いわゆる「二重無権の抗弁」
(振出人A→受取人・裏書人
B→被裏書人Cと手形が流通
した事例(いずれも売買契約の支払いのための振出・裏書
譲渡とする)において、AB間
の原因関係、BC間の原因関係がともに消滅した場合、Aは、いかにしてCからの請求を拒むことができるか)
振出人(A)は、裏書人に対する原因関係大缺(AB間の
原因関係消滅)の人的抗弁を被裏書人(C)に対しても主張できる(最判昭 45.7.16)
・人的抗弁の切断を定めた法の趣旨は、手形取引の安全のために、手形取得者の利益を保護するにある→自己に対する裏書の原因関係が消滅し、手形を裏書人に返還しなければならなくなっているCのような、手形の支払を求める何らの固有の経済的利益を有しない手形
所持人は、抗弁切断の利益を享受し得る地位にはない
(=17条本文の「所持人」にあたらない)
※二重無権の抗弁の事例では、Cが固有の経済的利益を有しないことを理由に、Aは、「AB間の原因関係の消滅」という人的抗弁をCに対しても主張できる、との構成で解決を図っている(A自身が抗弁事由(AB間の原因関係の消滅)を有しているため、後者の抗弁の事例とは、法律構成が異なる)