-
一人はいやしき男の貧しき、一人はあてなる男もたりけり。
身分の高い
-
ただ文字一つにあやしう、あてにもいやしうもなるは、いかなるにかあらむ。
上品に
-
世になく清らなる玉の男皇子さへ生まれ給ひぬ。
美しい
-
きよげなる大人二人ばかり、さては童べぞ出で入り遊ぶ。
きれいな
-
つらつき、まみのかをれるほどなど、言へばさらなり。
言うまでもない
-
夏は夜。月のころころはさらなり。
言うまでもない
-
こなたはあらはにや侍らむ。今日しも端におはしましけるかな。
まる見えで
-
あらはに御損にさざらふ。
明らかに
-
をかしげなる児の、あからさまに抱きて遊ばしうつくしむほどに、かい付きて寝たる、いとらうたし。
ちょっとの間
-
いかに殿ばら、殊勝のことは御覧じとがめずや。むげなり。
まったくひどい
-
今様は、むげにいやしくこそなりゆくめれ。
むやみに
-
露をなどあだなる物と思ひけむ。あだなる物と思ひけむ
はかない
-
いとまめに実用にて、あだなる心なかりけり。
不誠実な
-
ことにかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝、散りにけり。今は見所なし」などは言ふめる。
情趣を解さない
-
みづからもいみじと思へる気色、かたくななり。
見苦しい
-
名をば大納言の大別とぞいひける。こちなかりし名なりかし。
無骨な
-
昔、男、陸奥の国にすずろに行きいたりにけり。
あてもなく
-
つた、かへでは茂り、もの心細く、すずろなるめを見ることと思ふに、修行者あひたり。
思いがけない
-
大方は知りたりとも、すずろに言ひ散らすは、さばかりの才にはあらぬにやと聞こえ、おのずから誤りもありぬべし。
むやみに
-
おほやけの宮仕へしければ、常にはえまうでず。
朝廷
-
おほやけに御文奉り給ふ。
天皇
-
いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。
身分
-
人を見るに、少し心あるきはは、皆このあらましにてぞ一期は過ぐめる。
程度
-
久しくとどまりたる例なし。
例
-
世の例にもなりぬべき御もてなしなり。
語り草
-
我を知らずして、外を知るといふ理あるべからず。
道理
-
宮の泣きまどひ給ふこと、いとことわりなりかし。
当然だ
-
天地ことわり給へ。
道理を明らかにし
-
小式部、これより、歌詠みの世におぼえ出で来にけり。
評判
-
いとまばゆき、人の御おぼえなり。
寵愛
-
いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ、目さむる心地すれ。
気持ち
-
中納言、たちまちに御心地もやみてめでたし。
病気
-
うつつにも夢にも人にあはぬなりけり。
現実
-
うつつの人の乗りたるとなむ、さらに見えぬ。なほ下りて見よ。
正気
-
観音を頼み奉らんに、その験なしといふことは、あるまじきことなり。
ご利益
-
験なきものを思はずは一坏の濁れる酒を飲むべくあるらし
効果
-
かの鬼の虚言は、このしるしを示すなりけりと言ふ人も侍りし。
前兆
-
十七日のつとめて、立つ。
早朝
-
うち笑ふことがちにて暮れぬ。つとめて、客人帰りぬる後、心のどかなり。
翌朝
-
三月のつごもりなれば、京の花、盛りはみな過ぎにけり。
月末
-
四季はなほ定まれるついであり。死期はついでを待たず。
順序/順序
-
ことのついでありて、人の奏しければ、聞こしめしてけり。
機会
-
女、親なく、頼りなくなるままに、もろともにいふかひなくてあらむやはとて、河内の国、高安の郡に、行き通ふ所出で来にけり。
頼れるもの
-
たよりの人に言ひつきて、女は京に来にけり。
縁故
-
これを習ふべし。学問に便りあらんためなり。
便宜
-
便りごとに物も絶えず得させたり。
機会
-
孝養のなき心なき者も、子持ちてこそ、親の志は思ひ知るなれ。
愛情
-
いとはつらく見ゆれど、志はせむとす。
贈り物
-
まことに他にことなりけり。都のつとに語らん。
みやげ
-
平城の京、春日の里に、しるよしして、狩りに住けにけり。
縁
-
人に知られでくるよしもがな
方法
-
ふりにける岩の絶え間より落ちくる水の音さへ、故びよしある所なり。
風情
-
十二月の二十日あまり一日の日の戌の時に門出す。そのよし、いささかにものに書きつく。
事情
-
火をつけて燃やすべきよし仰せ給ふ。
旨
-
心得たるよしして、賢げにうちうなずき、ほほ笑みてゐたれど、つやつや知らぬ人あり。
そぶり
-
今日はよろづを捨てて、参りさぶらひつるなり。
さまざまなこと
-
尋常ならぬさまなれども、人に厭はれず、よろづ許されり。
すべて
-
寺にたうときわざすなる、見せたてまらむ。
仏事
-
ひとり、灯火のもとに文を広げて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。
こと
-
見給へば、御息所の御手なり。
筆跡
-
あまたの手を、片時の間に弾きとりつ。
演奏法
-
雨の降るやうに射けれども、鎧よければ裏かかず、あき間を射ねば手も負はず。
傷も負わ
-
才をもととしてこそ、大和魂の世に用ゐらるる方も強う侍らめ。
学問
-
立て籠めたる所の戸、すなはちただ開きに開ぬきぬ。
すぐに
-
用ありて行きたりとも、そのこと果てなば、とく帰るべし。
早く
-
息はとく絶え果てにけり。
すでに
-
母、物語など求めて見せ給ふに、げにおのづから慰みゆく。
自然に
-
かねてのあらまし、皆違ひゆくかと思ふに、おのづから違はぬこともあれば、いよいよ物は定めがたし。
偶然に
-
おのづから後まで忘れぬ御事ならば、召されてまたは参るとも、今日は暇を給はらむ。
万一
-
いつしか梅咲かなむ。
早く
-
鶯ばかりぞいつしか音したるを、あはれと聞く。
早くも
-
この法師のみにもあらず、世間の人、なべてこのことあり。
総じて
-
なべて人に似ずをかし。
普通
-
なべてならぬ法ども行はるれど、さらにその験なし。
並々ではない
-
散ればこそいとど桜はめでたけれ
いっそう
-
ひまひまより見ゆる灯の光、蛍よりけにほのかにあはれなり。
よりいっそう
-
かくおとなしき心あらむとこそ思はざりしか。
このように
-
何をもちて、とかくと申すべき。
あれこれと
-
おのれは、とてもかくても経なむ。
どのようにしても
-
我はしか隔つる心もなかりき。
そのように
-
この名しかるべからずとて、かの木を伐られにけり。
ふさわしく
-
まことにさにこそ候ひけれ。
そう
-
さりぬべきをりみて、対面すべくたばかれ。
そのようで
-
これを聞く人、「げにさることなり」となむ言ひける。
もっともなこと
-
「この殿の御心、さばかりにこそ」とて、その後は参らざりける。
その程度
-
さばかり深き谷一つを平家の勢七万余騎でぞ埋めたりける。
非常に
-
今はなき人なれば、かばかりのことも忘れがたし。
この程度
-
かの廂に敷かれたりし物は、さながらありや。
そのまま
-
資材を取り出づるに及ばす、七珍万宝さながら灰燼となりにき。
全部
-
すべてつゆ違ふことなかりけり。
少しも ない
-
つゆの御いらへもし給はず。
ほんの少し
-
今は逃ぐとも、よも逃がさじ。
まさか ないだろう
-
むなしう帰り参りたらんは、なかなか参らざらんより、悪しかるべし。
かえって
-
かへりみのみしつつ出で給ふ気色、いとなかなかなり。
かえって会わない方ががましな
-
祇王もとより思ひまうけたる道なれども、さすがに昨日今日とは思ひよらず。
そうはいってもやはり
-
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例なし。
一方では/一方では
-
かつあらはるるをも顧みず、口に任せて言ひ散らかすは、やがて浮きたることと聞こゆ。
すぐに
-
などかくは仰せられるる。
どうして
-
正直の人、などかなからむ。
どうして
-
などて、かくはかなき宿りは取りつるぞ。
どうして
-
なにか射る。な射そ。な射そ。
どうして
-
なでふ、かかるすき歩きをして、かくわびしきめを見るらむと、思へどかひなし。
どうして
-
いまさらに、なでふさることかはべるべき。
どうして
-
こは、なでふことをのたまふぞ。
なんという
-
大人になりたまひて後は、ありしやうに御簾の内にも入れ給はず。
かつての
-
「さらば、そのありつる御文を給はりて来」となむ仰せられるる。
さっきの
-
例のいと忍びておはしたり。
いつものように
-
例のことどもして、昼になりぬ。
いつもの
-
そのころほひより、例ならず悩みわたれせ給ふ。
いつものようでなく
-
音に聞くと、見る時とは、何事も変はるものなり。
うわさに聞くと
-
音に聞く人なり。何事によりて来たれるぞ。
評判の高い
-
奈良坂にて人にとられなばいかがせむ。
どうしようか
-
養ひ飼ふものには、馬・牛。つなぎ苦しむるこそ痛ましけれど、なくてかなはぬものなれば、いかがはせむ。
どうしようもない
-
若宮など生ひ出で給はば、さるべきついでもありなむ。
適当な
-
さるべき契りこそはおはしましけめ。
そうなるはずの
-
さるべき人は、とうより御心魂のたけく、御守もこはきなめりとおぼえ侍るは。
立派な
-
いざたまへ、出雲拝みに。
さあ、一緒にいらっしゃい
-
いざさせたまへ。湯浴みに。
さあ、一緒にいらっしゃいませ
-
ある暮れ方に都を出でて、嶬峨の方へぞあくがれ行く。
さまよい出て
-
もの思ふ人の魂はげにあくがるるものになむありける。
宙にさまよう
-
月の明きはしも、過ぎにし方、行末まで思ひ残さるることなく、心もあくがれ、めでたくあはれなること、たぐひなくおぼゆ。
うわの空になり
-
果の日は、いと情けなう、互ひに言ふこともなか、我かしこげに物ひきしたため、ちりぢりに行き別れぬ。
処理し
-
これを思ふに、女なりともなほ寝所などはしたためてあるべきなり。
用意し
-
いづ方にも、若き者ども酔ひすぎたち騒ぎたるほどのことは、えしたためあへず。
取り締まる
-
昔、男、初冠して、平城の京、春日の里にしるよしして、狩りに住にけり。
土地を領有する
-
いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。
寵愛を受け
-
そのころ、宋朝よりすぐれたる名医わたつて、本朝にやすらふことあり。
とどまる
-
何事をかうちいづる言の葉にせん。
口に出して言う
-
御様をやつし、いやしき下臈のまねをして、日吉社に御参籠あつて、七日七夜が間、折り申させ給ひけり。
地味な格好にし、
-
網代車で昔おぼえてやつれたるにて出で給ふ。
地味な格好になっ
-
やんごとなき女房の、うちそばみてゐ給へるを見給れば、わが思ふ人なり。
横を向い
-
遣水心細く、音細くおとなひたり。
音を立て
-
娘多かりと聞きて、なま君達めく人々もおとなひ言ふ、いとあまたありけり。
手紙を出し
-
その(= 弘徽殿ノ)御方に、うちふしといふ者の娘、左京といひて候ひけるを、源中将かたらひてなむと、人々笑ふ。
交際し
-
すみける男、夜深く来ては、まだ暁に帰りなどす。
通っ
-
すさまじきもの。⋯方違へどに行きたるに、あるじせぬ所。
客にごちそうし
-
藤原良近といふをなむ、まらうとざねにて、その日はあるじまうけしたりける。
客の主たる人/にごちそうし
-
侮らはしげにもてなす(連中)は、めざましうて、なげのいらへをだにせさせ給はず。
振る舞う
-
なほきこえ給へ。わざと懸想だちてももてなさじ。
取り扱う
-
鎌倉の海に鰹といふ魚は、かの境には双なきものにてこのごろもてなすものなり。
もてはやす
-
よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、興ずるさまもなほざりなり。
おもしろがる
-
十一月、十二月の降り凍り、六月の照りはたたくにも、さはらず来たり。
妨げられ
-
道もさりあへず立つ折もあるぞかし。
避け
-
かの左衛門督はえなられじ。また、そこにさられば、こと人こそはなるべかなれ。
断り
-
あこぎ、おとなになりね。いと心およすげためり。
成長し
-
「何とまれ、言へかし」とのたまふを、人々もおよすげて見奉る。
大人び
-
何とにかあらむ、かきくらして涙こぼるる。
悲しみが心を暗くし
-
乞食、路のほとりに多く、憂へ悲しむ声耳に満てり。
訴え
-
舟の中にや老いをばかこつらむ。
不平を言っ
-
知らぬわざしてまろも困しにたり。そこも眠たねに思ほしためり。
疲れ
-
折ふしいたはること候ひと下り候はず。
病気になる
-
心ことに設けの物などいたはりてし給へ。
骨を折っ
-
常の使ひよりは、この人よくいたはれ。
世話しなさい
-
身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞いて、いかにいかにとおぼつかなきことを嘆くに、おこたりたる由、消息聞くもいとうれし。
病気で苦しむ
-
なやましう侍りつれば、しばしためらひて。
静養し
-
ややためらひて仰せ言伝へ聞こゆ。
気を静め
-
日ごろ月ごろしるきことありてなやみわたるが、おこたりぬるもうれし。
病気がよくなっ
-
人におくれて、四十九日の仏事に、ある聖を請じ侍りしに、説法いみじくして、皆人涙を流しけり。
先立たれて
-
院宣宣旨のなりたるに、しばしもやすらふべからず。
ためらう
-
御かたちいと清げに、あまりあたらしきさまして、物より抜け出でたるようにぞおはせし。
もったいない
-
あたら夜の月と花とを同じくはあはれ知れらむ人に見せばや
もったいない
-
かくやうのこと(政界ノ裏話)は、人中にて、下臈の申すにいとかたじけなし。。
おそれ多い
-
かたじけなくも御硯召し寄せて、みづから御返事あそばされけり。
ありがたい
-
後の世のこと心に忘れず、仏の道うとからぬ、こころにくし。
奥ゆかしい
-
なほしるべせよ。我はすきずきしき心などなき人ぞ。
好色めいた
-
すきずきしき方のみにあらず、土御門の御日記とて、世の中の鏡となむ承る。
風流な
-
よろしき男を、下衆女などのほめて、「いみじう、なつかしうおはします」など言へば、やがて思ひあとされぬべし。
好ましく
-
命長ければ恥多し。長くとも四十に足らぬほどにて死なむこそ、めやすかるべけれ。
見苦しくない
-
小少将の君は、そこはかとなくあてになまめかしう、二月ばかりのしだり柳のさましたり。
優美で
-
なかなかながきよりもこよなういまめかしきものかな。
現代風な
-
祭りのころは、なべていまめかしう見ゆるにやあらむ。
華やかに
-
女のなつかしきさまにてしどけなう弾きたるこそをかしけれ。
無造作に
-
世もいまだ静まり候はねば、しどけなき事もぞ候ふとて、御辺りへに参つて候ふ。
乱れた
-
下衆の家の女主人。痴れたる者。それしもさかしうて、まことにさかしき人を教へなどすかし。
こざかしく/かしこい
-
こと人々の(歌)もありけれど、さかしき(歌)もなかるべし。
気が利いている
-
雷の鳴り閃く様さらに言はむ方なくて、落ちかかりぬとおぼゆるに、ある限りさかしき人なし。
気がしっかりしている
-
はづかしき人の、歌の元末問ひたるに、ふとおぼえたる、我ながらうれし。
立派な
-
立ち聞き、かいまむ人のけはひして、いといみじくものつつまし。
気がひける
-
今ぞ心やすく黄泉路もまかるべき。
安心して
-
この位去りて、ただ心やすくてあらむ。
気楽な
-
風の便りの言伝ても絶えて久しくなりければ、何となりぬることやらむと、心苦しうぞ思はれる。
つらく
-
君は、思し怠る時の間もなく、心苦しくも恋しくも思し出づ。
気の毒に
-
乳母替へてむ。いとうしろめたし。
心配だ
-
内裏に奉らむと思へど、われ亡からむ世など、うしろめたなし。
心配だ
-
初めよりは我はと思ひ上がり給へる御方々、めざましきものにおとしめそねみ給ふ。
気にくわない
-
冬はつとめて。いと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし。
似つかわしい
-
心づきなきことのあらん折は、なかなかその由をも言ひてん。
気に入らない
-
老い衰へて世に出で交じらひしは、をこがましく見えしかば、われはかくて閉ぢこもりぬべきぞ。
愚かしく
-
行きずりの人の宣はむことをたのむこそをこなれ。
愚かだ
-
上達部・上人などもあいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御おぼえなり。
見ていられない
-
はかなき御いらへも心やすく聞こえむもまばゆしかし。
恥ずかしい
-
殿上人、地下なるも、陣に立ち添ひて見るも、いとねたし。
しゃくにさわる
-
古くよりこの地を占めたるものならば、さうなり掘り捨てられ難し。
無造作に
-
城陸奥守泰盛は、さうなき馬乗りなりけり。
並ぶものがない
-
(紫ノ上ハ人形ヲ)ところせきまで遊びひろげ給へり。
いっぱいな
-
ところせき身こそわびしけれ。軽らかなるほどの殿上人などにしてしばしあらばや。
窮屈な
-
ただ近き所なれば、車はところせし。
おおげさだ
-
鶴は、いとこちたきさまなれど、鳴く声、雲居まで聞こゆる、いとめでたし。
仰々しい
-
つたなく弾きて、弾きおほせざれば、腹立ちて鳴らぬなり。
下手に
-
愚かにつたなき人も、家に生まれ、時にあへば、高き位にのぼり、奢りを極むるもあり。屏風・障子などの、絵も文字もかたくななる筆様して書きたるが、見にくきよりも、宿の主のつたなくおぼゆるなり。
劣っている
-
屏風・障子などの、絵も文字もかたくななる筆様して書きたるが、見にくきよりも、宿の主のつたなくおぼゆるなり。
下品に
-
ただこれ天にして、汝が性のつたなきを泣け。
不運な
-
何をか奉らむ。まめまめしきものはまさなかりなむ。ゆかしくし給ふなるものを奉らむ。
よくない
-
いかに瀬尾殿、まさなうも敵に後ろをば見するものかな。
見苦しくない
-
思ほえず、ふるさとにいとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。
不釣り合いな
-
えはしたなうもさし放ちきこえず。
無愛想に
-
ある夜、野分はしたなう吹いて、紅葉みな吹き散らし、落葉すこぶる狼藉なり。
はげしく
-
はしたなきもの。こと人呼ぶに、われぞとさし出でたる。
きまりが悪い
-
人の上いふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。
道理に合わない
-
苦しげなるもの。⋯わりなくもの疑ひする男に、いみじう思はれたる女。
並々ではなく
-
女君は、わりなう苦しと思ひ臥したまへり。
耐えがたく
-
いみじう酔ひて、わりなく夜更けて泊まりたりとも、さらに湯漬けをだに食はせじ。
しかたなく
-
今日はずちなし。右の大臣に任せ申す。
どうしようもない
-
伊成進み寄りて、弘光が手を取りて前ざまへ強く引きたるに、うつ伏しに転びぬ。あへなきことかぎりなし。
あっけない
-
小さきはあへなむ。
かまわないだろう
-
中宮も御物の怪に悩ませ給ひて、常はあつしうおはしますを、院もいど晴れ間なく思し嘆く。
病状が重く
-
紅葉もまだし。花もみな失せにたり。枯れたる薄ばかりぞ見えつる。
まだ時期が早い
-
供なる男ども、いみじう笑ひつつ、「ここまだし、ここまだし」とさ差しあへり。
不十分だ
-
ほかにて酒などまゐり、酔ひて、夜いたく更けて、ゆくりもなくものし給へり。
突然
-
花は盛りに月はくまなきをのみ見るものかは。
暗い所のない
-
いとくまなき御心のさがにて、推し量り給ふにやはべらむ。
行き届かないところがない
-