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梁塵秘抄の郢曲の言葉こそ、また、あはれなることは多かめれ。
梁塵秘抄の謡い物の歌詞は、また、( )ことが多いようだ。
しみじみと心打たれる
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滝の音水の声、あわれに聞こゆる所なり。
滝の音や川の音が、( )聞こえる所だ。
趣深く
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あはれなる人を見つるかな。
( )人を見たものだ。
かわいらしい
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あはれ、いと寒しや。
( )ひどく寒いなあ。
ああ
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この歌をこれかれあはれがれども、一人も返しせず。
この歌を一同皆( )が、一人も返歌をしない。
感心する
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わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろかにせんと思はんや。
たった二本の矢である、師匠の前で一本を( )にしようと思うだろうか。
おろそかに
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口惜しといふもおろかなり。
残念だという( )。
言葉では言い尽くせない
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おそろしなんどもおろかなり。
恐ろしいなどという( )。
言葉では言い尽くせない
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後の矢を頼みて、初めの矢になほざりの心あり。
後の矢をあてにして、初めの矢において( )な気持ちがある。
いい加減
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狩りはねんごろにもせで、酒を飲みつつ、やまと歌にかかれりけり。
鷹狩りは( )もしないで、酒ばかり飲んでは、和歌を詠むのに熱中していた。
熱心に
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それ、人の友とあるものは、富めるをたふとみ、ねんごろなるを先とす。
そもそも、世間の友人というものは、金のある者を尊び、( )者を第一にする。
親しい
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つれづれなる時は、これを友として遊行す。
( )ときは、これを友としてぶらぶら歩く。
退屈な
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つれづれに思ひつづくるも、うち返しいとあぢきなし。
( )思い続けているのだが、考えれば考えるほどまったく情けない。
しんみりともの寂しく
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少しの地をも、いたづらにおかんことは、益なきことなり。食ふもの・薬種などを植ゑおくべし。
少しの土地も、( )におくようなことは、無益なことだ。食物や薬になる草木を植えておくべきだ。
むだに
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船も出ださでいたづらなれば、ある人の詠める。
船も出さず( )ので、ある人が詠んだ。
手持ちぶさたで暇な
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年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。
( )思ってきたことを、果たしました。
長年
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日ごろ経て、宮に帰り給うけり。
( )経って、御殿にお帰りになった。
数日
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その人、かたちよりは心なむまさりたりける。
その人は、( )よりは心がすぐれていた。
容貌
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かたちを変へて、世を思ひはなるやと、試みむ。
( )して、この世のつらさから思いが離れるかと、試してみよう。
出家
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見目も心ざまも、昔見し都鳥に似たることなし。
( )も性格も、以前見た女たちに似ている者はいない。
容貌
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御灯明の影ほのかに透きて見ゆ。
お灯明の( )がほのかに透けて見える。
光
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鏡には色・かたちなきゆゑに、よろずの影来りて映る。
鏡には色も形もないので、様々な( )がきて映える。
影
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つひに本意のごとくあひにけり。
しまいに( )どおりに結婚した。
かねてからの願い
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過ぎ別れること、かへすがへす本意なくこそおぼえ侍れ。
お別れして行ってしまうことは、本当に( )思われます。
残念に
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暮れるまで御物語し給ひて、大宮も渡り給ひぬ。
暮れるまでお( )をなさって、大宮お帰りになった。
話
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この源氏の物語、一の巻よりしてみな見せ給へ。
この源氏の( )を、一の巻から全部お見せください。
物語
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その人の御もとにて、文書きてつく。
あの人のお所へと思って、手紙を書いてことづける。
手紙
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世の中に長恨歌といふ文を、物語にかきてある所あんなり。
この世間に「長恨歌」という( )を物語に書き直して持っている人がいるそうだ。
漢詩
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ほど経にければ便なし。
( )がたってしまったので具合が悪い。
時
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足もとへふと寄り来て、やがてかきつくままに、首のほどを食はんとす。
足もとへさっと寄ってきて、すぐに飛びつくと同時に、首の( )に食いつこうとする。
あたり
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同じほど、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず。
同じ( )それより低い地位の更衣たちは、なおさら気持ちが穏やかでない。
身分
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出で給ふほどを、人々のぞきて見たてまつる。
光源氏がご出発なさる( )を、女房たちはのぞいてお見送りする。
様子
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さぶらふ人々、ほどほどにつけてはよろこび思ふ。
お仕えする人々も、( )に応じて喜んでいる。
それぞれの身分
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せちにもの思へる気色なり。
ひどくもの思いにふけってる( )である。
様子
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かぢとり、気色悪しがらず。
船頭は、( )が悪くない。
機嫌
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いかなるたよりして、気色見せむ。
どのような方法で、( )を知らせようか。
思い
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けしきばかり舞ひ給へるに、似るべきものなく見ゆ。
( )お見舞いになったが、たとえようもなく見える。
ほんの形だけ
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梅は気色ばみほほ笑みわたれる、とりわきて見ゆ。
梅はみなほころびそうな( )のが、特に目立っている。
きざしが見える
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日ごろのちぎりを変せず、一所にて死ににけるこそ無慚なれ。
常々の( )をたがえず、同じ所で死んでしまったのは痛ましい。
約束
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前の世にも御契りや深かりけむ、世になく清らなる玉の男皇子さへ生まれ給ひぬ。
前世でもご( )が深かったのだろうか、世にまたとなく美しい玉のような皇子までがお生まれになった。
宿縁
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月に二度ばかりの御契りなめり。
月に二度ほどの( )であるように。
逢瀬
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よろずのことよりも情けあるこそ、男はさらなり、女もめでたくおぼゆれ。
何事よりも( )があるのが、男はもちろん、女でも素晴らしく思われる。
思いやり
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男女の情けも、ひとへに逢ひ見るをいふものかは。
男女の( )も、ひたすら逢って契りを結ぶことだけをいうものか。
情愛
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なさけある人にて、瓶に花をさせり。
( )のある人で、瓶に花をさしている。
情趣を解する心
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月明ければ、いとよくありさま見ゆ。
月が明るいので、( )はっきりとありさまが見える。
とても
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つた・くず・朝顔、いづれもいと高からず、ささやかなる墻に、繁からぬ、よし。
蔦・葛・朝顔は、どれも( )高くなく、小さな垣根に密生してないのが、よい。
たいして
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大門のかたに、馬のいななく声して、人のあまたあるけはひしたり。
大門のかたに、馬のいななく声して、人が( )いる様子がした。
たくさん
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人にまされりと思へる人は、たとひ言葉に出でてこそ言わねども、内心にそこばくの咎あり。
人にまさっていると思っている人は、たとえ言葉に出していわなくても、心のなかに( )の欠点がある。
たくさんn
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げにただ人にはあらざりけり。
( )普通の人ではなかったのだ。
なるほど
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吹くからには秋の草木のしをるればむべ山風をあらしと言ふらむ。
吹くとたちまち秋の草木がしおれるので、( )それで山から吹き下ろす風を「あらし」と言うのだろう。
なるほど
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和歌こそ、なほをかしきものなれ。
和歌は、( )趣深いものである。
やはり
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薬も食はず。やがて起きもあがらで、病み臥せり。
薬も飲まない。( )起き上がらないで、病気になって臥せっている。
そのまま
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門をほとほとと叩けば、やがて弾きやみ給ひぬ。
門をとんとんたたくと、( )弾くのをやめなさった。
すぐに
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かくて、翁やうやう豊かになりゆく。
こうして扇は( )豊かになっていく。
だんだん
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四十あまりの春愁をおくれるあひだに、世の不思議を見る事、ややたびたびになりぬ。
四十余年の年月を送ってくる間に、世の中の思いがけない出来事を見ることが、( )度重なってきた。
だんだん
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女、いと悲しくて、しりに立ちて追ひ行けど、え追ひつかで、清水のある所に臥しにけり。
女は、ひどく悲しくて、あとを追って行ったが、追いつくことが( )、清水のあるところに倒れてしまった。
できず
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えさらぬことのみいとど重なりて、事の尽くる限りもなく、思ひ立つ日もあるべからず。
( )用事ばかりがますます重なって、用事がなくなる際限もなく、決心するひもあるはずがない。
やむをえない
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さらに交はることなし。
( )人とつきあ合うことがない。
まったくない
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や、なお越したてまつりそ。
おい、お越し申し上げる( )。幼い人は眠ってしまわれた。
な
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いかでさることは知りしぞ。
( )そのようなことを知っていたのか。
どうして
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命を奪はん事、いかでかいたましからざらん。
命を奪うようなことが、( )かわいそうでないだろうか。
どうして
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いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな。
( )このかぐや姫を手に入れたい、妻としたい。
どうにかして
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