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つれづれなるままにてもちぶさたであるのに任せて
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日暮らし硯に向かひて一日中硯に向かって
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心にうつりゆく心に浮かんでは消えていく
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よしなしごとをたわいもないことを
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そこはかとなく書きつくればとりとめもなく書き付けていると
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あやしうこそものぐるほしけれ不思議なほど気分が昂ってくる。
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仁和寺にいる法師仁和寺にいる僧が
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年寄るまで年をとるまで
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石清水を拝まざりければ石清水八幡宮を拝まなかったので
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心うく覚えて残念に思われて
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あるとき思ひ立ちてあるとき思い立って
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ただひとり、かちより詣でけりたった一人で徒歩でお参りした。
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極楽寺・高良などを拝みて極楽寺・高良社などを拝んで
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かばかりと心得て帰りにけりこれだけと理解して帰ってしまった
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さて、かたへの人にあひてさて、仲間の人に向かって
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「年ごろ思ひつること、果たしはべりぬ。「長年思っていたことを果たしました。
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聞きしにもすぎて尊くこそおはしけれ。聞いていた以上に尊くいらっしゃったなぁ。
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そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、なにごとかありけん、それにしても、お参りする人がみな山に登っていったのはなにかあったのだろうか。
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ゆかしかりしかど知りたかったけれど
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神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。神へ参ることが本来の志だと思い、山までは見なかった」と言った。
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少しのことにも、先達はあはまほしきことなり。ちょっとしたことにも、指導者はいてほしいものである。
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うつくしきものかわいらしいもの
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瓜に描きたるちごの顔瓜に描いている幼児の顔
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すずめの子の、ねず鳴きするに踊り来るすずめの子が、ねずみの鳴き真似をすると踊るようにくる姿。
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二つ三つばかりなるちごの、二三歳ぐらいの幼児が
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急ぎてはひ寄る道に急いではいよってくる道中に
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いと小さきちりがありけるをとても小さなちりがあったのを
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目ざとに見つけて目ざとく見つけて
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いとをかしげなるおよびに捕らへてとてもかわいらしい指でつまんで
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大人ごとに見せたる、いとうつくし。大人ひとりひとりに見せている様子がとてもかわいらしい。
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頭は尼そぎなるちごの、頭が尼そぎである幼児が、
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目に髪の覆へるを、かきはやらで、目に髪がかかっているのを手ではらいのけないで、
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うちかたぶきて物など見たるも、うつくし。首を傾げてものなどを見ているのもかわいらしい。
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