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御かたちいと清げに、あまりあたらしきさまして、物より抜け出でたるようにぞおはせし。
もったいない
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あたら夜の月と花とを同じくあはれ知れらむ人に見せばや
もったいない
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かくようのことは、人中にて、下臈の申すにいとかたじけなし
おそれ多い
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かたじけなくも御硯召し寄せて、みづから御返事あそばされけり。
ありがたい
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老い衰へて世に出で交じらひしは、をこがましく見えしかば、われはかくて閉ぢこもりぬべきぞ。
愚かしい
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行きずりの人の宣はむことをたのむこそをこなれ。
愚かだ
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後の世のこと心に忘れず、仏の道うとからぬ、こころにくし。
奥ゆかしい
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下衆の家の女主人。痴れたる者。それしもさかしうて、まことにさかしき人を教へなどすかし。
こざかしい かしこい
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こと人々のもありけれど、さかしきもなかるべし。
気が利いている
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雷の鳴り閃く様さらに言はむ方なくて、落ちかかりぬとおぼゆるに、ある限りさかしき人なし。
気がしっかりしている
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なほしるべせよ。我はすきずきしき心などなき人ぞ。
好色めいている
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すきずきしき方のみにあらず、土御門の御日記とて、世の中の鏡となむ承る。
風流だ
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小少将の君は、そこはかとなくあてになまめかしう、二月ばかりのしだり柳のさましたり。
優美だ
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なかなか長きよりもこよなういまめかしきものかな。
現代風だ
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祭りのころは、なべていまめかしう見ゆるにやあらむ。
華やかだ
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女のなつかしきさまにてしどけなう弾きたるこそをかしけれ。
無造作だ
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世もいまだ静まり候はねば、しどけなき事もぞ候ふとて、御迎へに参つて候ふ。
乱れている
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冬はつとめて。いと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし。
似つかわしい
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よろしき男を、下衆女などのほめて、「いみじうなつかしうおはします」など言へば、やがて思ひおとされぬべし。
好ましい
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命長ければ恥多し。長くとも四十に足らぬほどにて死なむこそ、めやすかるべけれ。
見苦しくない
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今ぞ心やすく黄泉路もまかるべき。
安心だ
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この位去りて、ただ心やすくてあらむ。
気楽だ
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乳母替へてむ。いとうしろめたし。
心配だ
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内裏に奉らむと思へど、われ亡からむ世など、うしろめたなし。
心配だ
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風の便りの言伝ても絶えて久しくなりければ、何となりぬることやらむと、心苦しうぞ思はれける。
つらい
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君は思し怠る時の間もなく、心苦しくも恋しくも思し出づ。
気の毒だ
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上達部・上人などもあいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御おぼえなり。
見ていられない
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はかなき御いらへも心やすく聞こえむもまばゆしかし。
恥ずかしい
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はづかしき人の、歌の本末問ひたるに、ふとおぼえたる、我ながらうれし。
立派だ
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つたなく弾きて、弾きおほせざれば、腹立ちて鳴らぬなり。
下手だ
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愚かにつたなき人も、家に生まれ、時にあへば、高き位にのぼり、奢りを極むるもあり。
劣っている
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屏風・障子などの、絵も文字もかたくななる筆様して書きたるが、見にくきよりも。宿の主のつたなくおぼゆるなり。
下品だ
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ただこれ天にして、汝が性のつたなきを泣け。
不運だ
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鶴は、いとこちたきさまなれど、鳴く声、雲居まで聞こゆる、いとめでたし。
仰々しい
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古くよりこの地を占めたるものならば、さうなく掘り捨てられ難し。
無造作だ
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城陸奥守泰盛は、さうなき馬乗りなりけり。
並ぶものがない
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ところせきまで遊びひろげ給へり。
いっぱいだ
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ところせき身こそわびしけれ。
窮屈だ
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ただ近き所なれば、車はところせし。
おおげさだ
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立ち聞き、かいまむ人のけはひして、いといみじくものつつまし。
気がひける
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何をか奉らむ。まめまめしきものはまさなかりなむ。
よくない
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いかに瀬尾殿、まさなうも敵に後ろをば見するものかな。
見苦しい
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殿上人、地下なるも、陣に立ち添ひて見るも、いとねたし。
しゃくにさわる
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紅葉もまだし。花もみな失せにたり。
まだ時期が早い
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供なる男どもも、いみじう笑ひつつ、「ここまだし、ここまだし」と差しあへり。
不十分だ
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思ほえず、ふるさとにいとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。
不釣り合いだ
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えはしたなうもさし放ちきこえず。
無愛想だ
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ある夜、野分はしたなう吹いて、紅葉みな吹き散らし、落葉すこぶる狼藉なり。
はげしい
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はしたなきもの。こと人を呼ぶに、われぞとさし出でたる。
きまりが悪い
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人の上いふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。
道理に合わない
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苦しげなるもの。わりなくもの疑ひする男に、いみじう思はれたる女。
並々ではない
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女君は、わりなう苦しと思ひ臥したまへり。
耐えがたい
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いみじう酔ひて、わりなく夜更けて泊まりたりとも、さらに湯漬けをだに食はせじ。
しかたない
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今日はずちなし。右の大臣に任せ申す。
どうしようもない
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あへなきこと限りなし。
あっけない
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小さきはあへなむ。
かまわないだろう
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花は盛りに月はくまなきをのみ見るものかは。
暗い所のない
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いとくまなき御心のさがにて、推し量り給ふにやはべらむ。
行き届かないところがない
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初めより我はと思ひ上がり給へる御方々、めざましきものにおとしめそねみ給ふ。
気にくわない
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心づきなきことあらん折は、なかなかその由をも言ひてん。
気に入らない
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ほかにて酒などまゐり、酔ひて、夜いたく更けて、ゆくりもなくものし給へり。
突然だ
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中宮も御物の怪に悩ませ給ひて、常はあつしうおはしますを、院もいとど晴れ間なく思し嘆く。
病状が重い
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あながちなる御言かな。
無理やりだ
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あながちに丈高き心地ぞする。
むやみだ
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受領などの家にも、物の下部などの来て、なめげに言ひ、さりとて我をばいかがせん、など思ひたる、いとねたげなり。
無礼だ
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男にさへおはしましける喜び、いかがはなのめならむ。
並一通りだ
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文言葉なめき人こそ、いとにくけれ。世をなのめに書き流したる言葉のにくきこそ。
いい加減だ
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おぼろけにいそぐことなきは、必ず参り給ふ。
並一通りだ
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おぼろけのよすがならで、人の言にうちなびき、この山里をあくがれ給ふな。
並々ではない
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逢はじとしけれど、男はあやにくに心ざし深くなりゆく。
ひどい
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ことなる顔かたちなき人は、物まめやかに習ひたるぞよき。
まじめだ
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をかしきやうにもまめやかなるさまにも心寄せ仕うまつり給ふこと、三年ばかりになりぬ。
実生活向きだ
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まめやかに降れば、笠もなき男ども、ただ引きに引き入れつ。
本格的だ
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嘆き切なるときも、声をあげて泣くことなし。
切実だ
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せちなること聞こえむ。
大切だ
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せちに「来」とあらば、行かむ。
ひたすら
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この大将の君の、今はとよそになり給はむなむ、飽かずいみじく思ひたまへらるる。
無縁だ
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うちつけなる御夢語りにぞはべるなる。
突然だ
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いとうちつけなる心かな。
軽率だ
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うれしきもの。とみにて求むる物、見出でたる。
急だ
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御前の方にいみじくののしる。内侍起こせど、とみにも起きず。
すぐに
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むすめを思ひかけて、みそかに通りありきけり。
ひそかだ
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天屋の何某といふ者、破籠・小竹筒などこまやかにしたためさせ、僕あまた舟に取り乗せて、追い風時の間に吹き着きぬ。
心を込めている
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物の心知らせ給へる宮たちは、御衣の色などもいとこまやかなるもあはれなり。
色が濃い
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こまやかにをかしとはなけれど、なまめきたるさましてあて人と見えたり。
繊細で美しい
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灯台に向かひて寝たる顔どももらうたげなり。
かわいらしい
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をかしげなる児の、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かい付きて寝たる、いとらうたし。
かわいい
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あら思はずや、東にもこれほど優なるひとのありけるよ。
優美だ
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