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秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる。
気づく
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物に襲はるるここちして、おどろき給へれば、灯も消えにけり。
目を覚ます
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とかくしつつののしるうちに、夜更けぬ。
大騒ぎする
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この世にののしり給ふ光源氏、かかるついでに見たてまつり給はむや。
評判になる
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皆同じく笑ひののしる、いとらうがはし
騒がしい
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常に「天照大神を念じ申せ」といふ人あり。
祈る
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いみじく心憂けれど、念じてものも言はず。
がまんする
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いと悲しくおぼえけり
思われる
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尼君の見上げたるに、少しおぼえたるところあれば、子なめりと見給ふ
似る
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これにただ今おぼえむ古き言一つづつ書け。
思い出される
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などさしも心にしみてあはれとおぼえ給ひけむ。
思われる
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しのぶれど色に出でにけり我が恋はものや思ふと人の問ふまで
がまんする
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宮、例の、しのびておはしまいたり。
人目を避ける
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浅茅が宿に昔をしのぶこそ、色好むとは言はめ。
懐かしむ
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暮れはつるまで、ながめ暮らしつ。
もの思いに沈む
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明くるより暮るるまで、東の山ぎはをながめて過ぐす。
ぼんやり見る
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海の中にはつかに山見ゆ。
見える
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雲居よりもはるかに見ゆる人ありけり。
思われる
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時々も見え給へ。
姿を見せる
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つかふ人にも見えで、いと長かりける髪をかい切りて、手づから尼になりにけり。
見られる
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かかる異様の者、人に見ゆべきにあらず。
結婚する
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男、大和にある女を見て、よばひてあひにけり。
結婚する
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女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなむありける。
結婚させる
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立ちて見、ゐて見、見れど、去年に似るべくもあらず。
座る
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鳥獣もなき所にて一人食ひゐたり。
ていた
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みれば率て来し女もなし。
連れる
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菰積みたる船のありくこそ、いみじうをかしかりしか。
動き回る
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ひたすらに家ごとに乞ひありく。
まわる
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わびしと思ひありき給ふ
続ける
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この法師ばら、美麗なる物具飽くまで取りて、帰りけり。
満足する
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飽かず惜しいと思はば、千年を過ぐすとも一夜の夢の心地こそせめ。
満ち足りない
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三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
かわいらしい
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かの木の道の匠の作れる、うつくしき器物も、古代の姿こそをかしと見ゆれ。
立派だ
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かなしからん親のため、妻子のためには、恥をも忘れ、盗みもしつべきことなり。
いとしい
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ひとつ子にさへありければ、いとかなしうし給ひけり。
かわいがる
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いみじくうれしきにも涙落ちぬ。
とても
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し得たりし心地は、いみじかりしものかな。
とてもすばらしい
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死にけりと聞きて、いといみじかりけり。
とても悲しい
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雨など降るもをかし
趣がある
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たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよと、をかしう思す。
おもしろい
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をかしき額つきの透影あまた見えてのぞく。
美しい
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そのほかをかしきことども多かりけれども、恐れてこれを申さず。
滑稽だ
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童のをかしげなる、糸をぞよる。
かわいらしい
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風も吹かず、よき日出で来て、漕ぎ行く。
よい
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よき人はあやしきことを語らず。
身分が高く教養がある
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「よろしき者にやあらむ」とこそ思ひつれ、さらにこれはただ者にはあらず。
普通だ
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春ごとに咲くとて、桜をよろしう思ふ人やはある。
まあまあだ
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友とするにわろき者、七つあり。
よくない
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盗人あやしと思ひて、連子よりのぞきければ、若き女の死にて臥したるあり。
不思議だ
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遣戸を荒くたてあくるも、いとあやし。
けしからん
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あやしき下臈なれども、聖人の戒めにかなへり。
身分が低い
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水無月のころ、あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり。
粗末だ
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道すがら、人のあやしみ見ること限りなし。
不思議に思う
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今日よりは、おとなしくなり給へりや。
大人らしい
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心ばせある少将の尼、左衛門とてあるおとなしき人、童ばかりぞとどめたりける。
年配だ
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さるべくおとなしき人々、なにがしかがしといふいみじき源氏の武者たちをこそ、御送りに添へられたりけれ。
思慮分別がある
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月影ゆかしくは、南面に池を掘れ。
見たい
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ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。
行ってみたい
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人の目をもおどろかし、心をもよろこばせ給ふ昔の世、ゆかしげなり。
知りたそうだ
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明けぐれの空に、雪の光見えておぼつかなし。
ぼんやりしている
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おぼつかなきもの。十二年の山籠もりの法師の女親。
気がかりだ
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いかでもの越しに対面して、おぼつかなく思ひつめたること、少しはるかさむ。
待ち遠しい
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ありがたきもの。舅に褒めらるる婿。
めったにない
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「物は~心づけんためなり」と申されける、いとありがたかりけり。
めったにないほど立派だ
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秋の月は、限りなくめでたきものなり。
すばらしい
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大社を移して、めでたく造れり。
立派だ
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人の顔に、取り分きてよしと見ゆる所は、度ごとに見れども、あなをかし、めづらしとこそおぼゆれ。
すばらしい
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見すべきことありて、呼びにやりたる人の来ぬ、いとくちをし。
残念だ
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世を捨てて山に入る人山にてもなほ憂き時はいづちゆくらむ
つらい
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いとはつらく見ゆれど、志はせむとす。
薄情だ
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すべてかれにわびしきめな見せそ。
つらい
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前栽の草木まで、心のままならず作りなせるは、見る目も苦しく、いとわびし。
興ざめだ
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つれづれわぶる人は、いかなる心ならん。
つらいと嘆く
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梁塵秘抄の郢曲の言葉こそ、また、あはれなることは多かめれ。
しみじみと心打たれる
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わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろかにせんと思はんや。
おろそかに
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おそろしなんどもおろかなり。
言葉では言い尽くせない。
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狩りはねんごろにもせで、酒を飲み飲みつつ~
熱心に
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つれづれなる時は、これを友として游行す。
することもなく退屈な
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少しの地をも、いたづらにおかんことは、益なきことなり。
むだに
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年ごろおもひつること、果たしはべりぬ。
長年
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その人、かたちよりは心なむまさりたりける。
容貌
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御灯明の影ほのかに透きて見ゆ。
光
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つひに本意のごとくあひにけり。
かねてからの願い
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暮るるまで御物語したまひて、大宮も渡りたまひぬ。
おしゃべり
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世の中に長恨歌という文を、物語にかきてあるところあんなり。
漢詩
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ほど経にければ便なし。
時
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やがてかきつくままに、首のほどを食はんとす。
あたり
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同じほど、それより下郎の更衣たちは、ましてやすからず。
身分
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出で給ふほどを、人々のぞきて見たてまつる。
様子
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急ぎしもせぬほどに、月出でぬ。
うちに
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よろづのことよりも情けあるこそ、男はさらなり、女もめでたくおぼゆれ。
思いやり
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前の世にも御契りや深かりけむ。
宿縁
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いかなるたよりして、気色見せむ。
思い
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つた・くず・朝顔、いづれもいと高からず
たいして
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大門のかたに、馬の嘶く声して、人のあまたあるけはひしたり。
たくさん
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げにただ人にはあらざりけり。
なるほど
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和歌こそ、なほおかしきものなれ。
やはり
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やがて起きも上がらで、病み伏せり。
そのまま
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門をほとほとと叩けば、やがて弾きやみ給ひぬ。
すぐに
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かくて、翁やうやう豊かになりゆく。
段々
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女、いと悲しくて、尻に立ちて追ひ行けど、え追ひつかで、清水のある所に伏しにけり。
おいつくことができず
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な起こしたてまつりそ。
お起こし申し上げるな。
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さらにまだ見ぬ骨の様なり。
まったく見たこともない
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いかでさることは知りしぞ。
どうして
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いかでこのかぐや姫を得てしがな。
どうにかしてこのかぐや姫を手に入れたい。
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