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なぜ無実の人が虚偽自白をしてしまうのか
渦中の視点渦中の視点、当事者の視点で考えると実のところ、虚偽自白は例外的な異常心理の所産ではなく、誰もが案外容易に陥っていく自然な心理
そのため
<取り調べる者-取り調べられる者>の心的構図を考える必要がある。 -
虚偽自白に至る過程
自白への転落過程無実から自白に転じる際は、何らかの圧力が働く
「真犯人を自白させる取調べの圧力が、無実の人をも自白させることがある」 -
自白への転落過程1いつもと環境が違う場所(留置所)にいること心理的安定、自己コントロール感を失う
2取り調べでの圧力で精神的屈辱、罪悪感
3取り調べは時間的な展望がない上、検察官が主張を信じてくれないため無力感を感じる
4否認することの不利益、検察官の温情で無実でも自白した方がいいのではないかと思わされる -
今の苦痛と遠い先の悲劇しかし、2つの不利益に時間的な隔たりがあり、未来に訪れるであろう悲劇よりも、今まさに取調べの場で感じている苦痛から解放されるという選択(嘘の自白をする)を取ってしまうことが起こりうる
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今の苦痛VS遠い先の悲劇今の苦痛
(否認を続けることの不利益・自白をすることの不利益)
遠い先の未来
(有罪となり刑罰が下される)
例 テスト勉強中眠くなる
勉強をした方が将来的には得であるが、多くの人が寝てしまう。つまり先の利益よりも、今の苦痛を取り除くことを優先してしまう -
取調官自身の「渦中」
取調官自身の渦中の状況「捜査官が特定の人物に容疑を絞って、身柄を押さえ、それを受けて取調官が熱意を込めて執拗に取り調べる。それだけで、十分に虚偽自白の心理状況が出来上がってしまう。」–
取調官は通常、逮捕されてくる人間は罪を犯
していると考え、否認=罪を逃れようとして
いる、と捉えられる
「証拠なき確信」の問題 -
冤罪被害者の支援
アメリカにおけるイノセンス・プロジェクト・有志の弁護士による非営利団体
・DNA鑑定を用いて、250人以上もの受刑者の無実を証明した -
冤罪被害者の支援
えん罪救済センター2016年に立命館大学内に設置された任意団体
・日本版イノセンス・プロジェクトとも言われる
・司法実務家、法学者、心理学者、情報科学者などが連携して、冤罪事件の当事者および代理人への支援を無料で行っている -
冤罪被害者の具体的支援刑事補償と費用補償請求がされる程度
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刑事補償・刑事訴訟で無罪判決を受けた場合、国に対して金銭の補償を請求することができる
・無罪が確定してから3年以内に請求 -
刑事補償の内容・ 1日あたり1,000~12,500円以下の範囲内
・「拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであつた利益の喪失精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情」(刑事補償法)が考慮される -
日本における犯罪被害者の状況・死者のうち最も人数が多いのは殺人罪40%
・重傷者のうち最も人数が多いのは傷害罪約80%
・軽症者のうち最も人数が多いのは傷害罪90% -
犯罪ごとの申告率強盗等が約45%、個人に対する窃盗が約34%、暴行・脅迫が約21%、性的事件が約18%。
性的事件の申告率が、他の事件に比べて低くなっ
ている -
犯罪被害者の支援
3つの柱1刑事司法に関する支援
2精神的ケア
3生活の再建 -
犯罪被害者の支援
被害者に対する心のケア犯罪体験=外傷体験となり、ストレス反応が様々な形であらわれる
PTSDや急性ストレス障害(ASD)などそれ以外には、不安障害や気分障害も
犯罪直後の危機介入と長期的なカウンセリン
グに大別される -
犯罪直後の危機介入まずは被害者の安全を確保したうえで、「安全だと感じること」を考慮する
急性期は解離、特に麻痺を中心とするASDの症状が強くあらわれると考えられる -
長期的なカウンセリング・繰り返し表現する(語る)こと
・ 自責感を軽減し、正常であることを補償する
予後に関しては「じきによくなる」ではなく「前
と同じにはならないが、今よりは楽になってい
く」という態度が望ましい -
ソーシャルサポートソーシャル・サポートは、高いストレスに対して健康度の低下を軽減するという緩衝効果と、ストレスの高さに関係なくストレスの影響を軽減する主効果(直接効果)がある
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