竹取物語
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ万のことにつかひけり。なをば讃岐造となむいいけり。
伊勢物語
昔、男うひかうぶりして、ならの京、春日の里にしるよしして、狩りに往にけり。その里にいとなまめいたる女はらから住みけり。
土佐日記
男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり。それの年の十二月の二十日あまり一日の日の、犬のときに門出す。そのよしいささかにものに書きつく。
枕草子
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
源氏物語
いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。
大鏡
先つころ、雲林院の菩提講に詣でて侍りしかば、例の人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁二人、嫗といきあひて、同じところに居ぬめり。
方丈記
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
平家物語
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
徒然草
つれづれなるままに、ひくらし硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。
おくのほそ道
月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅をすみかとす。