アチーブ 5.宇治拾遺物語
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iori
2022年05月18日
カード16
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今は昔、唐の辺州に一人の男あり。
今となっては昔のことだが、中国の片田舎に一人の男がいた。
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家貧しくして宝なし。
家が貧しくて財産がない。
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妻子を養ふに力なし。
妻子を養うにも(その)力がない。
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求むれども得ることなし。
(財産を)求めても得られない。
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かくて年月を経。
こうして年月を過ごす。
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思ひわびて、ある僧に会ひて宝を得べきことを問ふ。
思い悩んで、ある僧に会って、財産を得られる方法を尋ねる。
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知恵ある僧にて、答ふるやう、「汝、宝を得むと思はば、ただ真の心を起こすべし。
(相手は)知恵のある僧で、答えることには、「あなたは、財産を得ようと思うならば、ただ真実の心を起こすがよい。
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さらば、宝も豊かに、後世はよき所に生まれなむ」と言ふ。
そうしたら、財産も豊かに、来世はすばらしい所にきっと生まれるだろう」と言う。
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この人、「真の心とはいかが」と問へば、僧の言はく、
この人(=貧しい男)が、「真実の心とはどういうものか」と尋ねると、僧が言うことには、
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「真の心を起こすといふは、他の事にあらず。仏法を信ずるなり」と言ふに、
「真実の心を起こすというのは、他の事ではない。仏の教えを信じることである」と言うと、
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また問ひて言はく、「それは、いかに。
(貧しい男が)また尋ねて言うには、「それは、どういうことだ。
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確かに承りて、心を得て、頼み思ひて、二なく信をなし、頼み申さむ。承るべし」と言へば、
確かにお聞きして、理解して、(あなたの助言を)信頼して、(仏の教えを)このうえなく信仰し、信頼申し上げよう。(あなたの説明を)お聞きしよう」と言うので、
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僧の言はく、「我が心はこれ仏なり。わが心を離れては仏なしと。しかれば、我が心の故に仏はいますなり。」と言へば、
僧が言うことには、「自分の(信仰)心がすなわち仏なのだ。自分の(信仰)心を離れては仏は存在しないと(言われている)。だから、自分の(信仰)心によって仏は存在なさるのだ」と言うと、
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手をすりて、泣く泣く拝みて、それよりこの事を心にかけて、夜中思ひければ、梵、尺、諸天、来りて守り給ひければ、
(男は)手をすり合わせて、泣きながら拝んで、それ以来この事(=仏の教え)を心にかけて、夜も昼も思ったので、梵天、帝釈天や、多くの神々がやってきて(男を)お守りなさったので、
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はからざるに宝出で来て、家の内、豊かになりぬ。
思いがけず財産も生じて、家の中が、豊かになった。
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命終はるに、いよいよ心、仏を念じ入りて、浄土に速やかに参りてけり。
(男は)命が終わるときに、ますます心に、仏を祈念して、極楽浄土に速やかに参ったということだ。
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