絵仏師良秀 / 暗記

火いで来て

火が起こって
風通しおほひて責めければ

風が覆いかぶさるように吹いて迫ってきたので
人の描かする仏もおはしけり【＋a】

家の中には人が注文して良秀に描かせている仏画もあった
衣着ぬ妻子

衣服を身につけていない妻やこども
さながら

そのまま
知らず

気にせず
事にして

よいことにして
向ひの面に立てり

道の向かい側に立っている
煙・炎くりけるまで

煙や炎がくすぶるまで
おぼかた

だいだいずっと
あさましきこと

たいへんなこと
人ども来とぶらひけれど

人々が来て見舞ったけれど
いかに

どうしたのか
うちうなづきて

うなづいて
笑ひけり

笑った
あはれ、しつるせうとくかな

ああたいへんなもうけものをしたなあ。
年ごろは

これまでの長い間
わろく描きけるものかな

平凡に描いてきたものだな
とぶらひに

見舞いに
こは、いかに

これはいったいどうして
かくては立ちたまへるぞ

このように立っていらっしゃるのか
あさましきことかな

驚きあきれたことかなあ
ものの憑くべきぞ

ものの怪がとり憑いていらっしゃるのか
なんでふものの憑くべきぞ

どうして物の怪がとり憑くはずがあろう。いや取り憑くはずがない。
悪しく描きけるなり

下手に描いていたのだ
かうこそ燃えけれ、と心得つるなり

このように燃えたのだなとわかった
せうとく

もうけもの
この道を立てて

この道を専門にして
世にあらむには

世の中で生きていくならば
仏だによく描きたてまるらば

仏さえ上手に描き申し上げるならば
百千の家も出で来なむ

百や千の家もきっと造りだせるだろう
わたうたちこそ

あなたがたこそ
させる能もおはせねば

たいした才能もおありでないので
物をも惜しみ給へ

物などを惜しみなさるのだ
今に人々めであへり

今にいたるまで人々は賞賛しあっている
テストする

よく頑張りました

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