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会社でない商人
小商人。資本額50万円未満で会社組織でないものを指す。商業登記、商号、商業帳簿の規定は適用されない(7条)。
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基本的商行為
営業の目的である行為。絶対的商行為と営業的商行為
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絶対的商行為
その行為のもつ客観的な営利的性格(対外的活動によって利益を上げる)に注目して、1回限り行われた場合でも、商行為とされるもの。
~501条~
①投機購買とその実行行為(1号)
②投機売却とその実行行為(2号)
③取引所においてなされる取引行為
④手形その他の商業証券に関する行為
⑤担保付社債信託法による信託の引受け
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投機購買とその実行行為
利益を得て譲渡する意思をもって動産、不動産若しくは有価証券を有償で取得し(投機購買)、その取得したものを譲渡する行為(実行行為)。
※取引安全の保護のために、投機意思は外部から認識可能でなければならない。
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投機売却とその実行行為
他から取得する予定の動産または有価証券を供給し(投機売却)、他から投機売却の目的物を有償で取得する行為(実行行為)。
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取引所
代替的な一定の物品が大量かつ集団的に売買される施設または市場。
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商業証券に関する行為
証券自体の上になされる振出し・引受け・裏書・保証などの証券上の行為のみを意味する。
※証券を目的とする売買・担保設定・交換・消費貸借などの行為は501条1号または2号の対象となる。
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営業的商行為
営業としてする(営利の目的をもって、反復継続して行う)場合に商行為とされる行為。
~502条~
①投機貸借およびその実行行為
②他人のための製造・加工に関する行為
③電気・ガスにの供給に関する行為
④運送に関する行為
⑤作業または労務に関する請負
⑥出版・印刷・撮影に関する行為
⑦場屋取引
⑧両替その他の銀行取引
⑨保険
⑩寄託の引受け
⑪仲立または取次ぎに関する行為
⑫商行為の代理の引受け
⑬信託の引受け
※ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
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投機貸借およびその実行行為
他に賃貸する意思をもって(投機意思)、動産または不動産を有償取得または賃借する行為を「投機貸借」といい、そのようにして取得・賃借した動産などを賃貸する行為を実行行為という。
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他人のため
他人の計算おいて、つまり経済的効果は他人に帰属するという意味である。
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製造・加工に関する行為
材料に労力を加えるという事実行為(物の種類に変更が生ずる場合が製造、生じない場合が加工)をすることを有償で引き受ける行為をいう。
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電気・ガスにの供給に関する行為
電気・ガスを供給することを有償で引き受ける行為。
水や電波、有線放送などの供給に関する行為は、会社法5条で商行為となる場合がある。
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運送に関する行為
運送という事実行為をすることを引き受ける行為をいう。
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作業または労務の請負
作業の請負:道路の建設、家屋・工作物の建築、船舶の建造などを引き受ける行為
労務の請負:労働者の供給を請け負う行為。自ら労務を提供することは含まれない。
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出版・印刷・撮影に関する行為
出版・印刷・撮影を引き受ける行為。
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場屋取引
(判例)公衆の来集に適する物的・人的設備を設け、客に一定の設備を利用させる行為である。
ホテル、映画館、遊園地、パチンコ店、ゴルフ場などがこれにあたる。判例によると理髪店はこれに含まれない。
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両替その他の銀行取引
金銭または有価証券の転換を媒介する行為をいう。
銀行取引は、金銭または有価証券を受け入れる行為(受信行為)とこれを需要者に給付する行為(与信行為)とがともに存在するものであり、したがって、自己資金のみをもって貸し付けを行う貸金業者の貸付行為は、受信行為がないので、銀行取引当たらない(判例・多数説)。
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保険
対価を得て、保険を引き受ける行為を言うが、営利を目的とするもの(営利保険)に限られ、社会保険や相互保険における保険行為は本号にあたらない。
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寄託の引受け
他人のために物の保管を引き受ける行為をいう。
倉庫業や駐車場の営業がこれにあたる。
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仲立に関する行為
他人間の法律行為の媒介を引き受ける行為である。媒介される法律行為が商行為の時は仲立人といい、商行為以外の法律行為であるときは民事仲立人(結婚の周旋業者、不動産仲介人など)という。
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取次に関する行為
自己の名をもって、他人の計算において法律行為をすることを引き受けることをいう。
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商行為の代理の引受け
本人にとって商行為である行為の代理を引き受けること。締約代理商がこれにあたる。
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信託
信託法3条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者(受託者)が一定の目的(もっぱらその者の利益を図る目的を除く)に従い財産の管理または処分およびその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすること。
信託業とは、信託の引受けを行う業者をいうと規定しており、信託業を営むことができる者は株式会社に限られている(信託業法3条以下)。
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付属的商行為
商人がその営業のためにする行為。(営業資金にあてるための借入れなどの開業準備行為)
行為の営業関連性があればいい。
※商人の行為は付属的商行為と推定される。
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固有の商人
自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
※この場合の「商行為」=会社以外にとっての基本的商行為のこと。
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自己の名をもって
法律上、自己がその行為から生ずる権利義務の帰属主体となること。
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業とする
営利の目的をもって同種の行為を反復的・継続的に行うことをいう。
※上記の予定があればその1回目もあたる。
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擬制商人
企業形態や経営形式に注目して商人とみなされる者。(農産物などを原始取得し、それを店舗で販売する者)
※原始取得したものを販売する行為は商行為ではない(501条と対比)。
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開業準備段階の商人資格の取得時期
営業の意思を相手方が認識し、または営業の意思が客観的に認識可能となった時点とする(判例・多数説)。
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商人資格の喪失
会社:清算結了の時に喪失する。
自然人:営業の廃止または営業的設備の廃止の時に喪失する。ただし、残務処理がある場合にはその終了時。
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清算結了
会社が解散した後に残余財産をすべて清算・分配し、法人格を消滅させる手続き。
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商業登記
商法・会社法その他の法律の規定により商業登記をなす登記をいう。
商業登記簿には、商号、未成年者、後見人、支配人、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、外国会社に関する9種類の登記簿がある(商登法6条)。これ以外の登記は、商法上に規定されても(船舶登記など)商業登記ではない。
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嘱託
官公庁が外部機関に事務を依頼する事実行為。
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商業登記の特殊的効力
商法9条1項および会社法908条1項の適用はない。
創設的効力:登記のみによって新たな法律事実または法律関係が創設される場合の効力。(会社の設立登記・新設合併登記・新設分割登記、株式移転登記など)
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商号
商人(会社・外国会社を除く)がその営業上、自己を表示するために用いる名称または会社もしくは外国会社の名称(会社6Ⅰ)のこと。
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商号権
商人(会社・外国会社を含む)がその使用する商号について有する権利のこと。
商号権の人格権的性質により侵害に対しての損害賠償請求(不正競争3・4)、またその財産的性質により商号権の譲渡が認められる。
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商号使用権
商号を選定した者は、登記の有無にかかわりなく、他人に妨害されることなくその商号を使用することができる権利のこと。
以後同一商号を選定しかつ登記をした者があっても、この者から使用差止めを請求されることはない。
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商号専用権
商号を選定した者は、未登記の商号についても他人が同一または類似の商号を不正に使用することを排斥することができる権利のこと。
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