解答: ○
解説: 反応速度式は、反応がどのようなステップ(素反応)を経て進むかという反応機構を反映します 。化学反応式は反応物と生成物の量的な関係(化学量論)を示しているだけで、途中の経路については何も教えてくれません。そのため、見た目の反応式から安易に速度式を予測することはできず、実験的に決定する必要があります 。
解答: ○
解説: 0次反応の速度式は r = k[A]^0 = k と表されます。これは、反応速度 r が反応物の濃度 [A] に依存せず、常に一定値(速度定数 k)であることを意味します。したがって、基質は一定のペースで直線的に減少していきます。
解答: ○
解説: 1次反応の半減期(濃度が半分になる時間)は、t₁/₂ = ln(2) / k で与えられます。この式には初期濃度 [A]₀ が含まれていないため、半減期は初期濃度によらず一定です。これは放射性同位体の崩壊などに見られる特徴です。
解答: ×(誤り)
訂正: 正しくは [A] = [A]_0 / (1 + 2k × t × [A]_0)
解説: 反応「2A → B」の反応速度は r = −(1/2) × d[A]/dt = k × [A]^2 という関係になります。この微分方程式を解くと (1 / [A]) − (1 / [A]_0) = 2k × t という式が得られます。この式を [A] について解くと [A] = [A]_0 / (1 + 2k × t × [A]_0) となり、これが正しい形です。問題の式は、分母にある「2」が抜けていたため間違いです。
解答: ○
解説: このような反応を並列反応(併発反応)と呼びます。それぞれの生成速度は d[B]/dt = k₁[A]、d[C]/dt = k₂[A] です。これらの比を取ると d[B]/d[C] = k₁/k₂ となり、時間に関わらず生成物の比は速度定数の比と等しくなります。
解答: ○
解説: 中間体Bの濃度が最大になる時間は、Bの濃度変化率 d[B]/dt が0になるときです。式 d[B]/dt = k₁[A] − k₂[B] に、[A] と [B] の時間変化の式を代入して d[B]/dt = 0 を解くことで、この時間が求められます。
解答: ○
解説: 前段反応(A → B)が律速(非常に遅い)ということは、Bが生成されるとすぐに次の反応(B → C)で消費されてしまうことを意味します。この場合、反応全体の速度は遅い方のステップ、つまり A → B の速度 k₁ で決まります。これは定常状態近似という考え方で導出でき、結果として C の生成は A の減少とほぼ同じペースで進むと見なせるため、この式が成り立ちます。
解答: ○
解説: 前駆平衡とは、最初のステップが速い可逆反応で、ほぼ平衡状態にあり、次のステップが遅い(律速)反応のことです。この場合、Dの生成速度は律速段階である C → D の速度で決まります(r = k₃[C])。中間体Cの濃度は、前駆平衡の平衡定数 K = [C]/([A][B]) から [C] = K[A][B] と表せるため、これを代入すると r = k₃K[A][B] となります。
解答: ○
解説: もし(ii)が律速なら、反応速度は [O_2] に比例します。一方、もし(i)の逆反応が律速で(ii)が速い場合、速度式は複雑になり、O_2 依存性が異なる形(または依存しなくなる)になります 。このように、反応次数(この場合は
O_2分圧への依存度)を実験的に調べることで、どちらのステップが全体の速度を決めているか(律速段階か)を推測することができます 。
解答: ○
解説: 18電子則は、多くの有機金属錯体の安定性を説明する経験則です。18個の価電子を持つ錯体は、希ガスと同様の閉殻電子配置となり安定です(配位飽和)。そのため、外部の分子(基質)と反応するには、一度配位子を脱離させて電子数を減らし、基質が配位できる空の場所(配位不飽和状態)を作る必要があります 。
解答: ○
解説: 低温では、反応は活性化エネルギーが低い経路、つまり反応速度が速い経路を選択します(速度論支配)。この反応では、遷移状態での二次的な軌道相互作用によりendo付加体への活性化エネルギーが低くなるため、endo体が主に生成します 。一方、高温では、反応は可逆的になり、最終的により安定な生成物へと落ち着きます(
平衡論支配)。exo付加体は立体障害が小さいためendo体より安定であり、高温ではexo体が主生成物となります 。
解答: ○
解説:
SN1反応: 2段階で進行し、律速段階は脱離基が脱離してカルボカチオン中間体が生成する第一段階です。この段階には求核剤は関与しないため、反応速度は基質濃度にのみ比例します (r=k[基質]) 。
SN2反応: 1段階で進行し、求核剤が基質の背面から攻撃すると同時に脱離基が脱離します。この段階には基質と求核剤の両方が関与するため、反応速度は両者の濃度に比例します (r=k[基質][求核剤]) 。
解答: ×
訂正: 正しくは「遷移状態に対して溶媒和の寄与が大きい溶媒を選択するのがよい」である。
解説: 反応はエネルギーの山(遷移状態)を越えることで進行します。溶媒が遷移状態をより強く安定化(溶媒和)させると、活性化エネルギー(原系と遷移状態のエネルギー差)が小さくなり、反応速度は速くなります 。原系だけを安定化させると、逆に活性化エネルギーは大きくなってしまいます。
解答: ×
訂正: 反応温度を上げると反応速度は遅くなることがあるが、必ずではない。
解説: 前駆平衡が発熱反応の場合、温度を上げると平衡は原系側に偏り、中間体の濃度は減少します(ルシャトリエの原理)。これは反応を遅くする要因です。しかし、後段の律速反応自体の速度定数はアレニウス式に従い、温度を上げると大きくなります。全体の反応速度はこれら2つの効果の兼ね合いで決まるため、必ず遅くなるとは限りません 。
解答: ×
訂正: 最も信頼性が高いのは、通常の基質と重水素化基質の反応を別々に独立しておこない、それぞれの速度定数を比較する方法である。
解説: 分子間競争反応や分子内競争反応は簡便ですが、基質の反応性のわずかな違いや、副反応などによる誤差を生む可能性があります。最も正確な速度論的同位体効果(KIE)を得るためには、それぞれの反応を独立した条件下で精密に測定し、速度定数の比 (k_H/k_D) を算出するのが理想的です 。
解答: ×
訂正: E2反応では比較的大きな1次速度論的同位体効果が観測されるが、E1反応では同位体効果はほとんど観測されない。
解説:
E2反応: C-H結合の開裂が律速段階に含まれているため、HをDに置換するとC-D結合の強い結合エネルギーのために反応が遅くなり、大きな同位体効果 (k_H/k_D1) が観測されます 。
E1反応: 律速段階は脱離基の脱離であり、C-H結合の開裂はそれに続く速い段階で起こります。そのため、C-H結合の開裂は全体の反応速度に影響せず、1次同位体効果は観測されません 。
解答: ○
解説: E1cB反応は、①まず塩基によってプロトンが引き抜かれ、共役塩基(カルボアニオン)が生成し(可逆)、②次に脱離基が脱離する、という2段階の反応です。通常、律速段階は第二段階の脱離基の脱離であるため、第一段階のC-H結合の開裂は全体の速度に影響せず、1次同位体効果は観測されません。
解答: ×
訂正: SN1反応でもSN2反応でも2次速度論的同位体効果は観測される。
解説: 2次同位体効果は、結合が直接切れない位置の同位体置換による効果です。SN1反応では、反応中心の炭素の混成軌道が sp 3 から sp 2 に変化します。この変化に伴いC-H結合の振動状態が変わり、遷移状態のエネルギーに影響を与えるため、2次同位体効果 (k_H/k_D1) が観測されます 。SN2反応でも同様に遷移状態で混成軌道が変化するため、2次同位体効果が観測されます。
解答: ○
解説: この反応は、①ニトロニウムイオン (NO_2 + ) の生成、②ベンゼン環への NO_2 + の付加、③プロトンの脱離、のステップで進みます。律速段階が②であれば、反応速度はベンゼンと NO_2 + の濃度に比例するはずです。実際に速度と NO_2 + 濃度の関係を調べることで、②のステップが律速であるという仮説を検証することができます 。
解答: ×
訂正: ¹⁸Oを含むブタノールは生成せず、¹⁸Oを含む酢酸が生成する。
解説: エステルの塩基性加水分解(けん化)では、水酸化物イオン (OH − ) がエステルのカルボニル炭素を攻撃し、アシル-酸素 (C−O) 結合が切断されます。そのため、溶媒の水分子(この場合 H_2 18 O)の酸素原子は、アルコール(ブタノール)ではなく、カルボン酸(酢酸)側に取り込まれます 。