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立ち別れ いなばの山の 峰におふるまつとし聞かば 今帰り来む
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ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川から紅に 水くくるとは
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住の江の 岸による波 よるさへや夢の通ひ路 人目よくらむ
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難波潟 短き葦の ふしのまもあはでこの世を すぐしてよとや
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侘びぬれば 今はた同じ 難波なる身をつくしても 逢はむとぞ思ふ
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今来むと いひしばかりに 長月の有明の月を 待ち出でつるかな
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吹くからに 秋の草木をしをるればむべ山風を 嵐といふらむ
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月見れば 千々にものこそ 悲しけれわが身ひとつの 秋にはあらねど
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このたびは 幣もとりあへず 手向山紅葉の錦 神のまにまに
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名にしおはば 逢坂山の さねかづら人にしられて くるよしもがな
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小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば今ひとたびの みゆき待たなむ
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みかの原 わきて流るる いづみ川いつ見きとてか 恋しかるらむ
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山里は 冬ぞ寂しさ まさりける人目も草も かれぬと思へば
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心あてに 折らばや折らむ 初霜のをきまどはせる 白菊の花
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有明の つれなく見えし 別れより暁ばかり 憂きものはなし
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