが故意に甲を焼失させたときはBの抵当権は消滅しない。

    A×  物権の一般原則に基づき,抵当権の目的物が減失した場合,抵当権は逍滅する。このことは,抵当権設定者が故意に目的物を滅失させた場合であっても変わらない。したがって,甲が建物である場合において,Aが故意に甲を焼失させたときでも, Bの抵当権は消滅する。

  • Q  AのBに対する1000万円の債権を担保するために甲土地及び乙土地に第一順位の抵当権が設定された場合。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地及び乙土地のいずれについてもそれぞれ1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。甲土地及び乙土地をBが所有し,甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を受けている場合,甲土地及び乙土地が同時に競売されたときは,Cは1000万円の配当を受けることができる。

    A×  392条1項は,「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは, その各不動産の価額に応じて, その債権の負担を按分する」と規定する。本肢では,「債権者」AがBに対する 1000 万円の債権という「同一の債権の担保として」B所有の甲土地及び乙土地という「数個の不動産につき」第一順位の「抵当権を有する場合」にあたる。また,甲土地及び乙土地が同時に競売されているため,「同時にその代価を配当すべきとき」にあたる。したがって,「その各不動産の価額」(甲土地:1000 万円,乙土地:1000万円)「に応じて,その債権の負担を按分する」ため,Aは,甲土地及び乙土地から500万円ずつの配当を受けることができる。一方,甲土地に第二順位の抵当権の設定を受けているCは,甲土地から残額500万円の配当を受けることができる。

  • Q  AのBに対する1000万円の債権を担保するために甲土地及び乙土地に第一順位の抵当権が設定された場合。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地及び乙土地のいずれについてもそれぞれ1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。甲土地及び乙土地をBが所有し,甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を,乙土地にDが1O00万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合,甲土地のみが競売されたときは,その後の乙土地の競売の際に,C及びDはそれぞれ500万円の配当を受けることができる。

    A〇  392条2項は,「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において,ある不動産の代価のみを配当すべきときは,抵当権者は,その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において,次順位の抵当権者は,その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として,その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる」と規定する。肢1の解説のとおり,本肢では,「債権者」AがBに対する1000 万円の債権という「同一の債権の担保として」B所有の甲土地及び乙土地という「数個の不動産につき」第一順位の「抵当権を有する場合」にあたる。また,甲土地のみが競売されているため,「ある不動産の代価のみを配当すべきとき」にあたる。したがって,「抵当権者」Aは,「その代価1000 万円「から債権の全部の弁済を受けることができる」ため,甲土地から 1000万円の配当を受けることができる。一方,「次順位の抵当権者」Bは,「その弁済を受ける抵当権者」A「が前項の規定に従い他の不動産」乙土地「の代価から弁済を受けるべき金額」500万円「を限度として, その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる」ため,乙土地から500万円の配当を受けることができる。

  • Q  AのBに対する1000万円の債権を担保するために甲土地及び乙土地に第一順位の抵当権が設定された場合。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地及び乙土地のいずれについてもそれぞれ1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。甲土地をBが,乙土地をEが所有し,甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を,乙土地にDが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合,甲土地のみが競売されたときは,その後の乙土地の競売の際に,Cは配当を受けることができず, Dは1000万円の配当を受けることができる。

    A〇  392 条2項は,「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において,ある不動産の代価のみを配当すべきときは,抵当権者は,その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において,次順位の抵当権者は,その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として,その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる」と規定する。一方,499条は,「債務者のために弁済をした者は,債権者に代位する」と規定する。そして,判例(最判昭44.7.3)は,「第二順位の抵当権者と物上保証人との関係についてみるに,右の例で乙不動産が第三者の所有であった場合に,たとえば,共同抵当権者が乙不動産のみについて抵当権を実行し,債権の満足を得たときは,右物上保証人は,民法500条[注:499条〕により,右共同抵当権者が甲不動産に有した抵当権の全額について代位するものと解するのが相当である。けだし,この場合,物上保証人としては,他の共同抵当物件である甲不動産から自己の求償権の満足を得ることを期待していたものというベく,その後に甲不動産に第二順位の抵当権が設定されたことにより右期待を失わしめるべきではないからである······。これを要するに,第二順位の抵当権者のする代位と物上保証人のする代位とが衝突する場合には,後者が保護されるのであって,甲不動産について競売がされたときは,もともと第二順位の抵当権者は,乙不動産について代位寸ることができない」としいる。したがって,甲土地をBが,乙土地をEが所有し,甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を,乙土地にDが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合,甲土地のみが競売されたときは,その後の乙土地の競売の際に,Cは配当を受けることができず,Dは 1000万円の配当を受けることができる

  • Q  AのBに対する1000万円の債権を担保するために甲土地及び乙土地に第一順位の抵当権が設定された場合。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地及び乙土地のいずれについてもそれぞれ1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。甲土地をBが,乙土地をEが所有し,甲土地にCが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を,乙土地にDが1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合,乙土地のみが競売されたときは,その後の甲土地の競売の際に,Cは1000万円の配当を受けることができ,Dは配当を受けることができない。

    A×  判例(最判昭53.7.4)は,「債務者所有の不動産と物上保証人所有の不動産とを共同抵当の目的として順位を異にする数個の抵当権が設定されている場合において,物上保証人所有の不動産につて先に競売がされ,その競落代金の交付に上り一番抵当権者が弁済を受けたときは,物上保証人は債務者に対して求償権を取得するとともに代位により債務者所有の不動産に対する一番抵当権を取得するが,後順位抵当権者は物上保証人に移転した右抵当権から優先して弁済を受けることができると解するのが,相当である。けだし,後順位抵当権者は,共同抵当の目的物のうち債務者所有の不動産の担保価値ばかりでなく,物上保証人所有の不動産の担保価値をも把握しうるものとして抵当権の設定を受けているのであり,一方,物上保証人は,自己の所有不動産に設定した後順位抵当権による負担を右後順位抵当権の設定の当初からこれを甘受しているものというべきであって,共同抵当の目的物のうち債務者所有の不動産が先に競売された場合,又は共同抵当の目的物の全部が一括競売された場合との均衡上,物上保証人所有の不動産について先に競売がされたという偶然の事情により,物上保証人がその求償権につき債務者所有の不動産から後順位抵当権者よりも優先して弁済を受けることができ,本来予定していた後順位抵当権による負担を免れうるというのは不合理であるから,物上保証人所有の不動産が先に競売された場合においては,民法 392条2項後段が後順位抵当権者の保護を図っている趣旨にかんがみ,物上保証人に移転した一番抵当権は後順位抵当権者の被担保債権を担保するものとなり,後順位抵当権者は,あたかも,右一番抵当権の上に民法372条,304条1項本文の規定により物上代位をするのと同様に,その順位に従い,物上保証人の取得した一番抵当権から優先して弁済を受けることができるものと解すべきであるからである」としているしたがって,甲土地をBが,乙土地をEが所有し,甲土地にCが 1000 万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定を,乙土地にDが 1000万円の債権を担保するために第二順位の抵当権の設定をそれぞれ受けている場合,乙土地のみが競売されたときは,その後の甲土地の競売の際に,Dは 1000 万円の配当を受けることができ,Cは配当を受けることができない。

  • Q  Aは,Bに対する600万円の債権を担保するため,B所有の甲土地及び乙土地に,第一順位の共同抵当権を有している。Cは, Bに対する400万円の債権を担保するため,甲土地に,第二順位の抵当権を有している。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地につき500万円,乙土地につき1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。Aが甲土地及び乙土地に設定された抵当権を同時に実行した場合,Aは甲土地から200万円,乙土地から400万円の配当を受け,Cは甲土地から300万円の配当を受けることができる

    A〇  392条1項は,「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において,同時にその代価を配当十べきときは, その各不動産の価額に応じて,その債権の負担を按分する」と規定する。本肢では,「債権者」AがBに対する600万円の債権という「同一の債権の担保として」B所有の甲土地及び乙土地という「数個の不動産につき」第一順位の「抵当権を有する場合」にあたる。また,Aが甲土地及び乙土地に設定された抵当権を同時に実行しているため,「同時にその代価を配当すべきとき」にあたる。したがって,「その各不動産の価額」(甲土地:500万円,乙土地:1000万円)「に応じて,その債権の負担を按分する」ため,Aは,甲土地から200 万円,乙土地から 400 万円の配当を受けることができる。一方,甲土地に第二順位の抵当権を有しているCは,甲土地から残額300万円の配当を受けることができる。

  • Q  Aは,Bに対する600万円の債権を担保するため,B所有の甲土地及び乙土地に,第一順位の共同抵当権を有している。Cは, Bに対する400万円の債権を担保するため,甲土地に,第二順位の抵当権を有している。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地につき500万円,乙土地につき1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。先に甲土地に設定された抵当権が実行されてAが500万円の配当を受け,その後に乙土地に設定された抵当権が実行された場合,Aは100万円の配当を受け,Cは300万円の配当を受けることができる。

    A〇  392条2項は,「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは,抵当権者は,その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において,次順位の抵当権者は,その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として,その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる」と規定する。肢1の解説のとおり,本肢では,「債権者」AがBに対する600万円の債権という「同一の債権の担保として」B所有の甲土地及び乙土地という「数個の不動産につき」第一順位の「抵当権を有する場合」にあたる。また,先に甲土地に設定された抵当権が実行されているため,「ある不動産の代価のみを配当すべきとき」にあたる。したがって,「抵当権者」Aは,「その代価」500 万円「から債権の全部の弁済を受けることができる」ため,甲土地から500万円の配当を受けることができる。また,その後に乙土地に設定された抵当権が実行された場合,Aは,被担保債権の残額 100万円の配当を受けることができる。一方,「次順位の抵当権者」Bは,「その弁済を受ける抵当権者」A「が前項の規定に従い他の不動産」乙土地「の代価から弁済を受けるべき金額」400万円「を限度として,その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる」ため,乙土地から残額 300 万円の配当を受けることができる。

  • Q  Aは,Bに対する600万円の債権を担保するため,B所有の甲土地及び乙土地に,第一順位の共同抵当権を有している。Cは, Bに対する400万円の債権を担保するため,甲土地に,第二順位の抵当権を有している。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地につき500万円,乙土地につき1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。

    A×  先に乙土地に設定された抵当権が実行された場合,Aは被担保債権額600万円の配当を受けることができ,付従性により,Aの有している甲土地の第一順位の抵当権は消滅する。これにより,Cは甲土地の第1順位の抵当権者となるため,その後に甲土地に設定された抵当権が実行されたときには,Cは被担保債権額400万円の配当を受けることができる

  • Q  Aは,Bに対する600万円の債権を担保するため,B所有の甲土地及び乙土地に,第一順位の共同抵当権を有している。Cは, Bに対する400万円の債権を担保するため,甲土地に,第二順位の抵当権を有している。なお,各記述において,競売の結果として債権者に配当することが可能な金額は,甲主地につき500万円,乙土地につき1000万円であり,また,各債権者が有する債権の利息及び損害金は考慮しないものとする。Aが乙土地に設定された抵当権を放棄した後に,甲土地に設定された抵当権が実行された場合,Aは200万円の配当を受け,Cは300万円の配当を受けることができる。

    A〇  判例(大判昭 11.7.14)は,「抵当権の一部(即ち,同一債権の担保たる数個の抵当不動産中の或ものに対する抵当権)を放棄したりとて,其の殘部の抵当権(即ち,爾余の不動産に対する抵当権)は勿論存在するが故に,其の行使を為し得さるの道理無し。唯,本件の如場合に於ては,抵当権を実行し競売代金の配当を為すに当り,先順位抵当権者は其の放乘の目的たる抵当物件の価額に準じ,次順位抵当権者に対し優先弁済を受くるを得さるは必しも多言を俟らず。這ば民法第 392 条及第504条の法意を類推するに依りて知るを得ベし。例えば,甲は其の債権の為め,イ及口不動産に対し一番抵当権を有し,乙は其の債権の為め,イ不動産に対し二番抵当権を有すとせかに,甲がロ不動産に対する抵当権を放乘したるときは,他日イ不動産に対する抵当権を実行し其の競売代金を配当する場合に,若し右の放乘無かりしならば乙が民法第 392条第2項に依り,口不動産に付き代位を為すを得べかりし限度に於て,甲は乙に対し優先弁済を受くるを得ざるものとす」としているここで,Cは, Aが乙土地に設定された抵当権を放棄しなかったならば,392条2項により,乙土地について300万円の限度でAの抵当権に代位1することができたため,Aは,Cに300 万円については優先弁済を受けることができない。したがって,Aが乙土地に設定された抵当権を放棄した後に,甲土地に設定された抵当権が実行された場合,Aは 200 万円の配当を受け,Cは300万円の配当を受けることができる。

  • Q  第一順位の根抵当権者は,後順位の担保権者が目的不動産について申し立てた競売手続が開始しても,競売時期の選択について後順位の担保権者より優先するから,元本を確定させず,競売手続を止めることができる。

    A×  398条の20第1項柱書は,「次に掲げる場合には,根抵当権の担保すべき元本は,確定する」と規定し,同項3号は,「根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始又は滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したとき」を挙げる。したがって,第一順位の根抵当権者が,後順位の担保権者が目的不動産について申し立てた競売手続が開始したことを知った時から2週間を経過したときは,元本は確定し,第一順位の根抵当権者は,競売手続を止めることはできない。

  • Q根抵当権も元本が確定すれば普通抵当権と同じに扱われるから,被担保債権の利息や損害金のうち根抵当権によって担保される部分は,最後の2年分に限定される。

    A×  398条の3第1項は,「根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができる」と規定する。したがって,被担保債権の利息や損害金のうち根抵当権によって担保される部分は,最後の2年分に限定されない。なお,375条1項本文は,「抵当権者は,利息その他の定期金を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その抵当権を行使することができる」と規定する。

  • Q根抵当権が優先的に弁済を受ける限度は極度額によって定まっており,後順位担保権者や一般債権者は,どのような債権が担保されるのかについては利害関係を有しないから,被担保債権の範囲の限定は,もっぱら抵当権設定者の保護を目的としている

    A×  398条の2第1項は,「抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる」と規定し,包括根抵当(債権者債務者間の全債権を被担保債権とする根抵当権)を否定しているところ,これは,包括根抵当が後順位抵当権者や一般債権者の利益を害すると考えられたからである。したがって,被担保債権の範囲の限定は,もっぱら抵当権設定者の保護を目的としているとはいえない。

  • Q根抵当権の元本の確定前であっても,弁済期が到来した被担保債権をすべて弁済した第三者は,債務者に対する求償権を確実にするため,根抵当権者に代位して,根抵当権を行使することができる。

    A×  398条の7第1項は,「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も,同様とする」と規定する。したがって,根抵当権の元本の確定前に,弁済期が到来した被担保債権をすべて弁済した第三者は,根抵当権者に代位して,根抵当権を行使することはできない。

  • Q元本確定前の根抵当権は,被担保債権とは切り離された極度額の価値支配権であるから,その全部又は一部を譲渡することができるが,債務者や被担保債権も変わり得るから,根抵当権設定者の承諾を得なければならない。

    A〇  398条の12第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権者は,根抵当権設定者の承諾を得て,その根抵当権を譲り渡すことができる」と規定し,398条の13は,「元本の確定前においては,根抵当権者は,根抵当権設定者の承諾を得て,その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため,これを分割しないで譲り渡すことをいう、·····) をすることができる」と規定する。したがって,元本確定前の根抵当権は,その全部又は一部を譲渡することができるが,根抵当権設定者の承諾を得なければならない。

  • Q手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の被担保債権と定める場合においても,第三者が振り出し,債務者が裏書した手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の被担保債権とすることはできない。

    A×  398条の2第2項は,「前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は,債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して,定めなければならない」と規定するが,同条3項は,「特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権,手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権······は,前項の規定にかかわらず,根抵当権の担保すべき債権とすることができる」と規定する。したがって,手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の被担保債権と定める場合においては,第三者が振り出し,債務者が裏書した手形上又は小切手上の請求権を根抵当権の被担保債権とすることもできる。

  • Q根抵当権の元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は,その債権について当該根抵当権を行使することはできない。

    A〇  398条の7第1項前段は,「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することができない」と規定する。

  • Q元本確定前において根抵当権の担保すべき債権の範囲及び債務者についての変更は,後順位抵当権者がいる場合は,その承諾を得なければすることができない。

    A×  398条の4第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても,同様とする」と規定し,同条2項は,「前項の変更をするには,後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」と規定する。したがって,元本確定前において根抵当権の担保すべき債権の範囲及び債務者についての変更は,後順位抵当権者がいる場合でも,その承諾を得る必要はない。

  • Q元本確定前に根抵当権者が死亡して相続が開始した場合において,根抵当権者の相続人と根抵当権の設定者との間でその根抵当権を承継する相続人を合意しなかったときは,その根抵当権の担保すべき元本は,根抵当権者の相続開始の時に確定する

    A〇  398条の8第1項は,「元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは,根抵当権は,相続開始の時に存する債権のほか,相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する」と規定し,同条4項は,「第1項及び第2項の合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは,担保すべき元本は,相続開始の時に確定したものとみなす」と規定する。したがって,元本確定前に根抵当権者が死亡して相続が開始した場合において,根抵当権者の相続人と根抵当権の設定者との間でその根抵当権を承継する相続人を合意しなかったときは,その根抵当権の担保すべき元本は,根抵当権者の相続開始の時に確定する。

  • Q元本確定後の根抵当権は,極度額を限度として,元本のほか,利息及び遅延損害金がある場合には,2年を超える利息及び遅延損害金についても行使することができる。

    A〇  398条の3第1項は,「根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として, その根抵当権を行使することができる」と規定する。したがって,元本確定後の根抵当権は,極度額を限度として,元本のほか,利息及び遅延損害金がある場合には,2年を超える利息及び遅延損害金についても行使することができる。なお,375条1項本文は,「抵当権者は,利息その他の定期金を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その抵当権を行使することができる」と規定する。

  • Q根抵当権者は,元本確定前の根抵当権の全部又は一部を譲渡することができるが,その場合,根抵当権設定者の承諾を得る必要はない。

    A×  398条の12第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権者は,根抵当権設定者の承諾を得て,その根抵当権を譲り渡すことができる」と規定し,398条の13は,「元本の確定前においては,根抵当権者は,根抵当権設定者の承諾を得て,その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため,これを分割しないで譲り渡すことをいう。······)をすることができる」と規定する。したがって,根抵当権者は,元本確定前の根抵当権の全部又は一部を譲渡することができるが,その場合,根抵当権設定者の承諾を得る必要がある

  • Q元本確定前において,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更を寸るときは,後順位抵当権者の承諾を得なければならない。

    A×  398条の4第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても,同様とする」と規定し,同条2項は,「前項の変更をするには,後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」と規定する。したがって,元本確定前において,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をするときは,後順位抵当権者の承諾を得る必要はない。

  • Q根抵当権の債務者の変更は,元本確定前に登記をしなかったときは,その変更をしとものとみなされる

    AO   398条の4第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても,同様とする」と規定するが,同条3項は,「第1項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは,その変更をしなかったものとみなす」と規定する。したがって,根抵当権の債務者の変更は,元本確定前に登記をしなかったときは,その変更をしなかったものとみなされる。

  • Q根抵当権の設定時に元本確定期日を定めなかった場合,当該根抵当権の設定は無効である

    A×  398条の6第1項は,「根抵当権の担保すべき元本については,その確定ナベき期日を定め又は変更することができる」と規定しており,根抵当権の設定時に元本確定期日を定めなくても良いことを前提としている。したがって,根抵当権の設定時に元本確定期日を定めなかった場合でも,当該根抵当権の設定は有効である。

  • Q元本の確定した根抵当権は,確定した元本のほか,その利息についも,極度額を限度として担保する

    .A〇  398条の3第1項は,「根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として, その根抵当権を行使することができる」と規定する。したがって,元本の確定した根抵当権は,確定した元本のほか,その利息についても,極度額を限度として担保する。なお,375条1項本文は,「抵当権者は,利息その他の定期金を請求する権利を有するときは,その満期となった最後の2年分についてのみ,その抵当権を行使することができる」と規定する。

  • Q元本の確定前において債務者を変更するには,後順位の抵当権者の承諾を得なければならない。

    A×  398条の4第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても,同様とする」と規定し,同条2項は,「前項の変更をするには,後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」と規定する。したがって,元本の確定前において債務者を変更するには,後順位の抵当権者の承諾を得る必要はない。

  • Q根抵当権者は,担保すべき元本の確定すべき期日の定めがない場合,いつでも,担保すベき元本の確定を請求することができる。

    A〇  398条の19第2項前段は,「根抵当権者は,いつでも,担保すべき元本の確定を請求することができる」と規定し,同条3項は,「前2項の規定は,担保すべき元本の確定すベき期日の定めがあるときは,適用しない」と規定する。したがって,根抵当権者は,担保すべき元本の確定すべき期日の定めがない場合,いつでも,担保すべき元本の確定を請求することができる。

  • Q根抵当権者は,根抵当権を実行した場合,当該競売手続において極度額を超える部分について配当を受けることはない。

    A〇  398条の2第1項は,「抵当権は,設定行為で定めるところにより,一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる」と規定し,398条の3第1項は,「根抵当権者は,確定した元本並びに利息その他の定期金及ぴ債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができる」と規定するところ,判例(最判昭 48.10.4)は,「根抵当権については,その極度額の定めが債権元本の限度を意味することが登記上明白である場合を除き,一般には民法 374 条の適用がないと解すべきであリ·····,したがって,根抵当権者は,右元本極度額としての登記がある場合以外は,利息または損害金と元本とを合意した総額が極度額を越えない限り,その被担保債権額の全部について優先弁済をうけることができるけれども,極度額を越える部分については優先弁済権を主張することができないものであるとともに根抵当権についての極度額の定めは,単に後順位担保権者など第三者に対する右優先弁済権の制約たるにとどまらず,さらに進んで,根抵当権者が根抵当権の目的物件について有する換価権能の限度としての意味を有するものであって,その結果,根抵当権者は,後順位担保権者など配当をうけることのできる第三者がなく,競売代金に余剰が生じた場合でも,極度額を越える部分について,当該競売手続においてはその交付をうけることができないものと解するのが相当である」としている。したがって,根抵当権者は,根抵当権を実行した場合,当該競売手続において極度額を超える部分について配当を受けることはない。

  • Q根抵当権の極度額の減額をするには,利害関係を有する者の承諾を得ることを要しない。

    A×  398条の5は,「根抵当権の極度額の変更は,利害関係を有する者の承諾を得なければすることができない」と規定する。したがって,根抵当権の極度額の減額をするには,利害関係を有する者の承諾を得ることを要する。

  • Q元本の確定後においては,根抵当権設定者は,その根抵当権の極度額を,現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。

    A〇  398条の21第1項は,「元本の確定後においては,根抵当権設定者は,その根抵当権の極度額を,現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害暗償の額とを加えた額に减額することを請求することができる」と規定する。

  • Q債務者Aが債権者Bのために自已の所有する不動産に根抵当権を設定した場合に関して、Bは,元本の確定前は,Aに対する他の債権者Cに対してその順位を譲渡することができる。

    A×  398条の11第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権者は,第376条第1項の規定に上る根抵当権の処分をすることができない。ただし,その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない」と規定するところ,376条1項は,「抵当権者は,その抵当権を他の債権の担保とし,又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し,若しくは放棄することができる」と規定する。したがって, Bは,元本の確定前は,Aに対する他の債権者Cに対してその順位を譲渡することができない。

  • Q債務者Aが債権者Bのために自已の所有する不動産に根抵当権を設定した場合に関して、Bの根抵当権にDのために転根抵当権が設定され,BがAに転根抵当権の設定の通知をした場合,Aは,元本の確定前であれば,Dの承諾を得なくてもBに弁済することができる。

    A〇  398条の11第1項は,「元本の確定前においては,根抵当権者は,第376 条第1項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし,その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない」と規定し,同条2項は,「第377条第2項の規定は,前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については,滴用しない」と規定寸る。そして,377条2項は,「主たる債務者が前項の規定により通知を受け,又は承諾をしたときは,抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は,その受益者に対抗することができない」と規定する。したがって, Bの根抵当権にDのために転根抵当権が設定され,BがAに転根抵当権の設定の通知をした場合,Aは,元本の確定前であれば,Dの承諾を得なくてもBに弁済することができる。

  • Q債務者Aが債権者Bのために自已の所有する不動産に根抵当権を設定した場合に関して、元本の確定前に,Bが根抵当権によって担保されていた債権をEに譲渡した場合,それに伴って根抵当権もEに移転する。

    A×  398条の7第1項前段は,「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することができない」と規定寸る。したがって,元本の確定前に,Bが根抵当権によって担保されていた債権をEに譲渡した場合でも,それに伴って根抵当権はEに移転しない。

  • Q債務者Aが債権者Bのために自已の所有する不動産に根抵当権を設定した場合に関して、後順位抵当権者Fがいる場合,A及びBが元本確定期日を変更するためには,Fの承諾が必要である。

    A×  398条の6第1項は「根抵当権の担保すべき元本については,その確定すベき期日を定め又は変更することができる」と規定し,同条第2項は「第398条の4第2項の規定は,前項の場合について準用する」と規定する。そして, 398条の4第2項は「前項の変更をするには,後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」 としている。したがって,後順位抵当権者Fがいる場合でも,A及びBが元本確定期日を変更するためには,Fの承諾は必要ない。

  • Q債務者Aが債権者Bのために自已の所有する不動産に根抵当権を設定した場合に関して、Bが数個の不動産について根抵当権を有する場合,同一の債権の担保として数個の不動産の上に根抵当権が設定された旨の登記がその設定と同時にされたときを除き,各不動産の代価についてそれぞれの極度額まで優先権を行使することができる。

    A〇  398条の18は,「数個の不動産につき根抵当権を有する者は,第398条の16 の場合を除き,各不動産の代価について,各極度額に至るまで優先権を行使することができる」と規定し,398条の16は,「第392条及び第393条の規定は,根抵当権については,その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り,適用する」と規定するしたがって,Bが数個の不動産について根抵当権を有する場合,同一の債権の担保として数個の不動産の上に根抵当権が設定された旨の登記がその設定と同時にされたときを除き,各不動産の代価についてそれぞれの極度額まで優先権を行使することができる

  • Q譲渡担保権者が,被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合,譲渡担保を設定した債務者は,譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときでも,債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。

    A〇  判例(最判平6.2.22 【百選I98】)は,「不動産を目的とする譲渡担保契約において,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には,債権者は,右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず,目的物を処分する権能を取得するから,債権者がこの権能に基づいて且的物を第三者に譲渡したときは,原則として,譲受人仕目的物の所有権を確定的に取得し,債務者は,清算金がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるにとどまり,残債務を弁済して目的物を受け戻寸ことはできなくなるものと解するのが相当である······。この理は,譲渡を<受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たるも異なるところはない。けだし,そのように解さないと,権利関係の確定しない状態が続くばかりでなく,譲受人が背信的悪意者に当たるかどうかを確知し得る立場にあるとは限らない債権者に,不測の損害を被らせるおそれを生ずるからである」とするしたがって,譲渡担保権者が,被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合,譲渡担保を設定した債務者は,譲受人がいわゆる背信的悪意者にあたるときでも,債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。

  • Q担保権実行としての取立ての通知をするまでは,譲渡した債権の取立権限を譲渡担保権設定者に付与する旨の債権譲渡担保契約も有効であり,このような取立権付与付の債権譲渡も,通常の債権譲渡の対抗要件の方法で対抗力を備える。

    A〇  判例(最判平13.11.22 【百選I100】)は,[甲が乙に対する金銭債務の担保として,発生原因となる取引の種類,発生期間等で特定される甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとL, 乙が丙に対し担保権実行として取立ての通知をするまでは,譲渡債権の取立てを甲に許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないこととした甲,乙間の債権譲渡契約は,いわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約といわれるものの1つと解される。この場合は,既に生じ,又は将来生ずべき債権は,甲から乙に確定的に譲渡されており,ただ,甲,乙間において,乙に帰属した債権の一部について,甲に取立権限を付与し,取り立てた金銭の乙への引渡しを要しないとの合意が付加されているものと解すべきである。したがって,上記債権譲渡について第三者対抗要件を具備するためには,指名債権譲渡〔注:債権譲渡〕の対抗要件(民法 467条2項)の方法によることができるのであり,その際に,丙に対し,甲に付与された取立権限の行使への協力を依頼したとしても,第三者対抗要件の効果を妨げるものではない」としているしたがって,担保権実行としての取立ての通知をするまでは,譲渡した債権の取立権限を譲渡担保権設定者に付与する旨の債権譲渡担保契約も有効であり,このような取立権付与付の債権譲渡も,通常の債権譲渡の対抗要件の方法で対抗力を備える。なお,467条1項は,「債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含起。)は,譲渡人が債務者に通知をし,又は債務者が承諾をしなければ,債務者その他の第三者に対抗することができない」と規定し,同条2項は,「前項の通知又は承諾は,確定日付のある証書によってしなければ,債務者以外の第三者に対抗することができない」と規定する。

  • Q譲渡担保の目的となっている商品を,譲渡担保権者の許諾を得て譲渡担保権設定者が第三者に譲渡した場合,転売代金債権に対して譲渡担保権者の物上代位権を認めることはできない。

    A×  判例(最決平11.5.17)は,要旨,銀行甲が,輸入業者乙のする商品の輸入について信用状を発行し,約束手形の振出しを受ける方法により乙に輸入代金決済資金相当額を貸し付けるとともに,乙から右約束手形金債権の担保として輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上,乙に右商品の貸渡しを行ってその処分権限を与えたところ,乙が,右商品を第三者に転売した後,破産の申立てをしたことにより右約束手形金債務につき期限の利益を失ったという事実関係の下においては,甲は,右商品に対する譲渡担保権に基く物上代位権の行使としされた右商品の売買代金債権を差:0し押さえることができる,上1したがって,譲渡担保の目的となっている商品を,譲渡担保権者の許諾を得て譲渡担保権設定者が第三者に譲渡した場合,転売代金債権に対して譲渡担保権者の物上代位権を認めることができる。

  • Q債務を弁済しないときには被担保債務の代物弁済として債務者所有マの不動産の所有権を債権者に確定的に帰属させる旨の合意があっても,目的物の評価額若しくは処分額が被担保債権額を上回る場合には,債権者に清算金支払義務が生じ,債務者は,債権者の目的物引渡請求に対して,清算金の支払との同時履行を主張することができる。

    A〇  判例(最判昭46.3.25【百選I97】)は,「貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保形式の契約を締結し,債務者が弁済期に債務を弁済すれば不動産は債務者に返還するが,弁済をしないときは右不動産を債務の弁済の代わりに確定的に自已の所有に帰せしめるとの合意のもとに,自己のため所有権移転登記を経由した債権者は,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合においては,目的不動産を換価処分し,またはこれを適正に評価することによって具体化する右物件の価額から,自己の債権額を差引き,なお残額があるときは,これに相当する企銭を清算金として債務者に支払うことを要するのである。そして,この担保目的実現の手段として,債務者に対し右不動産の引渡ないし明渡を求める訴を提起した場合に,債務者が右清算金の支払と引換えにその履行をなすべき旨を主張したときは,特段の事情のある場合を除き,債権者の右請求は,債務者への清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものと解するのが相当である」としている。したがって、債務を弁済しないときには被担保債務の代物弁済として債務者所有の不動産の所有権を債権者に確定的に帰属させる旨の合意があっても,目的物の評価額若しくは処分額が被担保債権額を上回る場合には債権者に清算金支払義務が生じ,債務者は,債権者の目的物引渡請求に対して,清算金の支払との同時履行を主張することができる。

  • Q譲渡担保権を設定した会社について会社更生手続が開始されたときは,譲渡担保権者は,会社更生手続によって権利を行使すべきであり,目的物の所有権を主張して取戻権を行使することはできない。

    A〇  判例(最判昭41.4.28)は,「譲渡担保権者は,更生担保権者に準じてその権利の届出をなし,更生手続によってのみ権利行使をなすべきものであり,日的物に対する所有権を主張して,その引渡を求めることはできないものといラベく,すなわち取戻権を有しないと解するのが相当である」としている。したがって,譲渡担保権を設定した会社について会社更生手続が開始されたときは,譲渡担保権者は,会社更生手続によって権利を行使すべきであり,目的物の所有権を主張して取戻権を行使することはできない。

  • Q  Aは,その所有する不動産を目的として, Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。Aが弁済期に債務を弁済しないため,Bが目的不動産を第三者に譲渡し所有権移転登記がされた場合,譲受人がいわゆる背信的悪意者であるときは,Aは残債務を弁済して目的不動産を受け戻し,譲受人に対し,所有権の回復を主張することができる。

    A×  判例(最判平6.2.22【百選I98】)は,「不動産を目的とする譲渡担保契約において,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には、債権者は,右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず,目的物を処分する権能を取得するから債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは,原則として譲受人仕目的物の所有権を確定的に取得し,債務者は,清算企がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるにとどまり,残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなるものと解するのが相当である·····。この理は,譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合であっても異なるところはない。けだし,そのように解さないと,権利関係の確定しない状態が続くばかりでなく,譲受人が背信的悪意者に当たるかどうかを確知し得る立場にあるとは限らない債権者に,不測の損害を被らせるおそれを生ずるからである」としている。したがって,Aが弁済期に債務を弁済しないため,Bが目的不動産を第三者に譲渡し所有権移転登記がされた場合は,譲受人がいわゆる背信的悪意者であるときでも, Aは残債務を弁済して目的不動産を受け戻し,譲受人に対し,所有権の回復を主張することができない。

  • Q  Aは,その所有する不動産を目的として, Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。Aが弁済期に債務を弁済し,譲渡担保権が消滅した後に,Bが目的不動産を第三者に譲渡した場合,譲受人がいわゆる背信的悪意者でない限り,Aは,登記をしなければ不動産の所有権を譲受人に対抗することができない。

    AO判例(最判昭62.11.12)は,「不動産が譲渡担保の目的とされ,設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記が経由された場合において,被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは,右第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合は格別,そうでない限り,譲渡担保設定者は,登記がなければ, その所有権を右第三者に対抗することができないものと解するのが相当である」としているしたがって,Aが弁済期に債務を弁済し,譲渡担保権が消滅した後に,Bが目的不動産を第三者に譲渡した場合,譲受人がいわゆる背信的悪意者でない限り,Aは,登記をしなければ不動産の所有権を譲受人に対抗することができない。

  • Q  Aは,その所有する不動産を目的として, Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。譲渡担保が帰属清算型の場合は,清算金の有無及びその額は,BがAに対し,清算金の支払若しくはその提供をした時,又は目的不動産の適正評価額が債務額を上回らない旨を通知した時を基準として確定される。

    A〇 判例(最判昭 62.2.12)は,「債務者がその所有不動産に譲渡担保権を設定した場合において,債務者が債務の履行を遅滞したときは,債権者は,目的不動産を処分する権能を取得し,この権能に基づき,目的不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめるか又は第三者に売却等をすることによって,これを換価処分し,その評価額又は売却代金等をもって自己の債権(換価に要した相当費用額を含む。)の弁済に充てることができ,その結果剩余が生じるときは,これを清算金として債務者に支払うことを要するものと解すべきであるが······,他方,弁済期の経過後であっても,債権者が担保権の実行を完了するまでの間,すなわち,(イ)債権者が目的不動産を適正に評価してその所有権を自已に帰属させる帰属渣算型の譲渡担保においては,債権者が債務者に対し,目的不動産の適正評価額が債務の額を上回る場合にあっては清算金の支払又はその提供をするまでの間,目的不動産の適正評価額が債務の額を上回らない場合にあってはその旨の通知をするまでの間,(口)目的不動産を相当の価格で第三者に売却等をする処分清算型の譲渡担保においては,その処分の時までの間は,債務者は,債務の全額を弁済して譲渡担保権を消滅させ,目的不動産の所有権を回復すること(以下,この権能を「受戻権」という。)ができるものと解するのが相当である···けだし,譲渡担保契約の目的は,債権者が目的不動産の所有権を取得すること自体にあるのではなく,当該不動産の有する金銭的価値に着目し,その価値の実現によって自己の債権の排他的満足を得ることにあり,目的不動産の所有権取得はかかる金銭的価値の実現の手段にすぎないと考えられるからである」としているしたがって,譲渡担保が帰属清算型の場合は,清算金の有無及びその額は,BがAに対し,清算金の支払若しくはその提供をした時,又は目的不動産の適正評価額が債務額を上回らない旨を通知した時を基準として確定される。

  • Q  Aは,その所有する不動産を目的として, Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。Bが,譲渡担保権の実行として, Aに対し目的不動産の引渡しを求める訴えを提起したのに対し,Aが清算金の支払と引換えにその履行をすべき旨を主張したときは,特段の事情のある場合を除き,Bの請求は,Aヘの清算金の支払と引換えにのみ認容される

    A〇  判例(最判昭46.3.25【百選I97】)は,「貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保形式の契約を締結し,債務者が弁済期に債務を弁済すれば不動産は債務者に返還するが,弁済をしないときは右不動産を債務の弁済の代わりに確定的に自己の所有に帰せしめるとの合意のもとに,自己のため所有権移転登記を経由した債権者は,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合においては,目的不動産を換価処分し,またはこれを適正に評価することによって具体化する右物件の価額から,自己の債権額を差引き,なお残額があるときは,これに相当する金銭を清算金として債務者に支払うことを要するのである。そして,この担保目的実現の手段として、債務者に対し右不動産の引渡ないし明渡を求める訴を提起した場合に,債務者が右清算金の支払と引換えにその履行をなすベき旨を主張したときは,特段の事情のある場合を除き,債権者の右請求は,債務者への渣算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものと解するのが相当である」としている。したがって, Bが,譲渡担保権の実行として, Aに対し目的不動産の引渡しを求める訴えを提起したのに対し,Aが清算金の支払と引換えにその履行をすベき旨を主張したときは,特段の事情のある場合を除き,Bの請求は,Aヘの清算金の支払と引換えにのみ認容される。

  • Q  Aは,その所有する不動産を目的として, Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。目的不動産が,Aが第三者から賃借する土地上の建物であり,BがA当該建物の引渡しを受けて現実に使用収益をする場合であってもまだ譲渡担保権が実行されておらず,Aによる受戻権の行使が可能な状態にあれば,敷地について賃借権の譲渡又は転貸は生じていないから,土地賃貸人は,賃借権の無断譲渡又は無断転貸を理由として土地賃貸借契約の解除をすることができない。

    A×  判例(最判平9.7.17)は,「借地人が借地上に所有する建物につき譲渡担保権を設定した場合には,建物所有権の移転は債権担保の趣旨でされたものであって,譲渡担保権者によって担保権が実行されるまでの間は,譲渡担保権設定者は受戻権を行使して建物所有権を回復することができるのであり,譲渡担保権設定者が引き続き建物を使用している限り,右建物の敷地について民法612 条にいう賃借権の譲渡又は転貸がされたと解することはでかし,地上建物につき譲渡担保権が設定された場合で-2あっても,譲渡担保権者が建物の引渡しを受けて使用又は収益をするときは,いまだ譲渡担保権が実行されておらず,譲渡担保権設定者による受戻権の行使が可能であるとしても,建物の敷地につて民法 612 条にいう賃借権の譲渡又は転貸がされたものと解するのが相当であり,他に賃貸人に対する信頓関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情のない限り,賃貸人は同条2項により土地賃貸借契約を解除することができるものというべきである。けだし,(1)民法612条は,賃貸借契約における当事者間の信頼関係を重視して,賃借人が第三者に賃借物の使用又仕収益をさせるためには賃貸人の承諾を要するものとしているのであって,賃借人が賃借物を無断で第三者に現実に使用又は収益させることが,正に契約当事者間の信頼関係を破壊する行為となるものと解するのが相当であり,(2)譲渡担保権設定者が従前どおり建物を使用している場合には,賃借物たる敷地の現実の使用方法,占有状態に変更はないから,当事者間の信頼関係が破壊されるということはできないが,(3)譲渡担保権者が建物の使用収益をする場合には,敷地の使用主体が替わることによって,その使用方法,占有状態に変更を来し,当事者間の信頼関係が破壊されるものといわざるを得ないからである」としている。したがって,目的不動産が,Aが第三者から賃借する土地上の建物である場合において,いまだ譲渡担保権が実行されておらず,Aによる受戻権の行使が可能な状態にあっても, Bが当該建物の引渡しを受けて現実に使用収益をする場合は,敷地について賃借権の譲渡又は転貸が生じたといえるから,土地賃貸人は,賃借権の無断譲渡又は無断転貸を理由として土地賃貸借契約の解除をすることができる。

  • Q債務者である土地の賃借人が,借地上に所有している建物を譲渡担保の目的物とした場合において,譲渡担保権の効力は,土地の賃借権に及ぶので,譲渡担保権者が担保権を実行し,これにより第三者がその建物の所有権を取得したときは,これに伴い土地の賃借権も第三者に譲渡される

    A〇  判例(最判昭51.9.21)は,「債務者である土地の賃借人がその賃借地上に所有する建物を譲渡担保とした場合には,その建物のみを担保の目的に供したことが明らかであるなど特別の事情がない限り,右譲渡担保権の効力は,原則として土地の賃借権に及び,債権者が担保権の実行としての換価処分により建物の所有権をみずから確定的に取得し又仕第三者にこれを取得させたときは,これに随伴して土地の賃借権もまた債権者又は第三者に譲渡されると解すべきである」としている。したがって,債務者である土地の賃借人が,借地上に所有している建物を譲渡担保の目的物とした場合において,譲渡担保権の効力は,土地の賃借権に及ぶので,譲渡担保権者が担保権を実行し,これにより第三者がその建物の所有権を取得したときは,これに伴い土地の賃借権も第三者に譲渡される。

  • Q譲渡担保権の設定者は,被担保債権が弁済期を経過した後においては,譲渡担保の目的物についての受戻権を放棄し,譲渡担保権者に対し,譲渡担保の目的物の評価額から被担保債権の額を控除した金額の清算金を請求することができる。

    A×判例(最判平 8.11.22)は,「譲渡担保権設定者は,譲渡担保権者が清算金の支払又は提供をせず清算金がない旨の通知もしない間に譲渡担保の目的物の受戻権を放棄しても譲渡担保権者に対して清算金の支払を請求することはできないものと解すべきである。けだし,譲渡担保権設定者の清算金支払請求権は,譲渡担保権者が譲渡担保権の実行として目的物を自己に帰属させ又は換価処分する場合において,その価額から被担保債権額を控除した残額の支払を請求する権利であり,他方,譲渡担保権設定者の受戻権は,譲渡担保権者において譲渡担保権の実行を完結するまでの間に,弁済等によって被担保債務を消滅させることにより譲渡担保の目的物の所有権等を回復する権利であって,両者はその発生原因を異にする別個の権利であるから,譲渡担保権設定者において受戻権を放棄したとしてその効果は受戻権が放棄されたという状況を現出するにとどまり,右受戻権の放棄により譲渡担保権設定者が清算金支払請求権を取得することとなると解することはできないからである。また,このように解さないと,譲渡担保権設定者が,受戻権を放棄することにより,本来譲渡担保権者が有している譲渡担保権の実行の時期を自ら決定する自由を制約し得ることとなり,相当でないことは明らかである」としている。したがって,譲渡担保権の設定者は,被担保債権が弁済期を経過した後において,譲渡担保の目的物についての受戻権を放棄し,譲渡担保権者に対し,譲渡担保の目的物の評価額から被担保債権の額を控除した金額の清算金を請求することができない。

  • Q譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は,強行法規や公序良俗に反しない限り,設定契約の当事者間において元本,利息及び遅延損害金について自由に定めることができ,抵当権の場合におけるような制限はない。

    A〇  判例(最判昭 61.7.15)は,「譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲については,強行法規又は公序良俗に反しない限り,その設定契約の当事者間において自由にこれを定めることができ,第三者に対する関係においても,抵当権に関する民法374条[注:375条〕又は根抵当権に関する同法398条ノ3の規定に準ずる制約を受けないものと解すべき」としている。したがって,譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は,強行法規や公序良俗に反しない限り,設定契約の当事者間において元本,利息及び遅延損害金について自由に定めることができ,抵当権の場合におけるような制限はない。

  • Q債務者が債務の履行を遅滞したときは,帰属清算型の譲渡担保であっても,譲渡担保権者は,目的不動産を処分する権限を取得する。

    A〇  判例(最判平 6.2.22 【百選I98】)は,「不動産を目的とする譲渡担保契約において,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には,債権者は,右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず,目的物を処分する権能を取得する」 としているしたがって,債務者が債務の履行を遅滞したときは,帰属清算型の譲渡担保であっても,譲渡担保権者は,目的不動産を処分する権限を取得する。

  • Q被担保債権の弁済期が到来し,債務者が被担保債権を弁済した後に,譲渡担保権者が目的不動産を第三者に売却した場合には,当該第三者は,被担保債権が弁済されていることについて知らないで,かつ,知らないことに過失がないときに限り,目的不動産の所有権を取得する。

    A×  判例(最判昭62.11.12)は,「不動産が譲渡担保の目的とされ,設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記が経由された場合において,被担保債務の弁済等に上り譲渡担保権が消滅した後に目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは,右第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合は格別,そうでない限り,譲渡担保設定者は,登記がなければ,その所有権を右第三者に対抗することができないものと解するのが相当である」としている。したがって,被担保債権の弁済期が到来し,債務者が被担保債権を弁済した後に,譲渡担保権者が目的不動産を第三者に売却した場合には,当該第三者は,背信的悪意者にあたるのでない限り,目的不動産の所有権を取得する。

  • Q不動産が譲渡担保の目的とされ,譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において,譲渡担保権の設定者は,その譲渡担保権に係る債務の弁済と,その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。

    A〇  判例(最判平6.9.8)は,「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは前者が後者に対し先履行の関係にあり,同時履行の関係に立つものではな」とする。したがって,不動産が譲渡担保の目的とされ,譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において,譲渡担保権の設定者は,その譲渡担保権に係る債務の弁済と,その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。

  • Q対抗要件を備えた集合動産讓渡担保権の設定者が,その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をし,その動産を占有改定の方法により買主に引き渡した場合,買主はその動産の所有権を取得することができる。

    A×  判例(最判平18.7.20【百選199】)は,「構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保においては,集合物の内容が譲渡担保設定者の営業活動を通じて当然に変動することが予定されているのであるから,譲渡担保設定者には,その通常の営業の範囲内で,譲渡担保の目的を構成する動産を処分する権限が付与されており,この権限内でされた処分の相手方は,当該動産について,譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができると解するのが相当である。····-他方,対抗要件を備之た集合動産譲渡担保の設定者がその目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該処分は上記権限に基うかないものである以上,譲渡担保契約に定められた保管場所から搬出されるなどして当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められる場合でない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできないというべきである」としているまた,192 条は,「取引行為によって,平穩に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する」と規定し,183条は,「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは,本人は,これによって占有権を取得する」と規定するところ,判例(最判昭35.2.11【百選I68】)は,「無権利者から動産の譲渡を受けた場合において,譲受人が192条によりその所有権を取得しうるためには,一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し,かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもっては足らなものといわなければならない」としていろしたがって,対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が,その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をし,その動産を占有改定の方法により買主に引き渡した場合,買主はその動産の所有権を取得することができない。

  • Q不動産の譲渡担保において,債務者が弁済期にその譲渡担保権に係る債務を弁済しない場合,譲渡担保権者がその不動産を譲渡したときは,譲受人は確定的にその不動産の所有権を取得し,債務者は債務を弁済してその不動産を受け戻すことができない。

    A〇判例(最判平6.2.22【百選I98】)は,「不動産を目的とする譲渡担保契約において,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には,債権者は,右譲渡担保契約がいわゆる帰属渣算型であると処分清算型であるとを問わず,目的物を処分する権能を取得するから債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは,原則として譲受人仕目的物の所有権を確定的に取得し,債務者は,清算金がある場合に債権者に対してその支払を水めることができるにとどまり,残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできなくなるものと解するのが相当である·····。この理は,譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合であっても異なるところはない。けだし,そのように解さないと,権利関係の確定しない状態が続くばかりでなく,譲受人が背信的悪意者に当たるかどうかを確知し得る立場にあるとは限らない債権者に,不測の損害を被らせるおそれを生ずるからである」としているしたがって,不動産の譲渡担保において,債務者が弁済期にその譲渡担保権に係る債務を弁済しない場合,譲渡担保権者がその不動産を譲渡したときは,譲受人は確定的にその不動産の所有権を取得し,債務者は債務を弁済してその不動産を受け戻すことができない。

  • Q不動産が譲渡担保の目的とされ,譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において,その譲渡担保権に係る債務の弁済により譲渡担保権が消滅した後にその不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは,譲渡担保権の設定者は,登記がなければ,その所有権をその不動産を譲り受けた第三者に対抗することができない。

    A〇判例(最判昭62.11.12)は,「不動産が譲渡担保の目的とされ,設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記が経由された場合において,被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは,右第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合は格別,そうでない限り,譲渡担保設定者は,登記がなければ,その所有権を右第三者に対抗することができないものと解するのが相当である」としている。したがって,不動産が譲渡担保の目的とされ,譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において, その譲渡担保権に係る債務の弁済により譲渡担保権が消滅した後にその不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは,譲渡担保権の設定者は,登記がなければ, その所有権をその不動産を譲り受けた第三者に対抗することができない

  • Q集合動産の譲渡担保権者は,その譲渡担保権の設定者が通常の営業を継続している場合であっても,その目的とされた動産が减失したときは,その損害をてん補するために設定者に支払われる損害保険金の請求権に対して物上代位権を行使することができる。

    A×判例(最判平 22.12.2)は,「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権は,譲渡担保権者において譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産(以下[目的動産」という。)の価値を担保として把握するものであるから,その効力は,目的動産が滅失した場合にその担害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶと解するのが相当である。もっとも,構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約は,譲渡担保権設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから,譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には,目的動産の滅失により上記請水権が発生したとしても,これに対して直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り,譲渡担保権者が当該請水権に対して物上代位権を行使することは許されないというべきである」としている。したがって,集合動産の譲渡担保権者は,その譲渡担保権の設定者が通常の営業を継続している場合において,その目的とされた動産が滅失したときは,上記特段の事情がない限り,その損害をてん補するために設定者に支払われる損害保険金の請求権に対して物上代位権を行使することができない。

  • Q同一の動産について複数の質権を設定することはできないが,同一の動産について複数の譲渡担保権を設定することはできる。

    A×  344条は,「質権の設定は,債権者にその目的物を引き渡すことによって,その効力を生ずる」と規定し,184条は,「代理人によって占有をする場合において,本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ,その第三者がこれを承諾したときは,その第三者は占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判昭 9.6.2)は,「質権の目的たる不動産が質権設定以前既に他人に賃貸しある場合に於ては,質権設定者たる賃貸人が賃借人に対して爾後質権者の為に該不動産を占有すべき旨を命じ、賃借人之を承諾することに依り並に質権は適法に設定せらるる。すなわち,「質権の設定」に必要な「引き渡」しは,指図による占有移転(184条)でも足りるから,同一の動産について複数の質権を設定することはできる。また,355条も,「同一の動産について数個の質権が設定されたときは,その質権の順位は,設定の前後による」と規定しており,同一の動産について複数の質権を設定することができることを前提としている。なお,判例(最判平18.7.20【百選199】)は,「重複して譲渡担保を設定すること自体は許される」としている。したがって,同一の動産について複数の譲渡担保権を設定することもできる。

  • Q動産を目的とする質権は占有改定の方法によるその動産の引渡しによっては効力を生じないが,動産を目的とする譲渡担保権はその設定契約によって設定され,占有改定の方法によるその動産の引渡しがあれば,譲渡担保権者は第三者に譲渡担保権を対抗することができる。

    A〇  345条は,「質権者は,質権設定者に,自己に代わって質物の占有をさせることができない」と規定し,183条は,「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは,本人は,これによって占有権を取得する」と規定するところ,判例(大判明 35.2.10)は,「質権なるものは,民法質権の総則たる其第344条に『質権の設定は債権者に其目的物の引渡を為すに因り其効力を生ず』と規定して質権の占有を以て質権成立の要件と為し,又其第 345 条には『質権者は質権設定者をして自己に代わりて質物の占有を為さしむることを得ず』と規定して質権設定者をして質権者に代り質物を占有せしむることは絶対に之を禁止せり」としている。したがって,動産を目的とする質権は占有改定の方法によるその動産の引渡しによっては効力を生じない。他方,判例(最判昭 30.6.2【百選164】)は,「売渡担保契約がなされ債務者が引き続き担保物件を占有している場合には,債務者は占有の改定に上り爾後債権者のために占有するものであり,従って債権者はこれによって占有権を取得するものであると解すべき······であ····る。果して然らば,原判決の認定したところによれば,上告人(被控訴人)は昭和26年3月18日の売渡担保契約により本件物件につき所有権と共に間接占有権を取得しその引渡を受けたことによりその所有権の取得を以て第三者である被上告人に対抗することができるようになったものといわなければならない」としている。したがって,動産を目的とする譲渡担保権はその設定契約によって設定され,占有改定の方法によるその動産の引渡しがあれば,譲渡担保権者は第三者に譲渡担保権を対抗することができる。

  • Q債権質の目的である債権の弁済期が到来した場合には,被担保債権の弁済期が到来していないときであっても,質権者は,債権質の目的である債権を直接に取り立てることができる。

    A×  366条2項は,「債権の目的物が金銭であるときは,質権者は,自己の債権額に対応する部分に限り,これを取り立てることができる」と規定するが,同条3項前段は,「前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは,質権者は,第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる」 と規定する。したがって,債権質の目的である債権の弁済期が到来した場合であっても、被担保債権の弁済期が到来していないときは、質権者は、債権質の目的である債権を直接に取り立てることはできず,第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができるにとどまる。

  • Q動産を目的とする譲渡担保権が設定されている場合,その設定者は,正当な権原なくその動産を占有する者に対し,その動産の返還を請求することができない

    A×  判例(最判昭 57.9.28)は,「譲渡担保は,債権担保のために目的物件の所有権を移転するものであるが,右所有権移転の効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められるのであって,担保権者は,債務者が被担保債務の履行を遅滞したときに目的物件を処分する権能を取得し,この権能に基づいて目的物件を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめ又は第三者に売却等することによって換価処分し,優先的に被担保債務の弁済に充てることができるにとどまり,他方,設定者は,担保権者が右の換価処分を完結するまでは,被担保債務を弁済して目的物件についての完全な所有権を回復することができるのであるから·····,正当な権原なく目的物件を占有する者がある場合には,特段の事情のない限り,設定者は,前記のような譲渡担保の趣旨及び効力に鑑み,右占有者に対してその返還を請求することができるものと解するのが相当である」 としているしたがって,動産を目的とする譲渡担保権が設定されている場合,その設定者は,正当な権原なくその動産を占有する者に対し,その動産の返還を請求することができる。

  • Q債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において,不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは,譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときであっても,債務者は,残債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。

    A判例(最判平6.2.22 【百選I98】)は,「不動産を目的とする譲渡担保契約において,債務者が弁済期に債務の弁済をしない場合には,債権者は,右譲渡担保契約がいわゆる帰属清算型であると処分清算型であるとを問わず,目的物を処分する権能を取得するから,債権者がこの権能に基づいて目的物を第三者に譲渡したときは,原則として,譲受人仕目的物の所有権を確定的に取得し,債務者は,清算金がある場合に債権者に対してその支払を求めることができるにとどまり、残債務を弁済して目的物を受け戻寸ことはできなくなるものと解するのが相当である······。この理は,譲渡を受けた第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合Cても異なるとろはない。けだし,そのように解さないと,権利関係の確定しない状態が続くばかりでなく,譲受人が背信的悪意者に当たるかどうかを確知し得る立場にあるとは限らない債権者に,不測の損害を被らせるおそれを生ずるからである」としいている。したがって,債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において,不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは,譲受人がいわゆる背信的悪意者にあたるときであっても,債務者は,残債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない。

  • Q債務者は,被担保債権の弁済期後は,譲渡担保の目的物の受戻権を放棄することにより,譲渡担保権者に対し清算金の支払を請求することができる

    A×判例(最判平 8.11.22)は,「譲渡担保権設定者は,譲渡担保権者が清算金の支払又は提供をせず,清算金がない旨の通知もしない間に譲渡担保の目的物の受戻権を放乘しても,譲渡担保権者に対して清算金の支払を請求することはできないものと解すべきである。けだし,譲渡担保権設定者の清算金支払請求権は,譲渡担保権者が譲渡担保権の実行として目的物を自己に帰属させ又は換価処分する場合において,その価額から被担保債権額を控除した残額の支払を請求する権利であり,他方,譲渡担保権設定者の受戻権は,譲渡担保権者において譲渡担保権の実行を完結するまでの間に,弁済等によって被担保債務を消滅させることにより譲渡担保の目的物の所有権等を回復する権利であって,両者はその発生原因を異にする別個の権利であるから,譲渡担保権設定者において受戻権を放棄したとしても,その効果は受戻権が放棄されたという状況を現出するにとどまり,右受戻権の放棄により譲渡担保権設定者が清算金支払請求権を取得することとなると解することはできないからである。また,このように解さないと,譲渡担保権設定者が,受戻権を放棄することにより,本来譲渡担保権者が有している譲渡担保権の実行の時期を自ら決定する自由を制約し得ることとなり,相当でないことは明らかである」としいる。したがって,債務者は,被担保債権の弁済期後は,譲渡担保の目的物の受戻権を放棄することにより,譲渡担保権者に対し清算金の支払を請求することはできない。

  • Q債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において,不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは,債務者は,譲受人からの明渡請求に対し,譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができない。

    A判例(最判平9.4.11)は,「譲渡担保権者が譲渡担保権の実行として目的丕動産を第三者に譲渡したときは,譲渡担保権設定者は,右第三者又は同人から更に右不動産の譲渡を受けた者からの明渡請求に対し,譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができるものと解するのが相当である」としいる。したがって,債務者が弁済期に債務の弁済をしなかった場合において,不動産の譲渡担保権者が目的不動産を譲渡したときは,債務者は,譲受人からの明渡請求に対し,譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。なお,判例(最判昭 50.7.25)は,「いわゆる預託金会員組織ゴルフ会員権を目的とする譲渡担保設定契約において,設定者が,譲渡担保権者の換価処分により将来右ゴルフ会員権を取得した第三者のために,その譲渡に必要なゴルフクラプ理事会の承認を得るための手続に協力することをあらかじめ承諾していろ場合には,被担保債権の履行期の経過に伴い譲渡担保権者が取得した換価処分権能に基づく第三者への売却によって,ゴルフ会員権は設定者に対する関係では売渡を受けた第三者に有効に移転し,右売却の時に被担保債権は換価額が債権額を超えるときは全額につき換価額が債権額に足りないときは換価額の限度で,満足を得たこととなり,二れに伴って譲渡担保関係も消滅し,設定者は,右換価額が譲渡担保権者の債権額を超えるときはその超過額を譲渡担保権者から清算金として受領することができるが,ゴルフ会員権については債務を弁済してその回復をはかる機会を確定的に失い,これを取得した右第三者のために,ゴルフクラプ理事会の譲渡承認を得るための手続に協力する義務を有するに至るものというベく,また,設定者は,譲渡担保権者が清算金を支払うのと引換にのみ右義務の履行に応ずるとの同時履行の抗弁権を第三者に対して行使することは許されない,と解するのが,相当である」としている。

  • Q譲渡担保の被担保債権の弁済期後に目的不動産が譲渡担保権者の債権者によって差し押さえられ,その旨の登記がされた場合,債務者は,その後に被担保債権に係る債務の全額を弁済しても,差押債権者に対し,目的不動産の所有権を主張することができない。

    A〇判例(最判平18.10.20)は,「不動産を目的とする譲渡担保において,被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ,その旨の登記がされたときは,設定者は,差押登記後に債務の全額を弁済しても,第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできないと解するのが相当である。なぜなら,設定者が債務の履行を遅滞したときは,譲渡担保権者は目的不動産を処分する権能を取得するから·····,被担保債権の弁済期後は,設定者としては,目的不動産が換価処分されることを受忍すべき立場にあるというべきところ,譲渡担保権者の債権者による目的不動産の強制競売による換価も,譲渡担保権者による換価処分と同様に受忍すべきものということができるのであって,目的不動産を差し押さえた譲渡担保権者の債権者との関係では,差押え後の受戻権行使による目的不動産の所有権の回復を主張することができなくてもやむを得ないというべきだからである」としている。したがって,譲渡担保の被担保債権の弁済期後に目的不動産が譲渡担保権者の債権者によって差し押さえられ,その旨の登記がされた場合,債務者は,その後に被担保債権に係る債務の全額を弁済しても,差押債権者に対し,目的不動産の所有権を主張することができない。なお,判例(最判平18.10.20)は,上記に続けて,「上記と異なり,被担保債権の弁済期前に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえた場合は,少なくとも,設定者が弁済期までに債務の全額を弁済して目的不動産を受け戻したときは,設定者は,第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることができると解するのが相当である。なぜなら,弁済期前においては,譲渡担保権者は,債権担保の目的を達するのに必要な範囲内で目的不動産の所有権を有するにすぎず,目的不動産を処分する権能を有しないから,このような差押えによって設定者による受戻権の行使が制限されると解すべき理由はないからである」としている。

  • Q構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる。

    A〇 判例(最判昭54.2.15)は,「構成部分の変動する集合動産についてもその種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどなんらかの方法で目的物の範困が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的となりうるものと解するのが相当である」としいる。

  • Q所有する土地に譲渡担保権を設定した債務者は,債務の弁済期が経過した後は,債権者が担保権の実行を完了する前であっても,債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことはできない。

    A× 判例(最判昭62.2.12)は,「債務者がその所有不動産に譲渡担保権を設定した場合において,債務者が債務の履行を遅滞したときは,債権者は,目的不動産を処分する権能を取得し,この権能に基づき,目的不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめるか又は第三者に売却等をすることによって,これを換価処分し,その評価額又は売却代金等をもって自己の債権(換価に要した相当費用額を含む。)の弁済に充てることができ,その結果剩余が生じるときは,これを清算金として債務者に支払うことを要するものと解すべきであるが·····,他方,弁済期の経過後であっても,債権者が担保権の実行を完了するまでの間,すなわち,(イ)債権者が目的不動産を適正に評価してその所有権を自已に帰属させる帰属渣算型の譲渡担保においては,債権者が債務者に対し,目的不動産の適正評価額が債務の額を上回る場合にあっては算金の支払又はその提供をナるまでの間,目的不動産の適正評価額が債務の額を上回らない場合にあってはその旨の通知をするまでの間,(口)目的不動産を相当の価格で第三者に売却等をする処分清算型の譲渡担保においては,その処分の時までの間仕,債務者は,債務の全額を弁済して譲渡担保権を消滅させ,目的不動産の所有権を回復すること(以下,この権能を「受戻権」という。)ができるものと解するのが相当である···。けだし,譲渡担保契約の目的は,債権者が目的不動産の所有権を取得すること自体にあるのではなく,当該不動産の有する金銭的価値に着目し,その価値の実現によって自己の債権の排他的満足を得ることにあり,目的不動産の所有権取得はかかる金銭的価値の実現の手段にすぎないと考えられるからである」としている。したがって,所有する土地に譲渡担保権を設定した債務者は,債務の弁済期が経過した後であっても,債権者が担保権の実行を完了する前であれば,債務の全額を弁済して目的物を受け戻すことができる。

  • Q所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは,その債務の弁済をする場合,債務の弁済と譲渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することはできない。

    A〇 判例(最判平6.9.8)は,「債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは,前者が後者に対し先履行の関係にあり,同時履行の関係に立つものではないと解すべきである」としている。したがって,所有する機械に譲渡担保権を設定して譲渡担保権者に現実の引渡しをした債務者Aは,その債務の弁済をする場合,債務の弁済と讓渡担保権者のAに対する目的物の引渡しとの同時履行を主張することができる。

  • Q債務者Aが所有する構成部分の変動する在庫商品に債権者Bのために譲渡担保権が設定された後,商品が滅失し,その損害をてん補するための損害保険金請求権をAが取得したときは,Aが営業を継続しているか否かにかかわらず,Bは,当該保険金請求権に対して物上代位権を行使することができる。

    A× 判例(最決平22.12.2)は,「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権は,譲渡担保権者において譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産(以下「目的動産」という。)の価値を担保として把握するものであるから,その効力は,目的動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶと解するのが相当である。もっとも,構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約は,譲渡担保権設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから,譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には,目的動産の滅失に上り上記請求権が発生したとしても,これに対して直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り,譲渡担保権者が当該請水権に対して物上代位権を行使することは許されないというべきである」としているしたがって,債務者Aが所有する構成部分の変動する在庫商品に債権者Bのために譲渡担保権が設定された後,商品が滅失し,その損害をてん補するための損害保険金請求権をAが取得したときは,Aが営業を継続していないか,上記特段の事情がない限り,Bは,当該保険金請求権に対して物上代位権を行使することができない。

  • Q土地の賃借人が借地上に所有する建物に譲渡担保権を設定した場合,その効力が土地の賃借権に及ぶことはない。

    A× 判例(最判昭51.9.21)は,「債務者である七地の賃借人がその賃借地上に所有する建物を譲渡担保とした場合には,その建物のみを担保の目的に供したことが明らかであるなど特別の事情がない限り、右譲渡担保権の効力は,原則として土地の賃借権に及び,債権者が担保権の実行としての換価処分により建物の所有権をみずから確定的に取得し又は第三者にこれを取得させたときは,これに随伴して土地の賃借権もまた債権者又は第三者に譲渡されると解すべきである」としている。したがって,土地の賃借人が借地上に所有する建物に譲渡担保権を設定した場合,その効力が土地の賃借権に及ぶ

  • Q譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は,強行法規や公序良俗に反しない限り,設定契約の当事者間において元本,利息及び遅延損害金について自由に定めることができる。

    A〇  判例(最判昭 61.7.15)は,「譲渡担保権によって担保されるべき債権の範困については,強行法規又は公序良俗に反しない限り,その設定契約の当事者間において自由にこれを定めることができ,第三者に対する関係においても,抵当権に関する民法374条【注:375条]又は根抵当権に関する同法 398条ノ3の規定に準ずる制約を受けないものと解すべき」としている。したがって,譲渡担保権によって担保されるべき債権の範囲は,強行法規や公序良俗に反しない限り,設定契約の当事者間において元本,利息及び遅延損害金について自由に定めることができる。

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