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虫は、鈴虫。蜩。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひをむし。蛍。虫は、松虫。蜩。蝶。鈴虫。こおろぎ。きりぎりす。われから。かげろう。蛍。
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蓑虫、いとあはれなり。蓑虫はしみじみと心を動かされる。
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鬼の生みたりければ、親に似て、鬼が生んだので、親に似て、
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これもおそろしき心あらむとて、蓑虫もおそろしい心を持っているだろうといって、
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親のあやしき衣ひき着せて、親がみすぼらしい衣服を身につけさせて、
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「いま秋風吹かむをりぞ来むとする。待てよ。」と言ひおきて、「じきに秋風が吹くような時に来よう。待っていてね。」と言いおいて、
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逃げていにけるも知らず、風の音を聞き知りて、逃げ去ったのも知らず、風の音を聞き知って、
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八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴く。八月くらいになると、「父よ、父よ」と弱々しく鳴く。
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いみじうあはれなり。とてもしみじみと心を動かされる。
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額づき虫、またあはれなり。米つき虫はまたしみじみと心を動かされる。
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さる心地に道心起こして、そのような心に仏道を信仰する心を起こして、
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つきありくらむよ。額を地面につけて歩き回っているだろうよ。
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思ひかけず暗き所などに思いがけず、暗いところなどに
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ほとめきありきたるこそをかしけれ。ぽつりぽつり音を立てて歩き回っているのはおもしろい。
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蝿こそにくき物のうちに入れつべく、はえこそ気に入らないものの中に入れるべきで、
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愛敬なきものはあれ。可愛げのないものである。
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人々しうかたきなどにすべき物のおほきさにはあらねど、一人前に扱って目の敵にするべき物の大きさではないけれど、
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秋などただよろづの物にゐ、秋などひたすらいろいろなものにいて、
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顔などに濡れ足してゐるなどよ。顔などに濡れた足でいるなどよ。
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人の名につきたる、いとうとまし。人の名前についているのは、とてもいやな感じだ。
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夏虫、いとをかしうらうたげなり。火取虫は、非常におもしろくかわいらしい。
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火近う取り寄せて物語など見るに、火を近くに取り寄せて、物語などを読んでいたら、
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草子の上などを飛びありく、いとをかし。書物の上などに飛び回ることは非常におもしろい。
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蟻はいとにくけれど、かろびいみじうて、蟻はとても気に入らないが、軽さは並ではなくて、
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水の上などをただ歩みに歩みありくこそをかしけれ。水の上などをひたすら歩きに歩き回るのはおもしろい。
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孟子対曰、「王好戦。孟子は答えて言った。「王は戦いを好みます。
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請以戦喩。どうか戦いで例えさせてください。
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塡然鼓之、ドンドンと太鼓を鳴らして、
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兵刃既接。双方の兵の武器が既に交わっている。
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棄甲曳兵而走。甲冑を捨て、武器を引きずって走る。
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或百歩而後止、ある者は、百歩逃げて止まり、
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或五十歩而止。ある者は、五十歩逃げて止まる。
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似五十歩笑百歩、五十歩を理由に、百歩を笑ったならば、
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則何如。」すなわちどうであろうか。」と。
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恵王曰、「不可。恵王が言うのには、「よくない。
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直不百歩耳。ただ百歩でないだけだ。
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是亦走也。」これもまた走って逃げることだ。」と。
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