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我が庵は 都のたつみ 鹿ぞ住む世をうぢ山と 人はいふなり
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花の色は 移りにけりな いたずらに我が身世に経る ながめせし間に
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和田の原 八十島かけて 漕ぎいでぬと人には告げよ あまの釣船
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君がため 原の野に出でて 若菜つむ我が衣手に 雪は降りつつ
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千早振る 神代も聞かず 龍田川から紅に 水くくるとは
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詫びぬれば 今はた同じ 難波なるみを尽くしても あはとむとぞ思う
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月見れば 千々に物こそ 悲しけれ我が身一つの 秋にはあらねど
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小倉山 峰の紅葉葉 心あらば今一度の みゆき待たなむ
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心あてに 折らばや折らむ 初霜の置きまどはせる 白菊の花
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人はいさ 心も知らず ふるさとは花ぞ昔の 香に匂ひける
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夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを雲の何処に 月やどるらむ
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忘らるる 身をば思わず ちかひてし人の命の 惜しくもあるかな
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恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり人知れずこそ 思ひそめしか
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契りきな かたみに袖を しぼりつつ末の松山 波こさじとは
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忘れ時の 行く末までは かたければ今日を限りの 命ともがな
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安らはで 寝なましものを さ夜更けてかたぶくまでの 月を見しかな
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心にも あらで憂き世に 永らへば恋しかるべき 夜半の月かな
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夕されば 門田のいなば おとづれて葦のまろやに 秋風ぞ吹く
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我が袖は 潮干に見えぬ 沖の石の人こそ知らね かわく間もなし
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世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ海女の小舟の 綱手悲しも
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