94条2項(虚偽表示)の類推適用(通謀・意思表示を欠く場合)
表意者と相手方には何ら有効な譲渡行為が行われていないから、Bは無権利者である。そして我が民法は登記に公信力を認めていないから、たとえ第三者が登記を信頼して取引しても権利を取得できないのが原則である。又、94条2項は通謀による虚偽の意思表示に関する規定であり、通謀及び意思表示の存しない場合に適用することはできない。しかし、権利者に虚偽の登記作出についての帰責性がある場合でも常に登記への信頼が保護されないとすることは、取引の安全を害し妥当ではない。又、そもそも94条2項の趣旨は虚偽の外観が存在する場合にその外観作出につき帰責性のある者に対して、その外観を信頼したものとの関係で外観通りの責任を負わせて、第三者の信頼、すなわち取引の安全を保護する点にある。従って、通謀および意思表示は存在しないが、虚偽の外観を作出した点に表意者の帰責性が認められる以上、第三者が登記を信頼したのであれば、94条2項の類推適用により、第三者は保護されると解するべきである。